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一つの物語  作者: 世界の一つ
一つの物語〜仲間編〜
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一つの物語〜仲間編4〜

「リュウイチ、朝よ起きなさい」


翌日の朝、いつものようにみぃ姉が起こしにやって来た。しかし今朝は昨日と違う事があった…


「んん…みぃ姉か……おいミナト、兄さんのベッドに侵入するな」


「おはようございますお兄ちゃん、兄妹だからセーフですよ」


そう、今朝はミナトが僕の部屋に不法侵入していた。気配には鋭い僕だが、なぜかミナトだけは気づかない…こいつ中々できるな


「朝から仲良しね、でもミナトちゃんに手を出したらぶん殴るわよ」


「妹に手を出す訳ないだろ、しかも僕が呼びこんだんならまだ分かるが、不法侵入されたんだぞ」


朝からみぃ姉の不機嫌そうな顔を見て僕は弁解した、そして不法侵入者は悪びれた様子もなく満面の笑顔で僕に抱きついている。


「ミナト、放せ…僕はこれ以上眠れる鬼を目覚めさせたくはない」


「誰が鬼ですってぇ?」


鬼じゃなきゃ般若か?いずれにしても色々面倒そうだから見たくない。


「あ、違ったみぃ姉か、似てるからつい」


「もう…早く着替えなさいよ、ミナトちゃん行きましょう」


みぃ姉はミナトを引き剥がし下に降りて行った。今日は朝から騒がしいな…先が思いやられる。


「おはよう、兄さん」


ユマリが台所から顔を覗かせて挨拶してきた、平穏なのはユマリだけか…


「ああ、今日も助かってるぞ、ユマリ」


「私も今度兄さんのベッドに入ろうかしら」


…おーい、ユマリー


「冗談…」


たく、ユマリが侵入してきてみろ、考えるだけで大にぎわいになりそうだ。もちろん悪い意味で…


「ユマリ、変な事言わないで…じゃあ私は先に行くわね。リュウイチ、またベースでね」


「ああ、気をつけて行けよ」


僕がそうみぃ姉に言うと、ニコッと嬉しそうに笑って玄関へ向かって出て行った…しまった、言葉の選択を誤ったか…


「あら、優しい」


ユマリが少々ジトッとした目で僕を見る

うむ、やっぱり間違えたな。


「今日はリクエスト通り味噌汁か、美味そうだなーいただきまーす」


「話そらした…」


鋭い…


それはさておき、席に着く前から思っていた事がある


「ユキタカは?先行ったのか?」


「はい、ニシミヤさんと出勤すると言ってました!」


僕の疑問にミナトが答える。ほお…上手くやってればいいんだが…


「そうか、早速行動開始したんだな。結果がどうなるかわかんないが…」


「ユキタカ、彼女ができたらしいわね」


ユマリがこちらに向かって歩いて来ながら話しかけてくる。


「ああ、昨日できたらしい。サツキの知り合いとか言ってたな」


「そう、幸せになれると良いわね」


幸せ、ね…僕は昨日のユキタカの反応を思い出してユマリの言葉を素直に受け入れる事ができなかった。


「昨日サツキに連絡してその"彼女"とやらと対話する事になった、まあ僕の執務室に連れて来るよう言ったからほとんど呼び出しに近いけどな」


「あら、じゃあ今日は行かない方が良いかしら?」


僕の話を聞いて、ユマリが少し残念そうに言った。表情は変わらないが、なんとなくそう思わせるような言い方だった。


「そうだな、いつもみたいに大人数で出迎えると圧迫されるだろうから、人数は少ない方が良いだろう」


「残念…」


…なんだ?どっちの意味での残念だ?ユキタカの彼女を見れないのが残念なのか、執務室に来れない事が残念なのか、どっちだ?


「まあ、どんな人かは追々紹介する事にして、今日は我慢してくれ」


「了解」


「ミナトにも紹介して下さいね、お兄ちゃん!」


ミナトがウキウキした口調で言いながら僕を見つめる。


「僕の彼女じゃないから、それを言うならユキタカに言った方が良いだろ。今度ユキタカに頼んでみろ」


まあ、紹介するまでに至ればの話だけどな…

僕はそう思いながらユマリの作った味噌汁をすすった。






「ユキタカに彼女?!マジなのか?」


経緯を説明し終えると、カイが驚いた。そりゃそうだ、あいつにそういう話が出たのは初めてだからな。


「それは素晴らしい、今日いらっしゃるなら大歓迎してさしあげないといけませんね」


レイは対照的に明るく発言する。さすが兄妹、順応が良いと言うかのみこみが早いと言うか…よくも悪くもすんなり受け入れている。


「で、その彼女さんが今日ここに来るのか…なんかこっちが緊張しちまうな…」


「お前はいつもの事だろ、と言うかお前もそのうちできるんじゃないか?」


僕の発言にカイは動揺する、ユキタカよりお前の方が彼女できやすいと思うんだが…どうなる事やら


「い、いや!俺はまだそんな相手いないし!と言うか、こんな俺にできるとは想像しにくいんだが…」


一理ある。でもこいつならなんやかんや良い人と出会いそうなものだが…


「カイさんに彼女ができたらその時は色々な意味でお祝いしてさしあげないといけませんね」


うむ、色々乗り越えなきゃいけない壁はあるけどな


ピー

『リュウイチ様、サツキ様たちがお見えになりました』


デスクのインターホンが鳴った。


「入ってもらってくれ」


僕が応答するとすぐさまドアが開き賑やかの塊が入ってきた。


「ヤッホー!お待ちかねのサツキちゃんだよー♪」


待ってたけど待ってない


「し、失礼致します…」


サツキの明るい挨拶の中に今にも消えそうな声が混ざっていた。


「ああ…初めまして、だな。僕がユキタカの兄のリュウイチだ、この二人は…」


「ガードその1とその2だよ♪」


サツキが横から割って入ってきた…その1と2って…


「あ、あはは…宜しく、えっと…」


カイが苦笑いしながら言うとサツキの隣にいる女性が挨拶をする


「あ、トモカ・ニシミヤ…です、宜しくお願い致します…」


物静かな子だな…緊張してるのもあるだろうけど、控えめな子なのはなんとなく分かる。対照的な奴が隣にいるから余計にそう思うんだろうな、きっと。


「レイと申します。宜しくお願い致します、ニシミヤさん」


レイはないがしろにされても笑顔を絶やさず自己紹介をすると、どうもと言った感じに僕たち三人に頭を下げるニシミヤ


「ユキタカが世話になってるな、と言ってもまだ一日しか経ってないが」


「あ、いえ…こちらこそ…」


…ん?二等粛正官…ニシミヤ…トモカ…?ああ、思い出した


「二等粛正官トモカ・ニシミヤ、またの名を"戦場の天使"だったっけ?」


「え…?」


「さすがりゅうくん、その通り!天使のような見た目と対応で男性陣から密かに囁かれている可憐な美女!それがトモカちゃんだよ♪」


前に粛正官隊員の視察に行った時にチラッと耳にした事があった、それでユキタカは天使って言ってたのか、そうかこの子の事だったのか


「なるほど、あいつが告白をOKするわけだ」


ユキタカの反応を思い出して少し思い出し笑いをした。


「…なに、ニヤニヤしてるのりゅうくん…!トモカちゃんが可愛いからって口説いちゃダメだよ!!」


どうやら思い出し笑いをした僕を見て、サツキが勘違いしたみたいだ。みぃ姉並みに睨みつけてきた、やっぱり姉妹だな…血は争えないという事か…

…て言うか誰が口説くか!只でさえ今も女関係で争いが勃発しているのに、これ以上問題を起こしてたまるか


「そんなんじゃない、昨日のユキタカの浮かれ具合を思い出してたんだよ。あいつ、かなり喜んでたぞ」


そう言ってニシミヤに目を向けると、恥ずかしそうに顔をうつむかせている。いかにも恥ずかしがり屋の女の子って感じだ。


「だってさ、ね?思い切って告白してみて良かったでしょ?♪」


サツキがニシミヤの顔を覗き込んでウィンクすると、ニシミヤは更に顔を赤らめた

っと、お楽しみはこれくらいにして本題に入るか…


「ニシミヤ、ユキタカの事本気なんだよな?」


「わー、りゅうくんの真面目な顔…なんか久しぶり」


僕の表情を見たサツキがまた反応してきた。おかしいな、いつも真面目な顔で過ごしてる筈なんだが


「え、えっと…あの…はい…」


「月並みだが、あいつのどこが良かったんだ?」


表情を変えず、僕は真っ直ぐニシミヤを見つめる、ニシミヤは顔を赤らめていてこちらを見る目はキョロキョロと泳いでいる。


「…私が戦地でケガ人を回復させている時に…その時、現場には私しか回復術を使える人員がいなかったんです…」


ニシミヤは続けて言う


「その時、私も疲弊していたんですが…ケガ人を放っておくわけにもいかなくて、あちこち走り回っていると…ナルミく…ユキタカさんが声をかけてくれたんです…無理はするな、俺も手伝うって…」


確かにあいつも治癒術は使える…と言っても、本当にかすり傷を治せるくらいだ


「最初はただ優しいだけなんだなって思っていました…でも違った…心の底から…私を手伝ってくれようとしてくれている。その思いが伝わってきたんです…」


かすり傷程度しか回復できないあいつだが、困ってる相手を見過ごせないのもあいつの性格だ


「その時からでした…ユキタカさんを無意識に目で追い始めるようになったのは…そうしていく内に…その…」


好きになった


って事か…なるほど


「…分かった、ちゃんとあいつを見てやってくれてるんだな。本当の意味で」


「……」


ニシミヤは黙ったまま俯いている…しかし一生懸命こちらを見ようとしているのが伝わった。


「ユキタカも、こうだと決めたら必死にその一つの事に真っ直ぐに対応するからな」


「ユキタカさんの本当の思いをニシミヤさんは見つける事ができたんですね」


今まで黙って聞いていたカイとレイが口を開く、間違ってはいない。こいつらもあいつをしっかり見て評価しているんだろう。


「…私は…」


ニシミヤさんがかすれた声を絞り出すように言う


「私は…ユキタカさんが好きです…だから…」


「ああ、ユキタカの事を好きになってくれて…ありがとう、ニシミヤ」


ニシミヤさんの必死になにかを伝えたいという瞳に僕は答えた。


「…りゅうくんがお礼を言うなんてかなりレアな事だよ、ヨカッタね!トモカちゃん♪」


…少々言い方に引っかかるところがあるが、まあそうだ。僕は基本的に礼など言わない、本気の思いを認めない限りな。


「あの…じゃあ…」


「僕は二人の関係を邪魔するつもりはない、今日来てもらったのはニシミヤの本当の想いを聞きたかったからだ」


一瞬ニシミヤの顔が花開いたように明るくなったが、すぐ顔を赤くして挙動不審になった

なんだ、本当にいい子じゃないか


「頑張れよ、ニシミヤ!俺たちも応援してるぜ」


「リュウイチ様が認めたんです、我々も全力で応援致しますよ」


カイとレイがニシミヤを素直に応援する。

…これで僕以外の援護も大丈夫そうだな


「あ、ありがとうございます…!」


そう言うニシミヤにサツキは隣でパチパチと拍手している。



……あとはユキタカだな、選択を誤らないでくれよ……



あ、そうだ


「おいサツキ、ミナトに変な事を吹き込むんじゃない。純粋無垢なミナトを貶すな」


「えー?貶した覚えはないよぉ、何のこと??」


すっとぼけやがって…


「ミナトが言ってたぞ、暗くなった時は…」


「一緒にお風呂入る!あぁそれね!なにがいけないの?」


このガキは…


「年頃の女の子にそういうことを言うな、ましてミナトは純粋なんだ、昨日本当に実践しようとしてたんだぞ」


「なんだ、入れば良かったのにー♪」


…こいつにはお仕置きが必要かもな


ピー

『リュウイチ様、ミツキ様がお見えです』


ち、救われたなサツキ


「わかった、通せ」


自動ドアが開き、さらっとした長い髪を揺らしながらみぃ姉が入って来た。


「リュウイチー明日の朝…ってトモカちゃんじゃない、どうしてここに…まさかリュウイチ!」


「違う、ユキタカの彼女さんだ」


一瞬睨みをきかせたみぃ姉だが、僕の言葉を聞いて冷静になったらしい


「ユキタカ?あぁ、そう言えばサツキが前にそんな事言ってたわね」


「えっ!ちょ、ちょっとサツキ隊長!何人に言ってるんですか…!?」


修羅場だ、お前の日頃の行いの報いってやつだ。おとなしく天誅を受けろ


「え?あーえっとー…何人だろう…?」


「サツキ隊長ー!」


やれやれ…

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