一つの物語〜それぞれの思想編5〜
登場人物
・リュウイチ
特務執政官、リュウイチ・ナルミ部隊隊長で"自分のため"を信念に戦う成年。戦闘時は2本の剣と二丁の魔銃を使う戦闘スタイルだが、基本的に右手だけで剣を扱っている。冷静沈着で頭脳明快であり、戦場に行ってもその性格を活かし、的確な指示を出し的確な行動をとる。そのため部下や仲間達から厚い信頼を寄せられている。時たまにみせる優しさ故、ミツキ達を始め、多くの女性に想いを寄せられているが、本人はそれを全て躱しており相手にもその気は無い事を断言している。家族関係は兄が一人、弟と妹が一人ずついる。
・ユマリ
リュウイチ直属の一等粛正官で彼の部下兼護衛を務めている。物静かであまり多くを語らない、幼馴染のリュウイチを兄と呼んで彼を慕っているが、その想いは兄としてではなく、一人の男として彼に好意を抱いている。ミツキと同じく少々独占欲が強い。
兄のレイとジュンの事は名前で呼んでいる。彼女曰く、自分の兄はリュウイチだけとの事。
兄に似て魔法も使えるが、基本的に短刀を使い、まるでニンジャのような動きをする。
・ミツキ
幼馴染のリュウイチと同じ特務執政官でミツキ・アサギリ部隊隊長である。リュウイチに惚れており、彼の実の妹にすら嫉妬や警戒心を抱くほど彼を想っている。しっかりしてるがここぞと言う時に詰めが甘い時があり、私生活でもどこか抜けている。容姿端麗、頭脳明快、長く綺麗なポニーテイルが特徴。その容姿と優しさからヘヴンの隊員達には人気が高い、しかし当の本人はリュウイチにしか興味が無い。ちなみに妹であるサツキに劣らないくらいの怪力を有しているが、それを使う事はあまりない。
・サツキ
リュウイチの幼馴染でミツキとは3歳離れた姉妹。一等粛正官サツキ部隊の隊長。並外れた怪力の持ち主で、それが災いして被害を拡大させてしまう事がしばしばある。本人は一応気をつけて行動したいるもののなかなかそれが実らない。
姉のミツキ同様リュウイチに好意を寄せているが、時にミツキ達を応援するそぶりを見せたり、リュウイチに迫ってからかったりする事が多く、何を考えているのが分からない時がある。姉に似て顔はかなり綺麗に整っていて、サラッとした茶髪のセミロングが特徴
・カイ
リュウイチのガード兼親友であり、彼の護衛で彼の良き友でもある。リュウイチと同様剣の使い手で腕前は超一流であり、素早さに特化した戦闘スタイルである。極度の緊張症で女の事になると右往左往してしまい、言葉がたどたどしくなる。が、男女関係なく気さくな性格なので、女は勿論男にも人気がある。
・レイ
カイと同じくリュウイチのガード兼親友。いつも笑顔を崩さない明るい成年で妹にユマリ、弟にジュンがいる。魔法を得意としており、時空間魔法や上級魔法も短い詠唱で発動する事ができる所謂天才であり、本人はそれを誇示したりしない。たまにサツキと一緒になって悪ノリをしてリュウイチに叱られることがあるが、反省はしていない様子。
・ユキタカ
リュウイチの弟で二等粛清官。
お気楽極楽がモットーでいい加減な態度が多く、戦闘になるとやや好戦的になる。兄のリュウイチとは違い、砕けた物言いが特徴でそれをたまに注意される。
トモカに告白され、一度は破局の危機に陥ったがリュウイチのアドバイスにより本格的に交際するに至った。トモカに告白されただけあり内面には心優しい部分がある。その点は周りも納得しているが基本的には
ヘタレでいい加減な性格をしている。
戦闘スタイルは大剣で相手を豪快に薙ぎ払うが、一応リュウイチと同じくナルミ流を基礎としておりたまに似た技を使う事がある。
・トモカ
ユキタカの恋人でサツキとは仲が良いが、敬語で話す。二等粛清官であり容姿端麗で慈愛に満ちたその性格と容姿から隊員達の間では"戦場の天使"と言われている。穏やかな性格だが、リュウイチ達が認めるくらい芯が強く、他人を見極める能力が高い。戦術は主に魔法と治癒術、魔力を凝縮させた弓の様な独特の武器を用いて戦い、遠距離支援を担当している。
・アカリ
サツキの後輩でトモカの妹、姉のトモカより先輩のサツキの方に懐いている、そのせいか言う事や話し方がサツキに似ており、リュウイチにため息いをつかせる事がほとんどである。
また、リュウイチやユキタカの事をお兄ちゃんと呼んで慕い、自分は未来の妹だと自信たっぷりに言って、トモカとユキタカを赤面させる。
ヘヴンの隊員研修生であり、戦闘スタイルはサツキと同じで怪力と格闘戦で対象を排除する。
・ハク
イレギュラー化したミソラと入れ替わりに転属された、特務執政官ハク・ミドリ部隊隊長で、おしとやかな女性隊員。アカリ曰く可憐で綺麗な顔立ちをしている、容姿端麗の美女。カイに一目惚れした様子で、彼と話す時は顔も見れない程恥ずかしがる。
・ソウヤ
ホーリーヘヴン研修生の一人、口調が荒く性格も喧嘩早いため、リュウイチからは軽く敬遠されている。ソウヤ自身は一度リュウイチに窘められた時に、彼の義理人情や人柄、実力に惚れ込み、兄貴と呼び慕っている。リュウイチや彼の家族関係者、恋人には敬語を使うがそれ以外の人物にはタメ口で話、見下している。
「あ、やっほー!カイ君?今りゅうくんと一緒にいる??」
『よう、お疲れさん!今日も相変わらず唐突だなサツキは、リュウイチなら今マスタールームに行ってて執務室には居ないぞ。何か用でもあるのか?』
カイさんが呼び出しに応じた途端、すぐさまりゅういちお兄ちゃんの居場所を聞き出すサツキ先輩。しかしカイさんは笑顔で挨拶し返したが、りゅういちお兄ちゃんは留守らしい……
「マスタールーム!?い、いくら特務執政官でも、マスタールームまでは滅多に入れないはずじゃ……!?」
『ん?聞き覚えの無い声だな、サツキの知り合いか?』
そう言えば、マスタールームって確かにホーリーヘヴンで限られた人しか入れない上に、厳重なセキュリティに守られてて、必要コードを発行するにも幾つもの審査によって発行の許可を得ないといけないし、あと……なんだっけ?
とにかくそれくらい、マスタールームへ入れるのは滅多にできない事のはず……やっぱりりゅういちお兄ちゃんってすごいんだなぁ……!
「あぁ、紹介するね!……んしょっ!こちらは今日転属してきたばかりのハクちゃん!んでこっちのりゅうくんには負けるイケメンさんが、カイ君!りゅうくんのガード(下僕)を務めてるんだよ♪」
「あ……」
『あ……』
ん?どうしたんだろ?
ほぼ無理やりサツキ先輩に抱きつかれたミドリさんとウィンドウ越しのカイさんが見つめ合ったまま固まってる……
まさか……!!♪
「あ、ご、ごめんなさい!突然その……はじめまして、私特務執政官ハク・ミドリ部隊隊長のハク・ミドリと言います!」
『お、俺はリュウイチのガードのカイ・セトだ……よ、宜しくな……と、は、はじめまして、だな』
恋だな!♪ しかも、お互い一目惚れと見受ける!♪
私はついニヤニヤして二人を見てしまった。そんな私を見たサツキ先輩もにっこりしてウィンクをしてきた……さすがサツキ先輩、私たち息ぴったり!!♪
「ごめんねぇ、二人のラブシーンを見てたい気持ちもあるんだけど、私たちのメインはりゅうくんの事なんだ♪ 」
『ら、ラブシーンってなんだよ!!お、お、お、お、俺はべべべべべ別にそんな事!!』
サツキ先輩の確信に満ちた発言に、カイさんは分かりやすいくらい動揺してる。へぇ、結構面白い人なんだなぁ、カイさんって!♪
そんな二人のやり取りをミドリさんは顔を真っ赤にしながら視線を逸らしてる……案外お似合いなカップルさんになるのかも!
「はいはい、わかったわかった♪ とりあえず、りゅうくんが戻ったら引き止めててくれるかな?あたし達、あと五分程でそっちに行くからさ!」
『あ、ああ……分かった、もしそれまでに帰って来なかったら連絡するよ』
「よろしく〜〜!じゃあ、またね♪ 」
ピッ!
サツキ先輩は通話を終え、ミドリさんにねえねえと言いながら話しかけた。
「ハクちゃんSPD持ってる?持ってるならカイ君の連絡先教えるよ!♪」
「えっ!ど、どうしてですか!?」
「ありゃぁ??サツキちゃんの勘違いかな〜??ハクちゃんの顔に知りたいって書いてあるんだけど〜??♪」
イタズラな口調でミドリさんに迫るサツキ先輩、あのおしには、ミドリさんの様におしとやかな性格の人ではきっと、はむかえないだろう。
「……もしかしてトモカもあんな感じでサツキ姉に迫られたのか?」
「う、うん……すごい圧力で迫られて、これは言わないとずっとあんな感じになるだろうと思って……」
サツキ先輩とミドリさんのやり取りを見ていたユキタカお兄ちゃんが、お姉ちゃんに察した様に質問すると、お姉ちゃんは素直に答えた。
やっぱりそうだったんだ……お姉ちゃんもあのサツキ先輩には勝てないだろうしね
「はい、これでよしっと!……あ、見学タイム終了〜!どうかな、何か質問がある人とかいる?……はいキミ!」
「このベース内にいる総人数はどれくらいなのでしょうか?」
「ん〜……10万人以上だったような気がする♪」
「あ、ありがとうございます……!」
りゅういちお兄ちゃんの時と違ってちょっと答えになってない感がある……質問した研修生も煮え切らないと言った感じでお礼を言ってるけど……りゅういちお兄ちゃんと比べちゃうとあれだよね……
「まあよしとしよう!♪ じゃあ研修第三部はここまで
!三十分後に第3会議室に集合だよ!みんな、遅刻しないようにね〜♪」
『了解致しました、サツキ様!ありがとうございました!!』
私たちはサツキ先輩に敬礼を済ませ、自由行動に入った。私は部屋の外で待っていたお姉ちゃん達と合流し、特務執政官ベースに移動し始めた。
「そういや、リュウ兄の執務室のセキュリティシステムが変わったんだよな。みんな、パスワードちゃんと覚えてるか?」
「うん、私は忘れないように分かりやすい番号にしたから……ユキタカ君は?」
「俺も!忘れたら二度と入れないってリュウ兄に脅しに近い言い方されて、何度も暗記練習したんだよ……あの鋭い目付きで言われたら、覚えるしかなくてさ……」
あはは、確かにりゅういちお兄ちゃんなら言いそう!ユキタカお兄ちゃんもお姉ちゃんも専用パスワード作ってもらえて羨ましいなぁ……私も頑張って入隊してパスワード作れるよう頑張らなきゃ!
「あ、あの!ユキタカ兄ぃ!!俺も一緒に連れて行ってはくれませんか!?俺、もう一度兄貴と話がしたいんす!お願いします!」
「な、なんかその呼び方慣れないなぁ……あーいいんじゃないか?でもその前に武器とか危険物持っていないか、SPDでスキャンさせてもらうぜ?」
「ありがとうございます!どうぞ!」
キド君が明るい……いや違うな、大声で男って感じの声量でお礼を言うと、ユキタカお兄ちゃんはスキャンを始める。りゅういちお兄ちゃん達が持っているSPDは私やキド君の持っている物とは違い、ヘヴンに属する人専用のシステムを加えられているSPD……スキャン機能などが使える物らしい。
そう思っていると、スキャンが終わったらしく、異常は無かったようだ。
「アカリ、あなたもスキャンするからこっちに立って……これが決まりなの、ごめんね」
「いいよいいよ!お願いねお姉ちゃん!♪」
お姉ちゃんが申し訳なさそうな顔をしたので、私は明るく快諾した。スキャンが始まり、結果が直ぐに出た……異常無し。良かった!
「これでよし、じゃあ行きましょう、アカリ」
私は元気よくうんと返事をしながらお姉ちゃん達と再び歩きだす。
オートウォークで連絡橋を渡り、特務ベースへエレベーターで移動する。
「本当にここ広いよね、セキュリティシステムとかしっかりしてる分、警備の人達大変そう……」
「りゅうくんが一度そういう所を訪問した事があって、あたし達もついて行った事があるんだけど、すっごいモニター量だったよ。あたし何がなんだかわからなくなったってりゅうくんに言ったら"僕は案外モニターの数少ないんだなって思った"って言われちゃったんだよね〜!」
うわすご……でもりゅういちお兄ちゃんなら言いかねないかも
「リュウ兄は家で色々やりながら映画観たりしてるからな、それでも映画の内容や場面を覚えてたりするから、バケモノって言ったら一時間正座させられたよ……」
「あっははは!りゅうくんらしいね〜!あたしもあれを初めて見たときは驚いたよ、普通だったら混乱するような事を平然と把握するんだもん」
あはは、確かに!サツキ先輩達がそう会話していると、笑顔と笑い声が飛び交った。みんなりゅういちお兄ちゃんの事でここまで明るくなれるなんて、本人が居なくてもここまで会話が盛り上がるんだなぁ
「さすが兄貴だ……俺たちに説明してたクウカンニンシキノウリョクってそういうやつなんすね!」
うーん……なんか近いけど違うような気もする……
そうこう会話している内に、りゅういちお兄ちゃんの執務室があるフロアに着いた。
"執務室・特務執政官リュウイチ"
ここがりゅういちお兄ちゃんの執務室……すご!
強化ガラス張りの壁に頑丈そうな自動ドア、ここから見えるだけでもすごい奥行だと分かる……
「サツキ様、お疲れ様です!それに皆様も」
「やっほーおつかれ!アンナちゃん♪ りゅうくん戻ってる?」
「はい、先程戻られたばかりです……えっと、そちらの御三方は……?」
アンナさんと呼ばれる受付の女性が私たちを見て少々困惑している、私は慌てて自己紹介をする。
「あ、はじめまして!私、トモカ・ニシミヤの妹でアカリ・ニシミヤです!今日はヘヴンの研修生としてこちらに研修しに来ました!お仕事お疲れ様です!」
「俺はソウヤ・キド、同じく研修生だ」
「はじめまして、私はアンナ・カザミです、リュウイチ様の秘書兼受付をしております、皆様ようこそ。只今リュウイチ様にお伺い致しますので少々お待ち下さい……リュウイチ様、皆様がお越しになられました……はい、わかりました……お待たせ致しました、どうぞお入りください」
「ありがと、アンナちゃん♪ ……りゅうく〜ん!お疲れ様〜お待ちかねのサツキちゃんだよ〜♪ 挨拶のちゅーして〜!」
すごいテンション……りゅういちお兄ちゃんの前だと比較にならないくらい明るくなるんだよなぁ、サツキ先輩って……なんだか彼氏に甘える彼女みたい、可愛い!♪
……彼氏と彼女か……
「し、失礼しまーす……あ、りゅういちお兄ちゃん!!お疲れ様ー!」
私はサツキ先輩の後を追い、りゅういちお兄ちゃんの執務室へ足を踏み入れると、そこには大きなデスクの向こうで呆れたような顔したりゅういちお兄ちゃんが居た。
「また、大所帯で来たな……アカリちゃんは分かるが、なんでキドまで来てるんだ?」
「あ、兄貴ぃ!!俺の名前覚えててくれたんすね!!俺感動っす!!」
「本当に暑苦しい野郎だな……馴れ馴れしく兄貴と呼ぶんじゃない」
キド君……サツキ先輩と同じでさっきと態度が全然違う、媚びると言うよりお兄さんに甘える弟って感じ……いや、それ以上に慕ってる……盲信してるって言った方が近いかな?
でも当のりゅういちお兄ちゃんは意に介していない上に明らかに拒絶している。私の思ってた通りの反応だ♪
「やかましいやつだな……それで?そっちの可憐なやつがハク・ミドリか?僕はリュウイチ・ナルミだ。マスターから話は聞いてる、確か、ミソラと入れ替わりに転属して来たんだったな?」
「あ、はい!そうです、はじめまして!宜しくお願いしますね、ナルミさん」
りゅういちお兄ちゃんが軽く自己紹介しながらミドリさんに話しかけた、ミドリさんもすぐに返事をしてぺこりと一礼した。
「ファーストネームで呼べ、ナルミだと被るからな。それに、同じ特務執政官なんだし、敬語は使わなくていい。お前が敬語好きじゃなければな」
「はい、宜しく!……えっと、リュウイチ君……で良いかな?」
「それで良い。まあ、とりあえず皆んな空いてる所に座れ。立ち話するのもなんだからな」
りゅういちお兄ちゃんは目の前にあるソファーを指して、私達に座るようすすめる。
……えっと、どこに座ろうかな?
……あ、りゅういちお兄ちゃんから一番近い席が空いてる、そこに座ろうかな……
私はそう思いながら席に近づくと、サツキ先輩が先に座った。突然の事に少し混乱してしまい、私は咄嗟にサツキ先輩の隣に座った
「そこ、サツキの特等席なのよ。ちなみにここは私の特等席……」
ユマリさんがいつものように無表情で説明してくれた、私がどう思ってるか察してくれたようだ。他のみんなは思い思いの席に座り、合計11人がりゅういちお兄ちゃんの執務室にあるソファーに腰掛けた。
こんなに沢山人が居るのに、部屋はまだ十分な広さと席が余っている……やっぱり相当広いんだなぁ
「さて、全員座ったのは良いが……自己紹介してない者もいるし、軽く挨拶し合おうか?僕の前で礼儀を欠くやつはここにいる資格はないからな」
「兄貴!俺からさせて下さい!俺はソウヤ・キド!みなさん、みんな、よろしくな!よろしくお願いします!」
「あっはっはっ……元気な方ですねぇ!僕はレイ、リュウイチ様のガードを務めております。そしてそこにいる無表情女性は僕の妹のユマリです。お見知り置きを」
「私はミツキ・アサギリ、サツキの姉でリュウイチと同じ特務執政官、隊長よ。よろしくね」
「俺はカイ、レイと同じくリュウイチのガードだ。あ、改めてよろしくな……ハク……」
「う、うん……こちらこそよろしくね、カイ君……」
カイさんが自己紹介を終えると、ミドリさんが照れながら返事をした……と言うか、どうしてミドリさんを名指ししたの?カイさん
「なんだ、また一組カップルが出来たのか?目の前でイチャつくな」
「か、カップルって!?い、いや俺たちはまだそんなんじゃ!!」
「そ、そうだよ!私たちはまだそこまで……」
「はいはい……わかったよ。まあ精々頑張れ」
狼狽する二人をなだめつつりゅういちお兄ちゃんは何気なく二人を応援した。りゅういちお兄ちゃんのこのさり気ない優しさ……素敵だなぁ
「挨拶は大体済んだな、あとは……この黒い方が黒百合、こっちの白い方が白百合だ、宜しくな」
ん?そう言えばりゅういちお兄ちゃんの剣が変わっている事に気づいた、そしてその剣の紹介を始めた……そんなに大切な剣なのかな?
「(も、もう……私たちの紹介はいいって言ったじゃない……!)」
……っ!?
「な、なんだ!?頭の中で声が……!?」
「え、ユキタカ君も!?一体どうして……?!」
私だけじゃない、お姉ちゃんやユキタカお兄ちゃんにも聞こえたんだ……!
「だ、誰だ!?なんだってんだ?!」
「不思議だけど……怖い感じはしない、優しい声って言うのかな?なんだか悪い感じがしない……」
どうやらキド君やミドリさんにも聞こえたみたい……
「(驚かせてごめんなさい、私はユリナ……今は黒百合としてリュウイチの剣となっているの……ちなみに白百合と呼ばれている剣は私の妹でユリコというの、みんな、宜しく)」
「(……よろしくお願いします……)」
また頭の中で声が……今度は幼い女の子みたいな声も聞こえた……
「りゅういちお兄ちゃん、これは一体……」
「話は難しくなるが、僕の能力で精神体であった二人を呪縛から解放して、僕の剣として変換してくれたんだ」
せ、精神体?呪縛??なんだかよく分からないけど、でも……
「なんとなく分かった!つまりりゅういちお兄ちゃんがすごい力で二人を助けてあげて、その二人がりゅういちお兄ちゃんに協力してくれてるって事だよね!?」
「(簡単に言えばそうね、でもこの能力はリュウイチの潜在能力を基本としてるの、つまりリュウイチ無くして私たちの力は単体で発動しないのよ)」
「すっげえ……てことはやっぱり兄貴は最強って事か!」
「(力だけではないわ、リュウイチの精神力や人間性もしっかりしてるって事よ)」
「セイシンタイ……だっけ?この姉妹にまで慕われてるみたいでリュウ兄は本当にモテモテだな、はは!」
「(も、モテモテって……私は別に……)」
「(……お姉ちゃんもユリコもお兄ちゃんの事好きだよ……)」
むぅ……!!
「(そ、そろそろ限界みたい!という訳だからこれからも宜しく頼むわね、それじゃあまた!)」
「なんてタイミングで逃げるんだ二人とも……まぁとりあえず皆んなよろしくな」
「……人気者は辛いわね、リュ・ウ・イ・チ!」
「目付きが怖いぞみぃ姉……」
ふんっ!と、ミツキさんが目を背けツンケンする……私もミツキさんの気持ちに同感!りゅういちお兄ちゃんモテすぎ!
「……やれやれ、目付きが怖いのはみぃ姉だけじゃないみたいだな」
りゅういちお兄ちゃんは私たちを見渡し、そう呟くように言った……私も自然と睨んじゃってたのかな?
……気をつけなきゃ
アカリ
「一つの物語小話劇場!やってきましたアカリちゃんでーす!」
リュウイチ
「ああ、やってきたなやかましいプチデビルが」
アカリ
「サツキ先輩と似てるから嬉しいけどなんかその呼び名イヤだ!」
リュウイチ
「どっちだよ……とりあえずそんなふうに呼ばれたくなければ、もう少し大人になれ。トモカの方がまだ可愛げがあるぞ」
アカリ
「それって、お姉ちゃんの事が好きだっていうこと!?ダメだよ!お姉ちゃんはユキタカお兄ちゃんの恋人なんだから!」
リュウイチ
「好きな訳ないだろうが、可愛さの話をしただけで好きとは言ってない……まったく、次回、一つの物語〜それぞれの思想編6〜。アカリちゃんも誰かを好きになれば多少大人しめな性格になるかもな」
アカリ
「え!!??わ、わ、わ、私は別に好きな人なんていないもん!!」
リュウイチ
「……わかりやすい性格だな、トモカちゃんそっくりだ」
次回掲載日6月30日




