「接触」
ーーーーーーーーーーーー
家出してから数日後、俺はあるニュースを目にした。ニュースによると、俺の両親が自宅にて殺害されたらしい。
いつも仕事で忙しいながらも毎朝弁当を作って見送ってくれる母さんに、3年ほどの付き合いだがまるで本当の父親のように優しく接してくれた父さん。
そんな2人の命がわずか数日会わない間に失われてしまうなんて思ってもみなかった。
俺はそのニュースを聞いた当初、悲しみのあまりスマホを手から滑り落とし、年甲斐もなく泣き崩れてしまった。
そして数日後。
俺は両親の殺人容疑で指名手配されていた。
現場には凶器であるナイフから俺の指紋が残されていたらしい。最も、俺にはそんなナイフになんて心当たりがないのだが。
俺は何回も事件について頭をひねりながら考えたのだが、やはり両親の殺害と俺がFW組織の入会サイトを閲覧したことは関係あるとしか思えなかった。
サイトに接続した時にパソコンの画面に表示された、
「あなたは「FW組織」の存在を知ってしまいました。よって、排除します。」
これは今起こっていることに違いない。
元に社会的には排除され始めている。
となると、このFW組織とやらが俺の両親の死と、その後の俺の指名手配に繋がっていると推察できる。
だから、俺は信頼できる高校時代の友人のアパートに転がり込んで身を潜める傍ら、FW組織について詳しく調べることにした。
しかし、結果は何も得られなかった。最も手に入れられたのがあの入会サイトからだが、もし再びあのサイトを閲覧した場合、この部屋の住人の亡骸を増やす結果になるだけだろう。
大事な友人であり、ただでさえ何も聞かずに身を隠すのに協力してもらっているのに、その上そんな危険に到底巻き込めない。
よって、俺は次の策にてFW組織について情報を集めることにした。
あの鈴村とかいう男は何故だかわからないが、能力者を探していた。であるならば、俺が能力を使いながら街中を徘徊していればその内向こうから接触してくる可能性が高い。
そのことに気づいた俺は夜な夜な少し離れた街で能力を行使しながら歩き回ることにした。
そして、そんな生活を2週間ほど続けた頃、ようやく向こうからの接触があった。
俺がいつも通り能力を行使しながら夜の街を徘徊し、人気のない廃校にたどり着いた時、背後から1人の女が話しかけてきた。
「あなたね。
うちの鈴村を始末したのは。」
「そうだけど、だから何?
仕返しにでも来たのか?」
軽やかな足取りでヒールの音をコツコツと鳴らしながら廊下を歩み寄る女へ、俺は常に周囲に目線を向けることで警戒する。
その女はコツコツとヒールの音を立てながら、俺の方へ歩み寄るその足を止めない。
「違うわよ。
あなたを私たちの組織に勧誘しようと思ったんだけど、どうかしら?」
「条件次第では組織の一員になろう。」
女は俺から30cmほどの距離で立ち止まると、首を傾げながら勧誘してきたので、俺は組織へ参加する見返りに提案をする。
「条件?」
女がその場に立ち止まって、再度首を傾げながら聞き返す。
「そうだ。
なぜ俺の母さんと父さんを殺した。」
俺はあくまで冷静に心の中の平静を保ちながら目の前の女に真実を尋ねることにした。最もそれが事実であるかはわからないが、参考材料の1つにはなるだろう。
女は俺の質問を聞き終えると、ただ一言だけ告げた。
「あなたの両親を殺したのはSK機関の関係者よ。」
と。