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6049日  作者: サグマイア
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幽霊の肝試し

私達はイタルの家の仏壇に供えられたお菓子を食べながら、お昼のワイドショーを見てた。

「あのOL無理してんな。自分のことJKだと思ってんだろ絶対」

イタルが怖がって手を止める。私もかわいい服を着たかったって情念が漏れて伝わっちゃったみたいで、結構恥ずかしい。

「なんだよ。仏壇の水水道水かよ。俺の骨入れればミネラルウォーターになるか?」

「キモッ!冷蔵庫にあったコーラにしろよ!」

「人ん家の冷蔵庫覗くなよ!あとあれは妹の飲みかけだ。勝手に飲んだら祟られるぞ…」

ワイドショーが女子高生失踪事件の報道になった。地図が駅を出して、制服発見と報じている。

「無理無理無理!今の私裸ってこと!?」

イタルがこっちを見て、制服は消えてないことを教えてくれた。つまらなそうに。それにしても、学生証もケバい写真だな。

私はまだ家には行ってない。生きていれば喧嘩くらいできるけど、結果が結果だけに、合わせる顔がない。それと、制服に学生証。学校は、会いたい人もいるけど、叩く奴もいるんだろうな…

「スミレ!消えてる!消えてる!」

私の情念が学校へ行こうとしていた。慌てて戻ったけど、イタルも興味津々だった。イタルは整理されてない遺品を漁って、何かを発見した。

「上はパジャマだけど、下がデニムならバレないだろ。ジュニアサイズだけどな」

「パジャマで一緒に歩くなって言ったけどさ、なんか私が引率の先生みたいじゃん!くっそ同級生なのに老けて見える…」

「俺も実質小卒ってこと気にしてんだよ…」

お互い凹んだけど、イタルの高校生活の憧れもあって私達は学校へ行った。




もし生きていれば、皆が再会を喜んでくれたに違いないけど、教室はピリピリムードどころじゃなかった。

ユリが半ベソになって男子の喧嘩を止めている。ユリの彼氏のツバサが野球部ともめたらしい。

「シンジがスミレをジロジロ見てるのが悪いんだろ」

「お前謝れって言葉通じねぇのかよ!」

コウタがシンジを庇ってキレてる。ユリと代わってあげたい。クラスの女子の中で男子の喧嘩に割って入るなら私が一番適しているはずなのに、殺されて、このいざこざの原因になっちゃった。

「シンジの練習量はハンパないんだよ。飯島先輩が引退したらセカンドのレギュラーに」

「コウタ、そういう話じゃない」

殺された身から言わせてもらうけど、本当にそういう話じゃない。なんでアリバイの話からどっちが上か下かの話になるんだろう。男子って不思議。女子の喧嘩も怖いっちゃ怖いけど。

「うわぁ~シンジってバレンタインの義理チョコ本気にしてたんだ~。ちょっと引いたわぁ~」

隣でイタルが引いてた。確かに言い過ぎた。シンジみたいに、帰りをそっと待ってもらうのが一番ありがたい。でも、それには応じられない。



「イタル、興味ない?肝試し…」

「俺達死んでんのにか?…やろうぜ」

「じゃあ屋上で待ってよう。女子トイレとか更衣室すり抜けたらブッ殺すよ!私は友達を売る女じゃない」

「はい死にました~階段で行きま~す」

電話に介入できたように、電波系の扱いは割とできるから、屋上でネットニュースを閲覧しながら日暮れを待った。本当は掲示板も見たいけど、ツバサとシンジの喧嘩どころじゃない祭になってるんだろうな。女子が駆け引きしてたり、シンジに手を出せないからって弱い奴をストーカー呼ばわりしていじめてそう。

そして、一番叩かれてるのが私に違いない。心当たりは、言わせないで。




夜になって肝試しをはじめる。私もイタルもビビりまくりで、すり抜け合って面白い。

「トイレとかって、やっぱり仲間いるのかな?」

「友達売らないって言ってただろ?俺に一人で待てって言うのか?」

「怖がりすぎ!あんたにはワンコいるだろ?あれ…」

鈴の音がだんだん近付いてきた。

「おい犬!わかってるんだから出てこいよ!」

「もしかして、ワンコ食われて違うオバケが来てるとか…」

それは突然上からボトッと落ちてきて、二人して変な声を出した後に笑った。やっぱりワンコだった。

結局イタルが男子トイレに行って、虫に驚いてすぐに帰ってきたくらいだった。


そして一番怖かったのは、教室のひんやりとした空気。みんなの残留思念が飛び交ってた。

(ツバサが犯そうとして断られたから殺したっぽいよね)

(スミレの香水調べたらさ、結構な値段したんだよ)(うえ~おじさんでもいたのかな)

(シンジ見つけてやれよ!全裸死体らしいぜ)

(スミレってピアノとか書道できるくせにあんな見た目じゃん?きっと親と何かあって…)(犯人まさかの親説!?)

的を突いたり外したり。わかるのは、心配するふりして私で遊んでる外野が多いこと。

親しかった仲間は心配してくれてる。あんまり話さなかったけど、シンジも本気なんだね。

「スミレ、苦しいんだろ。もう行こう」

「さっきまで楽しかったのにな。心配させちゃったね」

二人で屋上に戻った。イタルも、私と同じことを気にしていた。

「いないもんだな。他の幽霊って。浮遊でも自縛でも、なんか感じ取れるかと思ったのに、結局は犬だけか」

「私もさ、情念が同じなら通じると思ってたけど、イタルもワンコも殺されたわけじゃないのに一緒にいるじゃん?命日だけじゃなくて、生きた時間も関係あるのかな」

「科学者は解明してくれそうにないしな。あと俺はスミレに会う前にトンネルで会ってるんだ。ただ、あれは夢の世界だったのかもしれない。顔も声もわからなかったから、魂ですらなかった気もする…」

もし誕生日が1日でもずれていたら、日付をまたいで殺されていたら、イタルとワンコだけ先に行って、私は一人で泣いてたのかな?イタルがいなかったらどれだけ寂しかったんだろう。でも、イタルに頼るほど、イタルを遠ざけたくなる。怖くなる。

ぞわぞわしてくる…

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