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サイキック・ワールド  作者: みっどないと
プロローグ
1/65

「卒業式」

ある日の出来事

 ーーーーーーーーーーーー




「早く行こーぜ、啓介けいすけ!」



「あー、先に行っといてー。」



 そう伝えると扉を閉め、急いで階段を降りている友人の様子が聞こえた。俺は今、学校の屋上で金網にもたれ掛かるように座っている。



 ここは俺たちのお気に入りの場所だ。いつもここで騒いでいた。


 俺たちが初めて出会ったのも


 音楽の趣味がきっかけで仲良くなったのも


 毎日弁当食ったのも


 昼休みにゲームしたのも


 放課後に男たちで恋バナしたのも


 俺の友人の1人が好きな人に告白して振られたのも



 全部この屋上での出来事だった。



 そんな屋上とも今日でお別れである。

 俺の手には卒業証書の入った黒い筒が硬く握り締められていた。



 さっきまではみんな3年間の感傷に浸りつつ、最後だからか今までで一番屋上で盛り上がっていた。

 しかし、まだ雪降る3月なので寒く、1人、また1人と校舎内へ戻っていった。



 ヒューーーーーッ



 冬の木枯が俺の体を吹いていく。


 さっき30分近く付き合ってくれていた最後の友人も寒さに耐えきれなかったのか、温もりを求めて校舎内へ戻ってしまった。

 今頃教室に戻ってコートでも羽織っているかもしれない。



(この寒さが気持ちいいのにな...)



 最後の屋上。

 胸の内から何か熱いものがこみ上げてきた。


 先程最後の1人が屋上から降りていったため、誰にも見られていないという安心からか、俺はそれを目から垂れ流した。


 目から流れる熱く、小さな滝は外気にさらされて、口から出る薄く白い呼気とともにその熱を失っていく。



(これからみんなと離れ離れになってしまう。)



 4月から全員大学での新生活が始まり、地元に残る奴は誰1人いない。早い奴だと明日には引っ越すと言っていた。

 毎日一緒にいたのが当たり前の日々が今日で終わってしまうのだ。


 その不安や悲しみが1人になったことにより、これまで3年間の記憶と共に一気に吐き出された...


 俺の記憶は頭の中でぐるぐると廻っていく。


 文化祭、球技大会、体育大会、修学旅行...


 この屋上以外で作ってきたアイツらとの思い出まで溢れてき始めた。



 俺はただ、1人きりで全てを流しきった。


 この学校での俺の記憶と決別するために。


 しばらく泣き続けた後、流石に長時間外気に当たり続けたため、身体の芯まで冷えてきたため、温もりを求めて俺も校舎内へ戻ろうとした。



(さよなら、俺の高校生活...)



 俺は立ち上がった。


 途端に身体が前に傾く。


 冷たい風が身体に吹き付ける。


 ()()()()()()()()()()()()()()()()




 正確には屋上には誰もいなかったはずなのに、何者かに両肩を突き飛ばされた直後、金網をすり抜けて屋上から落下している。



 俺の頭には走馬灯が浮かんでは消えていく。


 先程思い出していた記憶たちも一瞬で俺の中を駆け巡る。



 俺の人生、18年で終了なのか!?



(嫌だ、死にたくない!!)



 俺の高校生活とさっき決別したばかりなのに、なんですぐに人生とも決別しないといけないんだ!!




 嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!



 嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!



 浮け!浮け!浮け!浮け!



 浮け!浮け!浮け!浮け!






 ......






 俺の身体は地面から数センチのところで突如として()()()()()()()()()


「は、はあっ!?!?」



 訳がわからない。


 確かに浮かぶことを願ったとはいえ、

 本当に浮かぶとは思ってもみなかった。



 戸惑う俺をよそに、俺の足はゆっくりと地面に降りていった。



「あれっ、啓介!?

 先に降りてたのか?」



 俺が着地した直後、先程最後まで屋上で付き合ってくれていた友人がやって来た。



「あ、あぁ、そうだよ。」



 現実を受け入れられない俺は、ひとまずそう答えながら頭を冷やすことにした。



「いつの間に俺のこと追い抜いてったんだよ。」



「お、お前が降りたあと、やっぱ寒くて階段ダッシュしてな!」



 不思議がる友人の視線に若干どもりながらも自然な回答ができたはずだ。



「てか、おいっ、啓介!

 ちゃんと靴、履き替えて出て来いよーーー!

 上靴のまま出てくるとか最後まで笑い取ろうとしなくていいんだぜ!」



 友人が上靴姿の俺を見て吹き出す。



「あぁ、そうだったな。」



 先程の出来事は夢かもしれないと

 半分思っていたのだが、この履き替えてない上靴が夢でなかったと証明していた。



「早く行こーぜ!

 あいつら寒いからって先に近くのファミレスで待ってるってよ。」



「お、おうっ。

 あ、鞄とって靴履き替えてくるから先行っといてくれ。」


「オッケー!

 じゃあ、先行っとくな!

 あ、いつものとこな!!」



 友人は身体を暖めたいのか、校門へ向かって駆けて行った。行き先はいつも帰り道に寄ってたファミレスだろう。



 俺は自身に起きた出来事が夢でないことを確認し、戸惑いながらも靴箱の方へ歩いて行く。


(な、なんだったんださっきの...

 もしかして噂の都市伝説って本当のことなのか?)


 あまりの驚きから、屋上に人影が()()()()()()()ことに気づかずに...

なろうでの初投稿です!

マイペースにのんびりやりますが、

よろしくお願いいたします。

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