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一つの物語  作者: 世界の一つ
一つの物語〜奇跡編〜
99/112

奇跡編3

「貴様は……な、なぜ貴様が?!」


ディランは僕の姿を見て驚愕している。それはそうだろうな、死んだはずの男が目の前に立っているのだから。


「あいも変わらず女に手をあげるとは……やはり相当なバカみたいだな」


「な、なにぃ!!」


僕は手を合わせ魔法陣を作り、回復魔法を仲間たちに向かって放った


「さあ、手加減はしないぞ!」


「し、死に損ないめ!もう一度葬ってくれるわぁ!!」


一気に駆け出し間合いをつめてくるディランに、僕はそれを避けずに真正面から受け止めた。ディランはこれでもかと言うほどに槍で攻撃してきたが、僕はそれを躱してみせる。


と、それを見ていたユリナが立ち上がり、それと同時に転移してきたユリコちゃんが姿を見せた。


「リュウイチ!」

「お兄ちゃん!」


二人は僕の名を呼ぶと光に包まれ剣となって僕に向かって飛んできた。ディランの攻撃を躱しながら黒百合たちを掴み、2本の剣でディランの槍を弾き、距離をとった。


ミツキ達を傷つけた罪は重いぞ!

ナルミ流……!


「死ねぇ!!」


ディランが雄叫びをあげながら向かってくる


青竜光覇斬(せいりゅうこうはざん)!!」


僕はそんなディランの攻撃を躱すと同時に斬撃をくらわせた。奴の体を切り裂き、その断面から青い炎が舞い上がり、ディランの体を覆い尽くした。


「ぎゃああああ!熱い!熱いぃ!!イヤだぁ!!まだ死にたくないぃ!!リュウガ様ぁぁぁ!」


後悔するんだな


ディランは青い炎に焼かれ転げ回っている、僕は青い光を発している黒百合と白百合を握りしめ、どんどん弱っていくディランを見下ろした。


そして、こと切れたディランは消し炭となり散った。完全に粛正し終えたのを確認した僕は黒百合と白百合の柄を改めて軽く握った。


……どわっと!!


「リュウイチ!?本当に本当にリュウイチよね?!夢じゃないのよね!?」


「兄さん……!兄さん……兄さん……!!」


「りゅうくんだ!!ホントのホントにりゅうくんだぁ!!うわ〜ん!!」


く、苦しい……みぃ姉たちが一斉に僕に抱きついてきて、みんな涙を流して喜んでくれているみたいだ……今回だけは許してやるか

ふと見るとカイたちも駆け寄ってくるのが見えた。カイまで涙を流してくれている……これは貴重だ


「リュウイチ……!お前、生きてたんだな!お前ってやつは……不死身かよ!!このぉー!!」


「イテテ!お前までそんなに……!」


「兄貴ぃぃぃ!!やっぱり俺の兄貴は兄貴しかいないっすぅ!うおぉ!!」


あ、兄貴って言うな!と言うかカイ、首が痛いぞ!


「(この私たちの予知能力でさえ見えなかった未来をつくるなんて、本当にナルミ家には驚かされるわ……でもこれは悪くない……むしろとても嬉しいわ)」


「(……お兄ちゃん……本当に良かった……)」


し、心配かけたな、二人とも


「本当にあんたには常識ってものが通用しないわね、帰るなら帰るって言いなさいよね……ったく!」


「良かった……リュウイチ隊長が生きてた!良かったぁ……!」


「良かったね、みんな……私も嬉しいよ……!リュウイチ君、無事で本当に良かった!」


ミラー、キラ、ハク、お前たちも無事で良かったよ


「……あ……あの……」


「アカリちゃん……なんだ?」


「……い、いえ、なんでも……ヒック……ないです……ヒック……」


「……」


そうか……真実を知ってしまったんだな、今は素直になれないって感じか……前みたいに素直で明るい子になってくれれば良いんだが


「(貴方、分かるの?)」


ああ、お前たちの記憶が流れて来てるのを感じる。ユリナたちと共鳴しているからだろう。


「(なるほど……でもどうして?あんなに共鳴を試みたのに一向に通じなかったし、こんな未来見えなかったわよ?)」


それは多分僕が無意識の内に共鳴を遮断していたからだろう、記憶がなくなっている間、僕は僕でなくなっていたからな。


「(そうなの……もうダメかと思ったのよ?もう二度とそんな事しないでくれるかしら?)」


はいはい、気をつけるよ……ははは


「(……お兄ちゃんのイジワル……)」


ユリコちゃんもごめんな、以後気をつけるよ。


「あいてて……もう分かったから少し落ち着けお前ら、治癒術は施したが重傷だったんだぞ?少しは自分たちの心配をーー」

「リュウーーイチーー!!」


「み、みぃ姉!話を聞けって、おい!」


「兄さん……」


ん?


「おかえりなさい」

「おかえり!」

「おかえりなさい!」

「おかえりなさいませ!」


皆んな……


「ただいま」




ーー数十分前ーー



これは大賑わいだな

目の前にいる敵の大群を見て少々呆れた、モンスターやら何やらよくこんな狭い所に集まるよな。


「ここにいるのは雑魚共か、親玉は奥にいるみたいだな。突破するか」


「この数だぜ?ちょい無理があるだろ……でも何とかならないレベルじゃないかもしれない、オレがやる」


「ば、馬鹿な!一人でやるつもりか?!」


レッカは驚きながらそう言った、でもオレは至って冷静に言葉を続ける。


「ああ、これくらいならオレ一人でも何とかなる。相手はハイレベルのイレギュラーなんだから、早く手を打たないと大変な事になるかもしれないだろ?できれば二人で戦った方が良いけど、こいつらを放っておいた方が厄介だしな」


「しかし……っ!」


チッ……まだ話してる最中だというのにモンスター共が襲って来やがった。


……こいつら


「セツナ!」


人ならまだしもモンスターまでオレを狙ってやがる!レッカの方には見向きもしない、どういう事だ?


"今はーーだけをーーて!"


つぅ!

まただ、この声はさっきのミツキとかいう女の声?なんであいつの声が……でも、懐かしくなる……この感じは……


「セツナ!大丈夫か?やはり私も……」


「いや、大丈夫だコイツらはオレを狙ってやがる。これはチャンスだ、レッカは先に行ってくれ!コイツらはオレでなんとかするから!はあ!!」


モンスターやイレギュラーを斬りつけながらレッカにそう言うと、彼女は少し考えたのちオレに向き直った


「分かった、その代わり決して死ぬなよ!お前の事を失いたくはない、だからお前の事をいつまでも待ってるからな!」


"リュウイチさんの事を、私はいつまでも待っています"


っ!?


「良いな!?セツナ!!」


「あ、ああ!分かった!」


リュウイチって、オレの名前か?

レッカの呼び掛けに応えつつ、モンスターやらを斬るオレは頭の中でそう考えていた。


オレを待っている……確かあいつは……あいつは……


"ナルミ・リュウイチィィ!!"


つっ!なんだ、頭の中で叫び声みたいなものが響いた……!ナルミ・リュウイチってオレの事……なんだよな?


「ナルミ・リュウイチさん?それがあなたのお名前なんですか?素敵なお名前ですね!私の名前はーー」


!?


「ヒ……メ……カ……?」


ヒメカ……そうだ!ヒメカだ!懐かしい響きに懐かしい声、懐かしすぎて涙が出てきてしまった……なぜ忘れてしまっていたんだ、でも思い出せて良かった……!もう二度と忘れないからな、ヒメカ!


「グオオオオオオオ!」


うるさいモンスター共だ、感傷に浸る暇もないな。仕方ない、さっさと終わらせるか

僕は付けていた仮面を投げ捨てモンスター達に斬りかかった


「はああっ!!」


……ヒメカ、お前のおかげで自分が何者なのか思い出す事ができた。今でも尚お前は僕の中の希望であり大切な存在だ……ありがとう……!


「や、やっぱりあいつはリュウイチだ!そんな……あいつは死んだはずなのに!」


「フン、リュウガの因子を植え付けられたモンスター達より鈍いとはな。まあ、仮面を被っていたからだと言い訳もできるから良かったじゃないか」


「だ、黙れ!この数だいくら貴様でもーー」

「ぎゃああああ!!」


僕は斬撃でモンスター達の大半を葬り、その圧倒的戦力差を見せつけた。


「数がなんだって?言っておくが、僕を消したければ世界人口の半数分くらいの人数でかかってきた方が良いぞ。そうじゃないと話にならない、無駄だ」


前にも感じた意識の暴風、この感覚はリュウガによるものだったのか。モンスターにリュウガの因子を植え付け、意思を持つ生物兵器に変化させた……そんな所か。感覚で分かる、トモカちゃんの精神に異常をきたしてるのもリュウガだ。あいつの双子である僕だからそうだと断定できるのかもしれない。


……という事は、僕の中にもリュウガの因子が僅かながらにあるのか?それともナルミ家の血族による感覚なんだろうか?


「(絶対皆んなを死なせたりはしない……)」


っ!


この声はミツキか?

急がないとあいつらがヤバイ!


「死ねぇぇぇ!」


「邪魔だ!どけぇ!!」


ズバッ!!


ザシュ!!


ドガァァァァァン!!


「だから言っただろう、無駄だってな」


「ば、馬鹿な……リュウガ様……がはっ」


あいつの何が良いんだか……そんな事より先を急がなければ!

僕は洞窟の奥へと走り始めた。


間に合う



必ず間に合う!



ミツキ、みんな!



「(リュウイチ……!)」



「(兄さん……)」



「(りゅうくん……)」



「(リュウイチさん……)」



あれは……!ディランか?

ミツキを掴みあげている。あいつ!!


絶対に許さん!!




ガッ!



僕はミツキを掴みあげていたディランの顔面に空中回し蹴りをくらわせ、その愚かな行為をやめさせた


間に合った


皆んな相当な重傷のようだがなんとかならないレベルじゃない、今の僕なら回復できる!


「長い間待たせたな……みぃ姉」


さあ……行くぞ!




ミツキ

「一つの物語小話劇場!久しぶりね、リュウイチ!」


リュウイチ

「そうだな、僕が助けなかったらこんな事も言えなかったと考えると感慨深いな」


ミツキ

「またそんな事言って、照れてるのね分かるわよ!はぁ……またこんなふうにリュウイチと話せるなんて思わなかったわ。本当に懐かしい……」


リュウイチ

「次回、一つの物語〜奇跡編4〜……ここでの会話が懐かしいあまり涙流してるし、中々可愛いやつじゃないか」


ミツキ

「ここで会話が懐かしいんじゃないわよ、この鈍感!」


リュウイチ

「え?」




次回掲載予定日3月24日

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