一つの物語〜それぞれの思想編8〜
登場人物
・リュウイチ
特務執政官、リュウイチ・ナルミ部隊隊長で"自分のため"を信念に戦う成年。戦闘時は2本の剣と二丁の魔銃を使う戦闘スタイルだが、基本的に右手だけで剣を扱っている。冷静沈着で頭脳明快であり、戦場に行ってもその性格を活かし、的確な指示を出し的確な行動をとる。そのため部下や仲間達から厚い信頼を寄せられている。時たまにみせる優しさ故、ミツキ達を始め、多くの女性に想いを寄せられているが、本人はそれを全て躱しており相手にもその気は無い事を断言している。家族関係は兄が一人、弟と妹が一人ずついる。
・ミツキ
幼馴染のリュウイチと同じ特務執政官でミツキ・アサギリ部隊隊長である。リュウイチに惚れており、彼の実の妹にすら嫉妬や警戒心を抱くほど彼を想っている。しっかりしてるがここぞと言う時に詰めが甘い時があり、私生活でもどこか抜けている。容姿端麗、頭脳明快、長く綺麗なポニーテイルが特徴。その容姿と優しさからヘヴンの隊員達には人気が高い、しかし当の本人はリュウイチにしか興味が無い。ちなみに妹であるサツキに劣らないくらいの怪力を有しているが、それを使う事はあまりない。
・ユキタカ
リュウイチの弟で二等粛清官。
お気楽極楽がモットーでいい加減な態度が多く、戦闘になるとやや好戦的になる。兄のリュウイチとは違い、砕けた物言いが特徴でそれをたまに注意される。
トモカに告白され、一度は破局の危機に陥ったがリュウイチのアドバイスにより本格的に交際するに至った。トモカに告白されただけあり内面には心優しい部分がある。その点は周りも納得しているが基本的には
ヘタレでいい加減な性格をしている。
戦闘スタイルは大剣で相手を豪快に薙ぎ払うが、一応リュウイチと同じくナルミ流を基礎としておりたまに似た技を使う事がある。
・トモカ
ユキタカの恋人でサツキとは仲が良いが、敬語で話す。二等粛清官であり容姿端麗で慈愛に満ちたその性格と容姿から隊員達の間では"戦場の天使"と言われている。穏やかな性格だが、リュウイチ達が認めるくらい芯が強く、他人を見極める能力が高い。戦術は主に魔法と治癒術、魔力を凝縮させた弓の様な独特の武器を用いて戦い、遠距離支援を担当している。
・アカリ
サツキの後輩でトモカの妹、姉のトモカより先輩のサツキの方に懐いている、そのせいか言う事や話し方がサツキに似ており、リュウイチにため息いをつかせる事がほとんどである。
また、リュウイチやユキタカの事をお兄ちゃんと呼んで慕い、自分は未来の妹だと自信たっぷりに言って、トモカとユキタカを赤面させる。
ヘヴンの隊員研修生であり、戦闘スタイルはサツキと同じで怪力と格闘戦で対象を排除する。
「落ち着いて移動して下さい!我々がシールドを発動させておりますのでここは安全です!」
「我々が必ず死守致します!慌てずに行動して下さい!」
市民達の悲鳴や雑踏の中から警備隊達の呼び声が飛び交っている。そんな中、リュウイチは騒ぎの中心部へ走り続けていた。
そして白煙が上がっている場所に到着し、リュウイチは警戒しながら、人の気配がするその煙の中へ入って行く。しばらく行くとこの白煙の中心であろう地点に辿り着き、リュウイチは歩みを止めた。
「……ここまでか」
リュウイチの目の前に立つ僅かながらに見える人影がそう呟くのが聞こえた。
「ああ、バカ騒ぎはここまでだな。ホーリーヘヴン所属のリュウイチだ、街の中で重火器を振り回すとは、随分と残念な度胸を持ってる残念な奴だな」
「ふっ……ホーリーヘヴンの者か……確かに残念だな、容疑者を目の前にして取り逃がしてしまうのだから」
「ほお、図太い神経だというのは間違いないみたいだな。大人しく捕まるつもりはないらしい……」
リュウイチは謎の人物と皮肉を浴びせ合いながら右手で鞘ごと抜き、その人物までゆっくり歩み寄る。姿はハッキリと見えないが、声で女性だと判断できた。
「……見たところ魔銃を装備しているようだが、それを使わず、何故わざわざ剣を抜く……それも帯刀したままで……」
「これが僕のスタイルなんだ、少々痛みを与えるがその辺は覚悟しておけ」
「ホーリーヘヴン所属のリュウイチ……そして女に対しては帯刀を貫く……そうか、お前が……」
そう言いながら女はリュウイチの方へ振り返り、先程より煙が晴れてきた為、相手の姿が段々確認できるようになってきた。相手は仮面をつけているが、長髪に声……女だという事にもう間違いはない。
「……僕の事を知っているみたいだな、他に何を知っているのか本部でゆっくり話さないか?」
「ふふ、なかなか面白い誘い文句だな。しかし丁重にお断りする、他と待ちあわせているのでな」
「丁度いい、お前"たち"について他の奴らからも話を訊きたい……色々と教えてもらおうか!」
リュウイチは鋭い目付きで仮面の女を見つめ、左手で魔銃を取り出すと同時に建物の影に潜んでいた者に向かって発砲する。
「ぐっ!クソッタレめぇ!」
リュウイチの攻撃が直撃した仮面をつけた大男が怒りを露わにして彼に反撃する。
「ほお、随分と頑丈な装備をしているんだな、伊達にでかい図体をしてる訳じゃないって事か」
仮面の大男の攻撃を回避しながらリュウイチは無線で近くにいる警備隊に連絡をとる。
「こちらリュウイチ、騒ぎの一因と思われる者達と交戦中、すぐに警備隊と二等粛正官をよこせ」
『了解、直ちに向かわせます!』
(ヘヴンからこの位置までかかる時間は普通なら約五分、だがユキタカやトモカ達なら!)
「ダイ!深追いはするな!撤退するぞ!」
「おめえは先に行きな!オラがコイツをくい止める!!どりゃあ!!」
ダイと呼ばれる男は両手のミサイルランチャーを発射させながらリュウイチに迫る。
「上等だ!」
リュウイチは時空間魔法を発動し、放たれたミサイル弾を瞬間移動させ上空へ転送し爆発させる。
「そんな破壊力があるものを街中で乱射するな、被害が拡大するだろうが!」
「ぬぅ……だったら大人しくオラたちを見逃せぇい!!」
「話が通じるんだか通じないんだか分からない野郎だ。イレギュラー……ではないみたいだな」
リュウイチは戦闘しながら相手に違和感を感じていた。イレギュラーを相手にしているような殺伐とした雰囲気が無く、相手からも殺意を感じない。
そう思っている時、仮面の女が近くにあるマンホールに向かっている所を目にし、リュウイチは魔銃に閃光弾を装填し、すぐさま飛び出す。
「っ!?」
「女に下水道は似合わないぞ!」
「させんっ!!」
リュウイチに向かってランチャーを乱射させながら突進を繰り出すダイ、リュウイチは再び時空間魔法を発動させミサイル弾を空に転送させ、それと同時に真正面からその大きな巨体を相手にしたその瞬間、自分の倍はある巨体を軽々と投げ飛ばした。
「なにぃ!?ぐおおっ!!」
「ダイ!!」
マンホールの蓋を女が持つ大剣で破壊し、投げ飛ばされ倒れたダイに向かって呼びかける。リュウイチは仮面の女に向き直り追いかけようとしたが、ダイに足を掴まれ空中へ放り出された。
「行けぇ!レッカ!!ぬおおお!!」
「ちっ!タフな奴だな」
リュウイチは閃光弾を発射させ、二人の目を一瞬眩ませた。それと同時に彼はレッカと呼ばれた女に小型の発信機を投げつけた。
目が眩んでいるにも関わず、レッカは感覚のままに下水道へと姿を消した。しかしリュウイチは追跡しようとせず、その場に留まった。
「これでサシの勝負だぞい!リュウイチ!!」
「はぁ、僕はあの時こんな事をしたのか、自己嫌悪だ……」
つい最近、朧月の渓谷にて自身がダイと似たような行動をした事を思い出し、軽くため息をつき少々自己嫌悪に陥るリュウイチ。そんな彼を見てダイは不思議そうな表情をする。
「なんぞ?どういう意味だ??」
「別に……そんな事より、自分の身を案じた方が良いぞ」
ダイはリュウイチの言葉を聞き更に困惑した。その時
「ツインアロー!!」
声がした瞬間、ダイの両膝に魔法で生成された白く光る矢が直撃し、ダイの体勢が崩れた。それと同時に倒れ込んだダイに剣を突当てる人物が現れた。
「おっと動くなよ?動いたらこの大剣でお前の首を飛ばしちまうぞ」
「なかなかナイスタイミングだぞ、ユキタカ、トモカちゃん」
そこに駆けつけた二人はユキタカとトモカであった、トモカは光の魔法で生成された弓を構え、ユキタカは大剣をダイに向けている。
「という訳だ、大人しくしてた方が身のためだぞ」
「ぬぅ……卑怯者め……!」
「お前が言うな」
リュウイチはそう言いながら、片膝をついている状態のダイの頭に右手で持っていた鞘で軽くコンと叩く。
「すみません、遅れてしまいました……リュウイチお兄さん、お怪我はありませんか?」
「ああ、大丈夫だ。それよりこいつを頼む、僕は下水道へ逃走したもう一人のやつを追う」
「あいよ、任せとけ!」
ユキタカは力強く返事をして、トモカとともにリュウイチを見送った。
「にしてもその巨体……どうやったらそんなに体がでかくなるんだ?」
「うははは!日々の鍛錬のたまものだ!そして大量に食う事だ!」
「リュウ兄も毎日修行したり筋トレとかしてるけどあの体型だぜ?しかも毎日たこ焼きを5パック食べてるけどあんな細心だぜ……?」
「むむ……何も言い返せん……」
ユキタカの返事にダイは何も言い返す事ができなかった。そんなダイは先程手合わせしたリュウイチの体型を思い出し、なんとも言えない悔しさが渦巻いた。
ーーエブニー・下水道内ーー
下水独特の臭気に満ちた空間に足を運んだリュウイチ。人の通った痕跡を確認しているが、その様な跡は見当たらない。
(まさかこの汚水の中を伝って移動したのか?常人とは思えないな……もしかするとシールドを駆使したのだろうか?それにしても大胆な女だな、それとも肝が据わっているとでも言うべきかだろうか?)
そう考えながらリュウイチは辺りを確認する……しかしやはり痕跡は見当たらない。発信機の信号を確認するためSPDを取り出し起動するリュウイチ。
(……東の方へ移動してるみたいだな……しかしマップで構造や行き場所は確認できるが、複雑に入り組んだ通路にサボタージュが施されてる可能性はゼロではない。それでも僕一人で追跡する事はできるが……やつと戦闘するとなると僕の方に分が悪い。発信機がちゃんと作動してるか確認できた事だし、ここはいったん引き返すか)
リュウイチはそう考えながら元来た通路を辿って地上に戻る事にした。
(……にしても酷い臭いだな、家に帰る前になるべく臭いを落としてから帰らないと臭いが染み込んでしまう)
まとわりつく臭気に嫌気をさしながら地上の光で照らされているハシゴを登る 。
ーーエブニー・地上ーー
地上は先程より騒がしくなっており、警備隊が辺りを封鎖していた。ダイは両手両足に錠をされており、警備隊達によって拘束されている。
「お、戻ったか!……げっ……リュウ兄、めっちゃ臭いぞ……」
「そんなに気になるならお前も下水道に入れてやろうか?気にならなくなるぞ」
「……勘弁して下さい」
嫌味を言うかのようなユキタカを一蹴して黙らせ、リュウイチは本部に連絡をし始めた。
「こちらリュウイチ、容疑者の一人が下水道を使って逃走した。容疑者に発信機を取り付けてあるが、念の為この辺り一帯の下水道を包囲し警戒させろ。発信機は下水道でも作動してる事も確認済みだ、これから転送する暗号信号を頼りに、やつが何処へ向かっているか解析してくれ。以上だ」
『了解致しました、すぐに取り掛かります。ミッションエンド、お疲れ様でしたリュウイチ様』
通信を切り、リュウイチは改めて自分の服を嗅ぐ……汚水の臭いが鼻を突き刺す。しかめっ面をしたリュウイチは今すぐにでも本部のシャワールームへ駆け込みたかったが、その前に確保した容疑者の元へ行き尋問を始める。
「本部に砲撃したのはお前だな?何故あんな事をした?」
「ふん!おめえには教えてやらん!」
その返答を聞いたリュウイチは、間髪入れずにダイの足のつま先を遠慮無しに踏みつけた。ダイはたまらず痛みの悲鳴をあげたが、リュウイチは無表情のまま更に踏みつける。大男は暴れて拒もうとしたが、リュウイチにダイの肩を信じられない程の力で押さえられ、身動きする事を許さない。
「答えろ」
一見するとシンプルな駆け引きだが、リュウイチは力強くダイの足を踏みつけている。大男からすれば、まるで自分の足が巨大な岩に押し潰されているに等しい痛みであり、呻き声を我慢しろと言う方が無理な話である。
「がぁーーっ!!……お、おめえは信じぬだろうが、た……ただ狙いを外しただけだぁ!」
「だとしたら何を狙っていたんだ?鳥を撃ち落とすにしてはバカでも分かるくらい十分すぎる威力だろ。大人しく答えろ」
「へ、へんっ!ただの狩りだ!」
リュウイチの更なる質問に、ダイは僅かに強気に出たが、それは間違った選択であり、それを聞いた彼は先程とは逆の足を踏みつけた。
この間リュウイチはずっと無表情のままである。
ダイは再び大きな呻き声をあげ、リュウイチはそれを見て踏んでいる足に更に力を込めた。
「ぬあああああっ!!!本当だ、本当に狩りをしていただけだ!!鳥ではなくイレギュラーを狩りに来ておったのだ!!」
「イレギュラーを狩る?どうしてそんな事をしているんだ?お前達は一体何者だ?」
「お、おめえたちホーリーヘヴンの者達が裁ききれないイレギュラーをオラたち"紅"が断罪しておるのだ!!」
リュウイチはダイの言葉を聞いてハッとした、最近ニュースでたまに報道されてる、ホーリーヘヴンを頼らず自衛隊が編成されその者達だけでイレギュラーたちを裁いているという報道の事を思い出した。
「ほお、つまり裁きの真似事か」
「ふ、ふん、なんとでも言え!!」
「では最後の質問だ、他の連中は何処にいる?そして次の狩り場所はどこだ?」
「そ、それは絶対に言えん……!オラの信念に誓って、仲間たちを売るような事はオラは絶対にせん!!」
そうかと言って、今度は大男の肩を押さえつけていた右手に力が入り肉が抉られるような激しい痛みがダイの肩付近を駆け回る。更に鋭く冷たい視線でリュウイチはダイを睨みつけた。
しかしダイは絶対に言わんと連呼しながら叫んでいる。
「……まあ良いだろう、こいつの信念の強さはなかなかのものだ。とりあえず拘置所に入れて改めて尋問しろ、少なくてもいいから情報を聞き出せ」
「了解致しました!!」
「オラは何も吐かぬぞ……!」
「はいはい……勝手に言ってろ」
ある程度の情報を得たので、さっさと本部のシャワールームへ行こうと、リュウイチは足早に帰還する。
本部へ戻るまでの間、彼は"紅"という集団の事を考えていた。
(ヘヴンでは裁ききれない奴らを私情によって裁きの真似事で排除する者が表立って現れたか……社会混乱に陥らなければ良いが)
リュウイチは今後の情勢を憂いた……厳密にはこれによる今後のマスターや上にいる者達の動向を憂いていた。しかしそうは思っていても、リュウイチ自身は例えどんな事があろうとも自分の思想や行動原理は変わらないと決めている。
そう、あの日からずっと……
ーーホーリーヘヴン・メインエントランスーー
「あ、りゅういちお兄ちゃん!」
「リュウイチ!怪我は無い!?」
ヘヴンに帰還するや否や、アカリとミツキがリュウイチを出迎えた。彼からしたらアカリや他の研修生の事を任せたミツキ、そしてその研修生であるアカリがこの場に居る事態に疑問が先走る。
「なんでお前らがここに居るんだ?会議室で待機してろと言っただろ」
「ご、ごめんなさい……でもちゃんと警戒が解除されてから来たもん!」
「ごめんなさい……私たちどうしてもあなたが心配で……でも、念の為サツキが残って他の研修生達を会議室から出ないよう見張ってくれているの……それで、あなたは怪我とかしてない?」
彼女達の発言に対し未だに疑問を抱くリュウイチ、ため息を吐きつつミツキたちの不安に大丈夫だと言って答え、彼女たちは安堵し微笑みを浮かべた。
「気は済んだか?下水道に入ったから、僕はさっさとシャワールームに行きたいんだ。他に用がないならもう行くぞ」
「あ、じゃあ私が服を洗濯してあげるわね。アカリ、あなたは会議室に戻ってサツキ達と合流しなさい、私とリュウイチはこのままシャワールームに行くから」
一人で行こうとしたリュウイチを引き止めたミツキは、アカリにそう言って指示を出す。
「え、でも……わ、分かりました……」
当のアカリはその指示に何となく納得できないといった様子で渋々頷いた。そして彼女はリュウイチの方に視線をもどし、彼に何かを伝えたいような表情で見つめている。
「僕なら大丈夫だ、それと後で会議室へ立ち寄る。また後でな」
リュウイチの言葉を聞いたアカリはニコッと笑いパタパタと走り、会議室へ戻って行った。それを見届けたリュウイチとミツキはシャワールームへと歩き出す。
「結局さっきの騒ぎの原因はなんだったの?やっぱりイレギュラー?」
「イレギュラーではなかった。奴らが言うには自分達は僕達が裁ききれないイレギュラーを狩る者達"紅"という組織らしい。一人は拘束したが、もう一人は下水道に逃走した。さっきの砲撃は奴らの一人が放った流れ弾だったと言っていた」
「流れ弾、ね……本当にそうなのかしら?」
リュウイチの説明にミツキは疑問を抱く。確かに簡単には信じられないのも無理はない、リュウイチ自身未だに解せないことがある。仮に流れ弾だったとして、砲撃の対象となっていたイレギュラーは何処へ行ったのか、そしてどんなイレギュラーを相手にしていたのか、色々と謎な部分が多いからだ。
「どうなんだろうな……まあとにかく身柄を拘束したその紅とやらの一人に色々と訊いてみるさ」
そう会話している内にシャワールームへ到着した二人、リュウイチは男子更衣室へ入る前にミツキが先客が居ないか確認するよう促し、彼に確認させる。
更衣室の中に誰も居ないと確認したリュウイチはミツキにその事を伝えた。
「じゃあ、脱いだものをこの袋に入れて。あなたが出る前に洗濯してすぐに乾燥機にかけておいてあげるから」
「先にシャワーが終わってもここで待ってろと?多少湿っていても構わないから、ズボンだけでも持って来てくれ。上は最悪トレーニングウェアを着るから」
「分かったわ、私はランドリールームに居るから終わったら連絡してね」
「ああ、分かった。じゃあまた後でな」
ミツキは綺麗な笑顔を浮かべ、ランドリールームへと歩いて行き、リュウイチはそれを確認した後扉を閉める。
ミツキはリュウイチの服が入っている袋を抱きしめながら、鼻歌を歌いながらランドリールームへ向かうのだった。
アカリ
「一つの物語小話劇場〜!こんにちは、アカリでーす!♪」
リュウイチ
「暑いのに騒がしいやつが来やがった……はぁ」
アカリ
「ちょっと!いきなり蔑ろにするなんてひどくない!?」
リュウイチ
「なら少し静かにしてくれ、僕は暑いのが嫌いなんだ。無駄に労働力を使いたくない」
アカリ
「噂通りの反応だね……でもりゅういちお兄ちゃんは夏が好きなんでしょ?」
リュウイチ
「まあな……でも暑いのは嫌いだ」
アカリ
「変なの……あ、次回!一つの物語〜それぞれの思想編9〜……じゃありゅういちお兄ちゃん、一緒にプール行こうよ!」
リュウイチ
「……うっ……ぼ、僕は行かないぞ!」
アカリ
「ふふふ……なるほど、これも噂通りなんだねぇ♪」




