表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一つの物語  作者: 世界の一つ
一つの物語〜旅立ち編〜
49/112

一つの物語〜旅立ち編〜

登場人物


・リュウイチ

特務執政官、リュウイチ・ナルミ部隊隊長で"自分のため"を信念に戦う成年。戦闘時は2本の剣と二丁の魔銃を使う戦闘スタイルだが、基本的に右手だけで剣を扱っている。冷静沈着で頭脳明快であり、戦場に行ってもその性格を活かし、的確な指示を出し的確な行動をとる。そのため部下や仲間達から厚い信頼を寄せられている。時たまにみせる優しさ故、ミツキ達を始め、多くの女性に想いを寄せられているが、本人はそれを全て躱しており相手にもその気は無い事を断言している。家族関係は兄が一人、弟と妹が一人ずついる。


・ミツキ

幼馴染のリュウイチと同じ特務執政官でミツキ・アサギリ部隊隊長である。リュウイチに惚れており、彼の実の妹にすら嫉妬や警戒心を抱くほど彼を想っている。しっかりしてるがここぞと言う時に詰めが甘い時があり、私生活でもどこか抜けている。容姿端麗、頭脳明快、長く綺麗なポニーテイルが特徴。その容姿と優しさからヘヴンの隊員達には人気が高い、しかし当の本人はリュウイチにしか興味が無い。ちなみに妹であるサツキに劣らないくらいの怪力を有しているが、それを使う事はあまりない。


・サツキ

リュウイチの幼馴染でミツキとは3歳離れた姉妹。一等粛正官サツキ部隊の隊長。並外れた怪力の持ち主で、それが災いして被害を拡大させてしまう事がしばしばある。本人は一応気をつけて行動したいるもののなかなかそれが実らない。

姉のミツキ同様リュウイチに好意を寄せているが、時にミツキ達を応援するそぶりを見せたり、リュウイチに迫ってからかったりする事が多く、何を考えているのが分からない時がある。姉に似て顔はかなり綺麗に整っていて、サラッとした茶髪のセミロングが特徴

バーネルにあるたこ焼き屋っと……んーバーネル支部から少し遠いな。まあ仕方ないか、腹が減っては戦ができぬってやつだ。

僕は先程購入した旅行ガイドブックに目を通し、バーネルにあるたこ焼き屋を探していた。同行している……と言うより、半ば無理矢理ついてきたみぃ姉とサツキは別の場所で買物をしているので、僕は近くの休憩所で約一時間ほど二人が戻るまで待ちぼうけしていた。


なんで僕の買物をしに来てるのにあいつらを待たなきゃいけないんだ?


「リュウイチ、お待たせっ!ごめんなさい、少し時間かかっちゃった」


少し?強引について来て、一時間も強引に待たせて少しだと??本当にこいつら姉妹はマイペースだな


「あと三十分遅かったら一人で帰ってるところだぞ、まったく……」


「レディの買物には時間がかかるものなのよ、それに一緒に見ましょって言ったのに断ったのはあなたじゃない」


みぃ姉は目を顰めながら僕を窘めるように言っているが、ランジェリーコーナーを指さしてついて来いと言う方がおかしいに決まっている。

僕は敢えて何も言わず、視線を旅行ガイドブックに戻した。


「無視しないのっ!……って言うか何見てるの?」


ずいっと顔を寄せてきたみぃ姉に、僕は黙ったまま本の表紙を見せた。


「"バーネルを大いに楽しむためのベスト旅行ガイドブック"??もう、相変わらず緊張感が無いわね、旅行じゃないのよ」


「せっかくの遠出の出張なんだ、少しくらい娯楽を求めても良いだろう」


「あなたの場合、娯楽の方が割合高いでしょ」


僕が見ていた本を奪い、隣に座った。みぃ姉はパラパラとページを捲りながら斜め読みしている。


「サツキはどうしたんだ、一緒に買物してたんだろ?」


「あの子なら"あなたをおとすために"吟味中よ、バーネルであなたに見せる用に下着を選んでるみたい」


なんだその理由……あいつはバーネルに何をしに行くつもりなんだ?


「あっ!ねえリュウイチ、こことか綺麗じゃない?バーネルに着いたら行ってみましょうよ!」


……さっきまで僕にお説教をたれてなかったか?お前もちゃっかり旅行気分になってるじゃないか、人の事言えないぞ。

奪われた旅行ガイドブックの1ページを僕の方に見せてきた。


「ここも素敵ね、今ならお土産コーナーも半額セールをしてるみたい。バーネルでひと仕事終えたら一緒に買物しに行きましょうよ!ミナトちゃんにお土産買うんでしょ?」


ノリノリじゃないか……


「ねえ行きましょうよ、リュウイチ!」


グイグイと僕に詰め寄り、豊満なバストが僕の腕に押し当たる……わざとか?わざとなのか??


「あ〜!!あたしが居ない間に二人でラブラブしてるぅ!!みぃ姉ずるいぞぉ!!」


うわ……こんな場面を一番見られたくないやつに見られてしまった……なんてタイミングだ。

買物を終えたのか、両手に大量の買い物袋をさげたサツキが僕たちに指を指しながら迫ってきた。


「あたしもりゅうくんに甘える〜!!ほらりゅうくん、大好きなボインだよ〜♪」


「恥ずかしい事を大声でわめくな!お前たちに羞恥心というものは無いのか?」


しかもちゃっかり僕の足の上に買い物袋を置きやがって……抜け目のないやつだ、と言うか図々しいやつだ。

サツキはみぃ姉に習い自分の胸で僕の腕を挟むように押し付けて来た。そんな僕たちのやり取りを通り過ぎていく客達がチラチラと見てくる……いかん、このままじゃこいつらの思うつぼだし、誰が見てるとも分からんし変な噂がたつかもしれん!


「やめろ鬱陶しい、買物が終わったならさっさと行くぞ!」


僕はみぃ姉が持っていたガイドブックを奪還し、立ち上がり移動した。

だからこいつらと行きたくなかったんだ、毎回毎回似たような展開を繰り広げやがって、少しはこっちの身にもなれ!


「あっ!ちょっと待ってよリュウイチ!」


「可愛いりゅうくん♪ 待って〜!」


……しまった、咄嗟にみぃ姉とサツキの荷物を半分ずつ持って来てしまった……まあ良いか、もしもの時はこの荷物に役に立ってもらおう。

さて、帰る前にチョコミントを買いに行かないとな。


「ミナトちゃんのアイス買いに行くんだよね?じゃああたしショコラアイス〜♪」


「アホ、自分で買え。僕はミナトの分しか払わんぞ」


僕たちはアイス屋に立ち寄り、ミナトのご所望のチョコミントを購入した。愛想の良い店員からアイスが入っている小箱と、コーンに乗せられた状態のアイスを受け取り、僕たちは店を後にした。


ちなみに小箱に入っていないアイスは僕が今食べる分だ、ひと舐めし甘い味が口の中に広がる……美味い。


「季節なんてお構いなしね、あなたの食欲は……」


「今日の気温は暖かい方だろ、それにチョコミントが"食べて"と訴えかけて来たからな……って!お、おい!」


食べようと再び口を小さく開けようとした直前に持っていたアイスをサツキがペロリと舐めとった。


「ん〜冷たぁい!!でも美味しい〜!はい、みぃ姉♪」


我が物のようにみぃ姉に僕の腕ごと手に持っているアイスを差し出すサツキ、促されるままに僕のチョコミントを舐めるみぃ姉……お前らよくも僕のチョコミントを……!


「本当に美味しい、リュウイチほどじゃないけど、寒くても美味しいわね」


「……チョコミントをもう一つ、コーン付きで!」


僕は踵を返し再びアイス屋の中に入り注文した。

……これで食い物の恨みは237回目だ、あと13回で制裁開始だぞ、覚えてるぞこっちは!


「なんでまた買うの?一緒に食べればイイじゃん♪」


分かってるくせに。お前らは大丈夫だろうけど、僕はそういうのは許せないんだよ。恋人同士じゃない限りな。


「もう二度と僕のチョコミントや好物を奪うんじゃないぞ」


「悪ノリし過ぎたかしら……リュウイチ、ごめんなさい」


はぁ、やはりサツキよりは常識人だな。こいつと比較するのもちょっと変だが……


「次から私とリュウイチ以外に舐めさせないように気をつけるわ……ほらサツキ、謝りなさい」


「……僕はお前も咎めてるんだ」


陳謝しろ、猛省しろ!

やれやれ、昔はサツキのイタズラにミツキと僕が

叱る側だったんだが、いつからかミツキまで叱られる事が増えて来て……困った姉妹だな。


「ぶぅ……別に直接りゅうくんの唇にチューした訳じゃないんだからこれくらいイイじゃん!」


「軽い軽くないの問題ではなく、悪いか悪くないかの問題なんだよ。キスなんてもってのほかだ」


……キスか、その単語を自分で言っておきながらつい最近あった出来事の記憶か鮮明に甦る。


……


「そうよサツキ、聞いてるこっちが恥ずかしくなるから人前でそんな事言わないの!」


「うぅ……は〜い、じゃあ次からはアイスじゃなくてりゅうくんにチューしま〜す……」


みぃ姉がいつもの様にサツキを叱りつける……しかし明らかに意に介していないようだ。


してないよな?反省……お前絶対反省してないだろ?


「す・る・なっ!」


僕はサツキを一喝し、駐車場へと移動した。

ここへ来る前から思っていたが、何故僕がこいつらのために車まで出してこいつらと来なければならないのだろう……

当然でしょ?と言わんばかりに二人は僕の家にあるガレージの前で待っていたのだ。あのまま轢いてほしかったのだろうか?


「それにしてもリュウイチが車運転してくれるなんて、かなり珍しいわよね。いつもは大抵バイクなのに」


「そうそう!あたしも同じ事思ってたんだ!おかげですごい助かっちゃったよね……あっそうだ!ねぇ、みぃ姉!」


……お前らが勝手に乗って来たんだろうが

その言葉が喉まで出かかったが、とりあえず抑える事にした。なぜならここへ来るまでに似たような事を二回も言わざるおえなかったからだ……

そんな事を考えていると、二人はなにやらこそこそと話したいる様だった。何を話してるかは口元を見ればある程度分かるが、僕はあえて無視をして車まで足を運ぶ。


「ねぇ、リュウイチ?ちょっといいかしら?」


「あん?なんだ、改まって」


車の前まで着き、トランクの中に荷物を入れようとした時、みぃ姉とサツキがえらく真面目な顔をして僕を見ていた。


「朧月の渓谷でヨルと戦ったとき、あたし達りゅうくんの足でまといになっちゃったでしょ?その……あの時はごめんね……二回も助けてもらっちゃって」


何かと思えばそんな事か


「あの時、私たちがもっとしっかりしていればリュウイチの手を煩わせる事はなかった……本当にこめんなさい」


……


「僕はお前たちをその件で責めるつもりはない。むしろ僕が……その……謝罪するべき事だと思う」


僕がそこまで掠れた声で言うと、二人はキョトンとした顔で僕を見る。


「僕は自分の目の前で女が傷つくところなんて見たくない、そのためにも僕は訓練をしている。にも関わらず、僕はお前たちを傷つけてしまった……」


「だからあの時、ヨルを二刀流で倒したの?」


「……それもある。お前たちを僕の目の前で傷つけられた……それが僕には我慢ならなかった……本当にすまなかった」


あの夜の事を思い出し、僕は再び自分に腹が立った……それと同時に悔しさと無力感が込み上げて来る。


そんな僕のそばに二人が歩み寄って来ると、二人は片方ずつ僕の手を握りしめてきた。


「リュウイチ、私たちはあなたを責めたりなんかしていないし、がっかりもしていないのよ。むしろあなたが私たちの事を想ってくれていてとても嬉しいの」


「そうそう、りゅうくんは昔からあたし達を大事にしてくれてるもんね!りゅうくんがいてくれると、あたし達すごい安心するんだよ。だから謝らないで?」


……二人の言葉を聞いて、僅かに安堵した。しかし、僕の中にはまだ釈然としない気持ちが渦巻いている。また自分の目の前で大切なものが傷ついてしまったら?


その時僕はどうする?


……違う!



僕は二度と!



「お前たちの気遣いに一応感謝しておく、さあ帰るぞ」


「はいはい……もう立ち直っちゃうなんてつまらないわね」


「あっははは!残念、弱ってるりゅうくんにあんな事とかこんな事とかしようと思ってたのにぃ♪」


ふん……


……二度とあんな思いはさせない、絶対にな。


僕はトランクに全ての荷物を入れた後、車の中に入り、エンジンをかけ二人が乗って来るのを待った。そんな二人は助手席に座る権利を賭けてジャンケンをして争っている。

毎度思うが、いい加減その時々ではなく、一生助手席の権利を賭ければ良いものを……待ってるこっちの身にもなってもらいたいものだ。


「うぅ……負けた……サツキ、次は負けないわよ!」


「ふっふっふ!このサツキちゃんに勝とうなんて一億年早いわ!また負けたいなら、いつでも受けてたぁつ!!」


「ガキだな」


車の中でもめるている姉妹に呆れながら一言そう呟いた。何年経っても変わらないな、学習能力が欠けてるんじゃないか?


「誰の事で争ってると思ってんのよ!」


「だから、何で毎回僕が悪いみたいな言い方をするんだ?」


「りゅうくん……人気者は辛いね」


「第三者目線みたいな言い方してるが、お前も当事者だからな?」


こいつらわざと言ってないか……?


「もう……それにしてもバーネルに行く事になるなんてね、外国へ行くなんて考えた事もなかったわ」


「だよねぇ、あたしもビックリだよ〜」


「サツキ、お前は無理矢理着いてくるだけだろ。嫌ならここで待ってれば良い」


そう、マスターと通信を終えたあの後、僕の執務室に戻ってきたサツキたちに今回のミッションについて説明したところ、サツキは駄々をこねる子どものように一緒に行くと喚き散らしたので、渋々同行を許可したのだ。


「ヤダ!一緒に行く!!あたしだけ置いてけぼりなんてそんなの許さないからね!!」


なんか僕を責めてないか?

サツキは頬を膨らませて拒否権を発動させているが、こいつの言葉にはどこか僕に突き刺す棘があるように感じる。


「だったらおとなしくしてろよ、少しでも足でまといと感じたら帰らせるからな」


「は〜い♪」


本当に分かっているのだろうか……こいつは


「……もう……け……たく……ね……」


ん?


「何か言ったか?」


「ううん、なにも〜♪」


まあ良いか、やかましくされるよりはマシだ。

なんとなくバックミラーに写ったみぃ姉の顔をチラッと見てみたら、丁度こちらと視線が合い、それに気づいたみぃ姉はすぐに目を逸らした。

一瞬見えたみぃ姉の表情は僅かだが眉をひそめているように見えた。


……


少しの間みぃ姉をバックミラー越しに見つめたが、信号が青に変わったので僕は視線を戻した。



今回の旅で何のいざこざも起きなければ良いが……













ミナト

「一つの物語小話劇場、こんにちはナルミ家お留守番隊隊長ミナトです!」


リュウイチ

「すまないなミナト、留守番だけでなくユキタカの面倒までさせてしまって」


ミナト

「いえいえ、これくらいミナトにとっては朝飯前です!」


ユキタカ

「なんか、最近俺の扱い方が雑というか、酷すぎないか?いや、酷いと思うんだが……?」


リュウイチ

「そんな事はない、留守番に関してはミナトの方が優れているのは間違いないだろう。家の掃除や洗濯だってするし、お前はそんな事しないからこれくらいが妥当だろ?」


ミナト

「お兄ちゃんに褒めらました!!やっぱりミナトのお兄ちゃんはお兄ちゃんだけです!!」


リュウイチ

「その通りだ。次回、一つの物語〜旅立ち編2〜!ユキタカ、料理くらいはちゃんとやれよ?」


ユキタカ

「はい……シクシク……」




次回掲載日8月1日


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ