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一つの物語  作者: 世界の一つ
一つの物語〜悪夢編〜
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悪夢・キラ編

ーー三日前ーー


「な、なんだ……あれは……!?」


「あれは……レギュレーション!?何故あんな物がここに、あれは賢者達やマスター権限でしか召喚できないはず! っ!!まさかあれもリュウガが!?」


レギュレーション?

まさか、あの巨大な機械は破壊兵器なのか!?

天空を覆い尽くしているんじゃないかと思うくらいの巨大兵器、あんなものが発動したらひとたまりもないじゃないか!


「聞いてはいたけど、どれだけ反則的な能力なのよ!あんなバカデカい兵器まで易々と召喚するなんて!」


「フフ……ハハハハハハ!!この紅達はただの囮、我々の本当の目的はキラ!貴様らをおびき寄せ一網打尽にする事だ!さぁ!!終焉の時だぁ!!ハッハッハハッハッハ!!」


そんな、こんな大勢の人達を犠牲にするなんて……狂ってる!!


『急げ!この場からなるべく遠くへ離れるんだ!!なぜあんな物がここにあるのかは分からないが、それを考えてる暇もない!レイ、紅と隊員たちと共に時空間魔法でなるべく遠くへ飛べ!』


リュウイチ隊長の呼びかけにハッとすると同時に、レイさんが空間魔法を発動させ、僕たちを安全圏まで転移させた。


「レイさん、まだリュウイチ隊長達が!!」


「僕が向かいます!キラさんたちはここで待機をーー」

レイさんがそこまで言いかけると突然目の前が真っ白になり、それとほぼ同時に大きな地鳴りと凄まじい突風が僕たちを襲った


ゴゴゴゴゴッ!!


うわっ!!

こ、これはレギュレーションが発動されたのか!?


「くっ!しまった、遅かったか!!」


「リュウイチ達は!?本部、こちらミラー!リュウイチたちのバイタルサインはどうなってるの!?」


リュウイチ隊長は……みんなは!?


『リュウイチ様のバイタルサインは……完全に沈黙……して……います……うぅ……!』


そ、そんな……嘘だ!!

そんな事信じられない!きっと強大なエネルギー波で障害が発生してるんだ!!


「き、キラ!!」


「このままここでじっとなんてしてられない!僕もリュウイチ隊長達の様子を見てくる!レイさん、お願いします!」


「……分かりました、行きましょう!」


渋々了承してくれたレイさんと共に僕たちはリュウイチ隊長達の元へと移動した……そして……




ーー




ーー




ーー





ーー




ーー三日後、現在ーー



隊長の居ない執務室に僕を含めいつもの仲間達が集っていた。でもその中に明るさは全くない、誰も一言も話さずただここに居る。帰らぬ人を待つように……


『第48地区で時空間異常とモンスターの反応を探知、各隊は出撃待機せよ。繰り返すーー』


警報……イレギュラーかな?


「あたしが行く」


そう短く言って立ち上がったのはサツキさんだった。リュウイチ隊長が死亡認定されて以来、サツキさんもまた明るさを失っていた。


一度サツキさんに尋ねた事があったけど「大丈夫」と一言だけ返された……当然僕はその返事に納得なんてしていない、今のサツキさんは今までと明らかに違っている。


でもそれ以上訊く事はできなかった


「私も」


サツキさんに続きミツキさんも立ち上がり執務室を出ていった。残った僕たちはただ二人の後ろ姿を見送る事しかできず、部屋は再び沈黙が訪れる。


ミツキさんたち二人が今どんな心境なのか追求しなくても分かる、きっと二人とも……いや、僕を含めてここに居る人達の殆どが同じ気持ちなんだと思う。


それは、怒りと悲しみと復讐心


きっとこれらの気持ちが渦巻いているのだろう


……絶対に許さないぞ、ジュン!ミソラ!それに、リュウガ!


「よう!……って暗い空気だなぁ、元気出していこうぜ!」


唐突に部屋に入室し大きな声をあげる……その人物は


「アキトさん?なぜここに!?」


驚きのあまりついそう大きな声が出てしまった。


「リュウイチが死んだって聞いてな。で、お前らが相当凹んでるだろうなぁと思って遊びに来てやったんだ、嬉しいだろう?」


「アキト、今あなたの相手をする気分じゃないの、消えてちょうだい」


「ユマリは冷たいねぇ……そんなんじゃ新しい恋人みつかんないじゃねえか?」


「余計なお世話よ、私が愛してるのは兄さんだけだもの」


「そうかい……と言うかよ、お前らいつまでもしみったれてんなよ。あいつが消えた事は俺だって悲しいし辛いさ。けどあいつならこう言うだろう?前を向いて進めって、悲しみなんかに負けるなってな」


アキトさんの言うことは正しい、けど……

辺りを見渡すと、やはり僕を含めたみんなの表情は暗いままだ。


……


「やれやれ、やっぱすぐには無理か……じゃあ、こう言えば少しはやる気が出るか?俺は今リュウガの側についている。そしてレギュレーションの在処をリュウガ達にリークしたのもこの俺だ」


……


なんだって?


今、アキトさんはなんて言ったんだ?アキトさんの言葉を聞いて、僕は呆気にとられてしまった


「……っ!!」


「っぶねぇ、流石に早いな……ユマリ」


「動かないで下さい!できればリュウイチ様のご兄弟を撃ちたくありません、大人しく投降して下さい」


ユマリさんが飛びかかるとほぼ同時にアンナさんが背後から魔銃をアキトさんの後頭部めがけて突き出した。


そして、僕は……

僕も無意識の内に魔銃を抜き、アキトさんに向けていた……


まだ状況を飲み込めないでいる、だけど今のアキトさんは明確な敵だ。


「よせよせ、お前らが束になって来ようと俺には勝てないぜ。けどまあ良い反応だ、俺が思っていた以上にお前らはあいつの事を大切に思ってくれていたみたいだな」


「アキトさん、何故わざわざそんな事を教えてくれたんですか?アキトさんからすれば、今は此処は敵陣なのに……!」


「ん〜まああれだ、リュウイチ曰く憎しみのはけ口を作るってやつだ。あいつ、結局最期までアカリとか言う子のはけ口になってやってたんだろう?俺もそうしてみようかなぁって思っただけさ」


悪戯そうに笑うアキトさん、しかし下手をすれば自分は死んでいたかもしれない。それなのに敢えて自分が敵だと伝える事はかなり大きな決断のはずだ……もしかして、アキトさんは


「あんた、そんな事言ってここから逃げられると思っているのかしら?あんたが敵だと分かった以上、簡単に帰してあげることはできないわよ」


「はは、ミラーは相変わらず怖いなぁ。でも残念ながら簡単に帰させてもらうぜ、今はまだ死んでやる気はないからな。そん時が来たら、また会いに来るよ!それまで……またな」


そう言った次の瞬間、僅かな間にユマリさんとアンナさんを床に叩きつけて空間魔法らしきものを発動させ消えてしまった。


……早い、あの二人をいとも簡単に……


「ユマリ!アンナ!大丈夫か?!」


「は、はい……でも!」


「逃げられた……簡単に……!」


二人に駆け寄るカイさん

そして、ユマリさんもアンナさんも怒りに満ちた表情をしている。


……


っ!?


不意に魔銃を握っていた手に暖かい温もりが触れた。


ミラー?


「もう敵はいないわ、銃を降ろしなさい」


「あ、う、うん……」


「……ねえ、ちょっと飲み物買いに行きましょう。ほら早く!……レイ、アキトの件はあんたから報告しておいてね」


「うわっ!ちょ、ちょっとミラー!そんなに強く引っ張らなくても……!」


強引に僕の手を引っ張り執務室を出た。


自販機の前まで来て、周りを見渡すミラー……一体何を見ているんだろう?


「キラ、あなたちょっと固執し過ぎじゃない?」


え?固執?


「あなたがリュウイチを慕っていた事は知ってるけど、復讐心だけに身を任せたらそれこそリュウイチに顔向けできないんじゃないかしら」


「……その事だけじゃないんだ、リュウイチ隊長を死に追いやった者達の一人はジュン。そのジュンは……僕の遠い親戚なんだよ。だから親族として僕は……」


そう……今度は逃がさない

必ずリュウイチ隊長の仇をとるんだ!


「っ!?……そう……でもだからってあなただけの責任じゃないでしょう?」


「でも!それでも、僕の家族が犯してしまった事だから僕にも責任がある。家族として僕が止めないと!」


「はぁ、そういう所もリュウイチにそっくりね、なにもそんな所まで見習わなくても良かったのに……あのね、少しは周りを頼りなさいよ!私がここへ戻って来たのは司令が出ただけじゃない、あなたがいたから!それなのに、そんな身を削るような事したら私だって傷つくわよ!」


ミラー……


「リュウイチが殺されたのは私だって辛い、古くからの仲間がいなくなったんだから……けどだからこそ私たちは協力し合わないといけない時でしょう?大切な事を見失わないで!」


大切な事……



"お前も大切なものを失わないようにしろ、一人じゃ無理だと思った時は仲間を頼れ……まあ、気が向いたら僕も手伝ってやる"


「……ミラー、僕はジュンや他のイレギュラー達を粛正してみんなを守りたい。そしてリュウイチ隊長の仇も討ちたい!お願いだ、君の力も貸してほしい!」


「キラ……分かったわ、私も手伝ってあげる。その代わり、キラのくせにもう強がるんじゃないわよ!」


「うん!」


ミラーは少し照れくさそうに顔を赤らめながら快諾してくれた。

大切なものを失わないために大切な人たちと協力し合う。リュウイチ隊長、これで良いんですよね?



僕はジュン達を粛正する!もうこれ以上、大切な人を失わないために!!




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