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一つの物語  作者: 世界の一つ
一つの物語〜再会と再開編〜
58/112

再会と再開(挿絵あり)

「お前は……」


今までこのイレギュラーを相手にしていた男が僕を見て声を発した。僕はそいつを横目で見て確認する。


中々やるようだな、こいつらを相手にしていたわりには傷が少ない。


ん?


そうか、こいつは……


「セントラル所属のリュウイチだ、加勢する」


「感謝する」


と言っても、こいつにトドメをさすのは僕だけどな。それだけは絶対に何があろうと譲れん。


挿絵(By みてみん)


「気をつけろ、奴はこっちの行動パターンを把握してやがる」


「その心配は必要無い、僕の能力で奴らの共鳴を遮断した。詳しい説明は後ほどゆっくり話す、今はこいつを粛正する事に集中しろ」


「分かんねぇことばかりだが、ようやく分かりやすくなってきたみてぇだな」


こいつ、体力を消耗してるはずだが、すんなり立ち上がった。相当タフみたいだな。


「フン、能力を封じたか……面白い、あなた様のそのお力をとくと拝見しよう!!ジュン!時空間魔法を!!」


「私に命令するなぁ!!クックックック……さあ、精々足掻いてみせろぉ!キラァァァ!!!」


あいつは完全に正気を失っているようだな……そんなにキラに足を吹き飛ばされた事がショックだったのか?


「っ!!兄さん、魔物が!」


「分かってる……ユマリ、お前とミツキは魔物の討伐にあたれ、僕と()()()()でこいつを粛正する。異議は無いか?」


「ああ、良いだろう」


「リュウイチ!あの……」


「大丈夫だ、僕が左でやるんだから心配するな……こいつを死なせたりしないさ」


「っ!?う、うん!二人とも、気をつけてね!」


ミツキは一瞬驚いたが、すぐに落ち着きを取り戻し無数のモンスターたちに向かって刀を構えた。


「なぜ分かったのか、後でゆっくり話してもらうぜ……リュウイチ」


「はいはい、そろそろ行くぞ!」


「来い!ナルミ・リュウイチ!!四聖が一人ディラン!参る!!」


僕たちは一斉に駆り出し、攻防戦が始まった

と言うかこいつディランっていうのか、初めて知った。


「リュウイチ!何か策があるのか?」


「今のところ何も無い、真正面から粛正する」


「フッ俺の得意技だぜ!」


僕とリョウマの攻撃を防ぎきるディラン、どうやら僕以上の能力が流れ込んでいるようだ。

しかし、千里眼の能力はやはり消えてるな


「ちっ!やはり単体でも中々の実力みてぇだな……」


「いや、あいつ自身の力じゃない。感覚で分かる」


キン!ガッ!!ズガン!!


この感じ、やはりこいつの力じゃない。

こいつは……いや、今は勝つ事だけを考えろ


リョウマはあれでも疲弊しているから長期戦にさせるのは無理だ。それなら、一瞬の一撃で決めるか


「リョウマ!一撃必殺ってやつは好きか?」


「フッ!ああ、だがどうせやるなら」


「豪快に!」

「豪快に!」


だよな、いくぞ!


ナルミ流!


「てめぇたちに殺られた仲間たちの分だ!!剛覇滅牙衝(ごうはめつがしょう)!!」


「ぬぅぅっ!!……っ?!しまっ!!」


リョウマの渾身の一撃で態勢を僅かに崩し、僕はその一瞬の隙に向かって駆け抜ける!それが!


剛竜爆砕覇(ごうりゅうばくさいは)!」


左腕に思いっきり力を込め、且つ素早い動きで一気に間合いを詰め、槍ごと相手を斬り裂いた


「ガアアアアッ!!!」


「手間かけさせやがって……くっ……ハア……ハア……ハア……」


「しっかりしろ、肩を貸す……やったな」


僕は片膝を付き、息をきらしているリョウマの肩を抱えるようにして立たせ、身体を真っ二つに切り裂かれたディランに近寄る。最期まで怪力に勝てなかったな


「マヌケ」


僕はそう吐き捨て、ディランを見下ろして粛正した事を確認した。


「ハア……ハア……リュウイチ、あの子達を……」


「ああ、分かってる」


リョウマの一言と、彼がちゃんと立ててる事を確認し、未だモンスターたちと戦闘を繰り広げているミツキ達のもとへ駆け寄った。


「はあ……はあ……リュウイチ!?」


「兄さん、はあ……怪我は……ない……?」


お前達がここで踏ん張ってくれてたおかげでな。

僕は口には出さずそう思いながら二人を退かせた。


「あとは任せろ。はあっ!!」


黒百合の剣圧でモンスターたちをまとめて切り裂きモンスターの数を半数以下にした。


「さすが兄さん」


(ふむ、やはりしっくりくる剣だな)


「(フフ、それはどうも)」


意図的にユリナに語りかけ、絶賛した。


あとはキラたちの方だな


「ミツキ、リョウマを頼む」


「分かったわ!」


「ユマリ、まだ戦えるか?」


「兄さんとならどこまでも」


よし、これで向こうの援護に向かえる。

あちらはサツキ、キラ、レイ、フュームのチームでモンスターやジュンたちのと戦闘を続けている。


「ちっ!モンスターの数がいっこうに減らん!やはりあのネジが外れてる奴を潰さん限り増え続けるか……」


辛辣だな。まあ僕もそう思ったが、口に出すとは……こわいこわい。


「この足が疼くんですよぉ!キラさん、あなたを引き裂き踏みにじりたいとねぇ!」


ジュンは機械化した義足を触れながらキラに憎しみの言葉を発する。


「変なのに好かれちゃったね、キラ君」


「まあ、僕のせいですから……」


サツキの発言にキラは罪悪感の様なものを感じたのだろう、表情が暗い。


「キラ!僕が代わりにやるか?」


……


「いいえ、僕がやります!」


良い答えだ。表情もキリッとして来たし、僕の出る幕は無いかもしれないな。


「兄として、他者に任せっぱなしになるのは情けないですからね……僕も本気で行きます」


レイはいつもの笑顔を消し、覚悟を完全に決めたような、真剣な表情をしている。

二人がここまで言うんだ、僕はサツキやフュームたちが相手をしてるモンスターの群れを……いや、残党を討伐する事にした。


「フューム、サツキ、まだ戦えるか?」


「フッ誰に言っているのだ、リュウイチ。当然に決まっている」


「もち!さっさと片付けちゃおう!♪」


二人とも良い返事だ、僕は二人のやる気に少し感心した。そして、僕たちは迫り来るモンスターたちを真正面から討伐を再開する。


ギガントモンスター程ではないが、高レベルなモンスターが多いな。時空間魔法を使って出現させているにしろ、一体どこからこれほどのモンスターを召喚してるんだ


レゼロックの丘のモンスターといい、ここのモンスターといい、この辺りでは生息しない。


この辺りでは?


そうか、単純に考えれば良いんだ。こいつらはおそらく時空間魔法の空間を内部でつなげているという事か、だとしても一体何故そんなことをする?


「グオオオオ!!」


仕方ない、考えながら戦うか。


そうこうしている内にモンスターは大体片付け終わり、仮定も組み上がってきた。


この辺りと別の場所で空間が繋がっていると仮定すると、モンスターの種類としてはウエストエリアと結合されている。おそらくこいつらは所々で時空間魔法で空間結合を狙って動いている。しかしまだ分からない事もある、何故そんな事を行っているんだ?


「全員滅びろぉぉ!!メテオレイン!!」


ちっ!超級魔法を使って皆殺しにするつもりか、でも僕がいる以上、そんな事はさせない!


「ディバインエンド!」


レイ、魔法の相殺をするつもりか、それなら僕は!


「フィールドフォース!」


僕はバリアを張り、レイたちをシールドで覆った。これなら生身よりマシになるだろう。


ズドーン!!


魔法同士のぶつかり合いで、辺り一帯が衝撃波で大きく揺れた。


「くっ!」


っ!

今の衝撃でフュームが態勢を崩した、その隙にモンスターとジュンが襲いかかろうとしている。

させるか!


ズバッ!


ガンガンガン!


僕はフューム目掛けて突進してきたモンスターを斬り、ジュンに向かって右手で魔銃をとりだし、素早く狙いを定め、何発か発射した。


「礼など言わんぞ」


「残念だな、お前から感謝の言葉を欲しかったんだが……余計な気遣いだったかな?」


フッと笑い、フュームは再びモンスター討伐を再開した。その一方、僕はさすがに力を行使しているせいなのかどうか分からないが、体力が消耗してきている。

まだまだ修行が足りないな。

だが、それでも勝つのは僕たちだけどな!


「役立たずめ、ディランは再起不能になったか

。まあそんな事はどうでもよいでしょう、なんと言っても、私が血祭りにあげたいのはキラさんですからねぇ!だから、お兄様、ユマリ、邪魔をするなぁ!!」


ジュンは雄叫びをあげるように声を張り上げながら、当たり構わず上級魔法を連発させた。

僕は咄嗟にフィールドバリアを張り、それを防ぐ。


この威力と詠唱速度、これはジュンの力によるものではない。こいつも別の誰かの力を共有しているのだろうか?


「くっ!すいません、リュウイチ隊長。助かりました!」


キラが感謝の言葉を述べるが僕はそれに応えず、ディランの方に視線を向ける

バカな、奴は完全に死亡したはず。

にも関わらず、ディランは上半身だけで起き上がっていた。

下半身は斬られたまま動いていない。


「やはりぬるいな、リュウイチ」


「う、うそ……なんで生きてるの?!」


「奴は完全にリュウイチがトドメをさした筈!何故動ける!」


ディランを驚愕した表情で見つめるミツキとリョウマ、それはそのはずだ、上半身だけで動いて話している姿なんて見たら誰でも驚くに決まっている。まして死亡を確認された者なら特にな


「ふふ……ジュン、いい加減早やく転送しろ」


「っ!?はっ!申し訳ございません、了解致しました」


そうディランが述べると、ジュンは平静を取り戻したように返答する。そして時空間魔法を発動させ、ディランであった者をどこかへ転送させた。


……動けなかった、転送させることは理解していたし、それを防ごうともした。それなのに一歩も動けなかった。この感覚……やはり奴は!


……


ザッ!


ズバッ!!!


「す、すご!」


「なんだ、今の動きは。我ですら全く見きれなかったぞ。我と一戦した時はやはり完全に手加減していたという事か、良い意味でも悪い意味でも、末恐ろしい奴だ」


僕は残りのモンスターたちを一掃し、サツキとフュームの言葉を聞き流し、少しは冷静になったであろうジュンに話しかけた。


「ジュン、お前たちの親玉は()か?」


「ふふふふ……さあ、どうでしょうか?ただ一つだけお教えしましょう。次元が違います」


「キラ、レイ、フォーメーションデルタだ」


「了解しました!」


「り、了解です!」


僕とレイは魔法と魔銃でジュンに連続攻撃を仕掛け、奴はそれをバリアで防ぎつつ、反撃魔法を繰り出してくる。これで嫌でもキラを狙えないだろう、まだまだ行くぞ。


僕は魔力を強め、次々と魔弾を発射する。


バンバンバン……ガンガンガン!ドンドンドンドン!


やがてバリアにヒビが入る、それと同時にキラがチャージショットを放ち、完全にバリアが消えた。


「き、貴様らぁ!!」


「終わりです!リミテッドバースト!!」


キラがもう片方の魔銃でレイに向かってチャージショットを放った。


「ぐああああ!!クソッタレがああああああああぁぁぁ!!」


キラの攻撃が直撃し、左上半身が吹き飛んだ。それでもトドメには至らなかったらしく、ジュンは転移魔法で姿を消した。


トドメをさすにはいたらなかったか。だがこれでようやくモヤモヤしていた部分が解消された。今回の一連の騒ぎの根源は奴だ……一体何故


「と、それより、みぃ姉、お前たちの伯父は無事か?」


「ええ、かなり疲弊はしてるけど大丈夫」


「それは良かった!……ん?伯父……?えっ……」


「ええ!?伯父!??」


キラが凄まじく驚愕する。


「なんだ、気づいていなかったのか?タフさと怪力、それと口元とか、みぃ姉たちに似てるじゃないか、分からなかったのか?」


「全然分からなかったです……」


「僕も初めて知りました……リュウイチ様のガードをずっとしていた僕でも知らなかったです」


「いつ気づいたの?」


「最初からだ、怪力とか口元や目元とか、お前たち姉妹にそっくりだからな」


そんなに驚かれるとは思ってなかった。僕は皆んなの質問に答えつつ、リョウマに治癒術を施した。


「すまねぇな、お前たちまで巻き込んじまって。改めて自己紹介する、俺はリョウマ・アサギリ。コウタ・アサギリの……ミツキたちの親の兄で伯父だ」


リョウマがそう言うと、キラ達三人が自己紹介を始めた。僕はその様子を見ていると、フュームが歩み寄ってきた


「リョウマと言ったな、我はバーネル支部長フュームだ。紅たちを追ってここまで来たのだが……どうやら無事先回りできたみたいだな」


「一国の女王陛下でもあるお前が何故直々にこんな所へ?いや、それも踏まえて話をしたい。一度ネスト支部に帰還しよう。それで問題ねぇか?」


「良かろう」


「話が纏まった様だな、救援隊も到着したようだし、僕たちはネスト支部へ行こう、つもる話もあるしな」


リョウマと僕の提案に全員が賛同した、とりあえず話はそれからだな。


しかし、だいぶ派手にやられたな。街の住人やヘヴンの隊員の遺体がそこら中に無造作に倒れている……ん?


「随分こっぴどくやられた様だな、ヘヴン隊員の諸君」


あいつは……ゼンか?


「あれだけ豪語しておいてこのザマとは……やはりおまえの信念とやらはその程度か」


「あいつらは?」


「紅の奴らよ。あいつはゼン、紅のリーダらしいわ」


リョウマの質問に答えるみぃ姉の表情は怒りにも似たかなり硬い表情だ。


「はあ?あんたらだったら未然に阻止できたとでも言いたいわけ?遅れて来たくせに!」


「先回りしてこれなのかと思っただけさ、他意はない……まあ、それくらいレベルの高いイレギュラーだったと言うところか……それなら多少理解できる……ふふ」


「何がおかしいのかしら……?」


怒り心頭と言った感じにゼンに怒鳴り声を浴びせるが、彼はそれを軽く流し、辺りを見渡し小さく笑った。


「私たちに随分な大口をたたいた割に、このザマか……と思ってな」


ユマリは不機嫌を露わにして、ゼンに問いかけると皮肉を口にし更にみぃ姉たちの感情を刺激した。


「この事態を招いたのは俺の弱さだ……こいつらは関係ない……それどころかリュウイチたちは俺たちの援護をした。だからとは言わねぇが、こいつらを責めるな」


「これはこれは……ネスト支部の支部長ではないですか、まさか……貴殿がバーサーカーになって暴れまわったのでは?」


リョウマの言葉にゼンは再び僕達を批判する……こいつは触れてはいけないところに触れた……!


「何故バーサーカーの事を知っているのかはどうでもいい、だがその事でこいつらを煽るのは頂けない……早急に謝罪しここから消え失せろ」


僕は威嚇するようにゼンを鋭く見つめる


「今のところお前達と戦う理由はないし、イレギュラーの気配も感じられん……ここは大人しく去ろう。ではこれで失礼させてもらうぞ……特務執政官のリュウイチ……様」


ゼンはそう言って踵を返し彼の仲間たちと共に立ち去って行った。立ち去る際、レッカがこちらを最後まで見つめ続けながら振り返り去って行った。


何か言いたい事でもあったのだろうか?しかし奴らは仮面を被っているので、表情を読むことができない。


「あのゼンとやらが紅のリーダーか、口はよく回るようだが、器の底が知れるな……それでも信じると言うのか?リュウイチ」


「ああ、大雑把に言えば奴らと僕らの思想は似たものだ。なら、協力し合う事ができればかなりの戦力にもなるし、心強い同志にもなる……すまないな、僕のわがままに付き合わせてしまって……」


「リュウイチがそう言うなら……私も信じるけど、印象最低ね……」


「うんうん!あたしもあいつら嫌い!」


「兄さんがそういうなら私たちも今は戦わないでおく……でも兄さんを馬鹿にした罪は必ず償わせるわ」


こわいこわい……


「とにかく、支部へ行こう奴らの事もジュンたちの事もそこでゆっくり話し合うとしよう」


僕は皆んなを宥めるように落ち着かせ、帰路へつく。













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