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一つの物語  作者: 世界の一つ
一つの物語〜仲間編〜
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一つの物語〜仲間編2〜(挿絵あり)

ランドル、世界の中心部であるセントラルにあるヘヴンから東の方角に位置する。自然豊かな場所で都会のセントラルとは真逆で謂わば田舎に近い所である。

…そんな所で一体なぜ時空間魔法なんて使うんだ?田舎から始めようという考えでいる悪人なのか?


と、そんな事を考えている内に目的座標に到着した。そこには見慣れたバイクが停まっている。


「サツキのやつ無事でいるかな?モンスターの呻き声がここまで聞こえるぞ」


「そう簡単にくたばるような奴じゃないさ…指揮官リュウイチから本部へ、目的地に着いた。これより戦闘体制に入る」


『了解、幸運を』


カイの杞憂に答えながら本部へ無線連絡をした、モンスターの声がする森の中へ足を向けてレイとカイは僕の後に続いて歩き始める。


「これはまた…」


開けた場所に出ると小規模の村に入ると同時にレイが少々呆気にとられたように声をもらす。カイはモンスターの大群を見て剣を抜いた。僕は状況の把握をするため周りを見渡し、それと同時にあいつの姿を探す。


「カイとレイは散開してモンスターの排除、僕はあいつがいる場所に行く。本部、サツキの生体センサーはどの方角だ?」


「了解!」

「了解です」


カイとレイは返答後モンスターに向かって駆り出した


『サツキさんの反応はそこから少し北の方角です』


ナビの応答を聞いて、僕は北の方角へ向かって走り出す。

…住民の避難は済んでるみたいだな…無駄に被害を拡大してなきゃ良いんだが…




リュウイチが森を進んで行く途中、大きな衝撃音と振動が起こった。彼は驚く素ぶりも見せずその衝撃の発生源に予想を立てながら、木々が大量に倒木された場所に来た。その光景を見たリュウイチは呆れたように、その場に立っている人物に声をかけた。


「やっぱり派手に暴れたな…サツキ」


「ん?…ああーー!りゅうくん!!援護隊ってりゅうくんの事だったんだ!やったね♪」


モンスターに囲まれているにも関わらず、リュウイチの姿を見るやいなや明るい返事を返しながら、サラリとした綺麗な茶髪を木漏れ日と共に光らせていた。

彼女はサツキ・アサギリ、ミツキの妹でありリュウイチの幼馴染だ。


「なんだ、やっぱり余裕そうじゃないか、僕が来るまでもなかったな。じゃあ頑張れよ」


「えぇ!?助けに来てくれたんでしょう??」


リュウイチの素っ気ない言葉を聞き、サツキは驚きながらモンスターたちを素手で殴り飛ばす。


「せっかく来てくれたんだから、助けてよぉ」


「モンスターを軽々殴り飛ばしながら言う事か?」


ため息混じりにサツキの言動に答えるリュウイチは、彼女の背後にいる姿を見て確信を持って口を開く


「そいつが時空間異常の元凶か、早く蹴り飛ばすなりすれば良いだろ。モンスターの発生原因でもあるみたいだし」


「そうしたいんだけど、モンスターをじゃんじゃん出して来たりサラッと躱されたりで、きりがないんだよー…」


サツキは引き続きモンスターをなぎ倒しながらリュウイチの言葉に返事をする。


「なるほど、サツキの攻撃を避けながら時空間魔法を発動させられるほどの相手って訳か」


「最初はここに来るまでにあった小さな村付近で済んでたんだけど、躱されていく内に段々ここまで来て、段々モンスターが増えてくるわで…もう大変なんだよぉ…」


ウンザリといった感じに言うサツキの言葉を聞きながら、リュウイチは奥にいるフードを被った人物を見つめ続ける。


「…仕方ない…やるか」


挿絵(By みてみん)


リュウイチはそう呟くと左の腰にさしてある剣を抜く…と同時に抜いた勢いの剣圧で目の前のモンスターを斬り裂いた。そして開けた道を一気に駆け抜ける。


「さあ、行くぞ」


サツキはリュウイチの猛攻を見て整った顔を緩ませ微笑んだ。


「さっすがー♪」


リュウイチはフードの人物に斬りかかっている。圧倒していると言って良い程に善戦を繰り広げている彼を見て、サツキは安心して残った周りのモンスターを倒し始める。


「リュウイチ!サツキ!大丈夫か!」

「少々遅れましたが…大丈夫そうですね」


カイとレイが二人いる場所に合流した。

猛攻をしかけながらリュウイチは二人に指示を出す。


「カイ、レイ、サツキと残りのモンスターの排除をしろ、こいつの相手は僕がする」


リュウイチの言葉を聞いて、二人はモンスターに攻撃を始める。


「閃空斬!!」


「ロックトライ!」


カイとレイは散開してモンスターを排除していき、サツキもそれにつづく


「臥連撃!」


三人がモンスターを掃討している最中、リュウイチはフードの人物を終始圧倒する。

リュウイチの攻撃を躱そうとしようと体勢を立て直そうとしたその瞬間


「遅いっ」


リュウイチは剣を振り上げ、フードの人物の左腕付近を斬り裂いてダメージを負わせた。


「っ!」


フードの人物はリュウイチとの距離を置きその瞬間に空間に亀裂を入れ、その中へと入って行き姿を消した




「…逃したか、しかしあの動きどこかで…」


気配を完全に消したのを確認して僕は剣をおさめた。そして振り返り、僕は三人の安否を確認する。


「そっちも終わったみたいだな」


「さすがりゅうくん、終始圧倒ってやつだね!あたしは全然攻撃を当てられなかったのに」


そう言いながらサツキは僕の腕にしがみつく、僕は呆れた顔をして振り払おうとするが、すらっとした身体に似合わない腕力でそれを許さなかった。


「放せ…本当に…どっから出るんだその怪力は」


「怪力じゃなくて愛の力ってやつ♪」


「一方通行の愛だなそれは」


僕たちのやりとりをカイとレイは微笑みながら見ている…少しは止めろよ、ガードだろお前ら


「相変わらず仲が宜しいですね、ユマリが見たらふくれっ面をしそうなくらいですよ」


止めるどころか、ははっと笑いながらレイは満面の笑みをこちらに向ける、お前はユマリとサツキどっちの応援をしてるんだよ。さっきまで結婚がどうとか言ってなかったか?


「やれやれ…こちらリュウイチ、空間異常の消滅とモンスターの殲滅を完了した。サツキの無事も確認、被害に遭った村に医療班と処理班を頼む、僕達はこれより帰投する。」


『了解、モンスターと時空間異常の反応の消滅を確認、サツキ様のバイタル反応も良好、被害地に医療班と処理班を派遣します。お疲れ様です』


片腕にしがみつくサツキを放置して僕は本部へ連絡して、僕たちは帰路へ歩き出す…と言うかいい加減放れろよ。動きにくい…


「見せつけてくれるねぇ、バイクでもくっついて行くのか?」


カイがちゃかしながら微笑んで言った…覚えてろよ


「…帰るぞ、サツキはちゃんと自分のバイクで帰れよ」


「じゃあ、それまではこのままで…ね♪」


「断るっ」






ーー数十分後、リュウイチの執務室ーー




どこだ?どこかで見た事あるような気がするんだが…


ヘヴンへ帰還した後、僕は自分の執務室で先程対峙した人物の戦い方を思い出していた。思い出しそうで思い出せないもどかしさに苛まれていると、帰還して直で僕の執務室へ来たサツキがまた騒ぎ出した。


「やっぱり、りゅうくんはあたしの正義の王子様だと思うんだけど、どう思う?カイ君、レイ君!!」


なんかほざいてやがる


「そ、そうだな、少なくても敵ではないよなー…」


「王子様ではなく王様ではないでしょうか?」


サツキの勢いに押されながら僕の顔色を伺ってカイは少し困惑気味だったが、レイは楽しそうに答える。

王様でも王子様でもない、成り行き上仕方なく助ける形になっただけだ。


「そっかー!確かに王子様じゃなくて、王様くらいの威厳はあるよね!じゃありゅうくんはあたしの王様なんだ♪」


訳の分からない納得をしてるんじゃない、そしてレイも悪ノリするなっ


「サツキ、レイ、リュウイチを困らせるような事言わないの、あんたたちが変にはしゃぐとまた怒られるわよ」


ベースに着いて間もなく訪ねてきたみぃ姉が二人をたしなめている、さすがだ


「じゃあ、りゅうくんは誰の王様なの?」


「そ、それは…助けてもらって王様なら、わ、私だって何回もあるわよ。だからサツキだけのものじゃないの」


…おい、微妙に雰囲気に流されだしてるぞ、みぃ姉


「人気者は辛いなぁ、リュウイチ」


カイが僕の肩に手を置きながら皮肉めいた口調で言う、こいつは味方なのか敵なのか分からん、中立的立場ならこっちの味方をしろよ。ガードさん


「兄さんはどっちの王様でもないわ」


お、ユマリ、良いぞやはりお前は僕の味方か


「私のだもの」


…ユマリさん?

同じく執務室に来たユマリはいつもの無表情を崩さずさも当然の様に言い放つ、真顔で言うんだから尚更タチが悪い…。


「お前ら良い加減にしろ、王様だのなんだのいつからそんなものになったんだ僕は」


「さっきから!」

「前から!」

「昔から」


ダメだこいつら


「なってないっ!妄想も、妄言もその辺にしとけ」


これだけ人が居て誰もまともじゃないって事がよく分かった、早めに終止符を打たないとどんどん悪化するだろうな


「全くいつもいつも…よくそんな話で盛り上がれるよなお前らは、少しは話題にされてる方の身にもなれ」


「三人の美女に慕われてるんだよぉ?幸せでしょっ♪」


「修羅場だよ、不愉快だよ、やかましいよ、つくづくな」


辛辣めにサツキに吐き捨てると、じゃあ!と言って机を叩いて身を乗り出してきた


「りゅうくんはあたし達の想いが迷惑なの?嬉しくないの!?」


…明らかにわざと悲しそうな顔をしている。と言うか痛いところをついてきやがったなこいつ…


「冗談…兄さんは誰のものでもないわよサツキ」


と、ユマリが少し口元を緩ませながら言った。ユマリよ、やはりお前は…


「今はね」


…ユマリさーん


「…そうだな、僕はまだ他人の人生に興味はないし誰を想ってもいない…何回同じ事言わすんだお前らは」


そう、僕はこういう事を何度も言っているのにも関わらず、こいつらはそれを学習しない。いや、しようとしないのかもしれない。


「いい加減諦めて、他のやつらを見てみろよ案外良いと思える奴がいるかもしれないぞ。と言うか僕にこんな事言わせるな」


「そ・の・結・果・!りゅうくんが選ばれたのでーす♪」


はいはい、なるほど、理解した、学習しようとしてないんだな、はいはい。


「やれやれ…」


「まあまあ、慕われてて良いじゃないか」


カイが少し微笑みながら声をかけてくる。

…が、僕は逆に表情を緩ませる事ができなかった。


「…気持ちに応えられないのは中々の苦なんだよ」


「リュウイチ…」


僕の小さな呟きを聞いて、明るかった表情が暗くなった。そう、応えられないのに好意を寄せられるのは相手に罪悪感を感じてしまう。今の僕には受け入れる事ができない、だからこそその一旦を感じたらすぐに断るようにしている。

なるべく相手を想いを壊さないように


「なのに、なんでこいつらは懲りないんだろうなぁ…」


みぃ姉と何やら言い合っていたサツキがこちらを見る


「懲りないって何がぁ?」


「…別に」


サツキとみぃ姉は不思議そうにこちらを見つめている…人の気も知らないで…


ピー


『リュウイチ様、キョウコ様がお見えになりました』


机の上にあるインターホンから受付けの声がした、ミソラ…?何の用だ?


「ああ、通せ」


自動ドアが開き、長いサラッとした黒髪と整った顔の人物が入ってくると、この場の状態を見てクスッと笑った。


「相変わらず賑やかね、この部屋は」


「不本意ながらな、で?どんな御用件だ?」


キョウコ・ミソラ、同じ特務執政官で僕の同期だ。綺麗な顔立ちと見た目通りの優しさで男性たちの注目を集めている。


「ユウから聞いたわ、あなた正体不明の時空間魔法を使う人物と接触したんですって?しかもサツキとほぼ互角かそれ以上の強者と」


「モンスターがいなかったら勝ってたもん!」


ミソラの言葉にサツキが不満気に反応した。


「はいはい、それで?手合わせしたご感想は?それほどの人物なら他の隊たちにも注意を促す必要があるでしょう、私もそれなりに心構えをしておく必要があると思って」


ふくれっ面のサツキを落ち着いた笑顔でなだめながら、僕の方へ近づいてくる。


「なるほど、情報収集か。さすが特務執政官の中でも真面目で頼られてるミソラだな」


机の前に立ったミソラの顔を見上げ、少々関心しながら僕は答えた。


「そうだな、サツキの言う事も一理ある。モンスターがいなければサツキとまともな戦闘ができてたかもしれないな。それにアイツの戦い方には違和感があった」


「違和感?」


その問いかけに僕は率直に答える。


「どこかで見た事のあるような動きだった、けどどうしてもそれが思い出せなくてな」


「ふーん、という事は今までリュウイチ君が戦った事のある人物かもしれないって事ね」


僕の思ってる事を聞くと、ミソラは腕組みをして考えている。


「過去にリュウイチ君が解決してきたミッションを調べてみる必要がありそうね、もしかしたらその残党かもしれないし」


「キョウコが調べるのか?過去のミッションデータならユウに頼んでみたら良いんじゃないか?」


ミソラにカイが提案をする、確かにデータ処理を専門とするユウに頼んだ方が早そうな気がするが…


「カイの言う事に賛成だな、データ収集ならユウの方が得意だろうし」


「そうね、でもこのままじっとしてるより頭を動かす方が私は好きなの、ユウにも都合があるでしょうし」


なるほど…


「その行動力も皆さんに一目置かれているのかもしれませんね、男性陣や女性陣にもそういうところも憧れてらっしゃるのでしょう」


レイが相変わらずの笑みを浮かべながらミソラを褒める。そう、こいつは男性だけでなく女性にも人気がある。優しいし行動力があるし戦闘能力も高い、その上美人と言われている。

ちなみにその魅力でみぃ姉に迫る勝負をしているらしい…あくまで噂だが。


「お褒めのお言葉ありがとう、レイ君。」


レイに爽やかな笑顔を向けた後僕の方にもその笑顔を向けた。


「リュウイチ君も、貴重な情報ありがとう。また何かあれば頼らせてもらうわね」


「どういたしまして」


僕はそう言って軽く頷きながら、この場にいる全員に明るい笑顔を向けながら去っていくミソラを見送った。


ミソラが出たと同時にバンッと机に手をついてみぃ姉が僕の顔を覗き込んできた…みぃ姉の顔は眉間にシワを寄せている。


「随分仲よさそうだったわね、二人はどういう関係なのかしら?」


「…いや、別に普通に話してたつもりなんだが」


みぃ姉の形相に少々たじろぐ…どうもこの迫力には慣れん


「じゃあどうしてわざわざリュウイチに直で訊きにきたのかしら?ユウに聞いたなら、リュウイチに訊きに来る必要ないんじゃないの?」


「そういう事は直接ミソラに訊けば…」

「私はリュウイチに訊いてるの!!」


間髪入れずに迫って来る…なんで僕がこんなめに…理不尽だ


「データじゃなく直接訊きたいと思ったんじゃないか?あいつ真面目な方だし、実体験したリュウイチに訊く方が手短に済むと思って…」


「カイは黙ってなさい!!」

「は、はい…」


助け舟を出そうとしたカイを一瞬にして沈没させた、さすがみぃ姉、色んな意味で凄い…


「カイの言う通りだろう、戦略的利益になりそうな情報を集めてるんだと思うぞ。それにミソラは僕の好みじゃない」


「…本当に?」


更に顔を寄せて睨みつけて来るみぃ姉に、僕は平常心で答えて頷いて見せる。


「……なら良いけど」


はぁ…女ってこわいな、まだ少し不機嫌気味だけど少しは落ち着いたみたいだ。


「やれやれ…」

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