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サイキック・ワールド  作者: みっどないと
第1章 SK対策課異動
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悠馬のSK

「だって、犯人、多分こいつだから。」



 そう言う悠馬の指差す先にはなんと、涙をハンカチで拭う将司さんの姿が。



「なっ、な、何を言うんですか!


 僕がどうして祥子のことを...!?」



 そう訴え悠馬に飛びかからんばかりの将司さんをよそに、悠馬は手を下ろしてから、話を続ける。



「いやー、動機は知らないですけど、あんた、SKのこと隠してるでしょ?」



 将司さんは思わずハンカチを強く握り締め、身体をワナワナと震わせて、



「な、何を言ってるんですか、君は?」



 震えるような声で言葉を漏らす。その瞳は動揺しているのか焦点が少しブレていく。その姿には少しだけだが、焦りも見て取れる。



 焦っている様子の将司さんとは対照的に、悠馬は落ち着いた様子を見せて、右手でボリボリと頭を掻きながら、



「いやー、俺、実はSKの有無を知れるSK持ってるんすよね。


 だから、あんたがクロ。

 間違いなく100%、な。」



 悠馬は空いている左手で再び将司さんをビシッと指差す。



 すると、



「チッ、そんな奴がいたとはな。」



 将司さんはいきなり態度を豹変させて、低く鈍い声を漏らす。

 そして、将司は隣にいた智子さんを俺たちの方へ突き飛ばして右手から()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()逃げ出していく。



「えっ...ゆ、悠馬っ!

 追いかけるぞっ!!」



 逃げ出した将司と溶けた窓を見て一瞬ポカンとしてしまった俺だが、逃げられたという事実を認識して慌てて玄関の方へ駆け出す。



 しかし、



「大丈夫よ、刄さん。

 ()()()()()()()()()()()。」



 慌てる俺をよそに、すました顔の荒波さんが俺を言いなだめる。


 落ち着いている様子の2人に余計に困惑してしまったが、それでも逃げ出したことには事実なので、少し急ぎ目に玄関から外へ出る。


 そこには将司を包囲するように拳銃を構えた警察官たちの姿と、先程現地入りしてきたばかりなのか見覚えのないSK調査課の女性と、その女性の首を力強く右腕で抱え込み、



「こいつを殺されたくなければ大人しくしろ!

 俺のSKは手から自由に毒を作れるぞ!


 わかったらさっさとその拳銃を地面に置けっ!!」



 周囲の警察官たちを脅迫している将司の姿があった。

 SK調査課らしき女性は必死で身体を動かして、逃げようともがいているが、力負けしているのか拘束から逃げ出せないでいる。

 人質第一のためか、警察官たちも抵抗できず地面に拳銃を置く。



 全然大丈夫じゃねーじゃん!!



「それ以上暴れると、この場ですぐに殺すぞ!!」



 将司が唾を吐きかけるようにそう怒鳴りつけると、人質の女性は大人しくなって、もがくのをやめ、動かなくなった。



 何て奴だ!

 さっきまであんなに遺族ズラしてたのに!!



 あんなにあっさりと騙されていた俺は何だか、自分が少し情けなく感じた。


 それに、SK1つで事件の性質がこんなに変わってしまうことに驚きを隠せないでいた。


 もしSKが関わっていなかったら証拠を残さず毒物を仕込むことができないし、あのままだったら智子さんが犯人だと誤認逮捕される可能性だってあった。


 もし後者の方だった場合、危うく将司に逃げられていたかもしれない。



「そ、その女性は関係ないだろっ!

 今すぐ解放するんだ!!」



 俺は思わず将司に向かって、大声を上げる。

 警察官たちも人質の女性を解放しようと将司に語りかけていく。



 しかし、将司は



「グチグチうるせーな!!

 早く逃亡用の車を用意しやがれ!!」



 先程までのしなしなした態度からかけ離れた乱暴な口調で俺たちを怒鳴るように逃走手段を要求してくる。



 俺たちに集中している将司に対して、捕まっている女性は急に落ち着きだすと、口元にニヤッと笑みを浮かべてから右手を軽く振り被り、将司に右肘で肘鉄を勢いよく食らわせた。



 ドンッ


 と鈍い音が鳴って、



「ウッ...」



 将司の口からうめき声が漏れ出る。


 女性はその隙に逃げようと将司から離れるように走り出したが、



「逃がすか!!」



 痛みを我慢しながら、将司の左手から紫色のネットリとしたスライムのような液体が女性に向けて勢いよく噴出した。


 女性の肌や服に触れた液体は紫色の煙を排出し、人質だった女性は苦痛なのか顔をしかめ、口に手を当てて押さえながら、その場にしゃがみ込む。



「これ以上抵抗すると、致死量の毒を食らわせるぞ!」



 将司が人質の女性に怒鳴り散らし、俺たちへの対策か、身体の周囲をスライム状の毒で覆いながら、再度人質に取ろうと歩み寄っていく。


 周りの警察官たちも再度拳銃を構えているものの、女性と将司の距離が近いため、発砲できずにいる。



「やっ、辞めろっ!!」



 俺は慌てて人質の女性を助けようと将司へ向かって駆け出そうとする。



 しかし、荒波さんが、



「だから、大丈夫だって。

 もうアイツは捕まえたも同然よ。」



 人質の女性が捕まりそうにもかかわらず、両手で俺の左腕を引き止め、またしても落ち着いた口調で諭すように俺に語りかけた。

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