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一つの物語  作者: 世界の一つ
一つの物語〜真実編・戦士たちの帰還編〜
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真実編2

ここがマスタールーム。この施設にあった資料によると、ここの責任者が出入りしていた部屋だったらしい。部屋の中はリュウイチの執務室より少し狭いくらいの空間だけど、置いてある物は何かを培養するためのカプセルだとか研究に使うような物ばかりで、部屋の薄暗さもあいあまって不気味さを感じさせる。


「真逆ね、リュウイチの執務室とは」


私の思考を読み取ったらしいユリナが私にそう呟くように言う。最初は戸惑いがなかったと言えば嘘になる……でも今ではすっかり慣れてしまってむしろそれが当たり前だと思えている私がいる。それだけ彼女と過ごしてきた日々が永いという事かしら


「ええ、居心地も悪いし、さっさと調査を終わらせましょう」


本当に真逆だわ、彼の執務室と比べるのは自分自身どうかと思うけど、正にそれが対象的だった。

とにかく早めに調査を終わらせよう、こんな所に長居したくないのは本心だから。


「……過去視をしてみたけど、ヤナミ家の者がここで研究に携わっていたのは、どうやら間違い無いみたい。リジェネレーションを完成させるに至った研究の成果と、リュウガについての何かを記された物がここにあるのは確実よ」


「そいつがどこにあるのかまでは分からないのか?こう荒れてたら探すのもの大変そうだぜ?」


「あら?随分な言い方ね。ユリナの力をあてにしすぎじゃない?」


「うっ……確かに……すまない、ユリナ」


ユマリの痛烈な指摘にカイは素直に謝ると、ユリナはクスクスと笑いながら頷いて許した。昔のユリナだったらこんな風に笑って許せただろうか?彼女の中で色んな事の捉え方が変わって来ているのかもしれない。


「(そうね、昔は忌み嫌っていた力だけど、今はそこまで不快に思わないわ。彼の……リュウイチの言っていたようにこれも個性だと割り切れて来てるのかもしれない……不思議ね)」


ユリナ……そうね、彼の言う通りあなたのその能力も個性の一つにすぎない。嫌悪されたりしたりする必要なんてないのよ。


そうよね、リュウイチ……?


「フフ……リジェネレーションについてのデータはそこで、リュウガについての"何か"が記されている資料はあそこよ」


「ありがとうございます、ユリナさん!じゃあ僕はリジェネレーションについてのデータを探します!えっと、ここら辺かな?」


「私はリュウガについての資料を探すわ……あの辺ね」



ーー数分後ーー



「とりあえず、リジェネレーションについてのデータもリュウガについての資料も無事入手できたな。あとはこれらを確認するだけか……しかし本当に良いのか?私は紅でお前たちの敵なんだぞ。極秘データをこちらに流して良いのか?」


「正直あなたの事は嫌いよ。でも兄さんが最後まで敵と判断しなかった以上、私はあなた達を敵視するつもりはないわ」


「あたしもあんた達と馴れ合いはしない。でもあんた達はリュウガサイドじゃないし、りゅうくんが遺した思いをくみたい……だから今は勝手に見れば?その代わりあとで一緒にホーリーヘヴンまで来てもらうけど……良いよね?」


レッカの言葉にユマリとサツキがそう言うと、彼女は一呼吸置いて「分かった」と短く返答した。レッカなりに何かを決意したのかもしれない。それが何なのかは分からない、最後までしっかり監視しておかないと。


「……話しは決まったか?んじゃ、まずはリジェネレーションについてのデータから行くぜ。こいつは二千年前の文字だな……リジェネレーション計画、これは全人類と世界の希望を繋ぐためのプロジェクトだ。ナルミ家に代々受け継がれている天地聖創の力、一見神の如き力に見えるが見方を変えると悪魔の様な力とも言える。しかしナルミ家はこの力を悪用することはないと私は断言できる。それは彼らを信じているからだ。何故なら彼らは自分たちの身を顧みず、世界の悪と言える者たちを粛正してきた。そして弱き者たちに希望を与えてくれた。そんな彼らを……リュウイチ君たちを私は信じている」


リュウイチの名前……!!やっぱり本当に二千年前の人だったのね、なんだかそれを再確認したみたいな気分だわ……


「しかし、天地聖創の力はリュウガの手に渡ってしまった。彼は永い眠りにつき、再び目覚めた時はこの世界の理、そしてこの世界に住むあらゆる生命体に何かしらの影響を及ぼすであろう。それに対抗するためにこのリジェネレーション計画を何としてでも成功させなくてはならなかった。そしてそれはついに完成した。瀕死の重症を負っていたリュウイチ君をそのままの肉体で保存するのは当然できない。だから肉体レベルを下げ、傷つく前の身体に戻す必要があった、肉体レベルを下げる事と再生能力の向上を実現させる、それがリジェネレーションだ」


「リジェネレーション……つまり再生ね」


「リュウガに対抗できるのは同じ細胞レベル有しているリュウイチ君しかいない、そしてその力になってくれるであろうジョン、カイ、レイ、アキト、この4人もリジェネレーションを使用し、リュウイチ君のサポートをしてもらう事となった。メモリーのナノマシンを抽出し、保存、そしてリジェネレーションした後そのメモリーは本人たちへ引き継がれる。こうしてリジェネレーションが完全なものとなった。この計画が完成したのはこの研究に携わってくれた皆のおかげだ、しかし彼らはリジェネレーションをしないと言った。世界の理を無視してしまう事になるからと……しかしそれでもこの計画を成功させ、実行させる必要があった。例え世界の摂理に反するものだと言われても、自分たちのやるべき事を成すためだと、リュウイチ君達は決意していたからだ。世界の命運を彼らに託してしまうようで本当に心が痛む……しかし彼は言った『約束を果たす』と……それはきっと彼女との約束の事であろう」


……


「リジェネレーションは完成したが、この研究は新しく組織されたホーリーヘヴンとナルミ家のもの達に全てを託す。願わくば、二度とリジェネレーションを使う事がない事を願う。リジェネレーション計画最高責任者、アスマ・ヤナミ……ヤナミってこれ遺したのユリナの御先祖さんだったのか!?」


「その様ね……私も中身まで過去視しなかったから分からなかったわ……」


リュウイチを助けてくれたのはヤナミの人だった、それを知ったユリナは驚いているみたい。だってヤナミ家と言ったら、ずっとナルミ家を憎んでいるものだと私たちは刷り込まれてきたから……でも少し嬉しい、ヤナミ家の人でもユリナたち以外にリュウイチの事を良く思ってくれていた人がいてくれた事が……ありがとうございます、アスマさん。


「じゃあ、そろそろこちらのリュウガについての資料の方を確認しましょう。これにリュウガが自ら率先してヤナミ家を滅ぼそうとしたきっかけが記されているはず……これも二千年前の文字ね」


「ユマリ、あなたもその文字が読めるの?」


「大体のものは幼い頃から習ってたから……じゃあ、読むわよ……私は知ってしまった、ナルミ家の……リュウガの秘密を!兄であるアスマはリュウイチたちを信じているようだが、私は違う!あのおぞましい力は世界の破滅と我々の死を意味する。

このままでは私たちの命が危うい!

リュウガの秘密、それは本来の天地聖創を継承するのはリュウガではなく、双子の弟のリュウイチだったという事。そして、その権利を強引に自分のものとした事……リュウガが兄さんから力を強奪した?!」


天地聖創が元々リュウイチの力だったなんて……でも、一体どうやってリュウガはその力を得たのかしら!?


「まだ続きがある……能力を継承する儀式の際、赤ん坊の頃から既に意志をもっていたリュウガはリュウイチになりすまし、彼の代わりに儀式を受け、初代能力者の遺伝子を体内に取り込み、以来自分の力としてその力を振るってきた。

そして儀式終了後、関係者を皆殺しにしたという……いつかヤナミの血を引く者がこれを読み対策を企てる事を切に願う!筆者ヤナミ・ムラクモ……これが兄さんとリュウガの秘密……リュウガはこれを隠すためにヤナミ家の者を惨殺してきたのね」


リュウイチはその事を一切知っているような素振りは見せていなかった、赤ん坊の頃の事だもの、知らなくて当然よね……でもこれは確かにリュウガにとっては汚点となる隠しておきたい事実。あいつがあんな性格悪いなんて、リュウイチがリュウガみたいにならなくて良かったわ……


「この事実のために、私たちヤナミ家は古くからリュウガに虐殺を受けていたのね……」


「あの、アスマさんもムラクモさんももしかして……」


「ええ、リュウガによって殺害されたみたい、彼らの過去を見たわ……ここの研究員たちもリュウガの送り込んだモンスターや刺客たちによって殺害されたみたいね」


なんて奴なの!やるなら徹底的にって感じね


「……これであたしたちは晴れてリュウガたちから狙われる事になったわけだね、きっとあたしたちがこうしてここにいる事もリュウガは知ってるんだろうし、もしかしたらさっきの魔物もリュウガが送り込んできたものかもしれないね」


「ほお、中々勘が鋭い女だな」


!?

こいつは!?


「私の感知能力でも察知できなかった……こいつはリュウガの手下って事になるわ」


「研究所ごと破壊するよう仰せつかったいたのだが、中が騒がしいと少し様子を見に来たのだが……なるほど、貴様らだったとはな」


「……あんたはガラド!!粛正したはずなのにどうして!?」


ありえない、あの時リュウイチたちと完全に息の根を止めたはず、それなのに一体どうしてこいつが目の前に立っているの!?


「……イレギュラーか?」


「……ええ、前に兄さんたちと粛正したはずのイレギュラーよ。仮に生きてたとしても重症のはず……それなのに」


レッカは剣を構えながら質問すると、ユマリが静かにそう答えた。穏やかな口調だが、表情を変えないあの子からは何も読み取れない。


「フフッ!どうやら貴様らは知る必要の無いものを知ったようだな。我がここへ送り込まれてきたのは不要なものの処分、残念だが、貴様らにはここで散ってもらうぞ」


「みんな!気をつけて、前とは雰囲気が違うわ!」


「それに体格も前よりもっとごつくなってる気がする……やべぇかもな、こりゃぁ!」


必ず勝つ!勝ってリュウガを粛正するんだ!

リュウイチ、お願い、力を貸して!!






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