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一つの物語  作者: 世界の一つ
一つの物語〜悪夢編〜
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悪夢・サツキ編

「……あ、りゅうくんのバイク……」


"お前のバイクはそっちだろ、さっさと自分のバイクに乗れ"


さっき警備隊の人達が回収してきたりゅうくんのバイク……このバイクどうなるんだろう?

廃棄処分にはならないだろうけど


……あ、そうだ……ミナトちゃんにりゅうくんの事言わないと……


りゅうくんは……りゅうくんは……うっうぅっ!


どうして、こんな事に……あんなもの見せられたら信じちゃうじゃん……!


そう、あの時マスターやユリナちゃんに言われた事を信じたくなくて証拠を見せろと訴えたら、みぃ姉たちが見つけた右腕と、りゅうくんの使っていた魔銃の一部を……


あたしはそれを見て絶句した。

所々こげていたけど、あれは間違えなくりゅうくんの着ていたジャケットの一部だった……


「サツキ……?」


……っ!

不意に、みぃ姉が声をかけてきてハッとした。みぃ姉の瞼は赤く腫れている、さっきまでずっと大泣きしていたから……あたしと一緒に……きっと自分も同じ顔をしてるのかも……


「ごめん……行こっか……」


「ええ……あ、ユマリ。どうしてここに?」


「……兄さんのバイク、私が兄さんの家に届ける事になったから……」


ユマりんが……?


「兄さんの荷物を自宅に届けるって、さっきマスターに頼んだの……」


「そっか……じゃあお願いね……」


「……」


ユマりんは黙って頷き、りゅうくんのバイクで帰宅した……

あたしも行こう、ユマりんだけに任せちゃ悪いし……


「サツキ、また後でね……私もミナトちゃんの様子が気になるから」


やっぱみぃ姉も同じ事考えてたんだ。


「うん、また後でね」


''また後でな"


……りゅうくんの事を思い出し、また涙が溢れてきた。あたしはそれを隠すようにヘルメットを被り、エンジンをかけた。


……



……



……同じ道なのに、こんなに長かったっけ?

帰り道がいつもより長く感じ、何となく辺りを見渡してみる……同じ街並み、同じ場所、同じ筈なのに同じじゃない……りゅうくんがいないだけでこんなにも違うものなんだ……


一人で帰ることもあるけど、今はそれとは何か違う……ホントに独りになった気がする



……



……



……



りゅうくんの家……当然だけど、りゅうくんの部屋には明かりがついてない


そんな風景が、物悲しく感じる


ユマりんは……あ、ちょうど着いたみたい、みぃ姉も一緒だ


まだ姿は見えていないけど、バイクのエンジン音で何となく分かる。りゅうくん好みのエンジン音……だったよね……でも、見えてきたりゅうくんのバイクに乗っているのは違う人


「おかえりなさい、お兄ちゃん……あれ……どうしてお兄ちゃんのバイクにユマリさんが……?」


純真な瞳を見ると、あたしの胸は締め付けられるような痛みを感じさせる……言わなきゃ……ちゃんとミナトちゃんに説明してあげなきゃ……!


「……ミナトちゃん、リュウイチは帰って来ないの……」


「はい……?」


「兄さんは今行方不明なの……だからしばらく帰って来ないのよ……」


ユマりん……


「お、お兄ちゃんが行方不明!?一体どうして……!」


「……だからしばらく私たちが家事を手伝うわ、ミナトちゃん、それで良い?」


みぃ姉はいつもの優しい微笑みでミナトちゃんを宥めた。ミナトちゃんは少し戸惑っていたが、素直に頷くとユマりんがそっとりゅうくんのヘルメットを手渡す。


「でも、お兄ちゃんならきっと無事に戻ってきますよね?」


っ!


「……そうだと良いわね……さあ、夕飯作ってあげるから中に入って待ってなさい、私はちょっと着替えてくるから……ミツキ、サツキ、あなた達はどうする?」


「えっと……じゃあご馳走になろうかな!ミナトちゃん、夕飯食べたら一緒にゲームしようか!」


「あ、はい!皆さん、どうぞお入りください

!」


……ごめんね、ミナトちゃん……

ユマりんはまだ受け入れられてないのかな……着替えると言って自宅に向かっているユマりんの後ろ姿を見て、あたしはそう思った


「じゃあ行きましょうか……サツキ、リュウイチのバイクをしまってきてくれる?」


「あ、うん分かった!」


あたしも受け入れてないもんなぁ……何事も無かったように……真顔で……りゅう……くん……くっ!うぅ!



……



……



……



……




「……じゃあ、また明日ね。今度はあたしが夕ご飯作ってあげる!」


「おぉ!サツキお姉さんのお料理ですか!?すごい久しぶりですね、楽しみにしてます!」


「……か、かっわいい!サツキお姉ちゃんが美味しい手料理を作ってあげるからねぇ!!」


綺麗な笑顔……りゅうくんはいつもこの子の純真な笑顔を見てたんだね。りゅうくんがシスコ……妹思いになる気持ちが分かるきがするなぁ


"僕はシスコンじゃない!妹を大切にしているだけだ!"


……ごめんね、りゅうくん



「はい!楽しみにしてます!」


「それじゃあ……またね、ミナトちゃん。おやすみなさい」


「おやすみなさい、ミツキお姉さん!サツキお姉さん!」


「おやすみぃ!!」


バタン……


……


りゅうくんの家から出て、自宅のドアを開けてすぐ、みぃ姉が重い口を開いた。


「……ミナトちゃんに言えなかったわね……」


「うん……いつかは分かる事なのに、すっごい罪悪感を感じる……でもそれは、あたしたちも受け入れられてないからかもね」


「そうね」と、返事をしたみぃ姉もやっぱ受け入れてないんだね


「……わ、私、先にお風呂入ってくるっ!ごめんね!」


そう言って足早にバスルームへと向かっていった。

一瞬見えたみぃ姉の横顔は涙が溢れているように見えたのは気のせいじゃないよね……


……部屋に行こう


二階にある自分の部屋に入ると、窓の外に光が見えた


りゅうくん!?


……そう思ったけどすぐ現実を突きつけられた

りゅうくんの部屋に居るのはりゅうくんじゃない、ミナトちゃんだ……だって、あの子の泣き声が僅かに聞こえてきたから……


きっとあの子は最初から気付いてたのかもしれない……


部屋の明かりをつけようと思ったけど、しばらくやめておこうかな……ミナトちゃんが落ち着くまで




"人の部屋に勝手に侵入するなって言ってるだろ、サツキ"



また叱ってよ……どうしようもないやつだなって感じで、呆れた顔しながらあたしを叱ってよ……


ピピッ!ピピッ!


……SPD……アカリからのメッセージ?


『お疲れ様です。あの人の事を聞きました……大丈夫ですか?何かあればいつでもご連絡下さい』


……あたしが思っていた以上にアカリはりゅうくんの事に無関心みたい……そんなに嫌いになっちゃったのかな……


……



……



……



ーー数日前、リュウイチの執務室ーー


ピピッ!ピピッ!


あ、りゅうくんからのお返事だ……


"分かった。何があっても黙ってみていろ、何があってもだ"


りゅうくん……まさか


「……あの人からですか?」


「あの人?」


「……」


……あたしが聞き返すとアカリは何も言わず目を逸らしちゃった……あの人って多分りゅうくんの事だよね?名前すら呼んであげなくなっちゃったんだ……


「アカリ、せめて名前だけは呼んであげたら?」


「……お断りします。今は名前を聞くだけでも嫌ですから」


こりゃ重傷だなぁ……りゅうくん、大丈夫かな?

こんな状態でも多分悪役側にまわるつもりなんだよね……もぉ!ユキタカ君のアホォ!


「なぁ、アカリちゃん、トモカちゃんの事は本当に大変な事だけど、リュウイチにとってもショックを受けてると思うぜ?」


「だから許せと言うんですか?そんなの言い訳でしかありません。あの人の弟さんはお姉ちゃんを殺すつもりだったんですよ?そんな人を庇って、尚且つお姉ちゃんの元に戻らせようとするなんてバカげています!」


「一度は兄貴を信頼してたんだろ?なら最後まで信じたらどうなんだ?手のひら返しがすぎんじゃねぇのか?」


キド君がそう言うと、アカリは汚らわしいものでも見るかのような目で睨みつけた。

……こんな顔初めてみたかも……


「私がバカだったっていうことは重々承知のうえだよ……だから目が覚めて良かったと思ってるから」


「お前なぁ!」と、怒鳴って立ち上がるキド君をキラ君がなだめた……はぁ……ホントに血の気が多いなぁ、この子は



「……待たせたな、聞きたい事がいくつかあるだろうから一つずつ答えてやる……さあ、先ずは何から聞きたい?」


りゅうくんだ!

彼はいつもと変わらない口調と表情でアカリに話しかけた……そんなりゅうくんをギラっとした目付きでりゅうくんを見つめた……


「随分潔が良いね、大事な事をずっと黙ってたくせに……!」


やっぱり、そっち側にまわるんだね……りゅうくん



……




……




……



ーー現在、サツキの部屋ーー



……誰よりもアカリの支えだったりゅうくんはもういない、ユキタカ君は現在拘留中……憎しみが殺意に変わらなきゃいいんだけど……


ピッピ……


『ありがと、アカリも何かあれば連絡してきてね』


今はこれくらいしか言えない……


……ねぇりゅうくん、アカリに言ったらダメかな?


アカリちゃんの事を思って、あんな損な役回りを引き受けて、アカリを支えていたってことを……


このままじゃ、りゅうくんが浮かばれないよ……


あたしがりゅうくんの代わりを……ううん、それはダメだよね、あたしは表立ってアカリを支えてあげなきゃ……これ以上あの子を孤立させたら、りゅうくんが身を削ってやっていた事が全部無意味になっちゃうもんね


……ピッ


あたしは何となくSPDでりゅうくんに連絡をした……でも、画面には通信不能と表示される。当然の事なんだけど、当然であってほしくないという矛盾した気持ちが渦巻いた……


「やっぱダメか……」



"認めたくないけれど……そういう事よ"



……ホントにいなくなっちゃったんだね……



"特務執政官リュウイチ・ナルミは……死亡と断定された……"



行方不明じゃないんだね……



"あの出血量と発見された毛髪と肉片が彼のものだと判明ーー……"



なんで……なんで、りゅうくんが……

十分傷ついてたじゃん、どうしてみんなりゅうくんを追い込むの!?




"させないぞ……ナルミぃ!!"





……っ!!





あいつのせいで……




紅のせいで、りゅうくんは……!




許さない……!




絶対に許さない!!



あいつらも……イレギュラーも……あたしが粛正してやる……!!




"さよなら、死んでね★"




死ぬのはお前たちの方だ!あたしが必ず……アイツらを潰す!!





















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