能力考察②
かおりと共に家に帰ってきた翌朝、俺はかおりを起こさないように静かに家を出て、対策課へ向かった。対策課へ到着すると、槙田さんがコーヒーを片手に1人で黙々と書類整理をしていた。
「おはようございます、槙田さん。」
「おはよう、刄。」
俺の挨拶に気づくと、槙田さんは仕事の手を止めてこちらをうっすら微笑みながら見た。
「おはようございます、刄さん!
今日は昨日の続きで刄さんの能力を調べましょう!!」
俺が席に着いたタイミングで出勤してきた荒波さんが朝から元気な声で挨拶してくる。
「おはよう、荒波さん。
今日も引き続きよろしく!」
俺は槙田さんが用意してた熱々のコーヒーをマグカップに注ぎながら荒波さんに返事する。
「で、昨日の続きですけど、コピーかどうか試したいんですけど、早速私の能力をコピーできるかやってみましょう!」
「わかった。
けど、どうやってコピーするんだ?」
俺は自分の分と荒波さんの分のマグカップをそれぞれの机の上に置くと、首を傾げながら荒波さんに問いかける。
「どうやってって...
うーん...
何かこう、ハンドパワー的な?」
手をふわふわ空中で振りながら荒波さんが考察...いや、違うな、当てずっぽうで適当に言う。
「いや、ハンドパワーとか言われても無理だから。
うーん、能力者に触れるとかかな?」
「じゃあ...はいっ、握手しましょう!」
俺が少なくとも適当なことを言う荒波さんよりまともに考察すると、荒波さんは近くに立ってる俺の右手を、自身の両手で包み込む。
「これでコピーできましたかね?
じゃあ、私の能力がコピーできてるか試してみましょうか、刄さん?」
俺は今度こそ分身ができると、アメーバの分裂をイメージしながら試してみる。
分裂...
分裂...
身体が真っ二つに分かれて2人に...
...ならなかった。
俺の身体は1つしかない。
「うーん、無理かな?
まるでできる気がしない。」
コピーできなかったことで、やっぱり変身の類の能力かもしれないと少し残念がると、
「それってコピーできる能力とできない能力があるってことじゃないかしら。」
俺たちの様子を書類整理しながら聞いていた槙田さんが、再度仕事の手を止めてこちらへ話しかける。
「コピーできる能力とコピーできない能力ですか?
それって何か違いがあるんですか?」
コーヒーを1口飲んだ荒波さんは、俺から槙田さんへ視線を移して問いかける。
「えぇ、正確には能力をコピーする方法が違うってことよ。
ただ触れればいいってわけではないってこと。
例えば、能力を発動している時に触れた場合よ。
他にはかけられた能力をコピーするって場合ね。」
「なるほど。」
俺たちは相槌を打ちながら、槙田さんの話を聞いた。
その後、俺は荒波さんと前者の方法を試してみたのだが、結果は失敗だった。つまり、俺の能力の発動条件はおそらく後者であろう。
「でもその条件の場合だと、今日は私たちの中でコピーできそうな能力、主任以外いないですよ。
私の能力は他の人にかけることができないし、
悠馬は今日は灯ちゃんたちと勉強会って...
あ、刄さんは灯ちゃんに会ったことありませんよね?」
「あぁ。
悠馬と同じ孤児院ってのは聞いてるんだが。」
俺が優馬から聞いた限りの話を話すと、荒波さんは「えっ」と小さく声を漏らして、
「刄さん、もうそんなことまで悠馬から教えてもらったんですね。
もうすっかり懐いてますね、珍しい...
ってそれよりも刄さんの能力の話の続きですね。
涼太さんは今日は調査課の方で仕事があるって言ってたし、そもそも記憶捜査の能力なんてもし万が一のことがあって暴走したら危険だし...」
「能力の暴走って何ですか?」
俺は相槌を打ちながら聞いていたのだが、聞き覚えのないワードに思わず反応する。
「能力の暴走っていうのは感情が激しくなったり...
そうねー、喜怒哀楽とかですね。
そういったのが大きくなると能力もつられて大きくなるってわけです。
まぁ、喜んだり楽しんだりって場合は小さい子じゃない限りは自分でコントロールできるんですけど。
だから、どっちかって言うと怒りや哀しみが大きい時ですね。
あとは、能力に目覚めたばかりの頃ですね。
使い慣れてなくて能力の加減がわからず、大事故を引き起こしてしまうんですよ。
刄さんの場合だとコピーするってわけですから、実質毎回暴走するかもって前提で考えていた方がいいんですよね。」
確かにそうだなー...
うーん...
俺は下を向いて腕を組みながら、暴走せずにコピーできそうな能力を考えた。
今、槙田さん以外に安全にコピーできそうな能力かー...
そんな都合のいい能力は確か...
いた。
俺の脳裏にはある女性の姿が。
「俺、暴走しなさそうな能力持ってる人知ってますよ。
俺の義姉さんが能力持ちです。」




