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サイキック・ワールド  作者: みっどないと
第2章 邂逅と能力判明
30/65

刄の義姉②

 俺は苦笑いしている悠馬と涼太をジトっと睨みつけながら、3人分のコーヒーを注ぐ。その間に悠馬は義姉さんの隣に、涼太は俺の隣に座った。



 ジーーーッ



「ごめんって、刄。

 聞くつもりじゃなかったんだけど、入るタイミングなくしちゃって。」



 ジーーーッ



「す、すみません、刄さん。


 で、でも中高生の時なら仕方ないですって。」



 俺が無言で視線を向けていると、

 悠馬は盗み聞きしてたことへの言い訳を、

 涼太は何のフォローにもなってない発言をする。



 ジーーーッ...



「ごめん、ごめん。


 まぁ別に同性なんだから気にしなくていいじゃない。」



 全く悪びれた様子もなく、あっけらかんとしている義姉さん。


 コーヒー引っかけてやろうか!



「まぁ、刄の1人事情なんてどうでもいいわ。


 そんなことより刄に能力をかけたらいいのかしら?」



「えぇ、まぁ...


 本当は他の人がいいんですけど...」



 俺に対する罪悪感はないのか、と訴えたい一方で、これ以上この話題を広げたくないという気持ちがせめぎ合った結果、俺は自らの能力についての考察に励むことにした。


 残念ながら他者に能力をかけるタイプの能力持ちは義姉さんの他には誰も知らない。

 それに槙田さんたちにも知り合いに能力者がいるから問題ないと伝えた手前、今更頼りづらい。



「ごめんごめん。

 今度から気をつけるから。」



 義姉さんは手をひらひらと振りながらあっけらかんとした顔で謝る。それから、ふと何かに気付いた顔をして、



「そういえば、雪ちゃんが一昨日怪我したって今朝かおりさんから聞いたわよ。


 私の部下の能力持ちの子に行ってもらったから、今頃雪ちゃんの体調も良くなってると思うわよ。」



 唐突に話が変わりだした。

 俺は事態が飲み込めず、口直しに飲もうとしていたコーヒー入りのマグカップを机に置く。



「うん?

 その部下が雪の怪我とどう関係があるんですか?」



 怪訝な表情を浮かべながら尋ねると、義姉さんはニコッと笑い、



「うちの部下の中で治療の能力が使える子がいるのよ。


 その子に雪ちゃんの治療お願いしといたから、多分今日中には怪我が完治すると思うわ。」



「えっ、本当ですか!?」



「えぇ、本当よ。


 凄腕の能力者だから安心して!」



「ありがとうございます!」



 俺は雪の怪我が完治することに安心し、



「だから、許してくれる?


 ごめんね、刄」



 って言葉に絆されてしまった。

 まぁ、それなら許してあげなくもないかな...



「あ、あぁ、わかったけど、次からはそんなこと言うなよな。」



「えぇ、もちろん!」



 俺たちが怒ったタイミングでこういう気の配り方が上手なところがあるから、義姉さんのこと怒るに怒れないんだよなー...



「悠馬。涼太。

 何も聞いてないよな?」



 俺はさっきの出来事をなかったことにしようと男の子2人(悠馬と涼太)を睨みつけながら尋ねる。


 涼太はうんうん、と素早く首を上下に振りながら頷いた。しかし、

 


「えぇー、どーしよっかなー??」



 悠馬はニヤニヤしながら、そんなことを言い出した。俺が黙って悠馬のことを見つめていると、名案が思いついた俺は義姉さんにあることを提案することにした。



「義姉さん、悠馬が透視してほしいらしいですよ。


 で、どんな裸か学校中で話し回ってほしいらしいですよ。」



 俺は義姉さんにニヤッと口角を上げながら鬼畜な所業を提案した。



「えっ、ちょっ」

「オーケー。」



 焦る悠馬を他所にノリノリな義姉さんが横に座る悠馬に能力を使用する。義姉さんの真っ黒な両眼が能力使用した時の特徴である仄かに青白い光を放つ。



「ふーん、なるほどこんな身体をしてるのねー。


 私の部下にこの子の裸を念写してもらって学校で配っておけばいいんで」

「ごめんって!刄!


 何も聞いてなかったって!!」



 慌てた悠馬が縋るように俺の方へ視線を向ける。

 俺は優雅にコーヒーをコクっと飲み、



「まぁ、許してやるか。」



 コーヒーをカチャっと音を立てて置いた。



「まぁ、刄の件は置いといてあなたの裸を念写してあげるね。」



「何で!?!?」



 逃れたつもりだった義姉さんの遊びに、悠馬が悲鳴に近い叫び声を上げ、義姉さんの方へ振り向いた。



「あーあ、悠馬。

 義姉さんの玩具おもちゃになったな。


 これはもう諦めろ。」



 悠馬はソファーから立ち上がり、1歩左へ歩くと、ガクッと膝から崩れ落ち、床に手をついた。

 俺は慰めのために後ろから悠馬の両肩をポンと叩いた。


 俺たち兄弟に加えて、悠馬も義姉さんの玩具になった瞬間だった。

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