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一つの物語  作者: 世界の一つ
一つの物語〜絆編〜
16/111

一つの物語〜絆編10〜

登場人物


・リュウイチ

特務執政官、リュウイチ・ナルミ部隊隊長で"自分のため"を信念に戦う成年。戦闘時は2本の剣と二丁の魔銃を使う戦闘スタイルだが、基本的に右手だけで剣を扱っている。冷静沈着で頭脳明快であり、戦場に行ってもその性格を活かし、的確な指示を出し的確な行動をとる。そのため部下や仲間達からあつい信頼を寄せられている。ミツキ達を始め、多くの女性に想いを寄せられているが、本人はそれを躱しており本人達にもその気は無い事を断言している。家族関係は兄が一人、弟と妹が一人ずついる。


・サツキ

リュウイチの幼馴染でミツキとは3歳離れた姉妹。一等粛正官サツキ部隊の隊長。並外れた怪力の持ち主で、それが災いして被害を拡大させてしまう事がしばしばある。本人は一応気をつけて行動したいるもののなかなかそれが実らない。

姉のミツキ同様リュウイチに好意を寄せているが、時にミツキ達を応援するそぶりを見せたり、リュウイチに迫ってからかったりする事が多く、何を考えているのが分からない時がある。姉に似て顔はかなり綺麗に整っていて、サラッとした茶髪のセミロングが特徴


・トモカ

ユキタカの恋人でサツキとは仲が良いが、敬語で話す。二等粛清官であり容姿端麗で慈愛に満ちたその性格と容姿から隊員達の間では"戦場の天使"と言われている。穏やかな性格だが、リュウイチ達が認めるくらい芯が強く、他人を見極める能力が高い。戦術は主に魔法と治癒術、弓の様な魔力を凝縮させた独特の武器を用いて戦うので、遠距離支援を担当している。


・ミナト

リュウイチの妹、さらにユキタカとクウガ、二人兄が存在するが、リュウイチだけをお兄ちゃんと呼びあとの二人は名前をつけてお兄さんと呼ぶ。

気配には人一倍敏感であるリュウイチに気配を感じさせず、彼に接近できる特技を持つ。

基本的に家事をしないユキタカと一人暮らしをしているクウガにはあまり懐いておらず、リュウイチを溺愛している一面を見せる事がしばしばある


・アカリ

サツキの後輩でトモカの妹、姉のトモカより先輩のサツキの方に懐いている、そのせいか言う事や話し方がサツキに似ており、リュウイチにため息いをつかせる事がほとんどである。

また、リュウイチの事をりゅういちお兄ちゃんと慕い、自分は未来の妹だと自信たっぷりに言ってトモカとユキタカに、赤面させる。

ヘヴンの隊員研修生であり、戦闘スタイルはサツキと同じで怪力と格闘戦で対象を排除する。

「ただいまー」


一階からお姉ちゃんの声が聞こえてきた、もうやっと帰ってきた!

私は自分の部屋の扉を開け、階段の下にいるお姉ちゃんに声をかける


「おかえりーお姉ちゃん!!"ずいぶん"遅かったね!!♪」


「し、仕事が長引いちゃって……それで遅くなっただけよ」


ホントかなぁ??♪

そう言うお姉ちゃんの顔は真っ赤になっていた、お姉ちゃん可愛いんだからー♪


「コラ、アカリ……おかえりなさい、トモカ。寒かったでしょ?お風呂沸いてるわよ」


「あ、お母さん、ただいま。じゃあお風呂入ってこようかな」


お姉ちゃんをからかっていた私を仲裁して、優しい声でお姉ちゃんに声をかけるお母さん。

ちぇ、もう少し追求したかったのに……ま、いっか!♪

あ、そうだ!


「ねえ、お姉ちゃん!聞きたいことがあるんだけど」


「え?なに?」


階段を上がって自分の部屋に入って行こうとするお姉ちゃんに慌てて声をかけた


「アカリ、お風呂冷めちゃうから後にしなさい」


私たちの会話が聞こえていたのか、下の階にいるお母さんがまたしても会話を中断させる。もー!


「大丈夫だよ、お母さん。すぐに入るから……アカリ、また後でね」


「はーい……」


はぁ、からかわなきゃ良かった……

私は仕方なく自分の部屋に戻りベッドの上にばたりと倒れた。

大の字になって横になった私はなんとなく左手を見る。


"ほら、行くぞ"


あの時握られた左手を見ていたら、りゅういちお兄ちゃんの声が心の中で自動再生された。

……温かかったな


ついさっきまで一緒にいたからか、りゅういちお兄ちゃんの腕の感覚や温もりが鮮明に思い出される。そう思っていると、何となく空想の中でのりゅういちお兄ちゃんの腕を抱くように両腕をクロスさせた。


お兄ちゃんか……こんな感じなのかな?


そう思いながら私はおもむろに枕近くに置いてあったSPDを手にとり、連絡先の項目を選択する。


ー連絡先ー


ーラ行ー


ーりゅういちお兄ちゃんー


ー通話ー


ピッ


りゅういちお兄ちゃん、まだ起きてるかな?

呼び出し中の画面から目を離し、なんとなく時計の方へ目をやる。


21:36


時刻を見て、何となく通話してしまった自分に気づいて小さな不安と羞恥心が込み上げきた


やっばー……どうしよう……!


『もしもし、どうした?』


あっ

そう思っていると、突如ウィンドウが浮かび上がり冷たいけど、どこか優しい声とともに先程まで一緒にいた人の顔が映し出される。


「も、もしもーし!ごめんね寝てた?♪」


内心慌ててしまっている自分を押し殺し、半ば無理矢理笑顔をつくり、明るく返事をする。


『いや、皿洗いが終わって部屋で一息ついてた所だ……ん?あぁ、今ユキタカが帰って来たみたいだ』


「そ、そうなんだ。お疲れ様!♪ お姉ちゃんもさっき帰って来たのに早いね!」


『あいつバイクだし、近道でも使って来たんだろ……で?ご用件は?』


りゅういちお兄ちゃんの言葉に少しドキッとした、ヤバイなぁ……なんとなく通話したなんて言えない……何かそれらしい事を言わなきゃ……!


「え、えっとー……あ!りゅ、りゅういちお兄ちゃん、明日ヒマ?!」


し、しまったー!!つい口から出まかせを!!


『あん……?明日?まあ休みを取ってあるから暇と言えば暇だな。ミナトとも特に約束はしてないし』


ヨシッ!結果オーライ!


『……?なんだ?』


はっ!

ついガッツポーズをとってしまった私を見て、りゅういちお兄ちゃんは疑問に満ちた表情を浮かべている。お、落ち着け私!


「い、いや良かったなあって思って! じゃあ明日お姉ちゃんやユキタカお兄ちゃんと一緒に兄妹揃ってお出かけしない??♪」


『断る、行きたいなら三人で行け。そこに僕が入る理由がないし、ミナトを一人置いて行くのも気が引ける』


し、しまったー!ミナトお姉ちゃんが滅多に外出しない事をすっかり忘れてた!!


「た、たまには良いじゃん!ミナトお姉ちゃんも誘って、リハビリみたいな感じだって言って皆んなで行こうよー!」


な、なんとか誤魔化せたかな……?ごめんなさい、ミナトお姉ちゃん!!


『行かない、そもそもユキタカも休みかどうかも知らないし、ミナトだってまだお前達に慣れ始めて来たばっかりなんだし、急過ぎるだろ』


ご、ごもっともです……


「うーーでもーー!」


と、私はふと握り締めてた左手に目をやった

……


『おい、さっきからなんか変だぞ?どうしたんだ?』


「……」


『アカリちゃん?』


「おねがい……」


不思議とその一言が声に出た


『お願いって言われてもーー』


「おねがい、りゅういちお兄ちゃん!一緒に行こうよ!!」


つい勢いで声を荒げてしまった……りゅういちお兄ちゃんはあっけに取られているような表情をしている


『……待ってろ』


え?

そう言うとりゅういちお兄ちゃんはどこかへ移動しているようだった。


『どうしたんですか?お兄ちゃん?』


この声は、ミナトお姉ちゃん……?


『悪いなミナト、お前を大事に思ってくれているアカリちゃんが、お前に話したい事があるそうだ。通話に出てやってくれるか?』


『あ、アカリさんが……?え、えっと……分かりました……もしもし……?』


りゅういちお兄ちゃんはミナトお姉ちゃんにSPDを渡したようだ……は、話したい事って……りゅういちお兄ちゃんも無理言うなぁ……


「え、えっと……ミナトお姉ちゃん?ごめんね急に無理を言って、ちょっと話したい事があって」


『な、なんでしょう……?』


ミナトお姉ちゃんはうつむきながらチラチラと目線を合わせようとしてくれている。

ダメだ……この様子じゃ外出なんて……こうなったらっ


「あ、あのね!ミナトお姉ちゃんさえ良ければ、明日お姉ちゃん誘ってまたそっちにお邪魔したいんだけど……!」


『お、おうちに……?と、トモカさんと……?』


動揺するミナトお姉ちゃん……私のとっさに変えた提案に、りゅういちお兄ちゃんは黙ったままでいる。どうやら察してくれて、あえて何も言わず黙ってくれているようだ。


……ありがとう、りゅういちお兄ちゃん


「ダメかな??今日お夕飯をごちそうしてくれたお礼をしたいんだけど」


『……』


「……」


ミナトお姉ちゃんは俯いたまま考え込んでいる様だ、黙ったままのミナトお姉ちゃんを真っ直ぐ見て、私も黙ってミナトお姉ちゃんの返事を待つ


『み、ミナトは……トゥエンティワンのチョコミントが食べたいです……』


「ちょ、チョコミント……?」


『ご、ごめんなさい……ダメですか……?』


ミナトお姉ちゃん……


「ううん、分かった!じゃあ明日行く前に買って行くね!!♪」


『い、良いんですか……?』


恥ずかしさと罪悪感を合わせたような表情を浮かべて、チラチラと私の顔を伺っている様だった。


「もちろん!♪ ミナトお姉ちゃんのお願いだもん、私もお礼したいし絶対持って行くよ!!♪」


『あ、ありがとうございます……!楽しみにしてます!』


私の返事を聞き、ミナトお姉ちゃんは可愛らしい笑顔を見せながら喜んでいる。

りゅういちお兄ちゃんがミナトお姉ちゃんに優しくなる気持ちが少し分かったかも……!


『話しがまとまった様だな、明日10時以降なら大丈夫だがどうする?』


再びリュウイチお兄ちゃんの顔がウィンドウに映される。その表情はなんとなく柔らかい、リュウイチお兄ちゃんってこんな柔らかい表情もするんだ……


「あ、え、えっと…じゃあその時間から一時間くらいの間にお邪魔するね!」


『分かった、ユキタカには僕から言っておく。今風呂に入ってるからな……ミナト、それくらいで良いな?』


『はい!』


ミナトお姉ちゃんの明るい返事が聞こえた……その返事を聞いたりゅういちお兄ちゃんは口元をほんの少し緩め、優しい微笑みを浮かべて頷いた。

……その横顔はまさに優しいお兄ちゃんという感じだった……他の人にも……サツキ先輩達にも似たような表情を浮かべるのかな……?


「……私にも……」


『ん?なんか言ったか?』


あ、あれ……!? 私、何を……!

……き、聞こえてないよね……?


「な、なんでもない!じゃあ明日お姉ちゃんとチョコミント持って遊びに行くね!!♪ 二人ともありがとう、おやすみなさい!!」


『あ、ああ』


ピッ!


りゅういちお兄ちゃんの短い返事を聞いてすぐ私は通話を切った。



なんだろう……この感じ……



ミナトお姉ちゃんとりゅういちお兄ちゃんは兄妹なのに……仲の良い兄妹なんだから、優しい表情になるのは当たり前じゃん


サツキ先輩たちだって幼馴染なんだし、きっとあんな風に優しい表情をする事もある……現にサツキ先輩だってそう言ってた……



私だって妹みたいなものだって言われたし、きっと……






私は妹……




りゅういちお兄ちゃんはサツキ先輩と……








コンコン……


!?


「アカリ?起きてる?」


突然のノックの音に私はハッとして、お姉ちゃんの声に慌てて返事をする


「う、うん!起きてるよ、どうぞー」


私の返事を聞いてゆっくりドアを開けて、まだ少し濡れた髪のお姉ちゃんの顔が少しずつ見えてきた。


「ごめんね、できるだけ急いで出てきたんだけど……」


「あ、ごめんね急がしちゃって!ほら、ちゃんと髪乾かさないと風邪ひいちゃうよ!!♪」


私はお姉ちゃんの綺麗な髪をタオルでわざとぐしゃぐしゃっと拭いた


「わっ!ちょ、ちょっと、痛いじゃない!自分でやるわよっ」


「えへへ、ごめんごめん!♪」


もうっと短い文句を言いながら乱れた髪を整えるお姉ちゃん。


「それより、聞きたい事ってなに?」


あっと、そうだった!


「ねぇ、お姉ちゃん!明日一緒にりゅういちお兄ちゃんの家に行かない!?」


「えっ明日?明日はユキタカ君と……」


最後まで言い終える間に顔が少しずつ赤くなって行くお姉ちゃん……かっわいい!!わかりやすーい!!♪


「それならちょうど良かった!ユキタカお兄ちゃんも誘ってあるから大丈夫だよ!と言う訳で、明日お昼前にりゅういちお兄ちゃんの家にレッツゴー!!♪」


「え、え?ユキタカ君も誘ってあるってどういう事……!?お昼前?リュウイチお兄さんの家??どういう事か説明してよ!アカリー?!」



私は慌てふためくお姉ちゃんを無視して後ろから抱きしめて明るく振る舞う


「あ、りゅういちお兄ちゃんの家に行く前にチョコミント買って行くからね!!♪」


「え、チョコミント??なんで??」


「いいからいいから、じゃあヨロシクー!はいおやすみーー!!♪」


終始混乱していたお姉ちゃんの問いかけを無視して、一方的に話す事だけを話して、お姉ちゃんを部屋から追い出すように背中を押して部屋を後にさせた。


「アカリー!? ……もう……」


ちょっと強引だったかな?まあいいか、お姉ちゃんもおうちデート出来て一石二鳥だし♪


はーー!!


チョコは食べてもらえなかったけど……結構良いバレンタインだったかも……♪


「早く明日にならないかなーー!♪」


私は電気を消して枕に顔をうずめ、明日に備えて寝る事にした。


ピロン! ピロン!


ん?SPDのメッセージ音?

誰だろう?


……



あ、サツキ先輩だ



"今日はチョコありがと♪ りゅう君はチョコ受け取らなかったけど、気持ちにはちゃんと感謝する人だよ。言葉にはぜっっったい出さないけど、行動で丸わかりだから笑♪ 怒らないであげてねっ♪ おやすみ!"



サツキ先輩、わざわざりゅういちお兄ちゃんのフォローするなんて、やっぱりすごい慕ってるんだなぁ


……行動かー


"近くまで送る。暗いしな"


"ほら、マフラー……緩んでるぞ"


……たしかにっ


月明かりで僅かに見える中で私はもう一度自分の左手を見つめた。

ほんのすこししか見えないけど……温もりはしっかり覚えてる


優しくて温かいりゅういちお兄ちゃんの手……





お兄ちゃんの手……か





……っと、サツキ先輩に返事返さなきゃ!



"どういたしまして!♪ りゅういちお兄ちゃんの事なら大丈夫です、しっかり気持ちを感じる事ができましたから!それと、明日またりゅういちお兄ちゃんの家に遊びに行く事になりました!!おやすみなさい!♪ "



……


ピ……



"どういたしまして!♪ りゅういちお兄ちゃんの事なら大丈夫です、しっかり送ってもらったので!! おやすみなさい!♪ "



ピ……



よしっと



返信をし終わり、SPDを枕元に置いて私は眠りについた……



おやすみ、りゅういちお兄ちゃん



























トモカ

「ひ、一つの物語の小話……劇場……初めまして、トモカ・ニシミヤです……」


リュウイチ

「なあ、その劇場って言い方、みぃ姉から言われたのか?」


トモカ

「は、はい!こう言った方が気合いが入るからと言われて……」


リュウイチ

「あいつ浸透させようとしてやがるのか……変な事吹き込みやがって」


トモカ

「あ、あの!な、なにか間違えてしまいましたか…!?」


リュウイチ

「いや、良いと思うぞ」


トモカ

「よ、良かった……!」


リュウイチ

「どうでも良いと思うぞ」


トモカ

「え……?」


リュウイチ

「次回、一つの物語〜絆編11〜……へぇ、次はユキタカとトモカちゃんが主軸になるみたいだぞ、良かったな」


トモカ

「わ、私たちの?!どうしよう、ユキタカ君と相談しなきゃ!!」


リュウイチ

「扱いやすいやつ……」


トモカ

「え??」

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