「襲われる友人」
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暗い夜の中、温かい風が花吹雪を伴って、そよそよと吹いていく。
(懐かしい...)
夜の学校の屋上。
俺は卒業して以来、初めてこの場所にやって来た。
(あんなに毎日、この場所に来てたのにな...
卒業すると所詮こんなもんなのか...)
少し寂しさを感じる。
俺の目には金髪ショートで筋肉質の男が、ひたすら俺の友人2人を素手でリンチしている光景が映っている。
俺は屋上入り口の上に寝転んでいるので、下からは見えにくく、男に気付かれることはなかった。
2対1なのだが、明らかに殴っている方の男の身体能力がおかしい。
一発殴るだけで10メートルくらい人間を吹っ飛ばすし、5メートルほどの距離をたった1歩で埋める。
殴る力も身体の動きも見たことがないくらいだ。
おそらくアイツも俺と同じ、SK持ちなのだろう。
男は最初の1分は俺の友人たちの抵抗を
かわしては殴り飛ばして、
かわしては殴り飛ばして、
の繰り返しだった。
数回殴られたあと、抵抗する気が折れてしまい、今は意識朦朧としながらヨロヨロと逃げていくばかりだ。
そんな友人たちの後ろを金髪の男はニヤニヤ意地きたそうに笑いながらゆっくりと追いかける。
チラッと聞こえてきた話によると、男が意味不明な因縁を吹っかけて、絡んできたようだ。それで必死でここまで逃げてきたらしい。
まぁ、あいつらは俺たちの中でも喧嘩苦手な方だったしな。
(てか、そんなどうでもいいことにSKを使うのかよ...)
俺は男に対して、友人を殴られたことに対する怒りよりも、男の人間性に対して呆れを強く感じる。
俺がさっき拾った男のカバンからは
「鈴村 はじめ」
という名前が書かれている、社員証のようなネームプレートがある。
中には4つ折りのメモ1枚と少し硬めの紙が入っており、硬めの紙には名前と、
「FW組織」
と組織名だけが書かれている。
どこかネットで見たような気がする名前の組織だった。
詳しい内容は全然思い出すことができないが。
後で調べよう。
俺はそんな程度にしかこの時は思っていなかった。
しかし、後々この組織と深く関わっていくことになる。
再び視線を友人と男の方へ戻すと、友人たちが完全に気絶していた。男が意味のわからない雄叫びを上げる。
さて、やる...か。
俺は男に気付かれないように能力を友人たちにかけた。
俺は友人たちを浮かせてから、一気に俺の元まで動かした。
そこでようやく男が異変に気付く。
辺りをキョロキョロ見回し、入り口上の俺を発見する。
「ようやく見つけたぜっ!!
大人しくおれについてきやがれっ!!!」
男は訳のわからないことを言いながら、俺の方へ跳んで来ようとする。
しかし、もう遅い。
俺はすでに屋上に浮かばせていた大量の自動車に能力をかけていた。
大量の自動車は一気に宙を浮き、そして一気に...
グシャッ
まるでハンマーのように跳ぶ準備をしていた男を押し潰していく。
再び持ち上げると、そこにはもう男の形が微塵も残っていなかった。
残っていたのはミンチになった肉の塊、ズルズルと溢れる臓器、夥しいほど溢れる血。
それだけだった。
男が死んでいるのを確認すると、
俺は男のカバンを持って、卒業式の時のように、能力を使って屋上から降りていった。
「け...啓介っ...」
意識を失っているはずなのに、うなされるように寝言のように漏らす、意識を失った友人の声は彼には届かない。
これにて第1章終わりです!
引き続きよろしくお願いいたします!!