合流前日
「意外に簡単じゃったぞ。骨は全体から魔力を発してると思えばええ、そして折れた部分からはより強力に魔力が放出されておる。ここまで良いか?」
『いいけど本当に魔力じゃないんだろ?』
「ほっほ……頭が回るのう。で、ちゃんとくっ付けるには骨を元の並びに戻すか弱い治癒をじっくり長い時間すればいいんじゃ。」
『地球の骨折治癒法と同じか……』
「ただ前者は患者が痛がるし後者はなかなか苦しい様でな……騎士団長にかけてやったら恨まれたわい。」
『まさかその恨みで追放されたんじゃないか?』
「おお!そういえばそれが原因かも知れんのう。」
『いやほぼ間違いなくそれだろう。んでおいらの故郷じゃこうやって骨を固定して……』
どん!
「子供が馬車に跳ねられたぞー!」
『マグナスさん、おいらの地方のやり方見せるよ。』
子供は右手と右足が変な方向を向いて泣いている。
『よしよし、痛いの痛いの飛んで行け……麻痺!
すぐ治してやるからな……催眠!マグナスさん!棒で手足固定してくれ。』
「人使いが荒いのう……できたぞ?」
『ありがと上出来……治癒、中!……坊や、坊や、おはよう。どこか痛い所有るか?』
「え?ぼく馬車にぶつかって……」
『それは治ったよ。折れた手と足はどうだ?痛くないか?』
「うん……痛くない!お姉ちゃんありがとう。」
『もう飛び出すなよ~!』
「お主……やってしもうたのう……」
『何が?』
「王都では妄りに魔法を使ってはいかんのじゃ。」
『子供見殺しにしろと?』
「そうではないんじゃが……」
「今子供を治療した魔導士はどこだ。」
『魔導士は知らんが治療したのはおいらだ。』
「騎士さんや、この子は王都は初めてで知らんかったんじゃ。」
「あ、マグナス・ポアロ!貴様こんなところで何をしてる!」
『汚ねぇ手でマグナス師にさわんじゃねぇ!』
騎士が抜剣すると満面の笑みを浮かべる増山。
『抜いたな?死んでも構わねぇんだな?』
ストレージからオリハルコンのヌンチャクを出し振り回す。
そして斬りかかって来た騎士の剣に……
『あたぁ!』
ヌンチャクを当てただけで剣は砕け散った。
「わ~?ミスリルの剣が~!」
『やかましい!』
ヌンチャクを揃えて頭を小突く増山。兜は軽く陥没している。
“マスヤマ、そこまでです。”
『景気良くこいつぶっ殺して王宮壊滅させて逐電しようと思ってたのに。』
“あなたが言うと洒落になりません。本当に可能なのですから。さて騎士よ、王宮が招いた客人を貴様呼ばわりですか?さぞやいい教育を受けたのですね。”
「誰だ?オレはトライサブのザッコローニ騎士長だぞ。」
『お前はフレイヤ様を知らんのか?』
顔が青くなるザッコローニ。だがフレイヤの言葉は続く。
“トライサブ……シーモと言う男が居ましたね。帝国英雄の連れの竜を拐かそうとして3回程殺された上で監獄に入れられた……あれあなたの身内ですか?神の弟の仲間に手を出そうとしたとオーディーン様とデミウルゴス様が怒りましてねぇ。追々神罰も下るでしょう。”
「あ~あなた方、ちょっと離れた隙に何してるんですか?」
『御者さん……に良く似たお方ですな。』
「本人です本人!着替えたんですよ!」
『いやのちほどって言われたんで王宮で会おうって意味かと。』
「わしもそう思ったのう。」
「いや服着替えないと公爵邸に入れてもらえないんで。ってまさか宿屋にでも泊まるおつもりでしたか?」
『いや野宿を少々……』
「お二人共、今夜は公爵邸に泊まっていただきます、いいですね?」
『いや宿泊費が……』
「何の心配してるんですか?」
『そして少女は大好きなお爺ちゃんと一緒に永遠の眠りにつきました。』
「いや死んでますよねそれ?」
『アルプスの少女 廃人と言う児童文学です。麻薬中毒の少女が雄大な自然に触れて野生児になるという感動巨編です。』
「感動の入り込む余地が見えないんですが?」
「あの……公爵様?大道芸は広場の方でやっていただけませんか?」
『ああ騎士さん、なんかこいつが抜剣したんで剣折ってどたま小突きました。』
「はぁ……で?お嬢さんは何を?」
『子供が馬車に跳ねられて手足折ってたんで痛み止めるのに麻痺と暴れないように催眠かけて治療してたら魔法使うなってこいつが。』
「ん?何年前の御触書だそりゃ?」
『父ちゃん使って良いらしいぞ?』
「5年前はダメだったのにのう……」
「イエミツ様治世……いや乱世時の悪法は2年前ヨシムネ様治世になりほとんど撤廃されましたよ。攻撃魔法ならともかく通常・医療魔法で犯罪に使って無いなら大丈夫ですよ。当然騎士団には徹底通知してます……で、公爵様、こいつ誰ですか?」
『本人トライサブのザッコローニとか言ってたけど……え?騎士じゃないの?』
「似た鎧ですが紋章も部隊章も無いし街中で抜剣するとか基礎訓練も受けて無いのでしょう。ところでこの剣どうやって?」
「これで叩き折りました。」
ヌンチャクを騎士に渡すと騎士の顔色が変わって……
「こ……これオリハルコン無垢!と言うかこの特殊杖は聖女リンジー様では?」
『別人です。わたくしはミラリオス・アルトラパン・メイプルリーファーと申します。』
「え?お嬢さんエルフ王の末裔なんですか?」
『その影武者です。本物のミラリオス様は別に居ますよ。守銭奴ですが。わたくしの仕事はこの名前で攻撃してきた者を抹
排除する事に有ります。』
「お嬢ちゃん、堂々と物騒な事を言わないでくれるかな?」
『でも御者さんもおいらが一般人攻撃しないの知ってるでしょ?』
「はぁ……とにかくこのお二人は公爵邸で休んでもらいます。君はこいつを連行してください。罪状は旧法をひけらかし少女を誘拐しようとした。街中で抜剣。王宮の客を力で排除しようとした……位で良いですかね?」
「了解しました!お嬢さん、ようこそ王都へ。楽しんでください。」
『ありがとうございます。』
その頃、リンジー達は……
「明日には王都ですか。」
「意外に早かったわね。」
「速馬車乗り継ぎ申したからな。」
「そろそろお風呂入りたい……」
「聖女様……無理言わないでくだせぇ。」
「マグナス……許してくれるだろうか……」
最後の野宿に突入していた。
{今回は余裕が有るな?}
たった2時間だぞ?
{外伝始めて初やと思うが?}
いちいち覚えとくな。
{んで黄門は仲間になんのか?}
しようかなとは思ってる。ぶっちゃけ通行券代わりだけど。
{外道。}
やかまし。