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サイキック・ワールド  作者: みっどないと
第1章 SK対策課異動
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荒波さんのSK

 妙に冷静な荒波さんに毒気を抜かれ、俺は駆け出すのやめる。俺の態度から逃げ出せないのがわかると、荒波さんは俺の左腕から離れた。



 この場から逃げ出すためにも再び人質にとろうと将司が女性につかみかかる直前、



「アハハハハハッ!!」



 毒でもがき苦しんでいた女性が突然狂ったように笑い出した。



「な、何がおかしいんだ!!」



 拳銃を構える周囲の警察官たちへ強く警戒していた将司は、突然狂気的に笑い出す女性に思わず怯え一瞬後ずさる。


 女性は服に隠していたのか、先程まで持っていなかったはずの拳銃を右手で自身の身体へ将司に見えないように構え、2発の銃声と共に()()()()()()()()()()()()()()()



「グッ...」



 突然、予想外の方向からの発砲に将司は思わず苦悶の表情を浮かべる。

 女性は自らの身体を撃ち抜いたはずなのに、先程までとは打って変わって、痛みを感じていないのか落ち着いた表情を浮かべている。



「なっ、何しやがるテメーーーッ!!」



 女性に向かって周囲に纏っていたスライム状の毒を向かわせていくも、女性は突然、煙のように消えてしまった。女性が消え去ったあとには拳銃含めて、何1つ残らなかった。



「な...


 ど、どうしたんだ、一体!?」



 将司が突如消え去った女性に困惑しながら、女性を探すかのように周りをキョロキョロと慌てながら見回す。



「そいつは私がSKで作った分身体よ。

 仲間に顔だけ変えてもらってたけどね。

 だから、どんなに攻撃しても無駄だったってわけ。


 いい演技だったでしょ、私?」



 荒波さんはニッコリと笑みを浮かべながら足を撃たれて座り込む将司に対して上から睨みつけた。

 将司は両手を荒波さんたちの方へ向けて、



「チクショー!


 何ならこの場で全員殺し」



 将司が言い終わる前に、先程からジワジワと将司の後ろ側へと移動していた俺は、将司の方へ勢いよく駆け出す。

 駆け出す音で俺が近寄ってきていることに気づいたのか、こちら側へ振り向いてくる将司に対して、俺は右手で作ったこぶしで思いっきり将司の左頬を殴りつけていた。



 ドンッ


 と殴りつけた顔から鈍い音を立てると、将司の身体は宙を浮いて、壁まで吹っ飛んでいき、大きな物音を立ててながら、壁に頭を激突させる。

 気絶したのか、周りのスライム状の毒もジュワジュワと音を立ちブクブクと泡立てながら、蒸発するように消えていった。



「バカッ!」



 全力ダッシュと緊張感からかハアハアと息を漏らす俺に対して、荒波さんに頭を思いっきり右手の平手で叩かれた。



「痛っ!」



 俺はあまりの痛さから前によろけた。



「あいつは私が分身体をもう1回出して倒したわよっ!分身体なら毒をくらっても大丈夫だし。


 もしあなたに万が一の事があったらどうするのよ!!」



 俺の身体の心配からか、荒波さんは大声を上げながら怒鳴る。そして、説教のためか、俺はその場で正座させられていた。



 確かにさっきのは俺の考えなしの行動だった。

 さっきのは運が良かっただけだ。


 もし、アイツがもっと早く俺の存在に気付いていた場合、今頃俺は全身毒まみれで、皮膚がただれて死んでいたのかもしれない。



「す...すみません...」



「刄さん!

 これから、より一層気を引き締めてくださいよ!」



 荒波さんはピシッと声を張り上げて、俺を上から見下ろしながら、俺に反省を促した。



「ハ...ハイッ!!」



 俺は反省の意を身体で表現するためにも、ピシッと背筋を正した。



 俺が反省しているのが伝わったのか、荒波さんは次からはこんな危険なことをしないようにと注意すると、警察官たちへテキパキと指示を出し始めた。

 将司の気絶後に包囲していた警察官の人たちが、将司に謎の注射をしてから、手錠をはめて連行する。



「早く帰ろーぜ。

 今日は刄の歓迎会すんだろ!


 さっき涼太が来たってリーダーから連絡あったぜ!」



 荒波さんが悠馬の頭を右手でベシッと思いっきり叩く。



「痛ぇーーー!何すんだよ、優衣!!」



「刄さんに涼太さんに主任でしょ。

 年上に対して礼儀をきちんとしなさい!


 それに私のことも呼び捨てにするのやめなさいって何回言えばわかるのよ!」



 悠馬が痛みのあまり怒鳴るように叫ぶと、荒波さんは悠馬に負けないくらいの大声で、まるで弟を叱る姉みたいに悠馬を叱りつける。



「いーじゃねーかー!


 なぁー、刄ー?」



「まぁ、いいよ、別に。」



 悠馬が同意を求めるように俺の方を振り向く。俺は正座していた足を崩し、立ち上がりながら悠馬に対して肯定の意を示した。


 別にもう嫌な気分はしない。

 年下からの生意気な呼び捨てだけれど、悠馬のキラキラした目を見ると、馬鹿にしてくるってよりかは懐かれてるって感じがするし。



 これが俺が担当した初めてのSKに纏わる事件だった。

 まぁ、こんな事件はまだまだSK対策課の序の口である。


 本当の困難はこれからたくさんやって来る...

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