前科持ちの同僚
「じゃあ、次は俺だな!」
空になったポテチの袋を机の左隣にあるゴミ箱に捨ててから、悠馬が座ったまま俺の方へ身体を向ける。
「俺は須藤 悠馬。
SKはさっき言ったからいいよな?
どこかで聞かれてたらマズイし。
SK対策課の特別捜査官で、ちなみに今、高1で16歳だから。
よろしくー。」
悠馬は俺に向けて人懐っこい表情を浮かべながら笑う。
「いつから働いてるの?」
俺は初めて会った時から気になったので、悠馬に尋ねてみた。
悠馬は指を折りながら数を数えていき、
「1、2、3、4、5...年くらいかな?」
えっ...
「5...5年も!?凄いな、悠馬っ!!
ってことは小学生の時から働いてるのか!?」
「そっ...そうか?
...って言っても最初の方はほとんど何もしてねーよ。
SK機関の人の中でSKの素質ある人を探したりとかで、事件に関わり出したのは1年前とかかな。」
俺の素直な称賛に対して、悠馬は照れるように顔を掻きながら、嬉しそうな顔を浮かべた。
それから、悠馬は照れをごまかすように机の上のチョコクッキーをもそもそと食べ始めた。
「ちなみに私がSK持ちだってその時にわかったんですよ!」
荒波さんのSKは悠馬によって発覚したらしい。それからの付き合いのため、SK対策課の中では結構悠馬との付き合いが長いそうだ。
悠馬の勤務歴に驚いた後、俺の真向かいの席に座る涼太が立ち上がる。
「俺の名前は仲里 涼太って言います!
俺のSKは記憶の書き換えですっ!
21歳で悠馬と同じくSK対策課の特別捜査官やってます!
よろしくっ、刄っ!」
「こいつに近付き過ぎると記憶、書き換えられちゃうよー。
一応前科持ちだから、涼太。」
荒波さんの時と同じように、またもや悠馬が自己紹介へ横槍を入れる。
「えっ...ぜ、前科?」
「そ。ここに来る前はSK、バンバン使いまくってたんだよ。
あの時は本当、大変だったわー。」
俺は思わず悠馬の方を振り向いた。サクサクとチョコクッキーを食べつつ、ニヤニヤ笑いながら懐かしむ悠馬に対して、涼太は苦笑いしながら、
「ア、アハハハッ...
わざわざ刄に言わなくていいじゃん...」
(本当だったんだ... )
前科持ちも存在する。
それがSK対策課。
それくらい人手不足なんです...
「前科って何やったんだ、涼太?」
「そ、それはまた今度にしようか...
いい、刄?」
「え、い、いいけど...」
俺がまだ立っていた涼太に尋ねると、涼太はゆっくりと座りながら、前科をこの場で答えることを断る。焦った表情を浮かべる涼太に俺はひとまず合わせることにした。横では悠馬がニヤニヤしている。
「そういえば、私も詳しく知らないのよねー。
涼太さん、何やったんですか?」
「な、何でしょうねー...」
荒波さんが横の席に座る涼太に問いかけるも、涼太は荒波さんから視線を外して苦笑いしていた口元をさらに引きつらせながら誤魔化そうとした。