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一つの物語  作者: 世界の一つ
一つの物語〜解放編〜
33/112

一つの物語〜解放編3〜(挿絵あり)

登場人物


・リュウイチ

特務執政官、リュウイチ・ナルミ部隊隊長で"自分のため"を信念に戦う成年。戦闘時は2本の剣と二丁の魔銃を使う戦闘スタイルだが、基本的に右手だけで剣を扱っている。冷静沈着で頭脳明快であり、戦場に行ってもその性格を活かし、的確な指示を出し的確な行動をとる。そのため部下や仲間達から厚い信頼を寄せられている。ミツキ達を始め、多くの女性に想いを寄せられているが、本人はそれを全て躱しており相手にもその気は無い事を断言している。家族関係は兄が一人、弟と妹が一人ずついる。


・ユマリ

リュウイチ直属の一等粛正官で彼の部下兼護衛を務めている。物静かであまり多くを語らない、幼馴染のリュウイチを兄と呼んで彼を慕っているが、その想いは兄としてではなく、一人の男として彼に好意を抱いている。ミツキと同じく少々独占欲が強い。

兄のレイとジュンの事は名前で呼んでいる。彼女曰く、自分の兄はリュウイチだけとの事。

兄に似て魔法も使えるが、基本的に短刀を使い、まるでニンジャのような動きをする。


・ミツキ

幼馴染のリュウイチと同じ特務執政官でミツキ・アサギリ部隊隊長である。リュウイチに惚れており、彼の実の妹にすら嫉妬や警戒心を抱くほど彼を想っている。しっかりしてるがここぞと言う時に詰めが甘い時があり、私生活でもどこか抜けている。容姿端麗、頭脳明快、長く綺麗なポニーテイルが特徴。その容姿と優しさからヘヴンの隊員達には人気が高い、しかし当の本人はリュウイチにしか興味が無い。ちなみに妹であるサツキに劣らないくらいの怪力を有しているが、それを使う事はあまりない。


・サツキ

リュウイチの幼馴染でミツキとは3歳離れた姉妹。一等粛正官サツキ部隊の隊長。並外れた怪力の持ち主で、それが災いして被害を拡大させてしまう事がしばしばある。本人は一応気をつけて行動したいるもののなかなかそれが実らない。

姉のミツキ同様リュウイチに好意を寄せているが、時にミツキ達を応援するそぶりを見せたり、リュウイチに迫ってからかったりする事が多く、何を考えているのが分からない時がある。姉に似て顔はかなり綺麗に整っていて、サラッとした茶髪のセミロングが特徴


・カイ

リュウイチのガード兼親友であり、彼の護衛で彼の良き友でもある。リュウイチと同様剣の使い手で腕前は超一流であり、素早さに特化した戦闘スタイルである。極度の緊張症で女の事になると右往左往してしまい、言葉がたどたどしくなる。が、男女関係なく気さくな性格なので、女は勿論男にも人気がある。


・レイ

カイと同じくリュウイチのガード兼親友。いつも笑顔を崩さない明るい成年で妹にユマリ、弟にジュンがいる。魔法を得意としており、時空間魔法や上級魔法も短い詠唱で発動する事ができる所謂天才であり、本人はそれを誇示したりしない。たまにサツキと一緒になって悪ノリをしてリュウイチに叱られることがあるが、反省はしていない様子。


・キラ

リュウイチ部隊の一等粛清官であり、ユマリとサツキ達の同期。穏やかで優しい性格で、部下などにも分け隔てなく接する好青年。潜在能力が高く、単体で大物イレギュラーやギガントモンスターを粛清できるくらいの実力があるが、本人はそれを謙遜している。

モンスターよりイレギュラーの粛清を主に行っており、戦闘スタイルは魔銃を駆使して戦う。その射撃の腕前は極めて高く、狙撃も難なくこなす。


・ユリコ

ヤナミ一族の一人、ユリナ達の両親が仕来りを破り密かに授かったユリナの妹。本来ならユリナ以外殺されるところだったが、ユリナと共鳴し依存し合っていた為、すぐには殺される事はなかった。リュウイチ曰く精神体との事だが、何故精神体となりヤナミ家の屋敷で存在しているのかは不明。無口で感情を表に出すことは極めて少ないが、リュウイチとミツキには何故か割と懐いている様で、特にリュウイチには素直に受け応えをする。


・ユリナ

ヤナミ家に代々受け継がれている"黒華"と呼ばれる存在。千里眼や凄まじい魔力と異能と呼ばれる能力を扱えるとされており、実際カイ達と初めて対峙した時はその能力で彼らの動きと心を先読みし、その場にいた全員を一時戦闘不能にさせる程である。リュウイチと対峙した時はお互いの意識を共鳴させ、行動と思考を先読みし合いリュウイチが疲弊した状態とは言えほぼ互角の戦闘を繰り広げた。リュウイチ曰く思念体であり、彼女がどうして思念体として徘徊しているのかは不明。


ユリナの中にいる者に問うと、明らかに女ではなく、男の低い声が頭の中で響き渡る。


"ふふふ……よくぞ見抜いたなぁナルミ・リュウイチィィ!そう、我はヤナミ家初代当主にして黒華を我が物にし、永遠の刻をこの手にした!ヤナミ・ヨルだ!"


「ぐぅっ!あああっ!!」


ユリナが悲痛の声を上げると、背中から肉塊の様な物がどんどん膨張していき、やがて巨大な人型のモンスターの様なものになった……ユリナはその巨大な顔の額部分に僅かながら原型を留めている。


"見よ!!これこそ我が力の一端!!我が力を具現せし姿だぁ!!さあ……天誅を下してやる!"


挿絵(By みてみん)


……つまらない事で女を利用しやがってっ!!


「……慌てんなよ、ヨル……つぅ……! せっかく貴様の力とやらを具現化させられたんだ、冥土の土産にどうしてお前がユリナと同化したのか話せよ」


"ほお、覚悟はできているようだなぁ……良いだろう貴様の潔い覚悟を評して、その問いに我自らが答えてやる!我が当主となった年に()()()()()()が我らを襲った。それに対抗する為、我等は総力を挙げて黒華という異能力を作り上げる事ができた。その時に我が因子も組み込んでいてな、人としての生涯が尽きると悟った我は逆に黒華と共鳴できないかと試行錯誤を繰り返し、2代目黒華を固定する際に使われた緋縄に我が因子を再び織り交ぜた。それが功を成し人として天寿を全うしたその瞬間、我は3代目黒華の意識の中にいる事に気付いた"


……という事はユリナが産まれた時からこいつの意識がとり憑いていたという事か、気持ちの悪い話だな。


"そうして我は黒華の中で生き続け、今こうして自我を保ちながら支配する事ができた!希望を紡いだ瞬間だ!!"


ザッ!


ヨルがそう言った瞬間、ユマリが一瞬の間に斬りかかった。ヨルはそれを腕で防いだが、ユマリの短刀はその禍々しく肥大化した腕に突き刺さっている。

しかし、ヨルは微動だにもしていない。


「……気安く希望なんて口にしないで、不愉快よ」


"キリザト家の娘か……最初に死にたいのは貴様か?良かろう、望み通り貴様に天誅を下してやろう!"


……まずいっ!ユマリ!!


ヨルは腕にユマリの短刀を突き刺したままその大腕を振り、ユマリを宙に浮かせ上級魔法を発動させ、禍々しい黒い槍のようなもの出現させるとユマリに向かって投げつけた。


ズバッ!!


「……兄さん!?」


僕は間一髪のところでその槍の様な魔法を剣でかき消した……"頭痛いんだから無茶な事するなよ、ユマリ……"


「っ!?ご、ごめんなさい……」


……どうやらまた僕の方からでも意識を通わせる事ができるみたいだな。僕はユリナを抱き抱え、着地を成功させると同時にユマリを皆んなの方へ移動させる。


ふと自分の剣を見ると、ヒビが入っていた。ヘヴンで生成できる最高金属で、尚且つ名だたる匠によって打たれた剣なのだが……僕もまだまだ未熟のようだな。それとも、あいつがそれほど強いという事だろうか……いずれにしても情けないな。


まあ、とりあえず……


「お前が憤る理由は大体分かる……だが、だからと言って単独で行動するんじゃない、ましてあいつはこっちの行動を先読みできるんだ。早まった行動はするな」


僕がそう諭すと、ユマリはまるで叱られて泣きそうになっている子供の様な表情で僕を見ていた。

……ふふ、こういうところは昔から変わらないな。


「ごめんなさい、兄さん……今後はそうする……」


ユマリはそう謝罪すると、ペコっと頭を軽く下げた。ふむ……"なかなか可愛いやつだな"


「ちょっとぉ……リュウイチ、何考えてるのかしら……聞こえてるわよ……?」


……やば


ミツキがドスを効かせた声を発しながら僕を睨みつけている……変な事を言ってしまったのは頭痛のせいかな?うむ、頭痛のせいだな絶対っ!


「はは!リュウイチ隊長はこんな時でも余裕綽々ですね!おかげでリラックスする事ができました!」


"フン、先ほどまで死を覚悟していた割に随分と軽い立ち振る舞いだな"


あん?


「……あぁ、さっき貴様に言った事か、あれは皮肉だったんだが?」


"なにぃ……?"


「待望の具現化だったんだろ?だからすぐに僕たちに粛正される前に"冥土の土産"として、どうやってユリナと同化できたのかを説明してから朽ち果てろとい言ったつもりだったんだが……」


"ほざけぇ!!虫けらがぁっっっ!!!"


ヨルが怒号をあげると超級魔法を発動させたが、僕はその一瞬前にオールシールドを発動させそれを防いだ。


"ば、馬鹿な!?貴様は意識と憎悪の暴風で思うように身体を動かさないはず、何故……ま、まさか!?"


確かに先ほどまで酷い頭痛に襲われていた……しかし今はその痛みがない上、地上でユリナと対峙した時のように、相手の思考が読める。これは……ユリコちゃんのおかげか?


"なるほど……ユリコの黒華の力か、邪魔な存在だ貴様も我が力の糧となれいっ!!"


「させないわ!!」


「オマエなんかにユリコちゃんに手出しさせるもんかぁ!!」


巨体の割に素早い動きでユリコちゃんに向かって襲いかかるヨルに、ミツキとサツキが防衛に入り二人でヨルの巨大な両腕を受け止める。

流石アサギリ姉妹……姉妹愛となると誰にも負けないレベルだな。


"ぬぅ……この感覚、貴様等はバーサーカーの因子を持つ者達か、丁度良い貴様等の異能も我によこせえ!!"


「誰があんたなんかに!!私を好きにして良いのはリュウイチだけよ!!」


「みぃ姉の言う通り、あたし達はりゅうくんのものなんだからぁ!!」


凄まじい力同士のぶつかり合いを繰り広げる三人、しかしこのままではまずい……衝撃波によってこの空間が崩れてしまうだろう。転移するかない!


「待って、お兄ちゃん!」


っ!?

突如、ユリコちゃんが僕を呼び止めた。あれほどの大声を出すのは初めてだな……ん?

周りが静かになっている事に気付いた。時間が止まっている……のか?


「ここから移動しちゃうと、ユリコは付いて行けなくなる……そうならないようにユリコの力を変換してお兄ちゃんの力になりたい……」


「僕の力に……?一体どうやって」


僕が疑問に思っているといつの間にかユリコちゃんが目の前に立って見つめていた。気配を悟られず近寄るとは、ミナト並みだな……

そう思っていると、ユリコちゃんがゆっくり僕に手を差し出してきた。


「お兄ちゃんの生命エネルギーを使って、ユリコの力を変換するの……そうすればお兄ちゃんの因子が上回ってヤナミの因子が消失して呪縛から解放されるかもしれない……」


「解放!?ならなぜそれを早く言わなかった?」


「……お兄ちゃんの生命エネルギーを使っちゃうから、死んじゃうかもしれないと思って……ごめんなさい……」


「……お前を解放してやれるなら、僕の答えは決まっている。必ず解放してやる」


「……うん、ユリコはお兄ちゃんを信じる……!」


……そう言うユリコちゃんの瞳は真っ直ぐで、どこか強い意志を感じさせた。こんな幼い子でこんなに強い意志を持ち合わせているとは……"将来良い女性になるだろうな"僕はそう思いながらユリコちゃんの手を握る。


「……ありがとう、お兄ちゃん。お姉ちゃんをお願いね……!」


「ああ、約束する」


僕がそう返事をするとユリコちゃんは可愛らしい笑みを浮かべながら眩い光に包まれて行き、やがて……


「これは……」


ユリコちゃんの姿が見えなくなると同時に、繋いでいたはずの僕の手には剣が握られていた。

刀身は透き通るように真っ白で、どこか優しさを感じる剣である。


"……お兄ちゃんは未熟じゃないよ……自分を信じて"


……フン、有難い言葉だ……


空耳だろうか?僕がそう頭の中で呟くと、ユリコちゃんのふふふ、という笑い声が聞こえた。そして次の瞬間停まっていた時が動き出し、再び騒がしい戦いの音が聞こえ始めた。


「……兄さん、どうしたの?」


「……なんでもない、それより」


ユマリが不思議そうに僕の顔とその手に握られている剣を見る、僕はそれに答えず背後で戦っているミツキ達の方に向き直った。


「ミツキ、サツキ!そいつを逃さんように捕まえてろ!!レイ!」


「了解!」

「了〜解!」

「了解しました!!我が任ずる者達を彼の地へ送れ!ディメンショナルトランジション!!」


レイが詠唱し終えると、空間が捻じ曲がるような感覚がすると同時に辺りの風景が変わる。僕達は屋敷外へ転移したのだ。


"えぇい!小賢しい!!"


「っと!わ〜広いひろ〜い!」


「よ……っと、コラ、はしゃがないの!」


ヨルが両腕を振り回し、それによりミツキ達が振り落とされるが、優雅に態勢を立て直し着地する。


「上出来だ、ここなら何も気にせず戦える!はあぁ!!」


僕は猛スピードでヨルに接近すると、先ほどヒビが入ってしまった剣を振るいヨルの両腕を斬り落とした。


"があぁぁぁぁぁっ!?おのれナルミィィ!!"


断末魔のようなうめき声をあげながら、ヨルは先ほどより2倍以上は大きい槍の様な魔法を形成し僕に向かって発動させた。


キィン……!!ガキィィィン!!


なんとか先読みした僕は右手に持っていた折れかけの剣で攻撃を防いだ為、完全に砕けてしまった……今は感傷に浸ってはいられない!

僕は着地と同時にバック宙をしてヨルと距離をとる。顔を上げながらヨルを睨みつけ、ユリコちゃんにより生成された剣……"白百合(しらゆり)"を右手に持ち直し、改めて気合いを入れ直す。


「先ずはユリナを奴から引き抜く、本格的に攻撃するのはその後だ!ユリナに攻撃を当てんなよ? ……特務執政官リュウイチ・ナルミの権限により、ヨル・ヤナミをイレギュラー化と見做す!さあ、行くぞ!!」


「了解!」

「了解です!」

「了解……!」

「了解しました!」

「了解っ!」

「了〜解!」


"来るがいい、虫けらどもめぇぇ!!"


さっきから頭の中でギャーギャーやかましいんだよ!!

キラとレイが遠距離攻撃を開始し、僕たち5人は一気にヨルに向かって駆け出す。

奴は斬り落とした両腕を片腕ずつ再生させ攻撃を仕掛けてくる!

……"だろ!!"


"チィ!!あの小娘の仕業か!!"


僕はそう先読みし、ミツキたちにその思考を共有して攻撃を躱す。ヨルはあからさまに憤慨している、思い通りになると思うなよ!先読みなら僕の方が格上だ!


「リュウイチ、その剣って……ユリコちゃん!?どうして……!」


「……ユリコちゃんはあの屋敷から出られず、兄さんの剣になるため姿を変えた……で合ってるかしら?」


正解だ


「すっごいね〜なんでか分からないけど、なんとな〜く成り行きが伝わってきた……流石りゅうくん♪」


「はいはい、わかったなら戦闘に集中しろ!」


っ!"来るぞ!"


"くらえぇぇぇっ!!"


「おっと危ねえ! ……サンキューリュウイチ! お前のおかげで野郎の千里眼を無効化できてる……と、言うよりリュウイチの方が"一枚上手''だったな!」


フン、帰ったらたこ焼き奢れよ、カイ!

皆んな、奴の注意をひきつけろ!その隙に僕が奴からユリナを引き離す!


「了解です、リュウイチ隊長! レイさん!」


「ええ、リュウイチ様の足がかりになるよう意識しましょう!」


レイとキラが同時に連撃の技と魔法をくりだし、ヨルの足元を狙い撃った。そこにすかさずカイ達4人が更に撹乱するため2人の攻撃が当たらないよう立ち回りながら接近していった。


「いくぞ〜!サツキちゃんキィック!」


飛連刃(ひれんじん)!」


"サツキのふざけ半分"の技とユマリの素早い連続斬りで、ヨルの右腕と左足を攻撃した。


"おのれぇ!!"


「まだまだ行くわよ!月影流華(げつえいりゅうか)!!」


疾空衝破(しっくうしょうは)!!」


ミツキはサツキと同じ右腕を再度追撃し、カイは右足を風の如く素早い突きで攻撃する。

皆んなの連撃で態勢を崩したヨルは、その場で巨体を倒し僅かに隙ができた。


今だ!


「はああっ!!」


僕はユリナの体に当たらないようその輪郭に沿って、連続して斬りつけユリナを引き抜こうとした。

……くっ! 思ったより融合がしっかりしてやがる!


"ぐおおおお?!"


僕は力を振り絞り、ユリナを思いっきり引っ張ると肉が裂けるようなバリバリと言った、なんとも言えない鈍い音を鳴らしながら徐々に引きちぎれていく。


"貴様ぁぁぁぁぁぁ!!"


頭の中で!!やかましいんだよおおお!!


僕は再度力を入れ直し、ユリナ本体を引っ張る。

……するとバリッと鳴った後、ユリナはヨルから完全に引き離れた。


"ぐおおおお!!"


ユリナを抱え、僕は空中で一回転し態勢を立て直した後、着地した。


「うっ……」


良かった、死んではいない様だな……ぐっ!!

ユリナの記憶や意識が僕の頭の中に侵入してきた……僕を乗っ取るつもりか……!?


「兄さん!」

「リュウイチ様!」

「リュウイチ!!」


一部始終を見ていたのか、ユマリとカイとレイが僕の名前を呼ぶ……しかし僕はそれに応える事はできず、必死に意識の暴風を抑えるのでやっとだった。


"許ざん!!!許ざんぞぉぉぉぉぉ!!ギザマラァァァァ!!"


「なに!?」


「ユリナちゃんを引き離したのにまだ行動できるの!?」


ヨルが叫びながら全体超級魔法を発動させ、ミツキ達を攻撃した。


「きゃあ!!」

「ああっ!!」

「ぐわあっ!!」


くそ……っ!皆んな!!


"ギザマモジネエエエ!!リュウイチイイイ!!"


ヨルは怒り狂ったようにその巨大な拳を僕めがけて振るって来る!


防御が間に合わない!だがこのまま受けたらユリナがっ!


僕はとっさにユリナを抱え込み、後ろを向いた!

……途端、背中に激しい激痛が走りまわり僕とユリナは宙を舞った……しかしそれだけでは終わらなかった。ヨルは今度はユリナを目掛けて素早く拳を振るった……


ぐぅっ!!!


僕は少し離れた所で浮いていたユリナに手を伸ばし、思いっきり引っ張り、僕が代わりに攻撃を受ける様な形になり、まともに攻撃を受けてしまう……胸から腹部に激痛が走る……ゆ、ユリナは……?


地面に叩きつけられる直前、ユリナが無事である事を確認できた……良か……った……


……ガハッ!ゴホッゴホッ!!


うっ!!


堪らず咳き込むと喉の奥から生温かい鉄の味がするものがこみ上げてくる……そして同時に腹部で激痛が駆けまわる……これは内臓をやられたな……


「ガハッ!!ゴホ……ッ!!くっ!!」


"……なぜ私を庇った……何が望みだ"


ユリナ……か……お前も千里眼を使えるなら……大体わかる……だろ……


"私はお前を乗っ取ろうとした……それに私はお前たちを殺そうとしたのだぞ……それなのにまだ信念だの約束だのとほざくのか!"


愚問だな……当然だろ……


"ユリコを手駒にすれば、私が改心すると思っーー"


「なめるなよ!!僕はそんな下卑た事はしない!!」


"……っ!!"


ゴホッゴホッ!!


「はぁ……はぁ……僕はただ、信念を貫きたい……だけだ……!!」


ガハッガハッ!!


僕は力が入らず、震える足を抑止しながら立ち上がろうする……しかし、内臓をやられてるせいか思うように力が入らず、片膝をつくのがやっとだった


「り……リュウイチ……隊長……ううっ!」


「兄……さん……」


ユマリとキラが掠れた声で僕を呼ぶ……

ヨルはユリナを失った事で実態を維持できないのか、苦しみながらのたうち回っている


"……私は自由になりたいなどと思って……いない!"


そ、それが……お前の正直な気持ちなのか?

祭壇で再会した時のお前は……そんな風に感じなかったぞ……


苦しいならそう言え!辛いならそう言えば良い!!


お前は!!もうこれ以上我慢しなくて良いんだよ!!


「ぐっ!!ゴホッゴホッ!!」


くそが……血が……止まらない……それに治癒が……効かない……ヨルの影響なのか……?


"……彼奴の能力がお前たちの回復魔法を妨害しているのよ……"


なに……


"ユリコの力で意識介入の妨害とお前と他の人たちとの意識共有を可能にしているけれど、魔力は彼奴の方が遥かに高いから、支援魔法の効果を打ち消されているの"


なるほど……


"……ユリコが信じた男……私にも信じられるだろうか……"


別に僕を信じろとは言わない……お前の素直な気持ちで……お前の思う通りに行動すればいい……


"……私は……"


「く……っ!お前に信用されなくても……僕はお前たちを解放する……約束を守るためだけじゃない!」


流れ出す血が目につき、僕はそれに拳を打ちつける。負けて……たまるか!


「僕は……僕の信念を貫く!!」






"……私は……! お前を信じたい……!"



カイ

「一つの物語小話劇場!よう、みんな元気か!俺はーー」


リュウイチ

「ダウン中だろ?」


カイ

「ひ、否定はできないけど、ここでくらい元気に……なりないなぁと……」


リュウイチ

「だったら倒れてないで、せめて立ち上がる努力くらいしろよ」


カイ

「じ、次回一つの物語〜解放編4〜! みんな、またな!!」


リュウイチ

「あ〜逃げ出した〜……」




次回掲載日6月4日

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