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一つの物語  作者: 世界の一つ
一つの物語〜悲劇編〜
28/112

一つの物語〜悲劇編5〜(挿絵有り)

登場人物


・リュウイチ

特務執政官、リュウイチ・ナルミ部隊隊長で"自分のため"を信念に戦う成年。戦闘時は基本、2本の剣と二丁の魔銃を使う戦闘スタイルだが、基本的に右手だけで剣を扱っている。冷静沈着で頭脳明快であり、戦場に行ってもその性格を活かし、的確な指示を出し的確な行動をとる。そのため部下や仲間達からあつい信頼を寄せられている。ミツキ達を始め、多くの女性に想いを寄せられているが、本人はそれを躱しており本人達にもその気は無い事を断言している。家族関係は兄が一人、弟と妹が一人ずついる。


・ユマリ

リュウイチ直属の一等粛正官で彼の部下兼護衛を務めている。物静かであまり多くを語らない、幼馴染のリュウイチを兄と呼んで彼を慕っているが、その想いは兄としてではなく、一人の男として彼に好意を抱いている。ミツキと同じく少々独占欲が強い。

兄のレイとジュンの事は名前で呼んでいる。彼女曰く、自分の兄はリュウイチだけとの事。

兄に似て魔法も使えるが、基本的に短刀を使い、まるでニンジャのような動きをする。


・ミツキ

幼馴染のリュウイチと同じ特務執政官でミツキ・アサギリ部隊隊長である。リュウイチに惚れており、彼の実の妹にすら嫉妬や警戒心を抱くほど彼を想っている。しっかりしてるがここぞと言う時に詰めが甘い時があり、私生活でもどこか抜けている。容姿端麗、頭脳明快、長く綺麗なポニーテイルが特徴。その容姿と優しさからヘヴンの隊員達には人気が高い、しかし当の本人はリュウイチにしか興味が無い。ちなみに妹であるサツキに劣らないくらいの怪力を有しているが、それを使う事はあまりない。


・サツキ

リュウイチの幼馴染でミツキとは3歳離れた姉妹。一等粛正官サツキ部隊の隊長。並外れた怪力の持ち主で、それが災いして被害を拡大させてしまう事がしばしばある。本人は一応気をつけて行動したいるもののなかなかそれが実らない。

姉のミツキ同様リュウイチに好意を寄せているが、時にミツキ達を応援するそぶりを見せたり、リュウイチに迫ってからかったりする事が多く、何を考えているのが分からない時がある。姉に似て顔はかなり綺麗に整っていて、サラッとした茶髪のセミロングが特徴


・カイ

リュウイチのガード兼親友であり、彼の護衛で彼の良き友でもある。リュウイチと同様剣の使い手で腕前は超一流であり、素早さに特化した戦闘スタイルである。極度の緊張症で女の事になると右往左往してしまい、言葉がたどたどしくなる。が、男女関係なく気さくな性格なので、女は勿論男にも人気がある。


・レイ

カイと同じくリュウイチのガード兼親友。いつも笑顔を崩さない明るい成年で妹にユマリ、弟にジュンがいる。魔法を得意としており、時空間魔法や上級魔法も短い詠唱で発動する事ができる所謂天才であり、本人はそれを誇示したりしない。たまにサツキと一緒になって悪ノリをしてリュウイチに叱られることがあるが、反省はしていない様子。


・キラ

リュウイチ部隊の一等粛清官であり、ユマリとサツキ達の同期。穏やかで優しい性格で、部下などにも分け隔てなく接する好青年。潜在能力が高く、単体で大物イレギュラーやギガントモンスターを粛清できるくらいの実力があるが、本人はそれを謙遜している。

モンスターよりイレギュラーの粛清を主に行っており、戦闘スタイルは魔銃を駆使して戦う。その射撃の腕前は極めて高く、狙撃も難なくこなす。

ー朧月の渓谷・屋敷内部・談話室ー



「とりあえず談話室まで戻って来たけど……リュウイチ、本当にベッドで横にならなくて大丈夫なの?」


「見ての通り埃まみれだし、ベッドに横になる方が逆に休めない。椅子で十分だよ」


目の前にあるテーブルに視線を向けると、一見しただけでも埃が積もっているのが分かる。

……見ただけで痒くなる、あまり近くの物は見ないようにしよう。


「しかし悪かったなユマリ、わざわざ椅子の埃を払わせてしまって」


僕達がこの部屋に入ると、ユマリはすぐさまこの椅子の埃を自らの手で(はた)いてくれた。

普段から家事もこなす良い子だと思っていたが、ここまでしてくれるとは少々意外だった。


「良いの、兄さんのためだもの……そんな事より今はゆっくり休んでいて」


ああ、そうだな。今は御言葉に甘えさせてもらおう……

僕は椅子に腰をかけ、ひと時の安らぎに身を投じる。


「そう言えば、頭痛の方は大丈夫なのか?あれからしばらく経つが……」


「不思議と今は痛みは無い、川の中で目を覚ましてから何故だか頭痛は治ってた」


カイは"そうか"と言って一安心したようだった。僕自身も安心したよ、あの痛みはかなり負担だったからな。


……


……けど、水中で聞いたあの声……懐かしい声だったな。こうして一休みしているより……いや、どんな心地いい場所で休んでいる時よりも癒される声だった。



……"だった"か




「……りゅうくん、何か気になる事でもあるの?珍しく難しい顔してるけど……んふふ、あたしたちで良ければ力になるよ♪」


「せっかくの申し出だが、深刻な事ではない。それに、今起こっている出来事には関係の無い事さ。ただ単にちょいと郷愁を感じてただけだ」


満面の笑みで覗き込んで来るサツキに、僕はいつもの様に一蹴したのだが、僕の返答を聞いたサツキはすぐに緩んだ笑みを消し去り、いつになく真面目な表情が構築された。


「……あたしたちが訊いちゃダメな事……なの?」


……


サツキがそう言うと、その場に居た全員が僕に注目したような気配を感じた。

……痛いところついてくるな、やはりこいつも中々鋭い。でもそれを教えるにはまだ早いし、このタイミングでもない。


「いや、時が来たらその内教えてやるよ」


そう言ってなるべく不自然にならないように話をはぐらかし、僕は話題を変えるため続けて言葉を綴る。


「それより先遣隊の事だが、お前らはここへ来る途中誰も見かけなかったのか?」


「は、はい。ここの屋敷に入って少し探索したのですが、人影は勿論モンスターにも遭遇しませんでした」


ハッとした様子でキラが慌てて返答をした、しかしサツキとみぃ姉は依然として僕を見つめているが、そんな二人を知らぬふりをして僕は思考を巡らせる。


そうなると、まだ別の場所に行く必要があるな、奴に吸収されたのは何故か分かったが、本当に殺されたのだろうか?生命エネルギーを吸引していただけなら遺体が見つかってもおかしくない、それとも身体ごと消滅したのだろうか?

うーむ……


「……ねぇリュウイチ、私たちも手伝うからあなた一人で行動したり私達に内緒事をするのは無しよ?」


みぃ姉がそう言いながら腰を屈め、僕の手を握って澄んだ綺麗な瞳で僕を見つめた。

やれやれ、流石にこれを無視する事は出来ないな。


「ああ、分かってる。もう少ししたらみんなで探索をしてみよう、ユリナとユリコちゃんの行方や来歴も気になるしな」


「あ、やっぱりユリコちゃんの事も分かるんだ……イッタイ何なんだろうね、急に居なくなったり現れたりして……まるで幽霊みたい」


サツキはやかましいが結構良い勘をしている。女の勘ってやつなのかどうかは分からないがな。

まあ、サツキじゃなくてもこんな人気のない場所で子ども一人でウロウロしてたら、誰でも疑問に思うか


「相当広い御屋敷みたいですが、手分けして探索しますか?モンスターの気配は無いようですし」


「いや、ユリナの事もあるから散らばるのは危険だ。固まって行動した方が良い、探索を許したがもしも遭遇した場合襲って来ないとは限らない」


レイの提案に言及し、僕は何となくSPDを取り出し画面を見るとすぐにある違和感を感じた。


「……通信障害が無くなってる」


ここへ着いてから画面の上部に表示されていた通信エラーのマークが消えている事に気付き自然と声に出して呟いた。

それを聞いた皆んなも驚きの声を上げながら各自のSPDを取り出し、画面を確認しだした。


「ホントだぁ!でもなんでだろぉ?キョウコたちと何か関係があるのかな?」


近くにいたサツキとユマリが顔を押し付け、僕のSPDを覗き込んだ。近い、邪魔だ。


「あいつらが妨害していたのかしら?そうは見えなかったけれど……」


ユマリの言う通りだ、本当にあいつらのせいだったのだろうか?障害について何も言っていなかったが……


ピピピ


突然僕のSPDが鳴り、再び一同が僕の方に驚きの視線を向ける。僕はそんな皆んなの注目を感じながら、SPDを操作した。


『あ、出たでた!りゅういちお兄ちゃん、お仕事お疲れ様でーす!今何してるの?♪』


……日に日に聞き慣れてきたやかましい声が、静寂に包まれた談話室に響き渡る……と、同時に約3名から発せられた痛烈な視線が僕に突き刺さった。


「……アカリちゃん、僕は今ミッション中なんだ。特に用が無いなら切るぞ」


「ヤッホー♪ アカリ、元気にしてるぅ?」


わざとかどうか分からないが、先ほどより強く僕の顔にサツキの顔を押し当てて来た……まあわざとだろうけど


「わぁ、サツキ先輩だー!♪ お疲れ様です、りゅういちお兄ちゃんとご一緒だったんですね!♪ お二人ともお怪我とかされてませんか?!」


「大丈夫ダイジョウブ♪ 心配してくれてありがと!りゅうくんもこの通りちゃ〜んと無事だよぉ♪」


グイッ


「アカリ、兄さんは今忙しいの……切るわよ」


……ユマリも負けじ言わんばかりに顔を押し付けて来た。ユマリ、僕の言いたい事を代弁するのは良いが、顔を無理矢理押し付ける必要は無いだろう?


「これはこれは、どうも初めまして。僕はリュウイチ様のガードを勤めてさせて頂いてるレイと申します。どうぞ宜しくお願い致します」


そう言って、今度はレイが僕にのしかかる様な形で覗き込んで来た。


……重いんだが?


「あー君がアカリちゃんか!俺はカイ、レイと同じリュウイチのガードをしてるんだ。ヨロシクな!それとこいつがリュウイチの部下のキラだ!」


「うわっと……!あはは……よ、よろしくお願いします……」


重いんだが……!?


『みなさん初めまして!えっとー……確かりゅういちお兄ちゃんのシモベさん達ですよね?』


「し、しもべ……?」

「し、しもべ……?」

「その通りです、僕達はリュウイチ様の忠実なる(しもべ)なんです!」


だから重いんだが!?


挿絵(By みてみん)


「お疲れ様アカリ、悪いんだけど私達は今手が離せないの、また今度お話しましょう。またね」


『え、あのーー!?』


ピッ!


みぃ姉が僕の手から乱暴にSPDを取り上げると、そう言って通話を切った。

みぃ姉が、はい!と言いながら鋭い睨みを効かせ僕にSPDを押し付けるように返してきた……な、なんで僕が悪いみたいな雰囲気を出してるんだ……?


「あ〜あ、切っちゃった……りゅうくん、後でアカリに謝らないとダメだよ♪」


なんで僕がそんな事を……!


「はは、人気者は辛いなーリュウイチお兄ちゃんっ!」


カイ、お前は後でしばく!


「はぁ、まあいい……とにかく通信が戻ったんだ、本部に連絡してみる……こちらリュウイチ、本部聞こえるか?」


『リュウイチ隊長!はい、こちら本部のオトネです!感度良好、ご無事ですか!?』


「ああ、大丈夫だ。みぃ姉やミソラ達を発見して、今は渓谷の奥に有った屋敷の中で今後の対策を練ってる。それと、ターゲットのジュンも発見した。あいつとミソラは完全にイレギュラー化、特務執政官として二人を粛正対象として認定した」


『了解しました。元ヘヴン所属隊員ジュンとキョウコ・ミソラをイレギュラー化と認定、二人を改めて指名手配します。先遣隊達の発見はできました?』


「いや、まだ見つかってはいない……だが、もしかすると死亡した可能性がある。遺体の確認はできてないが少なくても無事ではない……」


僕はそう言ってふと周りにいる者達に目線を向けた、みんなは暗い表情をして、黙って僕を見つめている。


『そうですか……分かりました。それと、最新の衛星カメラで朧月の渓谷を確認したところ、奥の方にわずかですが建物の様なものを確認しましたが、リュウイチ隊長がおられるのはその建物の中でしょうか?』


「ああ、恐らくそうだ。それについてちょいと調べて欲しい事がある。この屋敷を建築した人物と居住者の詳細、この二つを調べてもらいたい。頼めるか?」


『お任せ下さい、すぐに詳細情報をリュウイチ隊長のSPDに送信致します』


「助かる、じゃあ頼んだぞ」


『かしこまりました、リュウイチ隊長……それに皆様、幸運を』


「ああ」


「ありがと、カレンちゃん♪」


最後にサツキが愛嬌よく感謝し通信を切った……あいつの名前カレンだったのか、さすがヘヴンのやかましい顔だな面識が広いやつだ。


「むむ……りゅうくん、今心の中であたしの事バカにしなかったぁ?」


鋭いっ


「さあ、どうだろうな。それよりそろそろ探索を始めよう、体力もそこそこ回復できたしな」


僕は立ち上がりながら、否定も肯定もせず話を流した、そんな戯言より探索を開始する事が大事だからだ。


「あ、リュウイチこの屋敷のマップ知らないでしょ?最初に来た時SPDでマップをスキャンしたの、あなたのSPDに転送するわね」


ほお、それは便利だな。

みぃ姉がそう言うと、自分のSPDを操作しデータ転送を行う。僕は送られて来たマップデータを確認し、スクリーンを展開させて全員でマップを調べ始める。


「えーっと……二階の部屋は俺たちが最初に来た時に調べたから、次は一階の……あ、ここだ。ここの東側を調べてみないか?」


カイが一階東側エリアを指差して提案をしてくる。なるほど、僕たちが通って来たのは西側エリアだったのか


「そうだな、他と比べてだいぶ入り組んでいるから逸れないように注意しろよ」


「そうだよ!みんな勝手にフラフラ行動したらダメだからね!!」


「僕は"お前"に言ってるんだ」


サツキが僕に同調したように意気がりながら皆んなに注意を促したので、そんなサツキを僕は文字通り一蹴する。

サツキはごめんなさいと言って縮みあがりながら謝罪すると、僕とユマリを除く皆んなが小さく笑い、その場の雰囲気が少し和んだ。



……ん?



ふと扉の向こうにある廊下から何かの気配がした……ある程度回復していたと思っていたんだが、歩くとまだ少しふらつく……他の者に悟られぬ様、僕はなんとかドアに向かって歩み進んだ。


「なんだ、ユリコちゃんだったのか……怪我はないか?」


「……うん」


ドアを開けるとすぐ目の前にユリコちゃんの姿が有った。僕の問いかけにこの子は無表情で返事をする……ユリコちゃんはユマリといい勝負ができそうなくらい表情が全く変化する事が無い、でもそれはユマリの様に冷静って訳でもなさそうだ。


「そうか、一安心だ」


「……お兄ちゃんなら……お姉ちゃんを解放してくれるかもしれない……」


僕の問いかけに答えるでもなく、ユリコちゃんは言葉を発した……やはりユリコちゃんとユリナは姉妹なんだろうか?


「あら!ユリコちゃん!!無事でよかったわ、心配してたのよ。危ないから私達と一緒行動しましょ?」


みぃ姉が優しくユリコちゃんに話しかけるが、少女は全く反応を示さない。みぃ姉は困惑な表情をして目を向けて僕と目が合った。そして一瞥した後ユリコちゃんに話しかける。


「ユリコちゃん、僕たちはお前のお姉さんを粛正……消し去るつもりは今の所ない。だがもしもここにいる者達を一人でも傷つけた場合は……分かるな?」


まだ幼女であるユリコちゃんにとっては、少々きつめの言葉だったかもしれないが……仕方がない、それが僕の信念なのだから。それに嘘をついて安心させるのは僕の主義に反する。


……しかし、正直僕の中に少々心苦しい気持ちが有るのも事実だ。


僕の辛辣な発言を聞き、ユリコちゃんは何も言わず黙って小さく頷いた。表情には決して表さないが、恐らくこの子にとって相当な苦であろう


「……なあ、ユリコちゃんはこの屋敷に資料室か書斎……本がたくさんある所がないか知らないか?俺達は君たちの事をもっとよく知りたいなと思ってるんだ」


「……こっち……」


カイの優しい問いかけにユリコちゃんは小さく呟きパタパタと小さな小幅で歩き始める。カイや皆んなと顔を見合わせ、僕達は談話室を出て行きユリコちゃんの後を追う。


階段を降り、屋敷の東側へ来た僕達は複雑に曲がりくねった廊下に差し掛かる。


「マップ無しじゃ迷いそうだな……お前達、しっかりついてーー……」


……?


突如ユリコちゃんが立ち止まりこちらの方に振り返り見つめる。僕達も自然と立ち止まり、ユリコちゃんを見つめ返す。


「ん?なになに、どうしたのユリコちゃん?」


「……」


サツキの問いかけに応じず、ただ黙って年相応の可愛らしい顔を僕らに向けている。

……よく見ると視線は僕の方に向いていた。


「はて?リュウイチ様に何か伝えたいのでしょうか?」


レイもこの子の視線の先を感じ取ったのか、誰に言うでもなく疑問の言葉を発した。

……この感覚、なんだか小さい頃のミナトを思い出させるな。

僕は立ち止まっているユリコちゃんに歩み寄り、なんとなくその小さな手を掴んだ。

すると、ほんの僅かでとても微弱な力で僕の手を握り返してきた。


「……迷子にならないようにしないとな」


「……」


ユリコちゃんは何も言わず小さく頷き、今度はみぃ姉に純真な瞳を向けた。


「え、私も……?」


全く予想していなかったせいか、みぃ姉は少々驚き気味の声を発し、ゆっくりとユリコちゃんの手を繋ぎ再び歩き始めた。例え精神体でもやっぱり中身は年相応の子どもなんだな。



……




……精神体?




何故その単語が出て来た?



僕は歩きながら、自分の頭の中に自然と浮かんだ来たワードに疑問を感じた……もしも本当にユリコちゃんが精神体だとすると、既に故人であるという事か?

しかし僕は確かにこの子の手を掴めている、温もりも感じている……どういう事なんだ?


「ふふ、私たちと手を繋ぎたかったのね。なんだかすごく可愛い」


「だねぇ♪ ……あ!後ろから見たら三人とも夫婦とその子どもみたいだよぉ♪」


考え込んでいると、サツキがアホな発言して来たので思考を停止させ呆れながら振り返る……するとユマリの鋭い視線と僕の視線がぴったりと合わさった


「……その言葉即刻取り消しなさい、凄まじく不愉快だわ」


僕のせいじゃない……僕のせいじゃない……僕のせいじゃない…


「や、やだ……夫婦だなんてそんな……嬉しい……」


みぃ姉、それは火に爆薬を放り込むようなもんだぞ……


「……兄さん、帰ったら私と結婚して」


ユマリさ〜〜〜〜〜〜〜〜ん?


「なっ!?なんて事言ってるのよ!!リュウイチはわ、わ、わ、私と……!」


「あ、あの……お二人とも、もう少し緊張感を持った方が良いんじゃないでしょうか……」


「キラは黙ってて!」

「キラは黙ってなさい」


みぃ姉とユマリの妄言に仲介したキラだったが、二人の凄まじい威圧に押し殺されビクッとしながら口を塞いだ。

このやり取りを歩きながら……しかもみぃ姉はユリコちゃんと手を繋ぎながらやってるんだから、ある意味かなりの強者だな……


「お前らもう少し空気を読めよ、ユリコちゃんの前なんだぞ」


「ご、ごめんなさい……」

「ごめんなさい」


僕は二人を一喝し、ユリコちゃんに顔を向ける。


「悪いな、やかましい所を見せてしまって」


「……」


……心なしか、一瞬ユリコちゃんの表情が和らいだように見えた。僕の見間違いかもしれないが、この子はきっと良い笑顔の持ち主かもしれない。


フッ……

まあ……ミナトには負けるかもしれないけどな。

アカリ

「一つの物語小話劇場……初登場のアカリでーす……」


リュウイチ

「なんだ、やけにローテンションじゃないか?」


アカリ

「だって!!電話したのにすぐ切っちゃうんだもん!!せっかくリュウイチお兄ちゃんと話せると思ったのに……」


リュウイチ

「タイミングが悪かったという事だ。まあ良いじゃないか、話そうと思えばいつでも話せるだろ」


アカリ

「ぶー!リュウイチお兄ちゃんの分からず屋!」


リュウイチ

「ん?」


アカリ

「プン!次回、一つの物語〜悲劇編6〜 悲劇編とか言いながら随分楽しそうじゃん!」


リュウイチ

「これも僕が織り成す技の一つなのかもな」



次回掲載日4月30日予定

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