義姉さんの能力
SK実行課第1支部の主任。
それが俺の義姉さんである佐久間 優子の肩書である。
実行課というのはSKによる犯罪のうち、テロなどの大規模な犯罪を専門としている課を指している。
ちなみに第1支部っていうのは、いくつかある支部のうち、俺たちが所属する支部である。
「えっ、本当!?」
さっき思い出した人物を言うと、荒波さんが顔を上げて驚きの顔を見せる。
義姉さんは、俺が対策課に配属されるまでに一番よく関わっていた能力持ちだ。
「本当だ。
何百回も義姉さんが俺の目の前で使用して、
...っていうか、使われているのを見た、
...いや、見られたなんだけど、
...まぁとにかく義姉さんも能力持ちですよ。」
しどろもどろしながら俺が答える。
「なんでそんなに慌ててるんですか、刄さん?」
「いや、べ、別に何でもないですよ。荒波さん。」
「そうですか?
って、また敬語に戻ってますよ、刄さん?」
「あ、あぁ...」
気が動転してしまって一時的に敬語に戻ってしまう。
「ふーん、ちなみにその優子さんってどんな能力なんですか?」
「えーっと、能力は確か...」
世の中の男たちが欲しがる能力の1つである...
「透視でしょ?
刄のお義姉さんって、SK実行課の佐久間 優子さんよね?」
槙田さんが答えづらそうにしている俺の代わりに相変わらずの冷静な口調で説明してくれた。
「そ、そうです。」
透視。
義姉さんは透視の能力を持つSKPである。
その能力でテロリストたちの服の下に凶器が隠されていないのか見たり、どこかに敵が隠れていないか確認したりできるそうだ。
ちなみに何故義姉さんの能力を言いづらかったのかというと、昔から何回も何回も能力を使われたことがあるからだ。
何回も裸を見られていた...
多感な思春期の頃に...
どこに彼氏の弟たちの服を透視する義姉さんがいるんだよ!!!
しかも、能力で裸を見慣れてるせいで自分の裸を見られることにも抵抗なくて、お風呂あがりに全裸で出てくるし...
そのため、義姉さんが家にいる時は、部屋にこもっていても弟と2人して落ち着かなかった。
「透視か...
能力者が男じゃなくてよかったわー。」
俺が過去を思い出し、心の中で悶えていると、荒波さんが何かに気付いたかのような驚きの声を上げてから、
「そっ、その能力、もし私たちの服を透視するのに使おうとしたらすぐに捕まえるからね、刄さん。」
荒波さんは両腕で身体を覆いながら、俺に釘を刺してきた。
「そんなことするわけねーだろ!」
義姉さんと違って、俺はそんなことしねーよ!
だって、かおりがいるし。
それにそうでなくても、子ども体型の荒波さんなんて透視するわけ...
「なんか失礼なこと考えてません、刄さん?」
ギロっと俺のことを睨みつけてくる。
ボク、シーラナイット...
睨みつけてくる荒波さんの視線を無視しながら、俺は嫌々義姉さんにメールでアポを取った。
悪い人じゃないんだけど、ちょっと苦手なところがある。
主に恥じらいのないせいで。
俺は義姉さんが来るまで、ジト目の荒波さんとコーヒーを嗜んでいる槙田さんと共に書類を処理しながら待っていた。