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一つの物語  作者: 世界の一つ
一つの物語〜絆編〜
15/111

一つの物語〜絆編9〜

登場人物


・リュウイチ

特務執政官、リュウイチ・ナルミ部隊隊長で"自分のため"を信念に戦う成年。戦闘時は2本の剣と二丁の魔銃を使う戦闘スタイルだが、基本的に右手だけで剣を扱っている。冷静沈着で頭脳明快であり、戦場に行ってもその性格を活かし、的確な指示を出し的確な行動をとる。そのため部下や仲間達からあつい信頼を寄せられている。ミツキ達を始め、多くの女性に想いを寄せられているが、本人はそれを躱しており本人達にもその気は無い事を断言している。家族関係は兄が一人、弟と妹が一人ずついる。


・ミツキ

幼馴染のリュウイチと同じ特務執政官でミツキ・アサギリ部隊隊長である。リュウイチに惚れており、彼の実の妹にすら嫉妬や警戒心を抱くほど彼を想っている。しっかりしてるがここぞと言う時に詰めが甘い時があり、私生活でもどこか抜けている。容姿端麗、頭脳明快、長く綺麗なポニーテイルが特徴。その容姿と優しさからヘヴンの隊員達には人気が高い、しかし当の本人はリュウイチにしか興味が無い。ちなみに妹であるサツキに劣らないくらいの怪力を有しているが、それを使う事はあまりない。


・サツキ

リュウイチの幼馴染でミツキとは3歳離れた姉妹。一等粛正官サツキ部隊の隊長。並外れた怪力の持ち主で、それが災いして被害を拡大させてしまう事がしばしばある。本人は一応気をつけて行動したいるもののなかなかそれが実らない。

姉のミツキ同様リュウイチに好意を寄せているが、時にミツキ達を応援するそぶりを見せたり、リュウイチに迫ってからかったりする事が多く、何を考えているのか分からない時がある。姉に似て顔はかなり綺麗に整っていて、サラッとした茶髪のセミロングが特徴


・ユマリ

リュウイチ直属の一等粛正官で彼の部下兼護衛を務めている。物静かであまり多くを語らない、幼馴染のリュウイチを兄と呼んで彼を慕っているが、その想いは兄としてではなく、一人の男として彼に好意を抱いている。ミツキと同じくで少々独占欲が強い。

兄のレイとジュンの事は名前で呼んでいる。彼女曰く、自分の兄はリュウイチだけとの事。

兄に似て魔法も使えるが、基本的に短刀を使い、まるでニンジャのような動きをする。


・ミナト

リュウイチの妹、さらにユキタカとクウガ、二人兄が存在するが、リュウイチだけをお兄ちゃんと呼びあとの二人は名前をつけてお兄さんと呼ぶ。

気配には人一倍敏感であるリュウイチに気配を感じさせず、彼に接近できる特技を持つ。

基本的に家事をしないユキタカと一人暮らしをしているクウガにはあまり懐いておらず、リュウイチを溺愛している一面を見せる事がしばしばある


・アカリ

サツキの後輩でトモカの妹、姉のトモカより先輩のサツキの方に懐いている、そのせいか言う事や話し方がサツキに似ており、リュウイチにため息いをつかせる事がほとんどである。

また、リュウイチの事をりゅういちお兄ちゃんと慕い、自分は未来の妹だと自信たっぷりに言ってトモカとユキタカに、赤面させる。

ヘヴンの隊員研修生であり、戦闘スタイルはサツキと同じで怪力と格闘戦で対象を排除する。

「ずずずずー……でもどうしてりゅういちお兄ちゃんはそこまで頑なにチョコを受け取らなかったりデートのお誘いを無視したりするの?もらうだけ貰っておいても良いんじゃない??」


アカリちゃんが差し出されたジュースを飲みながら僕に質問してくる。いつまで居座るつもりなんだ、この子は……


「下手に受け取って変な噂を流されたり勘違いされないようにするため……でしょ?」


僕の代わりにみぃ姉が答えた、まあ大雑把に言うとそうだな。


「変なウワサ??」


「例えば、あの人のチョコを最初に受け取ったからあの人に気があるんだ……とか、あの人のチョコを受け取ったなら自分のチョコも……とか、そういう流れにならない様にリュウイチなりに気を配ってるのよ」


引き続き疑問を抱くアカリちゃんに、みぃ姉が淡々と答える……と言うかそこまで理解してるならなんで毎年毎年迫ってくるんだよ


「なるほどー……でもりゅういちお兄ちゃん、それだけ皆んなから想ってもらってるのに、一人くらいイイ感じの人はいなかったの?」


アカリちゃんの何気ない一言で全員が僕の顔を見つめる。

空気が重い、余計な事を言いやがって……


「何人に慕われようと、今の僕は他人の人生を背負ったり興味を持つ事はできない。ゆえに、皆んなの想いに良い答えを出す事はできない。だから他の人をーー」


「私は兄さんを待ってるから」


……僕の言葉を遮るようにユマリが素早く反応した、堂々とよくそんな断言できるな。


「なっ!?ちょっとユマリ、変な事言ってリュウイチを困らせちゃダメでしょう」


「そうだよユマりん、りゅうくんは皆んなのモノなんだから♪」


「こ、コラ!あんたも変な事言わないのっ!」


みぃ姉の言う事は最もだが、そう言いながら毎年誘ったりしてきてるのは誰かな、ミツキ?


「サツキ先輩からよく聞いてたけど、りゅういちお兄ちゃんって本当に大人気なんだねー……実際にその光景を目の当たりにすると改めてすごいなー」


「感心してないで、少しは理解しろ。こんな事になるし事情が分かったなら、今後は変に茶化したりするなよ?」


「うーん……でもサツキ先輩には幸せになって貰いたいからなー……」


そう言うとアカリちゃんは悩みだす。

大好きな先輩の幸せを願うなら、僕じゃなく他の奴との幸せを願ってやれ。そこに僕の存在をいれなくて良いだろうが


「僕じゃなくて他の奴を紹介したりすれば良いんじゃないか?無理に僕との幸せを願う必要はないだろう」


僕はアカリちゃんに思っていた事を率直に言ったが、ため息をついて呆れだした


「分かってないなぁ、それじゃ意味が無いんだよ。りゅういちお兄ちゃんって案外鈍感だねぇ」


鈍感だと……聞き捨てならないな


「なんでだよ、僕は明確に断ってるだろう。だったら他の奴との幸せを願ってやれと言って何がおかしいんだ」


「だーかーらーサツキ先輩は……!」


アカリちゃんは途中で言葉を区切り、口を閉じた。なんだって言うんだ……


「なんだ?」


「なんでもないっ! とにかく、私はサツキ先輩の幸せを願うから!」


意味が分からん、僕に固執する必要は無いだろうに……


「あの……お兄ちゃん、お腹が空いてきました」


ミナトが遠慮がちに僕に囁く、そう言われてふと時計を見ると時計の針が午後5時過ぎをさしていた。いかん、早くこいつらを帰さなくては


「おい、お前ら、そろそろいい時間になるからいい加減帰れ。特にアカリちゃん、いくらサツキ仕込みの腕前とは言え"一応"女の子なんだ、家が離れてるんだから真っ暗になる前に帰った方が良いだろう」


「なに!その"一応"って!!ケンカ売ってる?!」


強調し過ぎたか、まあでも間違ってないだろ……と言うか何気にいつの間か敬語じゃなくなってるし


「やーかーまーしい、それに僕は夕飯の支度をしなきゃいけないんだ、おとなしく帰っておけ」


「ぶ〜……まあ、今年は仕方ないか……」


「そうね、リュウイチの言う通り今日はもう帰りましょう……残念だけど」


みぃ姉とサツキの言った言葉に疑問を抱いた様にアカリちゃんが不思議そうな顔をする……アホが、余計な事を言うなっ


「"今年"は?あの、それってどういう……」


「お、お兄ちゃん……あの……」


アカリちゃんがそう言うとミナトが慌てた様に僕に囁いてくる。


「……なんだ?」


まさか……

僕の後でミナトがモジモジしていると、意を決したかのように口を開く


「その……今年も皆さんとお夕飯を食べたい……です……」


……何を言い出すんだ我が妹よ


「お、おい……アカリちゃんが居るんだぞ?」


「み、ミナトも成長しなければいけないと思うんです……!だから……だ、ダメですか……?」


おいおい、この前妹の座が危うくなるみたいな態度とってなかったか?たった二回会っただけで心を許すのか妹よ!


「成長するのはダメじゃないが、さっきまで僕を渡さないとか言ってただろ?」


「もちろんお兄ちゃんは渡しません! でもお夕飯を皆んなで食べるのは別と言うか……」


くそぉ、こいつら純粋なミナトを汚しやがって!

……しかし、変に独占欲を出し過ぎない様にするのも必要か……いやしかしっ


「ん?なんだかよく分かんないけど、りゅういちお兄ちゃんが夕飯ご馳走してくれるって事??」


「そういうコト!りゅうくん争奪戦は一時停戦!その証として、りゅうくんお手製の夕飯タイムで〜す♪」


勝手に決めるなアホデビル!まだ僕は作るなんて一言も言ってないぞ!


「停戦ね……まあミナトちゃんが良いって言ってるんだし、せっかくだからご馳走になろうかしら♪」


何、上機嫌で合意してるんだよ、さっきまでの鬼気迫る勢いはどうしたんだ?!


「大丈夫よ兄さん」


「……何が大丈夫なんだよ?」


「私も手伝うから安心して」


……いや、だから何が大丈夫なんだよ???


「やったー!!サツキ先輩が言うならご馳走になりますね!!♪ あ、お母さんに連絡しないと」


ご馳走になるなっ

連絡するなっ

今すぐ帰れ!


「だから、作るなんて言ってないだろうが!」


「や、やっぱりダメなんですか……お兄ちゃん……?」


くそっ!だからそんな目で僕を見るな!目を覚ませ妹よ!


「み、ミナトには作ってやるぞ?でもこいつらの分は……」


「ひどいっっ!!こんな可愛い女の子達をはぶくなんて!!やっぱり、りゅうくんはシスコーー」


「わ、分かった!分かったよ!!作ってやるよ!!」


やられた……!だがこの屈辱、必ず晴らしてやるぞ!

……顔を両手で覆っていたサツキだが、僅かな隙間からニヤッと笑っているのが見えた。

見えたぞ、見たぞ、しっかり目に焼き付けたからなっ!


「ユマリ!野菜を洗っておけ!」


「どの野菜?」


「ニンジン!」


「了解」


既にキッチンに立っていたユマリに半分八つ当たりに近い声で指示を出したが、当の本人は全く意に介しておらず、それどころか少々微笑みを浮かべていた。


どいつもこいつも……














「美味しかったぁ、ごちそうさまリュウイチ♪」


「はいはい……」


すっかり上機嫌になっているみぃ姉が大満足といった感じの声を上げる。


「ホントに美味しかったよりゅういちお兄ちゃん!!サツキ先輩が言ってた以上に料理上手いんだね!!♪」


フン、そんな褒め言葉じゃ僕の機嫌は治らんぞ。


「ごちそぉさま、りゅうくん♪ ほらほらいつまでも暗い顔してたらダメだよ♪」


誰のせいだ?誰のせいだと思ってるんだ?そうだお前のせいだよ、お前の!


「ごちそうさま、兄さん。私と結婚したらまた作ってね」


おい、どさくさに紛れてなんて事言ってるんだよお前は


「ユマリさんと結婚しても、ミナトにも作って下さいね!」


ミナトもちゃっかり乗ってるんじゃないっ


「ちょっと?なに言ってんのよあんた達っ」


ほらみろ、またみぃ姉が不機嫌な顔で睨みつけてきたじゃないか。言葉の選び方には気をつけろよお前ら


「食べたならさっさと帰れ、僕は安息が欲しい」


僕は皿を洗いながら大きくため息をついた、毎年毎年……疲れるから早く帰れっ


「はぁい♪」


「ふぅ……ありがとうリュウイチ、いつもごめんなさいね……」


そう思ってるなら実行してくれ……心労がつもりに積もる一方だ

僕は蛇口を閉め、隣で皿洗いの手伝いをしてくれていたユマリに声をかける


「ユマリ、お前ももう帰って良いぞ。あとは僕がやっておく」


「そう、分かった」


そう短く返事をしてユマリは濡れた手をタオルで拭いた。

僕はなんとなく、ユマリのすらりとした細い手に目をやった後、少し離れた所にある窓ガラスを見た。

ぬるま湯で洗っていたとは言え、外は相当気温が低そうだ……冷えなきゃ良いが


「……大丈夫よ、兄さん」


「な、なにがだ?」


「なんでもない……ありがとう」


僕の目線を見ていたのか、ユマリの的確な発言に少々挙動不審になってしまった。そんな僕を見たユマリは微かに微笑み、キッチンから出て行った。

なんでもないなら礼なんて言うな……


「ふふふっ」


僕らのやりとりをを見ていたミナトが愛らしい微笑みを浮かべる……愛らしいんだが、なんとなく釈然としないっ!


「フン……ミナト、風呂の準備をしておけっ」


「はい!」


なんで僕が照れなきゃいけないんだっ!面白くない!

そんな僕とは逆に明るい声で返事をしたミナトは、風呂場の方へパタパタと小走りで移動していった。


さて……


僕はサツキ達のいる玄関の方へ移動する。


「おじゃましました〜♪」

「おじゃましましたー!!♪」


来て早々靴を履き終えていたサツキとアカリちゃんが同時に声をあげた。

僕はそれを無視して靴を履く


「……あ、リュウイチ」


「ああ、アカリちゃんを近くまで送る。暗いしな」


みぃ姉の言いたい事を何となく察して返事をしながら靴を履き終える。


「え、あ……あの、私なら大丈夫だよ。それに外寒いしミナトさんだって……」


「ミナトなら大丈夫ですよ!お留守番のスペシャリストですから!」


アカリちゃんの声が聞こえたのか、ミナトが洗面所の方から明るい声がした。


「……」


ふとアカリちゃんの方を見ると、ぽかーんとした表情を浮かべていた。みぃ姉は少しふくれっ面をしているがなにも言わない、サツキは逆にニヤリとした顔をしながら黙って玄関の外へ出る。


「……ほら、行くぞ」


玄関に突っ立ったまま動かないアカリちゃんを外へ誘うように手をとり、二人で玄関を出た。

黙っていれば、トモカちゃんに雰囲気が似てるよな、こいつ。


「じゃあ、りゅうくん!アカリの事よろしく、おやすみ♪」


「兄さん、気をつけてね」


対照的だな。ユマリ、僕じゃなく少しはアカリちゃんの心配をしても良いんじゃないか?


「あ、はい……おやすみなさい」


「おやすみ、二人とも……リュウイチ、早く行って早く帰りなさいよー」


はいはい


僕は頭の中で返事をして三人が各々の家に入って行くの見送る。そしてアカリちゃんに目を向けると目線を下の方にやっていた……なんだ?

そう思いながらアカリちゃんの目線を辿ると、繋いだままの手に気づいた


「あぁ、すまん」


「う、ううん……大丈夫……」


……?


「さあ、行くぞ」


家の明かりで微かに見えるアカリちゃんの顔は、少々赤らめており、いつもとは少し違うどこかミナトに似た様な愛らしい微笑みを浮かべていた。


「はーーい!♪」


アカリちゃんがそう返事をすると、僕の隣に小走りで寄ってきた……少し近いぞ


「アカリちゃん、もう少し放れろ」


「えーーなんで?暗いから転ばないように近寄ったのにー!♪」


……くそ、なにも言い返せない

こういう所までサツキに似てやがる、さすがプチデビルだな。


「ねーりゅういちお兄ちゃん」


「なんだ?」


コートを忘れた。

そんな事を思いながらアカリちゃんの言葉に返事をした。


「りゅういちお兄ちゃんってやっぱり優しいんだね!♪」


……なにを言い出すかと思えば


「勘違いするな、男が女を一人で暗い夜道を歩かせないのは当然の事だろ」


「おーー確かに!」


僕の発言に素直に納得するアカリちゃん、よしよし、いつもそんなふうに素直で


「でも、想像してたより優しいよ!♪」


……人の話聞いてた?確かお前、僕の発言に納得したよな?


「サツキ先輩に"りゅうくんはいつもツンケンしてるけど、ホントはすごく優しくてカッコいい人なんだよ♪"……って教えてもらってたんだけど……」


あんのやろぉ、変な事を吹き込みやがって!!


「けど、実際にその優しさを感じると……思ってた以上にすごく心が温かくなった」


「……言ったろ、男として当然の事をしてるだけだ。何をどこまで吹き込まれたのかは知らんが、あんまり期待し過ぎるなよ」


僕がそう忠告すると、アカリちゃんは首を横に振った。


「りゅういちお兄ちゃんは優しいよ!なんか、大切にしてくれてるんだなって気がして、すごく嬉しかった」


大切ね……ついアカリちゃんを妹の様に扱ってしまっているのかもしれないな。


「お前がお兄ちゃんお兄ちゃんって呼ぶからかもな」


「ふーーん、じゃあ妹って事か……まあいいや!♪」


何を妥協したんだ?


「妹並みってだけで、実際の妹であるミナトくらいに扱うつもりはないぞ。まだあいつらが結婚した訳じゃないしな」


「まあね!♪……って言うかそれってシスーー」


「じゃない!立派な兄さんだって事だ!」


アカリちゃんはクスクス笑っている……ったく、どいつもこいつもっ


「はいはい!♪」


「格下げを考えておかないといけないな」


「えーー!そこまでしなくても良いじゃーん!!」


僕の腕にしがみついてくるアカリちゃんは、まさに妹のそれであった。やれやれ……こんなやかましい妹ができるとは、この先大変そうだな……


「それが嫌なら、ミナトを見習え。少しは落ち着きを持った方が良いぞ」


「ぶーー私が見習うのはサツキ先輩だけだもん」


まあ、あんな奴でも少しは良い所があるしな。


「せいぜい落第点まで行かないように気をつけろよ」


「はーーい!!♪」


アカリちゃんは僕の腕にしがみついたままそう元気に返事をした。

ついさっきまで手を繋いだだけで恥ずかしがってた奴が、今じゃ平気な顔をしてやがる。おおらかなんだか、純粋なんだか分からないなこの子は


「そう言えば、ユキタカの奴まだトモカちゃんといるのか?晩飯はいらないと言っていたが……」


「なんだか怪しげな雰囲気だねー!♪」


マセガキが……あえて伏せたのに堂々と口に出しやがった。


「……まあ、仲良き事は美しきかなってやつだな」


「本当の妹になる日が近いかもよ、りゅういちお兄ちゃん!♪」


こいつとことんだな、あのアホはどんな教育をしてるんだか


「あ、今サツキ先輩の事悪く思ったでしょ?」


鋭い


「先輩が先輩なら、後輩も後輩か……やだやだ」


「やっぱりー!とりけせ!とりけせー!!」


ええい、鬱陶しい……ん?


「ほら、マフラー……緩んでるぞ」


「あ……ありがとう……」


アカリちゃんは礼を言うと、はっとした後すぐふくれっ面になった。忙しい奴だな


「ヒキョウモノ……」


は……?なんの事だ?


「急に優しくするなんてズルイ!!」


なんだそんな事か……今までミナトやユマリの面倒を見てきたクセが出ただけなんだがな


「妹分の面倒を見てなにが悪い?それとも放置される方がお好みか?」


「むーー!」


更にむくれるアカリちゃん……やっぱりよく見るとトモカちゃんに似てるな。あの子も怒ったらこんな感じの表情になるんだろうか?


「なんだ?そんなに顔を見てほしいのか?」


「ふん!もういい、早く行こっ!」


照れ隠しなのか単に拗ねているだけなのかよく分からん、そう思いながら僕はアカリちゃんに腕を引っ張られながら歩き出した。


しかし、これは……一応言っておくか


「アカリちゃん、さっきから思っていたんだが」


「なにっ!?」


「僕の腕にくっつき過ぎだと思うぞ」


そう言うと更にギュッと力を入れてくる……おいおい


「だったらなに!? 良いじゃん別に!!」


「あのな、僕の腕に柔らかいものが」


「それがなに!? ヘンタイ!!」


……いや、待てくっつけて来てるのはお前だろ。なんで僕が罵声をくらわなきゃならんのだ?


「"妹"だから良いんでしょ!」


「いや "妹分" だぞ」


「もーー!そんな細かい事はどうでも良いでしょ!細かい男は嫌われるよ?!」


だいぶ違うと思うんだが……これ以上言っても火に油を注ぐだけか、やめておこう。


「はいはい……」


「ふん、りゅういちお兄ちゃんのバカっ」


そう言いながらアカリちゃんは再び力を入れる

それ以上入れたら腕が折れそうなんだが……あの、アカリちゃん?










ミツキ

「一つの物語の小話劇場!リュウイチの幼馴染のミツキです!宜しくお願いね♪」


リュウイチ

「みぃ姉、劇場ではないぞ?」


ミツキ

「いいじゃない、こっちの方がしっくり来るわ」


リュウイチ

「あっそう……」


ミツキ

「それよりリュウイチ!あんた何アカリちゃんとイチャイチャしてるのよ!!早く帰って来いって言ったでしょ!」


リュウイチ

「妹みたいなもんなんだし、別にいいだろ?本人も納得してるみたいだし……」


ミツキ

「もう!あんたって本当に鈍感なんだから」


リュウイチ

「え……?」


ミツキ

「次回は仲良くできないわよ、あー良かった♪」


リュウイチ

「次回、一つの物語〜絆編10〜 次回はあの子が主軸になるみたいだな」


ミツキ

「え!?私じゃないの!?しかも主軸はあの子??そんなー……!」


リュウイチ

「またやかましい回か、あーやだやだ……」

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