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一つの物語  作者: 世界の一つ
一つの物語〜騒乱編〜
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騒乱編・孤独のおもい

俺……何してんだ……?!隊員やサツキ姉たちを傷つけて……トモカを置いて来ちまった……!

なんでこんな事になってるんだ……??俺は一体……!


「ま、待ってくれ!どこに行くんだよ!俺は紅に加わった訳じゃない、お前たちと話を……聞きたい事があっただけなんだ!!」


「貴様の知る必要のない事だ、私たちとて貴様を仲間に加えたつもりはない。状況的に貴様を連れて行った方が何かと都合が良かっただけだ」


「俺を利用したって事か……!」


レッカに迫ろうとしたが、一瞬の間に彼女の剣が俺の喉元に突き立てられていた……速い、全く剣筋が見えなかった


「故に、貴様にはもう用は無い。去れ、どこへでも行くが良い」


仮面の間から見える瞳は女とは思えないほど鋭く、凄まじい威圧を感じる。リュウ兄みたいな目付きだ……トモカ……みんな……


「待て、レッカ。彼にはまだ用がある」


っ!?

背後から聞こえてきた声の方に振り向くと、そこにはアウラの姿があった……いつの間に追いついたんだ……?まったく気配を感じなかったぞ


「アウラ……!俺に一体なんの用があるってんだ?」


俺は剣を握りしめ、警戒を強めた。

でも正直こいつには敵わない……何故かそう思わせられる威圧を感じる……。


「そう殺気立つな、君は確かリュウイチの弟だったな。彼の親族の割には冷静さが足りない様だ……あのような騒ぎを起こすとは」


……くそ、返す言葉もない……リュウ兄と比べられるのは少し気に入らねぇけど、混乱しちまってたのは間違いない。


そうだ!混乱してただけだ!!だからきっとその事をみんなに伝えれば!


「ゼン、そやつはオラたちの事について聞きたい事があるそうだぞ。オラが拘留されていた時も毎日の様にしつこく、オラたち紅の事をずっと聞き出そうとしておった」


「ほお、それ故のあの騒乱だという訳か……」


「そ、そうだ!それなのに話を聞かせてくれねぇからあんな事になっちまったんだ、俺がこうしてここにいるのも全部ひっくるめりゃお前たちのせいだぞ!」


まだ間に合う!今からみんなに謝ればまだ……!


「しかし、好奇心にかられ剣を同胞に向けたのは君の意思だろう?私たち紅に興味がありそれを聞き出す為とは言え、ホーリーヘヴンからすれば敵対視している私たちではなく、同胞に刃を向けた……仲間との信頼よりも自身の好奇心を優先したのだ。それは揺るぎない真実だろう?」


っ!?


「そ、それは……違う……あれはただ混乱してただけで……!」


「……フ、まあ良いだろう。私なら君の力になれるかもしれない、君の知りたい事に答えてあげよう」


……え?


「ほ、本当か?!」


「その代わり、私の質問にいくつか答えてもらう。ギブアンドテイクだ、社会の基本だろう?さあ、どうする?」


「くっ……俺に質問って、一体なんの事だ?」


「ホーリーヘヴン、セントラル本部の内装とそして……リュウイチとリュウガの関係について知りたい」


っ!?リュウ兄とリュウガの関係!?最重要機密と言われている情報と交換しろってか……?


「あぁ、聞く前に一つだけ忠告しておこう、私が賢者達と繋がっている事を忘れるな……少しでも虚偽の情報を言えば、君の望む事は二度と起こりはしない」


……くそ、釘を刺された!適当に流せない……しかしここで紅の核心に迫れれば……!でも、リュウガ達の情報をこいつらに流したら、俺は完全に紅の側についたことになる……!どうすればいい!


「……ヘヴンの内装はーー……」


ここはとりあえず、ヘヴンの内装についての詳細をなるべく長めに説明して満足感を誘い、リュウガの詳細情報はこいつらも知ってる様な事を説明すれば上手くやり過ごせるはず……!


「……で、ヘヴンの防犯システムはーー……」


ヘヴンの内部構造を関係者以外に説明するだけでも十分な裏切り行為になっちまうが、最重要機密情報を説明するよりはマシなはず……すまない、みんなっ!


「……以上が俺の知ってる範囲の本部詳細情報だ……」


「なるほど……確かに"ここまで"は虚偽の発言はしていないようだな」


……こいつ、まさか……!


「何を驚いた顔をしているんだ?賢者達と繋がっている私が、ヘヴンの内部構造を知らないとでも思っていたか?」


アウラはそう言うと、自分のSPDの画面を見せた……その画面には本部の立体内部構造が映し出されている。


「……俺を試したのか……!」


「"確認"したのだよ、こちらも機密情報を説明するのだから相応の代価が必要だろ?」


くっ……完全にこいつの手中にとらわれている……俺ってこんなに甘かったのか!?さっきも、レッカの事を思わず口に出しちまったし……俺の馬鹿野郎!


「フフ……まあ良いだろう、リュウガの事についても賢者達からある程度聞いているから、正直君に説明してもらうまでもない……さて、では今度は私たち紅について君が支払った代価分だけ説明しよう。何を知りたいのかね?」


チッ、ちょいムカつくし不満はあるけど、おとなしくしておこう。


「……紅は本当にイレギュラーしか狩らないのか?それと、ヘヴンの後ろ盾があるってんなら、ヘヴンと紅はほぼ同等なのか?」


「なんだぁ!?オラたちをヘヴンの奴らと一緒にすなぁ!」


「ダイ、お前は黙っていろ。すぐ熱くなるのはお前の悪い癖だぞ……君の質問だが、当たらずとも遠からずだ。私たちはヘヴンが裁けないイレギュラー達を狩っている。そういう面ではヘヴンより上だと言えよう、裁けない者を裁いているのだから」


「更に、こちらはヘヴンと同等とも言える情報を得ている。ヘヴンの上層部である賢者達と繋がっているからだ。そしてその情報や一般人に紛れた世界中の紅のメンバーから、ヘヴンの知り得ないイレギュラーの動向などを探り、そのイレギュラー達を狩る……これが私たちのやり方だ」


……って事は、やっぱり紅の方が俺の理想に近いという事か!裁ききれなかったイレギュラーに怯える人たちを守れる!大切な人を守る事ができるんだ!


トモカを守れる……!そうだよトモカ、やっぱり俺は間違っていなかった!今すぐにでもトモカにこの事を伝えたい、いやみんなにも!

そしたらきっとみんな分かってくれるはずだ、リュウ兄だって……!


「さて……ここまで知った君をこのまま逃すかどうか決めあぐねているのだが……君はどうしたいと思っているんだ?」


お、俺は……できることならみんなの元に帰りたい。けど、紅にはヘヴンにない魅力がある。それに俺の理想とも言える組織だ……俺はどうしたいんだ……?


「ゼン、まさかこいつを紅に迎え入れるつもりか!?」


「おやおや、ダイは反対なのか?」


「……まあ、オラたちの事を知りたがって鬱陶しかっただけと考えれば、文句を言うほどではないが……」


このまま紅に加わったら俺はどうなる?


裏切り者としてヘヴンに追われる事になるのか?


それとも犯罪者として追われる事になるのか?


リュウ兄達は俺をどう思うだろうか?


トモカは……?


俺の選択は正しいはずだ、トモカの時だって正しかった!


だったら俺は……俺は……!


「……た、頼む!俺を紅に入れてくれ!もちろん、断られてもあんた達の事はリークしない!あんた達の約束事も守る!だからお願いだ、俺を紅に入れてくれ!」


「……ヘヴンの仲間達を敵にまわすことになるんだぞ、リュウイチ達を裏切ると言うのか?」


裏切る……違う!これは裏切りじゃない!


「あんた達は裏でヘヴンと繋がってるんだろ?なら厳密には裏切りじゃない!属する場所が変わるだけだ……だから俺は紅の一員にしてくれ!」


「フフ、なるほどそう来るか……一つ聞いておきたい、君が望むものは何だ?」


「大切な人たちを守りたい!イレギュラーなんかいない世界にしたいんだ!そして自分を高めたい!愛する人を守るために……」


そうだ、トモカたちを守るためにも今は目の前のチャンスを逃しちゃダメだ!


「その愛する者はヘヴンにいるのだろう?ならばーー」


「レッカ、もういい。君の名は確かユキタカ……だったな……良いだろう、君の加入を許可する」


「ほ、本当か!?」


「ただし、当然だがしばらくヘヴンの者達との接触を禁じる。君が本当に紅の一員として相応しいかどうかを見させてもらう」


まあそうだよな。俺としては一刻も早くトモカと合流したかったんだが……リュウ兄にも事情を説明したかったな。

考えれば考える程会っておきたい人や話しておきたい人たちが思い浮かんだ。いつも帰っていた場所にも帰れなくなる……色んな思いが巡りめぐって少し孤独を感じた。


これくらい分かっていたはずなのに、冷静だったつもりが全くそうでなかった事に気づいた。


けど今更後には引けない


「分かった。約束する……」


「期待しているよ、ユキタカ。レッカも、それで良いな?」


「……後悔するなよ」


……


レッカのリュウ兄みたいな指摘に俺は何も言い返せなかった、事実後悔している部分もある。

トモカやみんなに会えない事がこんなに苦痛だったなんて……


「それよりさ、これからどこへ向かうんだ?」


「ランドルより更に東にあるグリム森林だ。そこである者たちと合流する」


ある者たち?紅のメンバーか?


「追っ手が来ないとは限らない、早急にグリム森林まで移動しよう。レッカ、車は予定通りこの先の駐車場に停車させてあるか?」


「勿論だ、予定外の者が一名増えたが……まあ問題無いだろう」


レッカは俺をチラリと見てそう言った。

悪かったな、予定外の面子で!


「よし、ではこのまま進もう」


アウラ……ゼンの指示に従い俺たちは車を停車していると言う駐車場へ向かう。

SPDを取り出し画面を見ると、そこには着信履歴が表示されていた。


トモカ……俺がここへ移動してる間に何回もかけてくれていたようだ。


「なんだぁ?まさかヘヴンの奴らに連絡をとっているんじゃ……ないようだのぉ……その女子は確かお前と何度も面会に来ていた奴か、どうするつもりだ?」


「かけ直したいところだが、そうはいかねぇだろ……我慢するさ」


「フン、さっそく後悔しているのか?」


「やると決めたからにはちゃんとやるさ!正直後悔してないって言いきれねぇけど、それでも紅側でその守りたいものを守る!」


ここまで来たんだ、当然後戻りはできない。するつもりもない。なりゆきでこっち側に入っちまったけどそれでも守れるならそれでいい


「良い心掛けだ、しかしそのSPDは……」


「分かってる、ヘヴンの奴らとは通信しないし紅で活動する用にもう一つ用意する」


「その必要はない、私がお前のSPDをアップデートしてやるそれをよこせ」


「へぇ、そんな事できるのか?レッカって機械に強いんだな」


俺は言われるがままにレッカに、SPDを渡した

ヘヴンに繋がるアプリを何個か書き換えているようだ


「ほら、まだ最低限の事しかできなかったが、目的地に着いたらまた訪ねてこい、その時に最後まで設定してやる」


「ああ、分かった。サンキュなレッカ!」


フンとレッカは適当に俺をあしらったのち、停車していた場所に着くと警戒もせず堂々と車に乗り込んだ。あいつの素顔はまだ認知されてないからな、逆にコソコソしてた方が怪しいか


「周りにあった防犯システムを少しの間細工する、稼げて数秒だ、その間にお前たちも車に乗り込め」


「わかった。やってくれ、レッカ」


レッカは了解と返事をし、辺りの防犯システムを"細工"したようだ。俺らに入れと合図を送ってきたので、一斉に車の中へ乗り込む。


「発進するぞ、舌を噛むなよ」


全員が乗り込んだのを確認すると、すぐさま発進させた……おかげで舌をかんだ。情けねぇ……


「グリム森林まで飛ばすぞ……予定外の者が増えて少し時間をくって遅れてしまったからな」


レッカはそう言ってバックミラー越しに俺をチラリと見て直ぐに前に向き直った。

悪かったな、遅れさせちまって……!


でも紅に入った以上は次からはこうならないようにしねぇと。新人だからって予定を狂わす行為はしたくねぇし、こいつらの動きに合わせるようなるべく体を慣らしておかなきゃな。


「そうだ、今の内に君のコードネームを決めておこう。紅は素性を隠して行動する事が基本だからな……もっとも、ここにいるレッカ以外は素顔を知られているがね」


「なら、俺はコードネームを決めなくても良いんじゃねぇか?」


「紅として行動する以上仮面を被るのが掟みたいなものだ。仮面で素顔を隠しているのに、本名で呼ぶのはナンセンスだよ」


そっか、俺もこいつらみたいに仮面を被る事になるのか……俺そういうの面倒なんだよなぁ


「ふむ……では君は今日から紅の赤き雪、アカユキと名乗りたまえ」


紅の赤い雪……アカユキか、ちょい不気味な感じがするけどカッコイイから良いか


「分かった……そう言えば、ランドルまでの防衛線を通るのか?それとも、やっぱり荒野を通るのか?」


「お前はバカか?普通に考えて防衛線を通る訳ないだろう。防衛線外の荒野を通るより他ない」


辛辣な奴だな……リュウ兄みたいだ……

いや、リュウ兄の方がもっと鋭いか?


「ヘヴンの防衛線を通らずに大回りしてランドルへ向かう事になるから、約二時間はかかるだろうな」


「それまでこの狭っ苦しい思いをせねばならんとは……窮屈だなぁ」


まあ、その巨体だから確かに窮屈だろうな。そのせいで俺も狭いし……


「(遅いと思ったら……やはりお前も紅側についたか)」


「っ?!なんだ、この声は!」


頭に直前声が……この感覚、確か黒百合と白百合の時みたいな感じだ……!この声に聞き覚えはないけど、誰かに似てるような気がする……

頭の中で声がしたと同時に目の前に時空間魔法の空間が発現し、レッカは咄嗟に急ブレーキをかけたがそのまま空間内へと入って行ってしまった。


……これは空間移動?


「ここは……グリム森林か?なるほど、これはお前の仕業か……」


「僕は待たされるのが嫌いでね、この方が早いし効率的だと思って君たちをワープさせてあげたよ」


ゼンが話かけている相手はとても穏やかに話しているが、なんだか胸騒ぎがする……恐怖心みたいなものがわきあがってくる。


「お前は……誰なんだ?」


「ユキタカ……いや今はアカユキだったかな。初めましてだね僕はーー」


















……あれから数時間が経ち、他の紅とも合流して紅のキャンプ地に着いた……頭の中で色々な情報が飛び交って頭が痛い……そして震えがまだとまらない。

あれが、本当の恐怖ってやつなのか……トモカに会いたい、その気持ちがはち切れんばかりだ……トモカ……トモカ……!


早くお前に会って、この気持ちを分かってもらいたい

……!











ミツキ

私に何が出来る?

あなたのために私はあなたのために何ができるだろう


あなたを一人にはしない、それは当然の事……!


それ以外に私にできることは……


次回、一つの物語〜騒乱編・責任


一人で抱え込まないでね、私はずっとあなたのそばにいるのだから


愛するあなたの……リュウイチのそばに……!




10月10日掲載

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