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一つの物語  作者: 世界の一つ
一つの物語〜絆編〜
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一つの物語〜絆編6〜(挿絵あり)

「情報によるとここら辺だな……あれか!よっしゃ、早いとこ片付けちまおうぜ!」


モンスターによる倒木と思われる開けた場所に出た私たち、そこには空間に開いた穴と……アンノウン!そしてもう二人、それにモンスターが数匹いた。


「!……貴様達、確かヘヴンの連中だな」


巨大な斧を片手で担いでいる男が駆け寄ってきた私達を見てその重い口を開けた。


「!?俺たちのことを知ってるのか、なんなんだお前らは!」


「見たところ、アンノウンとこの者達が時空間異常の犯人みたいですね。古典的な悪党という感じでしょうか」


カイとレイが屈強そうな男の言葉に反応する、私は走ってきた道を見て再び不安が押し寄せて来たが、キっと男達に目を向けて睨みつける。


「あんた達が何をしようとしてるか分からないけど、今はさっさと終わらせるわ!」


「……?あなたは、まさか……」


「え……?」


睨みを効かせながらそう叫ぶ私を見た男の一人が言葉を漏らし、私はそれを聞いて疑問を抱いた。


「お知り合いですか?ミツキさん」


「いいえ、知らないわ。今日初めて会った……はず」


レイは男達に目線を向けたまま隣にいる私に問いかけてきたけど、皆目見当もつかない。なに?私を知っているの?


「……まあ良い、我々は御心のままに任務を遂行するだけだ。全ては偉大なる世界の為に!」


男はそう叫ぶと同時に私達に向かって駆り出した。対する私達も戦闘態勢に入る。


「何が"偉大なる世界"だ、お前たちのやってる事はただの破壊と混乱だ!こんな事が世界のためなんざ、どうひっくり返っても思えねぇな!」


カイは真正面から来た大斧を振りかざしてくる男の攻撃を剣で防ぎ、反撃をしながら男の言葉に猛反論する。


「フン、何も知らぬ愚か者共。貴様らに世界の在り方を語る資格は無い!害虫は早急に始末するっ」


「おや、随分お高くとまっていらっしゃいますねぇ。ですが……あなた達に見下される程、私たちは格下ではないんですよ……!目障りですっ!」


大斧の男の罵声に珍しくレイが苛立ちを見せた。どうやらあいつもリュウイチの事が心配みたい……それに、彼以外の者に見下されるのが嫌いという事もあるのだろう。いつも穏やかなレイが普段とは想像もつかない凶悪な表情を浮かべて、レイは大斧の男とその付近にいるモンスターめがけて魔法を発動させる。


「あっぶね!……たく、やっぱりレイの奴もあいつの事が気がかりみたいだな……そりゃそうだよな、俺もレイに同感だぜ!」


魔法に当たらないよう一歩引いたカイは攻撃が直撃すると同時に一気に間合いを詰めて攻撃にかかる。

私もっ!!


「おとなしく粛正されなさい!イレギュラー!!」


私は目の前にいる敵を罵りながら攻撃を仕掛けるっ

早く片付けて、リュウイチの所に行かないと!


「あ〜〜〜っ!!」


って、え?


「はっけぇ〜〜〜〜ん!!♪」


森林の中から大声と共に何がイレギュラーたちに向かって飛び出して来た……あの声は間違いないわよね。あの子だわ


「なにっ!?」


「チっ!」


大斧を持った男に向かって飛び出して来たあの子を近くで戦っていた槍を装備した男が庇う

まったく、あの子ったら本当に無鉄砲なんだから……


「くっ!なんて力だ……ぐわっ!!」


二人は防ぎきれず後方へ吹き飛んだ。そう、そう言うのが分かりやすいわね……本当に吹き飛んだんだもの……


「サツキ!大丈夫!?」


私はあの子に向かって一応無事を確かめた、十中八九大丈夫だろうけど


「へ〜き、へ〜き!♪」


「派手な登場の仕方ね、少しは警戒したり場を把握したりしないと、いつか怪我するわよ?サツキちゃん」


声のする方へ目をやると、キョウコとユマリが森林から出てきた。キョウコは呆れた顔しているけれど、どこか優雅な雰囲気を感じさせる。

ユマリは……周りを見渡して重い表情をしている。


「……兄さんは?」


……やっぱり彼の事を探していたのね。


「ユマリ……リュウイチは……」


ユマリは私を見るなりその表情を察したのか、森林へ戻ろうとした


「待って!リュウイチが言ってたわ、こいつらの……いえ、少なくてもモンスターのターゲットはリュウイチに定まってる、だから私たちはその根源を断ちに行けって!」


「……モンスターたちが?兄さんだけを狙うなんて……」


私の発言に、ユマリは困惑と不安が混ざった様な表情を浮かべ森林の方を見つめたが、すぐにイレギュラーたちの方へ向き直った……ユマリ


「リュウイチなら大丈夫よ、私たちは一刻も早くあいつらを片付けましょう!」


「……兄さんが、そう言ったのなら私のやるべき事は一つね」


物分かりが良いわね……お互い不安でしょうけど、リュウイチを信じて目の前の敵に集中しなくちゃ!


「ねぇ!!りゅうくんは??」


あの子は……どんな反応するかしら


「リュウイチはモンスターたちの相手をしてる!色々分かんねぇ事ばかりだが、今はこいつらをなんとかしろってアイツが言ってたぜ」


「……という事は、りゅうくん一人であの数のモンスターを相手にしてるって事ぉ!?」


カイの言葉にサツキは驚きを隠せないといった表情をしている……それはそうよね、あの子もリュウイチの事が……


「さっすが、りゅうくん!!一人でも余裕って事なんだねぇ!!♪」


……捉え方が独特だけれど、まあ合ってはいるかしら?でもやっぱりこの子も案外のみこみが良いわね、それもリュウイチに対する信頼ゆえなのかしら


「あっはは……信頼されてますねぇ。リュウイチ様は」


サツキの明るい反応を見てレイが普段の笑顔……いえ、正確にはちょっと呆れてるの感じの笑顔を見せた。


「くそ……次から次へと邪魔をしおって!貴様ら、ただで済むと思うなよっ!!」


態勢を立て直したイレギュラーが憤怒の表情をしてこちらを睨みつけくる。


「あら、それはこちらの台詞だと思うけれど?そちらは三人……プラス、モンスター数匹、対してこちらは精鋭揃いの6人。部が悪いのはそちらじゃなくて?おとなしく粛正されたらどうかしら」


キョウコが表情を変えずイレギュラーたちに警告するかの様に言い放つ、いつもの優雅さでその言葉……いつもの事だけど、どこか不気味な感じがする。


「……フン、雑魚が何人束になろうと俺たちは揺らぎはしない。全ては偉大なる世界のために!」


「チ……またそれかよ、気に入らねぇ野郎だぜ」


大斧を持ったイレギュラーの言葉にカイが不愉快だと言わんばかりに舌打ちをする。

たしかに気に入らないわね、世界のためとか言っておきながらモンスター達を暴れ回せるなんて……しかもリュウイチを標的にするなんて、絶対許せない!


「さあ、早く片付けちゃいましょう。リュウイチの所に行かないと……!」


「リュウイチ……か、あの方を過大評価しているようだな、あのモンスターの数。あの憎悪の塊達を相手にいつまでもつか……どうなるか楽しみだ」


……イラつくわね、私たちの不安を煽ってくるなんて腹ただしいわ……え……?


「"あの方"……?リュウイチ様をあの方と称するなんて、一体どういう事です」


「リュウイチを標的にしておいて、あの方呼ばわりするなんて聞き捨てならねぇな。知ってる事を全部話してもらおうかっ!」


レイとカイが私と同じ疑問を抱いたようで、イレギュラーたちに詰め寄る。どういう事?なぜリュウイチを……


「フン、貴様らが知る必要は無い。貴様らはここで全員惨めにくたばるのだからなぁ!」


イレギュラーたちが一斉にこちらに向かって駆け出してくる。レイが魔法で迎撃するが、勢いは止まらなかった。


「レイはそのまま後方で援護して!私とユマリは槍を持ったイレギュラーを!カイとサツキは大斧のイレギュラーをお願い!!」


「はいよ!」

「はぁい!」


カイとサツキが同時に返答する、ユマリも納得したようで槍のイレギュラーに狙いを定めた。


「油断しちゃダメよ、ユマリ!!」


「あなたこそ」


向かってくるイレギュラーたちを私たちも一斉に詰め寄る。


「ふっ……女とて容赦はせぬぞ!」


「強いわよ、私達は」


「女という概念にとらわれない事ね!」


そうよ、私達はリュウイチを守るの!だからっ!


「ぬぅっ!!」


槍のイレギュラーを引き離せた!あとはモンスターとアンノウンは……!


「あなたの相手は私よ、覚悟しなさい。アンノウンさん」


キョウコがアンノウンとモンスターを相手にしている……まずいわよね、でも戦力を考えたらこれしか……


「おや、ミソラさんだけでアンノウンを相手にするのは危ないですよ……私が援護しましょう」


レイ!良かった、やっぱり分かってくれてたのね。これなら大丈夫なはずっ!早く終わらせなきゃ……リュウイチ!


「……ふふ、血縁は侮れんと言うことか。先程の女と似たような力だ……」


「……バレバレね」


槍のイレギュラーの言葉を聞いて、ユマリは冷静に返答した……やっぱり私達の情報を知っている、リーク先は大体検討はつくけど……どこまで知ってるのかしら?

いえ、そんな事今は考えなくていい。戦闘に集中しなきゃ


「あんたが私達の内情を知っていようが関係無い、ただあんたを粛正するだけよ」


「ふ……笑わせる」


私の言葉を聞くと槍のイレギュラーは不気味な笑みを浮かべた……気味が悪い。最低っ


「すぐにその笑みを消して、苦痛に歪ませてあげる……」


「やってみせよ!女共!!」


ユマリの少々恐怖を感じさせる発言に槍のイレギュラーは憤りの念を発した。相当なプレッシャーを感じる、でも私達は怯まない!


「月翔刃!!」


私は飛び上がり槍のイレギュラーの真上でカタナで斬りつける。そしてユマリは


「……はっ!」


正面から瞬速で短刀で斬りかかった


「ぬるい!」


くっ!

私の一撃を槍で弾き返してすぐさまユマリの攻撃を防いだ。早い……でも!


「リュウイチより遅い!!」

「兄さんより遅い……!」


私達は態勢を立て直し、瞬時に次の攻撃へ移る!


「ふん、あの方と私を比べるな!」


また……!

第2撃の同時攻撃を槍で防ぎ、槍のイレギュラーはすぐさま反撃に来た


「兄さんを敬愛している……と言う訳でもないわよね?」


「ぬかせ、私が崇拝するお方はただ一人!!」


「だったらリュウイチをそう呼ぶな!!」


私達が反撃を防ぎながらユマリがそう言うと、槍のイレギュラーは明らかに機嫌をそこねた……かく言う私もイラつきのあまり声を荒ぶらせて攻撃に入ってしまった。


「ぬぅぅ!!二度も退かん!!」


私の力任せの攻撃を防ぎ、足に力を入れて立ち止まる槍のイレギュラー


「あら……さっきのを入れて三回目じゃないかしら?」


「ほざけ!!女っ!!」


ユマリの挑発に乗った!今だ、一気に攻める!!

ユマリは一気に突進を!私はそのまま力一杯イレギュラーを押し切る!!


「はあああ!!」


「ぬぅ……!!ぐわぁっ!!」


槍のイレギュラーを背後の岩壁に押し飛ばした

ものすごい勢いで岩壁に激突するイレギュラーは土煙と落石の中に消えた。


「……あいつ、兄さんと誰かを引き合いに出したらあからさまに怒ったわね」


「はあ……はあ…ええ、よほど慕ってるのね……それともやっぱり崇拝してるのかしら……?」


「吹〜き〜飛べぇぇぇ!!」


サツキの声がする方に目をやると向こうも敵を突き飛ばしていた。私は一安心して砂埃が立ち込めている方へ再び向きなおる……


「……はっ!ミツキ!!」


「どこを見ているぅぅ!!」


っ!!しまった!


槍のイレギュラーが砂埃の中から一気に突進してきた!


まずい!防御が間に合わな……


「死ねぇぇ!!!」



カキン!!



「なっ!?」



「女相手にそんなもん振り回すな」



え……?この声……まさか……っ




「相変わらず詰めが甘いな、みぃ姉」



心休まる声……一瞬で安堵感に包まれる様な声……



「兄さん!」

「リュウイチ!!」


私とユマリはほぼ同時にその声の主に呼びかける

……そこにはっ!



「待たせたな、随分賑やかじゃないか」


槍のイレギュラーの矛先を剣の表面で受け止めてくれているリュウイチが目の前に立っていた!

良かった……!やっぱり素敵……!


「リュウイチ……だと!?」


「誰かは知らんが、女に対する礼儀がなってないな。男の風上にも置けん」


リュウイチは槍のイレギュラーを弾き飛ばし、イレギュラーはその勢いで空中に飛び上がり一回転して間合いを取る。


「まさか……あのモンスターの大群をたった一人で……!?」


「あれくらいじゃ足止めにもならん。事実10分もかかっていないだろ」


とっさに腕時計を見る……確かに、五分弱しか経ってない……すごい……じゃなくて!


「兄さん、怪我は??どこか痛くない??」


……ユマリに先を越されちゃった


「無いっ……心配するのをいい事に、僕にまとわりつくなっ」


「……うん、大丈夫みたいね」


ユマリは僅かに微笑んでリュウイチを見つめた……もう!


「リュウイチ!こんな時にイチャつかないでっ!」


「そんは微笑ましく見えるのか?僕は嫌がってるつもりだったんだけどな」


まったく……場所も関係なしにそんな悠長にして

……無事で良かった、ありがとう。リュウイチ♪


「ほぉら、まだ敵がいるんだから油断しない……」


「隙ありぃぃ!!」


束の間、槍のイレギュラーがリュウイチの背後から突進してきた!リュウイチは完全にこっちに向いている!まずい!!


「やかましいなっ」


……!

……リュウイチはこっちを向いたまま剣だけを後ろに振りかざした。その……剣先は……


……槍の先端をリュウイチの剣先が見事に受け止めていた……すごい……


「な……なにぃ!?」


「アホだな、敵を目の前にして完全に警戒を解く訳ないだろう。甘く見るな」


槍のイレギュラーは両手を使って渾身の力で槍を突きつけているようだ、対してリュウイチは片手で……しかも利き腕じゃない手で顔色一つ変えずに剣先で受け止めている……かっこいい……



挿絵(By みてみん)



「しまった!!リュウイチ様!モンスターがそちらに!!」


「……あん?」


槍のイレギュラーの背後に数匹のモンスターが唸り声をあげて押し寄せてくる!


「兄さん、私が……!」


「その必要はない、下がってろ」


槍のイレギュラーを剣先だけで突き飛ばし、入れ違いに後に来るモンスターと対峙するリュウイチ……!

ユマリの援護を断り、リュウイチはモンスターたちに向き直る。


それと同時にリュウイチは剣を横に振りつけてその衝撃波でモンスターたちを横一閃に斬り裂いた。

……やっぱりすごい


「おぉ、お見事っ!申し訳ありません、リュウイチ様。ついあなた様に見とれてしまって……」


「男に見とれられても気持ち悪いだけだ、冗談言ってないでちゃんとアンノウン達の相手をしていろ」


「冗談♪了解しました!」


「……レイ、私のマネしないで。不愉快よ」


リュウイチの注意に少しおちゃらけて返事をしたレイ、それを見た彼は軽く舌打ちをして呆れ顔になった……へぇ、こういう顔も結構良いわね……


「……なんだ?さっきから人の顔をまじまじと見つめて……目が変に輝いてるぞ」


「え、え!?か、輝いてるかしらぁ……わ、私……いやだ……」


恥ずかしいぃ!!リュウイチに見られちゃったぁ!!

どうしよう?ここで思いっきり抱きつきたい!!


「……みぃ姉、なんか変な事考えてないか?」


うっ鋭い!


「そ、そんな訳ないでしょ!!ほら!戦闘よ戦闘!!」


「はいはい……」


リュウイチはため息混じりそう言うとキリッとした表情になり敵を見つめる……どうしよう、そんな横顔もかっこいい……っ


「……さて、これで完全に貴様らに勝機はなくなった訳だが……まだやるか?それとも尻尾巻いて逃げるか?やると言うなら、格の違いを思い知らせてやるが?」


そういう彼は私……いえ、私達が安心できるくらいの自信に満ち溢れていて、輝く瞳は真っ直ぐで揺らぎないものだった。


結婚したい……

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