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一つの物語  作者: 世界の一つ
一つの物語〜再会と再開編〜
60/112

再会と再開3

ーーネスト支部・マザーベース前ーー



「ネスト支部、支部長リョウマ・アサギリ。認証コードーー」


確かここのマザーはレナだったよな、あれから少しは丸くなっただろうか?


『声紋・認証コードを確認、マザーへ入室許可を申請………………承認を確認、どうぞお入りください』


音声アナウンス終了と同時に頑丈そうな自動扉が開き、僕たちは奥へと入って行った。

そしてそこにいたのは


「今回は随分大所帯で来たな、ナルミ・リュウイチ」


「久しぶりだな、レナ……ん?髪伸ばしたんだな、似合ってるじゃないか」


聞き覚えのある声、その人物は正しくレナであった。しかし以前とは違って髪がロングヘアになっている、いつ頃から伸ばし始めたのだろうか?


「……お前は相変わらずのようだな」


作業していた手を止め、僕を見るなり呆れたようにため息をついた。


「ま、マザーと対等に会話できている……お前は本当に何者なんだ?」


レナと僕の会話を見たフュームが珍しく動揺している……まあ、確かにマザーと言えばマスターの次に高い存在だからな。それと対等に会話してるって事は……僕がおかしいのか?


「……それで?今日は何の用だ?」


「レナ様、お忙しい中申し訳ございません。今回こちらへ参上致しましたのは、ヤナミ家とナルミ家の繋がりをお訊きしたいのです」


レナは止めていた作業を再開しながらリョウマの発言を聞いている。


「……それは重要コードレベル9の機密情報だ、マスターかそこにいるリュウイチの権限によりアクセスは制限されている」


「え……?どうしてリュウイチまで……?」


みぃ姉が僕の方を向いて疑問の言葉を発する。皆んなもみぃ姉の発言と同時に僕を見つめてきた……視線が痛いな


「……レナ、僕の権限によりアクセスを許可する……皆んなに説明してやってくれ」


「……了解、アクセス申請を許可を確認……ナルミ家とヤナミ家は元々、主従関係であった。しかし、当時のヤナミ家の当主が強大な力をもつナルミ家に反旗を翻した事により関係は破錠、敵対関係となる。以降、"大いなる災厄"または"紅の悪魔"からヤナミ家を守護する為、千年以上に渡りヤナミ家は華縛りの儀を行い始める。」


「紅の悪魔って、イレギュラー狩りしてる紅と何か関係あるのかなぁ?」


「全く関係ない、ヤナミ家が恐れていた"紅の悪魔"または"大いなる災厄"と呼ばれるものは、二千年前に誕生した史上最悪のイレギュラーの事だ」


サツキの疑問にレナがすぐに答えた。

そしてそれを聞いた皆んなは更に疑問の表情を浮かべた。


「史上最悪のイレギュラー……確か、それってホーリーヘヴンが建設されたきっかけになった大事件っていう都市伝説みたいなものだと聞いた事があるが……」


「都市伝説だと思っていたが、事実だったという事か……?」


レナの説明を聞き、フュームとリョウマが顔を見合わせ話し合う。


……本当にただの噂だったら良かったんだけどな


「ヤナミ家がナルミ家と対立するに至った理由ってどういうものなんですか?」


キラが質問する。


「ナルミ家の強大な力をヤナミ家にも分け与えてもらうよう懇願したが、ナルミ家がそれを断りヤナミ家がその強大な力を独占していると反発し、両家の間に亀裂ができ離反したのだ」


「分け与える……という事は譲渡できるような力だったのですか?」


今度はみぃ姉が質問した。


「ナルミ家の力は遺伝子で代々受け継がれて行った。ナルミ家の者たちに許された者と婚約し、その者との間に誕生した子孫に受け継がせる、という方法で力を継承するものだ。つまりヤナミ家の者は許されなかったのだろう、しかしヤナミ家にもそれなりの能力はあった。それを結集させナルミ家に対抗する為にも黒華を造りだした……その能力についてはもう知っているのだろう。説明を省くぞ」


千里眼と強大な魔力……ユリナ達が受け継いだ力の事だな。


「なるほど……では……その……ナルミ家の力というのはどういうものなのでしょう?リュウイチが力を行使してるのは何度か見ていますが……」


「……それは……」


今まで淡々と話をしていたレナが初めて戸惑いを見せた。おそらく僕に気をつかっているのだろう


「それについては僕から説明しよう」


レナのあの困惑そうにした顔は本当に珍しい現象だ、せっかく気をつかってくれているんだ、これ以上レナから説明させない方が良いだろう。

僕がそう発言すると、皆んなが一斉に僕の方に視線を向ける。


「ナルミ家はあらゆる面でかなり特出(とくしゅつ)している血縁だ、それは今まで僕たちを見てきたら大体は分かるだろう。でも、ナルミ家の特殊能力はそれだけじゃない、寧ろそれらはオマケみたいなものだ。」


「……」


皆んなは黙って僕の話を聞いている。


「ナルミ家の特殊能力、それは"天地聖創"と言われる能力……あらゆる事を自分の思い通りする事ができる力だ。例えば四季の流れを変える事もできるし、望んだ季節にすぐさま変える事もできる……人の考え方や性格を自分の思うように変える事もできる。そんな反則レベルの力はナルミ家全員が持ってる訳では無い、事実ユキタカやミナト、それに兄貴も天地聖創は受け継がれていない。限られた者がその特殊能力を受け継いで産まれて来るんだ」


僕はそこまで言うと、ミツキたちは驚愕し言葉を失ったように口に手を当てる者や信じられないという感じで僕を見つめる者もいた。


「信じられないのは無理もない……僕も初めて聞いた時は信じなかった……この目でその光景を目の当たりにするまではな……」


「リュウイチも……その力を持っているの?」


ミツキの表情は至って真剣だ……こんな真剣な顔のミツキは初めて見たかもしれない。


「分からない……少なくても僕は四季を自由自在にする事はできないし、想像した物を具現化する事もできない……だが、確実にその力を行使できる者はいる」


「……?でもユキタカさん達は宿していないんですよね?なら一体誰が……?」


キラの質問に僕は少し躊躇ってしまう、何故ならもうこの世にいないはずの存在なのだから……


……しかし、ここまで知った以上、最後まで言うしかないだろう。


「……そいつの名前は、リュウガ・ナルミ……僕の双子の兄だ」


「双子の……兄……?!りゅうくんにもう一人のお兄ちゃんがいるの!?」


「正確には"いた"だ。リュウガはもうこの世にはいない、リュウイチが粛正……いや、抹殺したのだ」


レナの答えに一同は再び驚愕し、そして疑問の表情に再び戻った。


「二千年前、リュウガがこの世界を再構築しようとした時、リュウガに限りなく近い存在のリュウイチが満身創痍になりながらも辛うじて奴を殺す事ができた……その分、かなりの犠牲も出たがな……その時その場で生き残った者たちは数少なく、生き延びた者たちはリュウガの事をこう呼んだ……"大いなる災厄"……と」


「……待て!しかしそれは二千年前の話をだろう!?何故そこにリュウイチがいるんだ?!こいつは明らかに俺より年下だぞ!」


リョウマは動揺しているようで、レナに対し敬語が無くなっていた。当然だ普通では有り得ない事だからな。


「リュウイチもリュウガも、本当は二千年前の時代の者たちなんだ。今ここで存在しているリュウイチは二千年前に起きた災厄後にリジェネレーション……新生して今の時代に蘇り、ヘヴンの最重要機密プログラムにバックアップメモリを残し、それを使って記憶を戻したのだ」


「うそ……そんな……じゃあ、私達と初めて出会った時にはもう……!」


「……そうだ、僕は既に記憶を取り戻した状態だった……」


それを聞いたミツキはふらつき慌ててサツキに支えられた……そんなサツキも僕を真剣な眼差しで見つめている。


「リジェネレーションしたのはリュウイチだけではない、当時関わった者たちの中で何人かリュウイチと同じように、今の時代に蘇りバックアップメモリで記憶を同期した者がいる……それが各地のマザーベースにいる私たちと、そこにいるレイとお前立ちの知っているカイ、そしてマスターだ。本来ならリジェネレーションを行われるのはマスターレベルの者しか使用できない代物だ、だが二千年前の災厄を生き延びた者……あの時関わった重要人物としてリジェネレーションされたのだ」


「……リュウイチ、まさか史上最悪のイレギュラーと言われている"紅の悪魔"と呼ばれている人物は……」


鋭いやつだな、フュームは……


「そう、この僕……ナルミ・リュウイチだ。」


「……」


ミツキとサツキは何を言えば良いのか分からずその場で立ち尽くし、黙って僕を見ている。

ユマリはどことなく悲しそうな目で僕を見つめ、僕の服の袖を握っている。


「……紅の悪魔と呼ばれてんのは一体どういう意味なんだ?」


僕はユマリから目を逸らし、質問してきたリョウマに目を向ける。


「……当時僕はリュウガと戦闘し、暴走状態になってしまったんだ。その時元から宿していたのか、リュウガの双子故の残りカスだったのかどうか分からないが、天地聖創の能力が発動し、お前たちアサギリ家がよく知っているバーサーカーになった……その時の僕を目撃した者達がそう呼んだんだろうな」


「……!バーサーカーはアサギリ家だけの能力じゃなかったって言うのか?」


「いや、お前たちアサギリ家にしかない能力なのは確かだ。当時僕はアサギリ家の能力を知ったばかりで、そのため一番パワーに秀でたアサギリ家の能力をコピーし、擬似バーサーカーになったんだと思う……」


そうか……と言って、リョウマは僕から視線を外し、黙って僕を見ているミツキとサツキ達の方に向けた。

あいつらの事が心配なのだろう、表情は暗い。


「でもどうしてイレギュラーだなんて呼ばれているんですか?」


「当時はヘヴンが無いときに暴走した為、リュウイチが今で言うイレギュラーのそれと似ていたから昔の生き残り達がそう呼んだのだろう……」


キラの疑問にレナが返答した。


「……皆さん色々と事情が重なって混乱してるでしょうから、全てを纏めてみましょう。今回こうしてマザーベースに来たのは、先のイレギュラー達の能力がヤナミ家のヨルたちに似ていたから、ヤナミ家の事を調べにここへ来た。そして、その過程でリュウイチ様たちナルミ家とヤナミ家の因縁を知り、また各一族の能力を知る事になった。そして、更にその過程で、ナルミ家の特殊能力、天地聖創とナルミ家の因子について知る事になった……そして更に僕やリュウイチ様たちがリジェネレーションと呼ばれる再生技術とメモリのバックアップにより、現代に復活し今に至る……と、まあこんなところでしょうか……」


相違ない。レイの言うとおりだ。

皆んなは黙ってレイの話を聞いていた、それぞれどの様な気持ちでここに居るのかも大体の検討はつく。


「りゅうくん……だからあたし達やみんなを遠ざけるような事を言ってるの?」


「……それも一因なのは確かだ」


「リュウイチ……他に私達に伝えて無い事があるんじゃない……?」


……


「……っいや、それはーー」

「良いんだレナ……気を遣わせてすまない……」


レナの気遣いを無駄にしてしまったな……貴重な事だが、致し方ない……


「……僕が暴走状態になったと言ったな?その原因は……」


「やっと昔話を終えたのね、待ちわびたわ★」


っ!?


ミソラ!何故ここに!


「ミソラ!?ここは時空間魔法でも来れないようアンチマジックとシールドを張ってるんだぞ!どうしてここへ来れた!」


「リュウガ様に不可能は無いもの★ あぁ……やっとリュウガ様の事をみんなに言える……話してくれてありがとう、リュウイチくん、レナさん。ご褒美にいい事教えてあげに来たのよ!」


「……こいつは明らかに敵って感じだな!」


「リュウガの手先ということは、ディランたちと同じイレギュラーか!」


ミソラは戦闘態勢に入るリョウマとフュームを見て大きく瞬きをした


「あなた達は……あぁ、ここの支部とバーネル支部の支部長さんたちね!はじまして、ミソラです★」


「随分余裕じゃねぇか……これだけ不利な状態でその態度とは……俺たちをなめてんのか、それとも大バカなのか?」


「あら……さすがミツキちゃんとサツキちゃんの従兄弟ね、血の気が多いんだから……少し黙ってて」


そう言い終えると同時に、グラビティフィールドを発動させ、リョウマ達をその場で倒しこんだ。


「貴様!何をしに来た!」


「あら!やはりリュウガ様とほんの少しだけ似てるだけの事はあるわね、結構本気で発動させたんだけどなぁ……」



「御託など不必要だ!おとなしく質問に答えろ、何をしに来た!」


相変わらずの爽やかさだ……だが今はそれが憎らしく感じる。


「せっかちさんね……まあ良いか、今日はリュウガ様の事をお話してくれた記念として少し挨拶しに来たの、勿論時空間魔法を使ってね!★」


自分の魔力がここのセキュリティより優れてると言わんばかりに言うミソラ……ふざけやがって!


「ふざけてなんかいないわよ?だって本当の事じゃない★ ここのセキュリティのレベルが高いなら、私はここにいないもの!でもここへこれた……さあなんででしょうか!?★」


「……リュウガの力か」


「大正解!!ようやく答えに辿り着いたのね、意外と鈍いんだなぁ、リュウイチ君って……うふふ」


僕は白百合と黒百合に意識を集中させ、思考の共有と奴の魔力を遮断させる。

これで少しは……


「ぬるいな……リュウイチ」


っ!?


この声は……!


「……ふふ、そう、私は今リュウガ様とリンクしているの!素晴らしい力だわ!惚れ惚れしちゃう」


「(リュウイチ!ダメよ、落ち着いて!)」


くっ!

激情に任せても良いことはないと分かっているのに、リュウガがの存在が確定した事で気持ちのざわつきが抑えられない!


「まだその出来損ないのヤナミ家の娘の方が落ち着いてるようね、ふふ、こうしてあなた達の事を知れてるのはあのお方のおかげ……感謝してもしきれないわ……あ、そうそう!記念に良いことを教えてあげるって話しね、近々セントラルに紅が来るわよ。なんでも捕まってる仲間を助けるついでに私達に会いに来るみたい。バカね、私達が負けるはずないのにまだ狩ろうとしてるのかしら?」


セントラルに奴らが来るだと!またあそこを戦場にするつもりか!


「貴様らがリュウガと繋がっていようがいまいが関係無い!紅たちより先に貴様を粛正する!なんなら今すぐ場所変えて今日中にしてやっても良いんだぞ……!」


「怖いこわい!でも、今日は止めておきましょう、せっかくの記念日なんですもの!じゃあ、そろそろ帰るわね!また会いましょう!★」


ちっ!


「待て!!」


……くそ、完全に気配が消えた……皆んなは!?


「おい、お前ら無事か?!」


「え、ええ、大丈夫……あれがリュウガの力……リュウイチ、どこもおかしくなってない?!大丈夫!?」


……今まで感情を抑えていたのだろう、それが解けた様にミツキは僕の身体を心配している……


「大丈夫だ、他の皆んなは?」


「だ、大丈夫!元気いっぱいだよ!」


……


「な、なにかな?りゅうくん……あ〜さてはあたしの事疑ってるなぁ?本当に大丈夫だよ、ありがと、りゅうくん!」


……まあ無事なら良いが……


「しかしこれでハッキリしたな、リュウガの奴は生きてる。どうやって生き返ったのか大体の検討はついてるが……やつの力がここまでとはな……」


「リュウイチ、この辺りで時空間魔法が発動した形跡は無い、恐らくセントラルに転移したのだろう……追うのか?」


「ああ、セントラルに戻る。フュームたちはそれぞれ自国で待機してた方が良い、戦力を分担してしまったら忽ち血の海になるぞ」


僕はフュームとリョウマを交互に見て提案し、二人はそれに賛成したようで、僕に頷いて見せた。


「リュウイチ……何かあったらいつでも連絡して来い、必ず助太刀に行くぜ」


「ああ、助かる」


「我を負かせたのだ、不様な姿を見せるなよ?」


「ふっ……はいはい、お前たちも気をつけろよ」


……もうあの惨状にはさせない



大いなる災厄……リュウガとの戦いの再開だな
















次回9月5日掲載

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