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一つの物語  作者: 世界の一つ
一つの物語〜不穏〜
22/112

一つの物語〜不穏編4〜(挿絵あり)

登場人物


・リュウイチ

特務執政官、リュウイチ・ナルミ部隊隊長で"自分のため"を信念に戦う成年。戦闘時は2本の剣と二丁の魔銃を使う戦闘スタイルだが、基本的に右手だけで剣を扱っている。冷静沈着で頭脳明快であり、戦場に行ってもその性格を活かし、的確な指示を出し的確な行動をとる。そのため部下や仲間達からあつい信頼を寄せられている。ミツキ達を始め、多くの女性に想いを寄せられているが、本人はそれを躱しており本人達にもその気は無い事を断言している。家族関係は兄が一人、弟と妹が一人ずついる。


・ユマリ

リュウイチ直属の一等粛正官で彼の部下兼護衛を務めている。物静かであまり多くを語らない、幼馴染のリュウイチを兄と呼んで彼を慕っているが、その想いは兄としてではなく、一人の男として彼に好意を抱いている。ミツキと同じく少々独占欲が強い。

兄のレイとジュンの事は名前で呼んでいる。彼女曰く、自分の兄はリュウイチだけとの事。

兄に似て魔法も使えるが、基本的に短刀を使い、まるでニンジャのような動きをする。


・ミツキ

幼馴染のリュウイチと同じ特務執政官でミツキ・アサギリ部隊隊長である。リュウイチに惚れており、彼の実の妹にすら嫉妬や警戒心を抱くほど彼を想っている。しっかりしてるがここぞと言う時に詰めが甘い時があり、私生活でもどこか抜けている。容姿端麗、頭脳明快、長く綺麗なポニーテイルが特徴。その容姿と優しさからヘヴンの隊員達には人気が高い、しかし当の本人はリュウイチにしか興味が無い。ちなみに妹であるサツキに劣らないくらいの怪力を有しているが、それを使う事はあまりない。


・サツキ

リュウイチの幼馴染でミツキとは3歳離れた姉妹。一等粛正官サツキ部隊の隊長。並外れた怪力の持ち主で、それが災いして被害を拡大させてしまう事がしばしばある。本人は一応気をつけて行動したいるもののなかなかそれが実らない。

姉のミツキ同様リュウイチに好意を寄せているが、時にミツキ達を応援するそぶりを見せたり、リュウイチに迫ってからかったりする事が多く、何を考えているのが分からない時がある。姉に似て顔はかなり綺麗に整っていて、サラッとした茶髪のセミロングが特徴


・カイ

リュウイチのガード兼親友であり、彼の護衛で彼の良き友でもある。リュウイチと同様剣の使い手で腕前は超一流であり、素早さに特化した戦闘スタイルである。極度の緊張症で女の事になると右往左往してしまい、言葉がたどたどしくなる。が、男女関係なく気さくな性格なので、女は勿論男にも人気がある。


・レイ

カイと同じくリュウイチのガード兼親友。いつも笑顔を崩さない明るい成年で妹にユマリ、弟にジュンがいる。魔法を得意としており、時空間魔法や上級魔法も短い詠唱で発動する事ができる所謂天才であり、本人はそれを誇示したりしない。たまにサツキと一緒になって悪ノリをしてリュウイチに叱られることがあるが、反省はしていない様子。


・ミソラ

特務執政官、キョウコ・ミソラ部隊隊長で短刀を二本使った素早い動きが基本的戦闘スタイル。乱戦になると味方の治癒も行う治癒術師でもあるため、尚且つ優しく人当たりも良く気さくな性格なので、部下や他の隊員にも人気が高い。噂ではミツキと同じくらいのファンクラブがいるとの事だが、本人はそれに少々困っている。


・キラ

リュウイチ部隊の一等粛清官であり、ユマリとサツキ達の同期。穏やかで優しい性格で、部下などにも分け隔てなく接する好青年。潜在能力が高く、単体で大物イレギュラーやギガントモンスターを粛清できるくらいの実力があるが、本人はそれを謙遜している。

モンスターよりイレギュラーの粛清を主に行っており、戦闘スタイルは魔銃を駆使して戦う。その射撃の腕前は極めて高く、狙撃も難なくこなす

ミツキが苦しみの声をあげる度に髪の色が徐々に赤く変色していく。僕はそれを見て、鞘に収まった剣を構えている手に更に力を入れる。


「ば、バーサーカー?なんですかそれは……?」


「……アサギリ家で代々受け継がれている異能の能力だ、本人の意思とは関係無く、なにかをキッカケに発動してしまういわば暴走状態の事だ」


キラの疑問に僕はミツキを見つめながら答えた。サツキは呆然としており、初めて聞いたような顔をしている。


「な、なにそれ……あたし、そんなの聞いた事ないよ?」


「リュウイチ、ミツキを止める方法はあるのか?!」


止める方法か……それはあいつを殺すしか……


「……分からない、とにかく一度発動したら僕らを殺すまで止まらないかもしれない」


「その通りです、彼女を止めたいなら彼女を殺すしかありませんよ。それかあなた方が死ぬか、そのどちらかですね」


ミツキの隣にいたジュンが少しずつ離れながらそう言うと邪悪な笑みを浮かべる


……貴様っ


挿絵(By みてみん)


「……おい、もう一度そんなふざけた事を口にしたら、僕は迷わず貴様を斬り刻むぞ」


僕は自分の奥底から込み上げてくる怒りと殺意を抑えながらジュンを睨みつけた。


「……っ!!そ、その鋭い目つき……さすがですね」


僕の睨みを受けてジュンはあからさまにたじろいだ


「りゅ、りゅうくん……みぃ姉は……」


サツキは不安や悲しみが入り混じっている様で、その口調は普段からは考えられない程弱く、今にも消えそうなくらいの声だった。


「安心しろ、僕が必ずみぃ姉を止めてやる。もちろん、殺さないし傷つけたりもしない……何があってもな」


「りゅうくん……うん、ありがと……!」


そうだ、必ず止める。


絶対殺さない


絶対傷つけない


何か方法があるはずだ、考えろ!諦めるな!


「リュウイチ様……ジュンは僕とキラさんで相手をします……いえ、そうさせて下さい」


レイ


「そうですね、ジュンさんは僕たちに任せて下さい!」


キラ


「キョウコは俺とユマリが引き受ける、お前はサツキと一緒にミツキを必ず止めてくれ」


カイ


「……兄さん、気をつけてね」


ユマリ


「……やれやれ、どいつもこいつも……指令官は僕だぞ、勝手に決めやがって」


「これがりゅうくんの望む配分でしょ?わざわざ言わなくても、みんなりゅうくんの言いたい事は分かってるよ♪」


……フン、たしかにそうみたいだな


「……隊長命令だ、必ずミツキを助け出す!」


「了解!♪」

「了解」

「了解しました!」

「了解です!」

「了解っ!」


「さあ、行くぞ!!」


僕の掛け声と共に全員一斉に駆け出した









「殺す……!みんな殺す……!全部……!リュウイチを……殺す!!」


ミツキはそう叫びながら迫り来るリュウイチとサツキに殺意を剥き出しにして襲いかかる。


「やめてみぃ姉!あたしだよ!サツキだよ!あたしたちが分からないの!?」


サツキは悲痛な叫びをあげながらミツキに訴えかけるが、攻撃の勢いは止まらない。


「自我を失ってる、暴走状態って考えは間違いじゃなかったみたいだな。おそらくミツキ自身でもその力をコントロールできてない可能性がある」


「うわああああああああ!!」


ミツキの苦しみとも捉えられる叫び声が響き渡る。

それと同時にミツキはリュウイチに猛攻をしかけた。


「くっ!やっぱりリミッターが無い状態みたいだな……サツキ気をつけろよ!」


「うん!待っててね、みぃ姉!必ず止めあげるから!!」


リュウイチはミツキの凄まじい一撃を受け止める、彼の足元がその強力な攻撃により大きく砕けた。

すかさずサツキはミツキに攻撃を仕掛けるが、それをかわしてカウンターを仕掛ける


「はあああああああ!!」


「うわっ!!」


サツキはなんとかミツキの攻撃を防ぐがあまりの強さで吹き飛んだしまった。


「サツキ!!おい!目を覚ませ、ミツキ!!お前の敵はサツキじゃないだろう、何をやってんだよお前は!!」


「敵は殺すっ!全部殺すっっ!殺さなきゃ……じゃないと……!!」


ミツキはそう呟き、再び叫び声をあげてリュウイチに襲いかかる。

ミツキの攻撃を防いだ瞬間、リュウイチに再び凄まじい頭痛が走った


(っ!!この感覚は、あの時の……!?)


リュウイチの脳裏にミツキを回復した時の記憶が浮かび上がった


「殺す……!殺す……!みんな殺さなきゃ……!」


「やあああああああああああ!!」


体制を立て直したサツキが力強い攻撃をミツキにぶつけ、凄まじい衝撃波が発生する。


「みぃ姉!!なんであたし達が戦わなきゃいけないの!?あたしもりゅうくんもみぃ姉の敵じゃないよ!」


「さ……サツキ……!?リュウイチ……!?」


サツキの呼びかけにミツキはわずかに反応した。それを見たサツキは更に呼びかけ続ける。


「そうだよ!あたしとりゅうくんだよ!!小さい頃からずっと一緒だったでしょ!?今もそれは変わらない、あたしたちはずっと一緒だよ、敵なんかじゃないよ!!」


「うう……っ!!一緒……?リュウイチ……?」


ミツキの中で今までの記憶が錯綜した、その影響でミツキの力が徐々に緩み出す。

それを感じたサツキは彼女の手を握りしめる


「お願い、お姉ちゃん……目を覚まして!」


「さ……つ……き……?」


わずかだが、サツキの手を握り返した


「みぃ姉……!」


サツキはその感覚に喜びを感じ、更に力強く握りしめる。リュウイチはその二人を見守りながらゆっくり歩み寄った。


「あら、ダメじゃない。あなたの使命はみんなを殺す事、目の前にいるのは……敵よ!」


少し離れた所でそれを見たミソラは、そうミツキに声をかけた。

すると再び彼女は悲痛な叫び声をあげる。


「敵……!?敵は殺す……全部……みんな……!リュウイチを……殺す……!」



(なんだ?ミソラの呼びかけに反応してる!?……まさかあいつとリンクしているのか?そう言えば、最初にミツキを見つけた時、あいつは疲弊している様だった……なのにミソラは無傷……だとしたら……やってみるか!)


「みぃ姉!!違うよ、あたしたちは敵じゃない!」


「うわああああああああ!!」


「きゃあ!!」


サツキを突き飛ばし、叫び声を上げながら再びリュウイチへと攻撃を仕掛ける。リュウイチは一瞬武器を持つ手に力を入れたが、すぐに構えるのをやめた


「ぐっ!!がはっ!」


ミツキのカタナがリュウイチを腹部を串刺しにし、苦痛のあまりに吐血をする。

しかしリュウイチは抵抗せず自身の腹部に刺さっているカタナを握りしめた。


「兄さんっ!!」

「りゅうくん!!」


その瞬間を目にしたユマリとサツキは叫び声に似た声をあげた。


「はあ……はあ……み、ミツキ……これで満足か……?」


「……っ!?」


自我を失ってるはずのミツキはその言葉を聞いて、自分が貫いた彼の傷を見て動きが止まった。そしてそれを見たリュウイチは彼女を優しく抱きしめた。


「大丈夫だよ……もう戦わなくて良いんだ……怖がらなくていい、僕がお前を守ってやる……約束しただろ?」


「リュウ……イチ……?!約束……??」


リュウイチの言葉を聞いて、ミツキは瞳にいっぱい涙を浮かべる、深紅に染まっていた瞳は徐々にもとの色に戻ってきた。


「ミツキ!!あなたの使命を全うしなさい!!あなたの使命はその男を殺す事だ!」


その光景を見たジュンは怒号の様な声でミツキに叫んだ。


「あなたは黙っていなさい!これ以上僕を怒らせるな!!」


ジュンと対峙していたレイが怒りに満ちた表情で攻撃の嵐を放ち、彼にダメージを与えた。


「ミツキ……目を覚ませ……目覚まし役はお前なんだろ?だったら……僕にこんな事言わせるなよ……本当にどこか抜けてるよな……お前は……」


優しさに満ちたリュウイチの声を聞いて、ミツキは大粒の涙を流し始める。瞳の色は完全に元に戻り、血の様な色をした髪もどんどん元の黒髪に戻り始めた。


「リュウイチ……?……あ、暖かい……」


「みぃ姉……りゅうくん……」


リュウイチはミツキを更に強く抱きしめ、ミツキもゆっくりと彼の背中に手を伸ばして抱きしめ返す。


「リュウイチ?……あれ?……私は……え……?」


正気を取り戻しつつあるミツキは自分の腹部に感じる生暖かい感覚に目をやり、驚愕した


「……な、なんで……嘘……こんな事……イヤっ!なんで?!」


「……落ち着け、これはお前のせいじゃない……」


慌てふためきながら驚愕するミツキ、自分のやってしまった事に酷く動揺し始めるが、そんな彼女をリュウイチは落ち着かせようとする。


「私……?私がやったの……!?なんで、私こんな……リュウイチ、しっかりして!!」


「死にはしない、大丈夫だよ……」


そう言ってリュウイチは自分の腹部を貫いていたミツキのカタナを抜いた。それと同時に赤い鮮血が噴き出したが、抜くと同時にリュウイチは治癒術を発動させ傷口を塞いだ。


「っ!!……や、やれやれ……帰ったらたこ焼き食べないと……」


「ば、バカ!こんな時に何言ってるのよ!!」


リュウイチの冗談めいた発言でミツキは僅かに冷静さを取り戻した。リュウイチは力が抜けたようにその場で膝をつき、ミツキも反射的にそれに習った


「……ジュン」


カイ達と戦闘していたミソラが、レイ達の攻撃に押され始めていたジュンに声をかける。


「仕方ありませんね……」


そしてジュンが詠唱を始め、ミソラと自身を空間転移させた。


「くそっ!また消えやがった!……リュウイチ!」


悔しさを押し殺し、カイはリュウイチの元へ駆け寄り彼の傷口を心配そうな目で確認する。


「おい、大丈夫か?いくら治癒して傷口を塞いでも、痛みはしばらく残るだろ……」


「……大したことはない、まだ戦えるさ……アイツらは恐らくまだ近くにいる、あの詠唱速度だと短距離しか移動できないはずだ……」


リュウイチは傷口が有った腹部を手で押さえて立ち上がろうとした。


「あ、まだダメよ……しばらく休んでた方が良いわ」


フラついたリュウイチを支えながら、ミツキは不安と罪悪感が込み上げて来るのを感じ、表情が更に暗くなる。


「……みぃ姉、とりあえずあまりくっつくな。胸が当たってる……」


そんなミツキの顔色を見て、再び冗談めいた発言をするが、彼女は黙ったままリュウイチから離れようとしない。


「……兄さん、無理しないで。あの二人は私達が追うわ、だからここで休んでいて」


ミツキの意見に同意するかのような発言をするユマリ、その表情はいつもの無表情さが無くなり、完全に不安な顔をしている。


「……この先に」


「え……?」


リュウイチの霞んだ声に、同じく彼のそばにくっついていたサツキが聞き返す


「この先に……吊り橋を渡った先に何か嫌な気配を感じる。恐らく僕の頭痛の元凶だ、調査する必要がある……並大抵なものじゃない、気をつけろよ……僕もすぐに追いつく」


「……分かりました、僕たちで調査します!リュウイチ隊長はゆっくり休んでいて下さい、その後合流しましよう」


キラはリュウイチの発言に賛同し、再び再会する事を約束した。


「みぃ姉……りゅうくんをお願いね」


「……ええ、サツキも気をつけてね」


ミツキは無理やり笑顔を作って返答する、そんな彼女の心情を理解したのか、それに応えるようにサツキも笑顔を作り、うんと頷いて見せた。


「リュウイチ様、お気をつけて!先に行ってお待ちしてます」


「ああ、お前たちも気をつけろよ」


ミツキとリュウイチ以外はその言葉を聞いて全員頷くと、吊り橋の先にある渓谷方面へと歩き出して行った。






ーー数分後、朧月の渓谷入り口前森林にてーー



「……ねぇ……リュウイチ、怖くないの?私と……その……二人でいて……私、またあなた達を襲ってしまうかもしれないのに……」


「大丈夫だと言っただろ?恐らくもうバーサーカーになる事は無いと思うしな」


近くの木に寄りかかっていた僕の隣にいるみぃ姉が、不安に支配されたような表情をして僕に話しかけてきた。


「ど、どうして言い切れるのよ!?」


「恐らくだが、お前のバーサーカーは誰かに意図的に発動させられた可能性がる。多分そうしたのはミソラたちだ。その方法は仮説の域なんだが、みぃ姉の意識と奴らの意識がリンクして、お前をあんな姿に変えたんだと思う」


そう言い終えると、腹部の痛みより頭痛の痛みが勝り始めてきた。

……でもこれはみぃ姉の影響じゃなさそうだ、やっぱりこの先の何かをなんとかしないとダメか


「でも……じゃあ、私はあの二人が死なない限り、またあなた達を襲ってしまうという事なんじゃ……?」


「……いや、多分その心配は無い。その根拠は二つある。一つはもしまだお前を手駒として扱えるなら、転移なんてしないでお前に再び洗脳をかけて僕たちを襲わせてたはずだ」


「そしてもう一つ、お前を……その……抱きしめた時、どうやったか分からないが、僕の意識とお前の意識を同調させて、正気に戻すことができた。その時お前から発せられていた嫌な感じが消えていくのを感じた」


……あの時の感触を思い出してしまった、なんで抱きしめてしまったんだ僕は!



「私の中の意識と同調……リュウイチの心と私の心が繋がったって事?」


「まあ、簡単に言えばそうだ。今現在も繋がってるかは分からないけどな」


ふと、みぃ姉の顔を見ると少々頬を赤らめてもごもごして喜んでいるようだった。

……やっぱり抱きしめない方が良かったかもな


「……とにかく、万が一またバーサーカーになってもまた僕が必ず止めてやる。絶対にな」


「……リュウイチ……本当にごめんなさい。いくらバーサーカーになってしまったとはいえ、あなた達を傷つけてしまった……こんな私があなた達と一緒にいて良いはずないけど……けど……」


そこまで言うと、みぃ姉は言葉を詰まらせた。まだ悲しみと罪悪感に苛まれているようで、その目には再び涙を溜めている。


「少なくても僕はみぃ姉を責めてはいない、サツキも僕と同じ気持ちのはずだ。多分ほかの奴らもな……そうじゃなきゃ、僕たちを二人きりにしないさ」


みぃ姉は黙ったまま顔をうつむかせ、涙がひと雫流れ落ちる。

……やれやれ


「っ?」


すすり泣くみぃ姉の頭に手をやると、ほんの僅かにみぃ姉の体がピクッとした。そしてゆっくり顔を上げ、涙で濡れた綺麗な瞳が僕を見つめる。


挿絵(By みてみん)


「昔言ったろ?僕の前では素直になって良いんだ。ミツキはどうしたいんだ?」


「リュウイチと一緒に……いたい……」


うん、みぃ姉らしい答えだな


「だったらいれば良い、でもあまりくっついたりするんじゃないぞ。サツキに茶化されるし、ユマリには睨まれるから……なっ!?」


僕が念のため釘を刺しておくと、突然みぃ姉が僕の腕に抱きついて来た


「おい……今の僕の話聞いてたか?」


「今は私たち以外いないじゃない……だったら、これくらいしても良いでしょ?誰も何も言わない、言わなければ誰にも分からない……お願い……」


……そう来たか

みぃ姉がそう言うと、更にぐいっと腕にしがみ付いてくる。かなり密着してるせいで、腕越しにみぃ姉の鼓動が伝わってくる、少し早い……


「も、もう良いだろう?あんまり密着するな……あと胸を当てるな」


「リュウイチが恥ずかしがっちゃうから……?」


いたずらをした子供のような笑顔を浮かべ、僕を見つめてくる。

よしよし、今度はちゃんとした笑顔だな。お前ら姉妹に作り笑いは似合わない


「女・の・子・と・し・て!もう少しガードを強めろと言ってるんだっ!」


「リュ・ウ・イ・チ・だ・か・ら!こういう事をしてるのっ!」


んのやろう……!


「だ・か・ら・!僕は今は誰ともそういう関係を築こうとしないって何度も言ってるだろ!?」


「だ・か・ら・!私はそれでも待つって何度も言ってるじゃない!!」


「あのなぁ!待ってる間くらい大人しくできないのかよ!?」


「あのねぇ!待ってる間にあんたが他の誰かを好きになるかもしれないから、こうやってアピールしてるんでしょ!!」


「そのアピールの仕方が過激だって言ってるんだよ!」


「これくらい良いじゃない!別に裸で迫ってる訳じゃないでしょ!」


「裸じゃなくても、みぃ姉の場合は破壊力があり過ぎるんだよ!その豊満な胸のせいでな!」


「何それ!?昔あんたがこれくらいが好きだって言ってたじゃない!」


「あん!?そもそも僕をボイン好きにしたのはお前のせいだろうが!」


「はあ!?私のせいにするわけ!?仕方ないじゃない育っちゃったんだから!!」


「じゃあ!それ相応に少し行動を控えれば良いだろ!」


「じゃあ!行動しなくても私を選んでくれる訳!?」


「ーー!」


「ーー!」


「ーー……」

サツキ

「一つの物語小話劇場!再び登場のサツキちゃんだよ!!♪」


リュウイチ

「まーたうるさいのが来た……」


サツキ

「そんな事より、りゅうくん!なんであんな無茶な事したの!?下手したら死んでたかもしれかいんだよ?!分かってる?!」


リュウイチ

「情緒不安定な奴だな……僕はそんなヘマしない、結果的に上手くいったんだから良いじゃないか」


サツキ

「心配するこっちの身にもなれってコト!次あんな事したら絶対許さないからねっ!りゅうくんにちゅー30回してやるから!!」


リュウイチ

「はいはい……次回、一つの物語〜不穏編5〜……時に人は思い切った行動をするもんだぞ」


サツキ

「思い切った行動?あぁ!りゅうくんがあたしにちゅーするって事?♪」


リュウイチ

「そんな訳ないだろうがっ!」

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