伝説の勇者はもよおした〜トイレの勇者様は今すぐ出したい!
「漏れる!」
勇者アルフレッドは焦っていた。
魔王を倒し、街への凱旋式がもう直ぐだというのに
トイレがみあたらないのである
確かに城はとても綺麗だ。
トイレも水洗だときいている。
女性にはパウダールームもあり、贅沢この上ない。
しかしそんなことはどうでもいい…
トイレがみあたらないのである…
「やばいやばいやばいぞー!」
焦りながらアルフレッドは早足になる。
もよおしたものは止まると漏れてしまうが早足になると何故か出ない。
それは魔王討伐で何度も経験したことだ。
沢山の魔物が出れば出るほど戦いはながくなり、もよおす可能性も高くなる。
そのたびにもらさないように早足で突っ切り何とかしたものだ。
「あああ…トイレはどこなんだ…」
視界がぐるぐる回り、脂汗もじわじわと出てくる。
トイレを我慢すればするほど頭の回転が異様に良くはなるが
いかんせん公衆トイレはみあたらない。
…いや!ある場所に思い当たるものが!
「ダンスホールだ!」
アルフレッドレッドは叫んで早足を更に早くしてダンスホールに駆け込んだ。
「…なん…だ…と!!!」
次の瞬間アルフレッドは絶望する
大便ならぬ大蛇のようにとぐろを巻いたトイレの列が目の前にあった。
皆顔を青ざめて並ぶ。
時にぷうっと我慢するかのような屁も聞こえて臭う。
「…男なら、諦めるか」
並ぼうとした時、一筋の光が刺す
それは、魔王を討伐したときの謁見した時の姫の言葉だ。
「何か困った事がありましたら…私…力になります」
これだあああああああ!!!!!
急げ!!!凱旋式はもうすぐだ!!!
間に合わないかもしれない!
しかし姫なら助けてくれるかもしれない!
頭の中は綺麗な姫の顔ともよおしたい気持ちが交差して、もはや何がなんだかわからなくなる。
急いで姫の部屋を開ける!
酷い形相のアルフレッドに、きゃあ!と姫は悲鳴を上げる。
「姫…助けてください」
姫はこくこくとうなずく
「…トイレを…貸してください…」
姫はクスクス笑って
どうぞと貸してくれた。
…命を…尊厳を救われた私は姫に深く感謝した。
後に姫から聞いた話だと、凱旋式の私はかっこよかったが、必死にトイレを探して姫に借りた話はもっと有名になり、公衆トイレの増設に繋がったそうだ。
そして貴族からは尊敬の念で言われる。
「トイレの勇者様」…と
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