刄のSK①
「あら、どうしたんですか、皆さん?」
落ち込む悠馬を俺と涼太で慰めていると、荒波さんが槙田さんと共に対策課へ帰ってきた。
俺は義姉さんが来たことと、透視の能力を持っていること、俺にその能力をかけることでコピーしたことの3つのみを伝えた。
決して俺の痴態や悠馬の黒歴史は伝えない。俺たち3人は言葉は交わさずとも、視線でお互いに誓い合った。
そんな俺たちの男同士の誓いなど露知らず、荒波さんは俺の能力が気になったのか、急かすように、
「じゃあ、早速能力を試してみましょう、刄さん!
ただし、私たちの服を透視しないでよね。」
という忠告を添えて俺の能力を試すことを勧めてきた。
「お、おうっ...」
重々承知しております。
俺は何も余計なことは言いません。荒波さんみたいなお子様体型なんて...
「刄サン?」
「さーって、早速試してみるかー!」
目のハイライトが消えていっている荒波さんを見なかったことにした俺は、能力をかける手頃なものをパッと視界の中から探した結果、自分の机の引き出しを能力の対象として、透視してみることにした。
透視...
透視...
中身がレントゲンのように透けて見える...
ーーーーーーーーーーっ!!
俺の願いがようやく通じたのか、俺の引き出しが透けて、普通だと引き出しの中に入っているため、見えないはずの書類等が視えた。
「み、視えました!
透視できました!」
「じゃあ、決まりですね!
刄の能力はコピーってことですね。」
パチパチパチパチ
涼太と荒波さんと悠馬が嬉しそうにお祝いするように俺に向かって拍手してくれた。
コピーかー...
これから羨ましいと思った能力が一部、使えるってことだからなー...
分身は使えないけど、瞬間移動とかだと俺に能力をかけてもらったら使えそうだなー。通勤時間は楽だし、いろんなところにいつでも旅行に行けるわけだし。
俺は
(早く瞬間移動の能力持ちに出会いたい!)
と強くそう思った。
「とりあえず、刄さんは主任の能力をコピーしてください。」
まだ見ぬ瞬間移動の能力持ちとの出逢いに胸に希望を抱いていると、荒波さんが俺に有無を言わせぬ様子で新たにコピーをするように命令する。
自らの発言の後、荒波さんはハッと何かに気付いたようなリアクションをした。
「...コピーって1つコピーするごとに上書きされるんですか?
それとも1回コピーしたらずっと使えるんですか?」
荒波さんが自らの全てが透視されるかもしれないなんて(俺は|考えていない)、恐るべき未来について警戒しながら、そんなことがないようにと願うように尋ねる。俺は早速変身能力を試してみたが、残念ながら変身できなかった。
どうやら1つしかコピーできないようだ。もしコピーを上書きした後に前にコピーした能力を使いたい場合、再度能力をかけてもらう必要がありそうだ。
ちょっと不便だな。
その少し残念な結果を俺はありのままに荒波さんたちに伝えた。
「よかったー。
これからずっと刄さんが透視できるんだったらどうしようかと思っちゃいましたよー。」
荒波さんは新たな能力をコピーする毎に前の能力が上書きされていくという俺の能力の欠点に安心したのか、安堵のため息を漏らした。
「ア、アハハハハ...」
俺は苦笑いをした。
いや、元々他の人のことなんて透視するつもりはないから!
透視するならかおりだけで...
...なんて心の中で訴えた。
その後、俺は「透視対策に!」と気にする荒波さんの命令で槙田さんの能力を再びコピーしてから、帰宅することにしたのだった。