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一つの物語  作者: 世界の一つ
一つの物語〜仲間編〜
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一つの物語〜仲間編5〜

ピーピー

ニシミヤたちが部屋を出てしばらくするとデスクのモニターから呼び出し音が鳴る


「こちらリュウイチ」


『やあ、私だ…おや、なにか良い事でもあったのかい?』


モニターに映るマスターが優しさに満ちたような笑顔をしている。なんだ?僕はそんな嬉しそうな顔してるか?


「そんな風に見えますか?」


僕の率直な質問にマスターはクスリと笑い返答する


『気づいていなかったのかい?いつもより表情が穏やかだよ』


穏やか?自分の顔を触り、ふとカイたちを見渡すと二人ともニヤついた顔をして僕を見ている。

なんだ、失礼な奴らだな


「…それで、なんの御用ですか?」


少々不機嫌気味にモニター越しにマスターを見直す


『ふふ、案外分かりやすいね、君は…ちょっとお願いがあるんだ。君の報告データに書かれていたフードの人物なんだけど、その人物と酷似した者が南東に位置するセシル街道近くで目撃されたという連絡があった』


…あいつか


『一度対峙した君たちに出撃をお願いしたい、行ってくれるかい?』


「了解、目標座標を確認後、出撃致します」


『頼むよ。幸運を』


そう言うとモニターの通信を切った、僕は立ち上がりながらカイとレイに顔を向け頷いて見せると、二人とも応えるように頷いた。


僕は立ち上がったままモニターに手を伸ばしある人物にコールする。


『はい、こちらキラです』


モニターに映ったその相手はキラだ


「一等粛清官キラ、フードの人物の目撃情報が入ったお前も一緒に出撃しろ、先遣隊として第1、第2部隊を向かわせてセシル街道の包囲させろ」


「了解、すぐに向かいます」


僕は通信を切り、執務室を後にした。






『ミッションコード確認、司令者マスター。ミッション指揮官名をお願い致します』


「指揮官名、リュウイチ・ナルミ。同行者特務執政官ガードのカイ、レイ、一等粛清官、キラ・トリガ」


『確認致しました、ミッションスタート』


「了解、リュウイチ・ナルミ、出る」


タイヤロックが解除され、僕たちはセシル街道へ出撃した。






セシル街道、東地区にあるランドルと南地区カカリコの街を繋ぐ長い街道だ。

あそこは車道が入り混じっている、下手に戦闘すると被害が大きくなる…少々面倒だな

僕はバイクについている無線ボタンを押す。この通信は耳につけている小型通信機と連動している。


「三人とも聞こえるか?ターゲットを確認してもすぐに行動に出るな、少し離れて追跡するぞ」


『確かに、あそこでの戦闘は危険だな』


『了解です』

『了解しました』


三人の返事を聞き、僕はスピードを上げて三人を先導する。






『こちら第1部隊、ターゲットの目撃情報を入手しました。ターゲットは街道に駐車してあったバイクを奪って車道よりカカリコ方面へ向かって南下しているようです』


第1部隊の通信から目撃情報が入る。車道で南下してるという事は…ち、やはり戦闘をするにはこちらが不利だな。向こうは遠慮なくモンスターを出現させたり攻撃してきたりするだろう、対してこちらは被害を出さないよう攻撃を抑えなくてはならない。


「こちら特務執政官リュウイチ、街道の包囲は済んだのか?」


『は!もう間も無く済みます』


包囲するにはもう少しかかるか


「分かった、包囲完了時とターゲットの目撃情報が入ったら引き続き連絡を」


『了解致しました』


包囲前の対戦か…


『厄介ですね、街道ではなく車道とは』


レイが無線でそう呟く


『やはり戦闘をなるべく抑えなければ、被害が甚大になってしまいますね…どうすれば』


キラは煮え切らないように答える

もっともな意見だ…とその時、見覚えのある後ろ姿が見えた。いやがった、アンノウンだ


「いたぞ、全員距離を…」


そう言い終える前に、アンノウンはスピードを上げ急速に車道を走り去る


…気づかれた?こっちはメットしてる上にまだ遭遇した回数も少ない、それなのになぜ


『あの野郎、俺たちに気づいたのか!?どうするリュウイチ、引き離されて見失っちまうぞ!』


カイが少し慌てたように口調が荒ぶる。

仕方ないな…こうなったらやるしかない


「各員戦闘体制。本部、ターゲットを確認。これより戦闘体制に入る。奴を見失わないようスピードを上げるぞ。交通車もいる、派手に暴れるなよ」


『了解!』

『はい!』

『了解しました』

『了解、幸運を』


三人の返答を聞きながら、僕はスピードを上げる






フードの人物は高スピードを維持したまま走り続ける。その後ろからリュウイチ達が同じく高スピードで追い上げてきた


「僕とカイが前に出る、レイとキラは後方から援護しろ…散開」


リュウイチが三人に指令する、レイとキラはスピードを維持しリュウイチとカイはスピードを更に上げ、前に出る。

キラは片手でハンドルを握りもう片方の手で魔銃を取り出す、自身の魔力を銃に込めて発射する特殊な拳銃である。

レイは詠唱を唱え、彼の背後に魔法陣が浮かび上がる。


キラとレイはアンノウンが乗るバイクに向けてそれぞれ攻撃を開始する。しかし攻撃は見事に躱されバイクに当たらず付近の車道に当たる。


カイは片手で剣を抜き接近して斬りかかるが、それも躱された…が、それを予想していたのかリュウイチはフードの人物、アンノウンを追い抜いて前に出ており、カイの攻撃を躱した方向に剣で斬りつける。


「……っ」


間一髪のところで攻撃を躱し、態勢を整えるがリュウイチはそれを許さない。アンノウンとすれ違いざまにリュウイチはバイクの座席に立ち、もう片方の手で魔銃を抜き、相手のバイクめがけて発射する。


「……!」


数発発射した魔弾は相手のバイクに当たり態勢が崩れ、バイクが大きく揺れる。


「レイ、キラ、今だっ」


「ライトニングスター!」

「チャージシュート!」


リュウイチが二人に合図すると同時に、魔法と魔弾を発動しその攻撃はフードの人物に直撃する。

その衝撃でバイクは大破し爆煙が立ち昇る


「よしっ!」


「いや、まだだ」


リュウイチがそう言うと、爆風と同時にフードの人物は近くを走っていた車両に乗り移った。


「ち…」


座席の上に立ちながら片足でハンドルを操作していたリュウイチは、小さく舌打ちして剣をおさめながら再び座って運転し始め、スピードを上げた。


(…なぜ時空間魔法を使わない?こっちは四人がかりだぞ、サツキと戦った時のようになぜ時空間魔法でモンスターを発生させない…?)


リュウイチがそう考えていた時、通信が入る。


『リュウイチ様、包囲が完了しました』


「了解…もう逃げられないぞ、おとなしく粛正されたらどうだ?」


「……」


リュウイチの呼びかけに応じようとせず、アンノウンは再び飛び出した。


「フン…まあ、そうだよなっ」


走行中の車両伝いに飛び移って行くアンノウンをリュウイチたちはスピードを上げて追いかける。

そして、前を走っていた一般者が乗っているバイクに飛び移り、一般人の運転手を投げ飛ばし再びバイクで駆りはじめた。


「レイ!」


「ディメンション!」


リュウイチがレイに指示を出し、投げ飛ばされた一般人に向かって時空間魔法を発動させ、円型の空間が出現し一般人を近くの海の上にワープさせ、その人はそのまま海の中に落ちていった。


「よくやった」


『それはどうも』


リュウイチが褒めるとレイはふふと笑い返事をした。


尚も逃走するアンノウンは魔銃を取り出して頭上の看板めがけて発射し、それをリュウイチたちに当てようとする。


『俺に任せろ!』


カイがスピードを上げ、リュウイチたちの前に出ると彼はジャンプをし空中で回転しながら剣を抜く。

そして間も無く看板を一瞬で斬り刻んだ。

看板は空中で被害が出ない程度の大きさでバラバラになり、カイはそれを見て微笑み、自分のバイクに乗り直した。


「おみごと」

『それはどうも!』


キラがカイを褒め、その言葉を素直に受け入れて返事をする。


アンノウンは魔銃でリュウイチたちめがけて発射してきたがそれを躱しつつ追い詰めていく。

包囲したおかげで一般車両は無くなってきた時、フードの人物の遠く離れた進行方向に一人の男が立っていた。


男はサングラスをかけ、ニヤッと笑う


「ナルミ流…!」


アンノウンが遠く離れた男に向けて魔銃を構えようとしたその瞬間


「衝速蹴ぅぅぅ!!」


凄まじい速さでアンノウンに蹴りを入れながら地面に直撃させ、男はその衝撃を利用し宙返りをし着地する。


「…ぐっ!!」


アンノウンは転げまわりながら徐々に減速していく


「あれは…まさか…」


リュウイチはそう呟き、四人はバイクのブレーキをかけてとまり、フードの人物の背後を囲む

攻撃した男はゆっくりフードの人物に歩き寄る。


「いいタイミングだっただろう?リュウイチ」


男は再びニヤリと笑いながらサングラスを外す。


「また独断行動か?兄貴」


「あなたは、アキト様!?」


呆れるリュウイチと驚きながら男の名を呼ぶレイその二人を笑顔のまま見つめる彼は、アキト・ナルミ。リュウイチの兄でありマスターの身辺警護をする特殊粛正官である。


「いいタイミングだっただろう!?」


「はいはい、カッコイイ登場だったよ…」


アキトは笑顔のまましつこく聞いてくるので、リュウイチは呆れながら返事をする。






やれやれ…まさか兄貴が来るとはな…まあおかげで、ケリがついた。こいつの素顔もようやく……っ!?


兄貴に気をとられた一瞬の隙をつかれ魔銃をこちらめがけて放ってきた


「……っ!」


魔弾を回避しフードの人物の方に振り向きながら僕も魔銃を構えるが、時空間魔法により出現した空間にフードの人物は既に入っていた。


「ぬあ?!あいつ時空間魔法つかいやがるのか!?


知らなかったのかよ…事前に調べてから来い

…しかし、レイより詠唱が早い、それになぜやつは途中で時空間魔法を使わなかったんだ?

こんなに早く詠唱して発動できるならとっくに逃亡できたは…ず……詠唱…発動…


「くっそぉぉぉ!!逃げられたぁぁっ!!俺が失敗した?!俺がダサイってことかぁぁぁ!?」


…だとしたら


「全隊員、近くに敵がいる可能性がある。街道を包囲しつつ警戒と捜査にあたれ」


『りょ、了解!』


僕の考えが正しかったら、ここが見える位置にもう一匹いるはず


「なぁ!!俺はダサイのかぁぁ!?」


「やかましい!」


たく、能天気なアホ兄め…どこだ、近くにあるのは…海…海中か?海面か?


「本部、この周辺に時空間異常はないか?」


『い、いえ…異常は感知されていません』


…ち、逃げられたか?それとも…やはり…


「…了解、各隊不審人物がいたらすぐ連絡しろ…それと行動範囲外にいる隊員がいたら、即刻武装を排除させ、警戒しろ」


『了解しました』


あの手負いだ、一目見たら分かるはずだ


「リュウイチ、何か心当たりでもあるのか…?」


「……」


カイが不審そうに僕に聞いてきたが、僕は答える事ができなかった。まだ確証がない、本部に戻って調べる必要がある…


「リュウイチ…?」


「ああ…とりあえず、本部に戻ろう話はそれからだ」


カイたちの表情は暗い、おそらく僕も…いや、暗い僕を見て暗くなっているのか、とにかくおそらく()()()はもうこの付近にはいないだろう。少し様子を見てから帰投するか…






「あ、おっかえりー!」

「おかえりなさい」

「お疲れ様、兄さん」


…なんでお前らがここに居るんだよ

あれからしばらくした後僕たちは帰投し、自分の執務室へ入ったのだが、なぜかサツキとミソラとみぃ姉とユマリたちが僕の…特務執政官の部屋に来ていた。


「……おい」


僕はサツキたちの出迎えを冷たい目で見ながら返事を無視して、デスクにあるインターホンを押しながら、受付に問い詰めた。


『ご、ごめんなさい…いつもの事でしたのでつい…』


僕の冷たい声に動揺しながら謝罪をした…まったく、なんのための受付だと思ってるんだ、仕事しろ仕事を


「というわけでついっ♪」


安定のサツキだ…怒りを通り越して呆れ果てたやつだ、いやサツキだけじゃないな。みぃ姉たちもだ。


「ごめんなさいね、サツキたちの勢いに乗って私も来ちゃった」


片目を閉じながら両手を合わせて、ミソラが謝ってきた…なんでお前までここにいるんだよ


「おや、今日はまた少し華やか差が多いですね」


「失礼します…」


「ま、また大勢できたな…」


レイは楽しそうに、キラは驚きながら、カイはタジタジしながら僕に続いて入ってくる。

カイ、お前にとっては地獄絵図だろうな。


「…やれやれ…それで、何の用だ?僕はこれから調べたい事があるんだが」


「調べたい事ってなに?」


デスクの前まで歩きながらミソラが迫ってくる。

…言える状況じゃないな


「別に…それよりそちら方の御用件を聞かせてもらおうか?大勢で押しかけてきて…」


「そう、重大な事なんだよ!りゅうくん!!」


アサクラを押しのけデスクに両手をついて僕の顔を覗き込んでくる。お前の言う重大は重大じゃないことが多いからな…


「なんだ?拾い食いでもしてあたったのか?」


「いくらあたしでも、拾い食いはしないよ!」


はいはい…


「じゃあなんだ?」


「訊きたい??」


お前はなんのために来たんだ、構ってほしいのか?ん?


「サツキ、ふざけないで!リュウイチ、大変なのトモカちゃんとユキタカたちが…」


…あいつらの事か


「どうした?もしかして別れたのか?」


「なんで分かったの?!そうなの、トモカちゃんたちが別れちゃったの!さっき通路でトモカちゃんとすれ違って、その時涙浮かべてたから話を聞いてみたんだけど…」


……選択を誤ったか、ユキタカ…


「そうか、それは大変だな」


「…兄さん、こうなるって分かってたの?」


僕の淡々とした態度にユマリが疑問の眼差しを返してくる…分かっていたと言うか…


「…昨日のユキタカの態度を見て、こうなるかもしれないなとは思ってたよ」


「じゃあ、どうして…」


みぃ姉が困惑した表情をしながら僕を見る。


「これはあいつらの問題だ、予測だけで僕たちがでしゃばったら、あいつらのためにもならんだろ」


「確かに、余計な言葉をかけたらもっと最悪な事になっていたかもしれませんね…」


僕の回答に、レイが渋々賛同する。

…そう、予想だけで動いたら崩れなくて良い所が崩れる可能性がある…ユキタカたちの事だけじゃなくてな…


「ニシミヤさん…だったかしら?二人の事、これからどうするの?」


ミソラが率直な質問を投げかけてきて、その言葉を聞いたみんなが、僕に注目の眼差しを送ってくる

どうするかな…


「まあとりあえず、ユキタカの方には僕が話をしてみる」


「じゃあ、あたしたちはトモカちゃんを…」


サツキの提案を遮って僕は話を続けた


「ニシミヤには、なにも言わなくて良い。さっきも言ったろ、これはあいつらの問題だ。外野が騒ぐ事じゃない」


「でも…」


珍しく真剣な困惑をした表情をするサツキ…茶化したい所だがここは我慢してやろう


「僕たちがやつらにしてやる事は選択肢を与える事だけだ。あいつらの選ぼうとしてる選択を少し増やしてやる事だ」


「その選択肢とはなんですか…?」


キラが我が事のように心配した表情で僕に尋ねてくる。お前は優しいやつだな、本当に…


「今あいつらが選ぼうとしてる選択肢は二つ、同じ道を歩むか、別の道を歩むか、この二つだ。僕が増やしてやる事はただ一つ…」


みんなが僕の言葉を黙って聞いている


「お互い、同じ道で歩けるかどうかを考える時間があるという事、だ」


「考える時間…?」


僕の言葉を聞いてユマリが呟くように言う


「ああ、簡単に言えば今二人はすれ違った状態だ。その状況をどう打開すればいいのか、それを考える必要があると教えてやる」


…そう、あいつらは考えなきゃいけない。他人の人生の半分を背負う事がどんな事なのか、他人を愛するとはどういう事なのか、同じ道を歩く事がどういう事なのか…


「…もっと簡単に言えば、改善の余地があるって事さ、主にユキタカがな。」


「ユキタカ君だけ?ニシミヤさんは大丈夫なの?」


ミソラが首を傾げて僕に質問してきた。


「ニシミヤの事は話を聞いて分かった事がある、あの子はユキタカを理解している。本当の意味でな、でもユキタカはニシミヤの事を理解していない。しようとさえしていなかった、少なくても昨日まではな」


昨日のユキタカの表情を思い出しながら僕はそう断言した。


「だからユキタカに考える時間があるという事を教える。それを聞いてどうするかは…あいつら次第だ。」


僕を見つめていたほとんどのやつが暗い顔をして俯きだした…

さて、問題は山積みだが…まずはユキタカの方からだな



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