能力考察①
「じゃあ、俺の能力は変身かー。
せっかくだから違う能力がよかったなー。」
卓上ミラーを机の上に置きながら、俺はそうぼやく。
だって...
「ただいまー。
って、刄さん。お疲れのようですが、能力について何かわかりましたか?」
俺が悠馬の顔へ変身する能力を解き、自分の顔に戻ったのと同時に、勢いよく扉を開ける荒波さんと、その後ろから一緒に槙田さんと涼太が帰って来た。
荒波さんはソファーへ深くもたれている俺の方を見て、フワッと微笑みながら、尋ねてくる。
「さっき、刄の能力を調べてたー。
んで、刄、俺の顔に変身したー。」
俺が姿勢を正してから答えるよりも前に、目の前のソファーに座る悠馬が、ダランとソファーにもたれかかりながら荒波さんたちの方へ振り向く。
そして、疲れているのか語尾を伸ばしながら、悠馬が荒波さんに俺の能力について説明した。
「えっ、本当!?やってみてください!」
俺の能力分析について、成果が出たことによる嬉しさからか、荒波さんが俺の方へ駆け寄って来た。
俺は次は目の前まで駆け寄ってきた荒波さんの顔に変身している状態をイメージした。
俺の顔はどんどん縮まって、細くなる。髪は急成長して肩を少し越える辺りまで伸びていった。
「おおっ、凄いよ、刄さん!」
荒波さんは嬉しそうな顔をした。
だけどなぁ...
「でも、能力がダブりじゃイマイチですねー。」
涼太は俺の方へゆったりと歩み寄りながら苦笑いと共に言葉を投げかけてきた。その言葉のナイフにより、グサッ、と俺の心に刺さった音が聞こえたような気がした。
さっき何度も俺が考えていたことを涼太に言われた...
「確かに、俺のは顔だけじゃなくて姿形まで変身できる槙田さんの劣化版に過ぎないし、仮に同じレベルまでなれたとしても、似た能力が2つあってもイマイチだしなー...」
俺は1人考えていたことを呟きながら、ソファーに身体を沈ませながら俺が落ち込んだ。
「でも、もしかしたら一緒じゃないかもしんないよー。」
俺が1人落ち込んでいると、相変わらずダラけた状態の悠馬はもぐもぐバームクーヘンをつまみながら、予想外の一言を放った。
「「「えっ!?」」」
驚きから俺、荒波さん、涼太は一斉に悠馬の方へ視線を向けた。
この状況から俺の能力が変身じゃないって可能性があるのか!?
全く見当がつかない。
全く見当がつかない俺たちに対して、その言葉の真意を理解していた槙田さんが、俺の能力の2つの可能性を教えようと、ツカツカとヒールの音を立てながら歩み寄って来た。
「1つ目の可能性は発生した現象がたまたま同じだった可能性ね。
例えば、物を自由に浮かせる浮遊と、物を自在に操作する念動力。
これって能力としては異なるけど、どっちも『物を浮かせる』ってことができるわよね?
こういう風に詳細な能力は違うってこと。」
「えー、でもそれって、要は浮かせることしかできない浮遊の能力は自在に操れる念動力の劣化版ってことじゃないんですか?」
槙田さんが説明している間に、他の人の分のコーヒーを用意して持ってきた荒波さんが、そうガッカリするように問いかけると、槙田さんはクスッと笑みを浮かべた。
「あらっ、それは違うわ。
浮遊の能力にできて、念動力の能力にできないことはあるもの。
まぁそのことは、今は刄の能力の考察に関係ないから、説明は省略させてもらうわね。」
荒波さんからコーヒーを受け取った槙田さんは悠馬の右隣に座ると机にコーヒーを置いてこちらへ視線を向け話を続ける。
「まぁ、たまたま都合よく似た能力持ちが現れたって可能性は正直言って偶然にも程があるわ。
だから、どちらかと言うと今から言う2つ目の方が刄の能力の可能性としては高いと思うわ。
刄のコピーかもしれないってことよ。
そうでしょ、悠馬?」
コピー。
さっきまで変身関連の能力だと思っていたのに話が飛んでしまい、混乱から顔が呆けてしまう。
悠馬は隣に槙田さんが座ったことで、少しだけ姿勢をピンと正してから、
「そういうこと。
昨日刄の歓迎会の時にリーダーに能力をかけてもらってただろ?
だから、その時にリーダーの能力をコピーしたのかなって。」
もしかしたら、そうかもしれない。
いや、そうであってほしい...
同じ能力ではない可能性が出てきた。しかも、結構可能性が高い。
コピーの能力とか、絶対便利だし!
いろんな能力、使いたい放題ってことだろ!?
荒波さんみたいに分身体をいくらでも出せたら仕事でも私生活でも捗るし、
涼太の能力は悪用こそできないけど、何かあった時に役立つかもしれないし。
俺の胸には同じ能力じゃない可能性にさっき能力の一端を掴んだ時以上に希望が溢れてきた。




