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一つの物語  作者: 世界の一つ
一つの物語〜再会と再開編〜
59/112

再会と再開2

ーーネスト支部ーー



「伯父さん改めてお久しぶり、元気だった?」


「ああ、お前たちも元気そうだな。それに強くなってたし、だいぶ見違えたぜ。リュウイチ感謝する」


あん?なんで僕が感謝されるんだ?


「伯父さんこそ相変わらずすっごい強いね!強化されたイレギュラー相手にできたみたいだし♪」


「死んでいった仲間たちのおかげさ、あいつらがいなきゃ俺もやばかった」


僕から見れば、リョウマが死んでも死神も地獄へ連れていくのに苦労しそうなイメージがあるがな。


「被害は負傷者20名以上、死者40名……僕の肉親のせいで、申し訳ございません」


「お前が謝る必要はねぇ、奴らを粛正しきれなかった俺の力不足によるもんだ、気にすんな」


レイが丁重に謝罪したが、リョウマは気さくにそれを許した上に自分の力量不足だと言う……できた男だな。


「それで?何故フューム女王陛下がここにいるんだ?」


「以前我の国に同イレギュラー……ジュンが現れてな、その時我は出撃しなかったのだが、多くの同胞達が逝った。その仇をうつためにきたのだが、思わぬ邪魔が入ってしまった。それと、紅についても一度自身で見聞きしたくて、ここまで来たのだ」


バーネルでイレギュラーが出現した事は知っていたが、ジュンだったとはな


「なるほど、深手をおったのは確かだが、粛正しきれなくて残念だったな。それと、リュウイチ、紅について説明してくれ」


「奴らはホーリーヘヴンで粛正しきれないイレギュラー達を私情で狩りをしている組織だ。総勢がどれほどかはまだ分かっていないが、バーネルとここで再会した時に見た限りでは20名以上はいる様だ。それ以外の情報はなーー」

「りゅうくんを馬鹿にする最低組織!」

「リュウイチを馬鹿にする最低組織!」

「兄さんを馬鹿にする最低組織」


……


「フッ噂通り、だいぶ好かれてるみてぇだな、リュウイチ。ミツキたちを泣かせたらただじゃおかねぇぞ」


重みのあるお言葉だな……と言うかむしろ止めろよ。僕がどう対処してるか聞いてないのか?


「……とりあえずそれで以上だ、あと直ぐに捕縛しないのは先程言ったとおり、奴らと僕たちの意志は共通している。だからこそ分かり合えないかと思ってな」


「信頼に足る奴らなのか?」


「今のところ奴らと分かり合うのは不可能に近い。でも僕はなるべくなら奴らとは戦いたくない。それでも戦わなきゃいけない理由ができたら、その時は僕がケリをつける」


僕の意思を伝えて、リョウマとフュームの様子を伺った。二人とも真剣な表情で僕を見ている。


「リュウイチ、その事について二人で話をしたい、俺に付いてこい」


「伯父さん?」


「ミツキたちはここにいろ。さあ、来いリュウイチ」


どうやら言葉では足りないみたいだな

僕はリョウマの言うままについて行き、やがて訓練所に着いた。


「お前の力はさっきの戦闘で大体わかった、でもそれは同じ同志として認めただけで、お前という一人の男として認めたわけじゃねぇ……この意味がどういう事か分かるな?」


「紅を放置し、尚且つその紅を止められる力と意志が本物かどうかを試したい……そんなところか?」


「話の分かるやつで助かる……行くぞ!リュウイチ!!」


真正面から堂々と……やっぱり家族だな。僕はリョウマの拳を躱し反撃に出る。

アサギリ流は格闘術に秀でてるって昔に聞いた事があるが……これはサツキやミツキ達以上だ。


あの二人を相手にできるだけの事はあると分かってはいたが、ここまでとはな……少し燃えてきた。


「どうしたぁ!剣を抜いても良いんだぜ!?」


「兄貴ほどではないが、ナルミ流の格闘術をある程度マスターした僕を甘く見るなよ!」


僕は剣技は使わず格闘だけで応戦している、向こうはサツキ達並の怪力でくるなら僕は柔でいかせてもらう。拳を拳で相殺しながら僕は防戦に入る。


「うおらぁ!!」


ドーン!!


ここだ!


僕が一気に間合いをつめるとリョウマはそれを見越したように反撃を打ってきた


「させるかぁ!」


残念だったな、僕はそれを待っていたんだよ


「っ!?なに!!」


僕はリョウマの腕を絡め取り、そして捻りながら地面に叩きつけた。


「……僕の勝ちだ」


必死に立ち上がろうとするが、リョウマは立ち上がる事も腕を動かす事もできずに少しもがいた……そしてやがてその動きが止み、ふっと鼻で笑うリョウマ


「剣術だけじゃねぇとは……俺の負けだ、色んな意味でな」


その言葉を聞いて、ゆっくり力を解いて手を差し出した。リョウマはその手をとり立ち上がる。


「ちっ……力だけは負けねえ自信があったんだがな……」


「フフ、残念だったな」


「まったくだ……改めてお前を認めようリュウイチ。今から俺とお前は仲間だ、お前に何かあれば必ず俺が力を貸そう、命もかけてやる」


リョウマの言葉を聞いて僕はほんの少し嫌悪感を感じたので、その旨を伝える。


「よせ、命をかけるなんて言うな。僕たちは生き続けて共に戦う同志なんだ、だから命を捨てる様な事は言うな」


「そうだな……共に生き抜き、仲間でいよう」


「仲間……か、はいはい……僕もお前がピンチの時はまた助けてやる、安心しろ」


ははは、とリョウマと僕は笑い。繋いだ手に再度力を込め、握手しあった。



「……リュウイチ、お前が紅と戦う事になったら俺も力を貸そう。その時はいつでも言ってくれ」


「ん〜……少し違うな。紅と分かり合い、協力関係を築くことに納得してもらいたいんだが?」


「そうだったな、お前はそういう奴だ……俺もお前のいう紅と共存できることを信じよう」


そうだ、僕が聞きたかったのはその言葉だ。

戦うだけじゃない、分かり合える事も人には必要だ、それさえできれば、人々はきっと分かり合える……だから僕は僕の戦いをする。


「リュウイチ、一つ訊きたいんだが……」


「なんだ、急に改まって」


「……これは家族としての質問なんだが……」


……


……


……?



「正直なところミツキとサツキ、どっちを選ぶんだ?」

「選ぶか!!」


何を言い出すかと思えば、お前までそんな事を訊いてくるとは……


「あの二人から聞いてないのか?僕は今誰とも付き合うとか愛し合うとかは考えられないんだよ。だからどっちを選ぶとかは考えてないし、本人達にもそう言ったよ、数十年前から現在まで何度もな」


「……ふむ、という事は他の女を選ぶかもしれねぇってことか……あの二人も大変だな……いっそうのこと俺があの二人の架け橋の役をーー」

「しなくていい!まったく……」


……大切にはするけどな。


「……その表情は何かを決めた時の顔だ、今はそれだけでも良いだろう。あいつらを幸せにしてやってくれ」


フン……


「はいはい……」


「フッ……そろそろ戻るか、今後の方針を決めねえ事には何も始まらないからな」


僕はああ、と言って二人で訓練所を後にした。






「あ、おっかぇり〜!どうだった伯父ちゃん、りゅうくん強かったでしょ?♪」


おいおい、その言い方だとお前の家族であるリョウマが負けると思っていたみたいだろうが……


「中々痛いところをつきやがるな、サツキ……ああ、負けたよ」


「フン、当然だ。我を負かした男だ、お前に勝てるはずがない」


フューム、お前までそんな事を言うのか……リョウマが可哀想に感じてくる。


「信頼ってやつか……フフ、勝てねえはずだ」


「はいはい、そんな事より今後の事を考えるぞ」


サツキとみぃ姉が


『はいはい』


とにこやかに返事をした。


……なんだその一体感


「リュウイチさっきの戦闘の時もそうだったけど、リュウイチの力で敵側の能力をかき消していたのよね?どうして向こうがそういう能力を使っていると分かったの?」


「正直今のところ漠然としてる、思考を巡らせて一つの可能性が浮上してきた……ヨルたちと戦っていた時もだが、()()()()()の力が関与しているんじゃないかと感じたんだ……」


僕の返答に皆んなが困惑した表情をしている。それはそうだ、僕自身信じられない可能性を思い浮かべているのだから……


「リュウイチ程の力を上回る能力を使う人物……一体何者なのかしら?」


「その能力についてなんだが、リュウイチ……お前は何故そんな力を持っているのだ?」


「血縁……としか説明できないな」


そうか、と言ってフュームは再び頭の中で何かを考えている様に視線を逸らした。


「ナルミ家の血縁……この先の戦闘の事を考えると、どうしてリュウイチ隊長の能力が相手の力を抑止する事ができるのか、少し調べてみた方が良いかもしれませんね」


「なぜヤナミとナルミが敵対関係にあったのか再度調べ直してみましょうか……ユウ様なら何か分かるかもしれないわね」


そう提案したキラとみぃ姉、他の者達もそれに賛同した。


「待って、調べるべきはヤナミ家の事じゃないかしら?兄さんの能力は私達には無害なんだし……」


どうやら全員が賛成していた訳では無いようだ、ユマリが少し反対の意思を表明した。


「ユマリ、気にする必要はない。みぃ姉たちの言う通り、この先の事を考えると少しでも情報を得た方が良いだろう……気をつかってくれてありがとう、ユマリ」


「……調べるってんなら、それならネストにあるマザーベースに行くと良い、あそこなら様々な詳細情報を調べられる筈だ。そこでのアクセス許可を出しておく……いや、俺も同行しよう、その方が手っ取り早いし、俺の中のモヤモヤも解消されるかもしれねぇしな」


「我も行こう、敵討ちは出来なかったがリュウイチの能力に興味がある。ここまで来たのだ、謎が少しでも解消されるまで国へは戻らん」


一国の主とは思えない行動力と奔放さだな……でも僕がフュームの立場なら同じ事をしていただろうな。やはり、国や組織を総括するなんて僕の性にあわない。


「りゅうくん、ごめんね……りゅうくんの事探るような事をして……」


そんな事を考えていると、サツキが申し訳なさそうな表情をしながら、僕を覗き込んできた。

そして、全員の視線がこちらへ向いている事に気付き、軽く皆んなを見渡す。


みぃ姉はサツキ同様ごめんねと言いたそうな顔をし、キラとユマリは表情が暗い。


「気にするなと言ったろ、僕も確認したい事があるしネストにあるマザーベースへ行こう……そこで僕の知っている事と考えている事も全て話す」


「……分かったわ、今日はとりあえず休みましょう?リュウイチもみんなも疲れているだろうし……ね?」


一同はみぃ姉に同意し、今日は近くにある宿屋で休む事にした。リョウマの計らいで宿屋の料金はタダ、買いたい物があったので助かる。リョウマに感謝した後、僕たちは宿屋へ移動した。


「よし、じゃあみんなでジャンケンしよう!!」


「望むところよ、次は負けないわ」


またか……お前ら普通に寝泊まりする事できないのか?


「……僕は端の部屋で休む、お前たちも他のやつらの迷惑にならないようにさっさと終わらせろよ」


そう言い残し、僕は部屋へと入って行った。

荷物を置き、ベッドへ腰を掛けたあと、僕は先程から考えていた仮定を改めて組み直し始める。


僕の能力より強大な力で、あの憑依能力……あんなことができるのはやはりアイツか?仮に他の奴だとして考えても、厄介である事に変わりはない……でも、あの感覚は……ん?


コンコン


「どうぞ」


「兄さん、ちょっと良いかしら?」


入室してきたのはユマリだった、という事はジャンケン勝負は終わった様だ。勝ったのかどうかはわからないが、ユマリの表情はいつもより少し暗い……


「……マザーベースへ行っても良いの?」


やはりその事か……


「いずれはわかる事だ、その日が来た……って、そういう事さ……それと、ヤナミ家の屋敷で回収した書籍もまだお前が持っているんだろう?」


「……ええ、マスターに知らせようとも思ったのだけれど、念の為私が保管しておいたの」


そう言いながらバックパックから書籍を取り出し僕に見せ、差し出して来た。それを受け取り、パラパラと中身を確認した


「余計な気をつかわせて悪かったな」


「……良いの、その()()()()を読めるなんてみんなが知ったら、きっと混乱してしまっていたかもしれないから……」


そう、最初にこの書籍を見た時に最初の方の文章は現在使われているものだったが、あとの方になるにつれ、古代文字が混ざってきて、それを理解している者にしか読めないものだったのだ。


ユマリはそれに気づき、皆んなにそれを知らせないために、ユマリが回収し保管してきたのだろう……本当に良い女だよ、ユマリ。


「今度は僕がこれを預かっておく、マザーベースへ行った後、セントラルに戻ったらマスターに手渡す……今まで重荷を背負わせて悪かったな、ユマリ」


「私は負担だと思った事は無いわ、兄さんの事を誰よりも知っているから、そのお手伝いがしたかったの……それが出来て、とても嬉しいわ……」


そう言うと、ユマリは珍しく笑顔を見せた。

僕と二人だけの時にしか見せない表情……その表情を見たら誰しもが驚く事だろう。


でも、本当に綺麗な笑顔だ。


「助かったよ、ありがとう……明日、マザーベースへ行って何があっても絶対にみんなを責めるなよ?」


「……分かったわ……もしも、私の知らない事実が分かったとしても、私はずっと兄さんの味方だから……それだけはいつまでも変わらないから」


「ああ……さあ、お前ももう休め」


「了解……」


……そう言いながらどこに行ってるんだよお前は!


「"お前の部屋のベッド"で休め、僕の部屋のベッドでくつろぐな!」


「あら、残念……ご褒美くれないのね……」


うっ……それを言われると少し弱い……


「冗談……でも少しだけ貰うわね」


貰うってなにを……



っ!?



そう言おうとした僕の口をユマリの唇で塞がれた……



「……おやすみ……リュウくん……」


……バタン


ユマリはそう言っては部屋から出ていった。


残された僕は、またか……と、そう思いながら以前似たような事があったのを思い出した。


……もっと警戒しないとダメだな……


これ以上、あいつらを苦しめる訳にはいかないしな


僕はそのままベッドに横になり、目を閉じ、明日の事を考えつつ眠りについた……













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