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一つの物語  作者: 世界の一つ
一つの物語〜真実編・戦士たちの帰還編〜
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真実編

ーー2月13日・PM16時過ぎーー


「あなたまでついて来るなんて不愉快だわ」


「なんとでも思え、私は私の責務を果たしたいだけだ。だがこの先はセナミ殿の言うように危険な場所、人手が多い方が良かろう」


ユマリのあからさまな嫌味にレッカは淡々とそう答えた。


「……あんたの責務ってなにさ」


「……リュウイチ……あの男が成し遂げようとした理想を実現する事だ」


ーー!!


「あんたなんかにリュウイチの何が分かるの!?」


静寂な森の中で私の怒鳴り声が響き渡る。

そんな私の肩に手をやり、カイは無言で首を横に振った。


「……最もだ。しかしそれが今私が一番しなければならん事なのだ」


レッカの言葉を聞き、私は唇を噛みしめ、再び歩き出す。


"こんな所で怒鳴っていても仕方ないだろう、先を急ぐぞ"


リュウイチにそう言われた気がした……けど彼はここには居ない。居ないのよ……!

こんな風に自分に言い聞かせるようにするのは本当に精神力を削るわね……彼がいなくなって以来、私はずっとこういう問答等を繰り返していた。

本当に最低な気分ね、自分がどれだけ彼に依存していたのかよく分かる。それと同時にそれだけ彼を苦しませたり悩ませていたんじゃないかと思うと複雑な気分になる。ごめんなさい、リュウイチ


「(……彼は悩んでいたけど、苦しんではいなかったわ。"やれやれ"という感じの時もあれば、あなた達のことを傷つけないようにするにはどうするべきかって考えているときもあった……これらをどう捉えるかはあなた次第よ)」


ユリナ……?

そう、彼がそんな事を……


「こうしてあなたに答えを教えるのは、今は俯かないでほしいからよ。力が必要なの……お互いにね」


「ん?二人ともどうしたんだ?」


「なんでもないわ……ええ、そうね。皆で未来を紡いでいきましょう」


「ええ」と、ユリナは頷いて見せた。カイはなんの事か分からず疑問の表情を浮かべてるけど、ここは女同士の秘密にしておきましょう。


「あ、着いたみたいですよ!ここがセナミ様の仰っていた再生計画の研究所跡みたいですね。すっかり朽ち果てているみたいだ……それに魔物の気配もある。気を抜かずに進んで行きましょう!」


「キラ君に賛成。マップをインプットしたから、あたしは四階から三階を調べる。何か見つけたら連絡し合おう」


サツキからマップ情報を転送され、私はそれを確認する。


「じゃあ、サツキとカイは四階と三階を。私とユマリと……レッカは一階と二階を。ユリナとキラは地下をお願い」


「いいだろう」


ふん……ちょっと貧乏くじ引いた気分だけど仕方ない。


「それじゃあ、皆気をつけてね……散開!」


再生計画研究所。リュウイチたちがリジェネレーションする事ができたきっかけを研究していた跡地、それとは別にリュウガについて何か記された機密情報があると、おじい様は言っていた。

ユリナの一族を壊滅に至らしめるほどの情報がこの中に……一体何なのかしら?


「ミツキ、お前は私を恨んでいないのか?」


「……あなたを行動不能にしたのは私だもの、間接的にリュウイチを死なせた原因を作ってしまった私にも十分責任がある。あなただけを責めるつもりはーー」


「あの時、私は既に傷は癒えていた」


ーー!?


「……あなたも治癒術を使えるのね?」


「そうだ、上位治癒術も使える。それなのに私はリュウイチに縋り、あいつの足枷となった」


「……っ!ここであなたと争うつもりはないわ……今はリュウガの機密情報を手に入れる事が最優先、彼ならきっとそう言うはずよ」


「そうね、兄さんならそう言うわ。大事なのは別にある、それを見失ってしまってはダメよ、ミツキ」


分かってる。

私はそう返事をして先に進む、本当ならここでレッカと一戦交えたいくらいだけど、そんな事をしている場合じゃないくらい私にでもわかる。

リュウイチを失う大きな元凶となったリュウガの討伐、それが今の私の優先すべき事なんだから。


「……そうか。ならばもう何も言うまい……だが一言だけ言わせてくれ……すまなかった」


「謝られたところで私の気持ちは晴れないわ、それより今は情報の捜索に手を貸しなさい」


「……あの男は、良い仲間たちを持ったのだな」


「恋人よ」

「恋人よ」


私とユマリが同時にそう言うと、私はユマリの方を少し睨んだ。向こうも同じ目付きでこちらを見ている。考えている事は同じみたいね……


「フッ……過大評価しすぎたかな?」


ふん!勝手に言ってなさい!

……ん?

ふととある部屋の中にあるテーブルに目をやると鍵があった。どこの部屋の鍵なのかしら?


「鍵だわ、えっと……マスタールームキー……って書いてあるみたいよ」


「マスタールーム?今調べてみるわ……どうやら地下にある部屋みたいね、もう少し手がかりが無いか調べてから皆で行ってみましょう」


「そうだな、鍵はミツキが保管していろ。その方が安心だろう」


……仲間でもない私に保管させるなんて余裕と言うか、信頼されているのかしら?それでもこの人を見る目は変わらないけど……


ーー



ーー


ーー20分後ーー


「さっきの鍵以外、これと言ったものはないわね」


「ええ、みんなに連絡して地下で合流しましょう。こちらユマリ、全員聞こえてるかしら?」


『こちらカイ、聞こえてるぜ』


『こちらキラ、感度良好だよ。何かあったのかい?』


どうやらみんな無事みたいね。


「みんな無事ね、私たちはマスタールームキーという鍵を手に入れたのだけれど、どうやらそれは地下にあるみたい。これから地下のマスタールーム前で合流しましょう」


『分かった、じゃあ俺達もそっちに向かう!』


『あぁ、あの鍵のかかっていた部屋だね。分かったよ、皆さんお気をつけて!』


二人と通信を終えたユマリは私を見ながら頷いて地下へと歩き出した。それに続いて私とレッカも後に続く。


ーー


ーー


それから数分後、私たちは全員合流し、マスタールームとう名の部屋に鍵を差し込む。少し鈍く錆びたようなガチャっという音が鳴り、私は施錠が外れたのを確認し扉を開ける……と、その瞬間、何かの気配と殺気を感じその方に目を向けた。


「危ない!!」


そう叫ぶようなキラの声がすると飛び込んできて私たちはその場で伏せるように倒れ込む。


一瞬私の目に映ったのは壁から突き出してきた何かの腕だった……一体何がどうなってるの!?


「みんな、大丈夫か!?類人タイプのモンスターみたいだ、気をつけろ!」


「さっきまでこんなモンスター居なかったのに……とにかく、こいつを先に始末しないと先へは行けそうにないわね」


「うん……っ!どうやらこいつだけじゃないみたい」


サツキがそう言うと、サツキの目線の先にはウルフタイプのモンスターが数匹駆け寄って来ていた。さっきの音でモンスターたちが集まって来たのかもしれない。


「類人タイプのモンスターはカイとキラとサツキ、それとユマリで、他は私とウルフタイプモンスターたちをそれぞれ対処しましょう!」


「あいよ!」

「分かりました!」


「(ユリナ、援護をお願い!)」


「(分かったわ)」


「さあ、行くわよ!!」


私たちは一斉にモンスターたちに駆け寄り、各々撃破していった。


ーー


ーー


「ふぅ……なんとかウルフタイプのモンスターは排除できたわね、サツキたちは!?」


なっ!?さっきより一体増えてる!


「加勢に行きま……その必要はなさそうね」


ガッ!!


ズドーン!!


サツキがモンスターを殴り飛ばし壁にめり込ませた。

やっぱり数多くのミッションをコンプリートしてきただけあってだいぷ強くなってるわね。それともまさかサツキもバーサーカーの力を……?


「よし、モンスターは今ので最後みたいだな。みんな大丈夫みたいだし、また群がってくるとやっかいだ、さっさと先へ進もうぜ」


「そうですね、僕が先導します……皆さん、準備は?」


「いつでも」


「行きますよ」と、キラは合図して扉をを開けた。


そして私たちはそこで、信じられない真実を知る事となる……

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