一つの物語〜解放編4-2〜(挿絵あり)
「リュウイチ、私は貴方の力になるけれど、今回は生命エネルギーを消費する必要は無いわ。正確に言うと、私が変換する為に必要なエネルギーを消費した分、貴方とすぐ共鳴しそのエネルギーを貴方の中で循環させるの」
「ほお、そんな事ができるのか、ユリコちゃんの時とは違うんだな」
「ええ、私はユリコと違って浄華によって潜在能力を底上げされていて、その分貴方と強く共鳴するの……自分の力が二つに分割されていたものが一つになると言った方が分かりやすいかしら」
……過程を知ってしまっている分、素直には受け入れ難い事だが……
「……大丈夫よ、拒絶反応は起きないわ。私も最初は受け入れたくなかったけど……犠牲になったみんなの為にも私は生きようと思った……その結果、貴方と出会えた。決して無駄にはならない、むしろみんなや私の希望を紡ぐ事ができたのだから」
「……僕は自分の信念の為にしか生きないぞ?」
僕がそう言うと、ユリナはクスっと短く笑った。
「勿論、その事は重々承知しているわ、だから委ねられるの」
……やれやれ、真髄を知られると皮肉も言えなくなるな
"あら、それはごめんなさい"
「……とにかく、覚悟の上って事だな?」
「ええ、そうよ……じゃあ……お願い」
ユリナはそう言うとまっすぐな瞳で僕を見つめ、僕に手を差し伸べる。ユリコちゃんの時みたいに、その瞳には覚悟を宿している。さすが姉妹だな。
「ユリナ、解放するのが遅くなってすまなかったな……」
僕はそう言いながら差し伸べられたユリナの手を握る、それと同時にユリコちゃんの時みたいにユリナが光で包まれていく……
「いいえ、その分希望が繋がって嬉しかったもの……貴方と出会えてよかった……それと……」
……?
「……私を……可愛いと言ってくれてありがとう……」
「……ああ」
僕がそう返事をすると、ユリナは照れ笑いを浮かべ……光となった。
そして僕の手には新たな剣が握られたいた、刀身は黒紫色で白百合とは対照的な色をしている
「……宜しくな黒百合」
剣が完全に実体化すると同時に時間が再び動き始め、自身の中から力が湧き上がってきた。
これは……ユリコちゃんの時に消費した生命エネルギーか?黒百合と白百合、そして僕が完全に共鳴した事でエネルギーが循環したって事か……
"ギャアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!"
そんな事を考えていると、背後でヨルが叫び出し、再び禍々しい触手のようなものを伸ばしてきた。
僕は伸びてくる場所を把握し、大したスピードも出さずに全て回避する。
そして倒れている皆んなに向かって上位回復魔法を発動させ、ミツキ達を回復させた。
「……に、兄さん……はっ!」
ユマリが目を覚まし、僕を見ながら飛び起きた。
他の皆んなも続々と飛び起きる……世話のやけるやつらだな。
「り、リュウイチ!?あれ、なんで……?あっ!ええ?!」
ミツキ……まあ、先ずは少し落ち着け……
おそらく、再び僕と皆んなの意識が共有し始めたのだろう、皆んなはそれに戸惑ってる感じだ。
「ご、ごめん!あたし達、また……あっ!ヨルは!?」
「しぶとくまだ生きてるよ……お前達は下がってろ」
そう言って、僕はヨルに向かって歩み出す。サツキ達は僕の指示に従って戸惑いながらも後退していく。僕を止めたい気持ちがあるのに、状況を把握してしまっている為、どうすれば良いのか混乱しているんだろう。
それゃそうだ、気絶する前は傷だらけで疲労困憊していたやつが、目を覚ましたらピンピンして立っているんだからな。
"ナァァァァァルゥゥゥゥゥゥミィィィィィ!!"
チッ……本当にやかましい奴だな。目覚まし時計の方がまだ心地いい音に聞こえるぞ。
ヨルは僕の名前を叫びながら触手のようなものを伸ばし、更に超級魔法を発動させ襲いかかって来た。
悪足掻きだな……力の差が歴然だという事に気付いてないのか?
僕はそれらを回避し、皆んなに攻撃が当たらないようシールドを発動させながら、ゆっくりヨルに歩み寄る。
「二刀流……りゅうくん、本気だね」
「ええ、かなり久しぶりね……すぐに方が付つきそう」
リュウイチ・ナルミ……
ターゲットイレギュラーを……
粛正する!!
僕は両手に持った黒百合と白百合に意識を集中させ、青いオーラに包まれた剣を振りかざし、十字に振り下ろした
そしてそれと同時に青い十字型の真空波が発生し、巨大なヨルをバラバラに切り裂き、地鳴りを轟かせ肉片が地に落ちた。その瞬間、ヨルだったいくつもの肉片から青い炎が発火し始め、みるみる内に炭と化した。
「二度と面を見せるな」
青い炎に焼かれ散り行くヨルだった物に向かって僕はそう一言吐き捨てた。
「……圧倒的だ……たった一撃であのヨルを!」
目の前で起こった出来事に圧巻するキラがそう言う、まるで開いた口が塞がらないといった感じだ。
まあ、いずれにしても……
……やれやれ……長い夜だったな。
僕は両手に持った新たな剣……仲間ができた事を実感し自然と表情が緩いだ。
「……すごい……以前より遥かに強くなってる……」
小さくそう呟くミツキの声を聞き、僕は振り返って皆んなを見る……僕の実力に驚いているらしく、唖然とした表情で僕を見ている。
"……僕が本気になったらこんなものさ"
「あ、あははこれは……絶対敵に回さねえ方が賢明だな」
カイが薄く笑いながらため息をつく、皆んなもそれを聞いてクスクスと笑い始めた……僕は何となく馬鹿にされているような気がしてこの雰囲気に納得がいかん……誰がトドメをさしたと思ってるんだ!?誰がお前らを回復させてやったと思ってるんだ!?しかも二回も!!
「ふふ、リュウイチっ!」
ん?
"お疲れ様!!"
と、皆んなが僕にそう言葉を発した。
「……ああ、帰るぞ!」
アキト
「……」
リュウイチ
「……」
アキト
「……」
リュウイチ
「早く言えよ!」
アキト
「一つの物語小話劇場ぉぉ!!初担当のアキト・ナルミだぁ!!そして主人公の兄貴だぁぁ!!宜しくなあああ!!」
リュウイチ
「やかましい奴だなぁ……しかもタイミング重視してるわりに合図無しじゃ一言も言わないし……」
アキト
「なぁにぃ!!お前はタイミングのなんたるかを分かってねぇ奴だな!よし、兄貴として弟に伝授してやろう!!いいか、タイミングとはーー!」
リュウイチ
「次回、一つの物語〜解放編5〜 じゃあ兄貴、お疲れさん……」
アキト
「ーーで、あるからして!タイミングとはつまりーー!」
次回掲載日6月9日




