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一つの物語  作者: 世界の一つ
一つの物語〜選挙編〜
107/111

選挙編3

ーー翌日、ナルミ家ーー



「朝よーリュウイチ、起きなさーい」


んん……起きてるよ……


「起きなさーい、もう朝ごはんできてるわよー」


「ふぁー……おはよ、みぃ姉……おかしいな、起きてたはずなんだが……」


意識はあったんだが、起き上がっていなかったみたいだ。いわゆる寝ぼけてたってやつか?


「おはよう、リュウイチ!寝言はおしまいにして早く降りてきなさいね、早く着替えてくるのよ」


……朝から満面の笑みを浮かべてるみぃ姉……なんだ?なんかいい事でもあったのか?

僕はそう頭の片隅で考えながら着替えを始めた。


昨日はミナトにお話をしてその後……はぁーーー……カオリが来たんだった……にしては静かな朝だな、何かしら問題が起こるかと思ってたんだが……


「ちょっとぉ!カオリンそこはりゅうくんの席だよ!ちなみにあたしの席はここ♪」


「ひゃあ!そこでもありませーん!そこはミナトの特等席ですぅ!!」


あったよ……問題……あいつら朝からはしゃぎやがって、後始末する僕の身にもなれ!

僕は着替えを済ませ、眠たい目をこすりながら1階へと降りた。


「あらあら、私の席がリュウイチ様から遠のいてしまいましたわ……あらまあ!リュウイチ様おはようございます!聞いてくださいませ、サツキさんとミナトさんが〜!」


「あ、りゅうくんおはよぉ!」


「おはようございます、お兄ちゃん!」


「おはよ、聞こえてたよ、席の事で一悶着あったみたいだな。とりあえず空いてる席で我慢しろ、子どもじゃあるまいし少しは大人になれ」


「や〜い怒られたぁ♪」


「僕はお前にも言ってるんだよ!」


たくっ!僕の静かな朝を返せ!


「リュウイチ様がそう仰るなら仕方ありませんわ、少し離れてしまいますがこの席で我慢致します」


「ふっ!勝ったもんね!」


「アホか、とっとと座れサツキ」


サツキの頭を軽く小突いて僕はいつもの席に座る。

それに習ってみぃ姉たちも席につき始めた。

ほお、今朝はおにぎりか


「残りのお米全部使っちゃったから、いっぱい食べて」


ユマリの言葉を聞いて僕はキッチンに目をやる。炊飯器に入ってた米を使い切ったのか、帰ったら炊かないとな


「わ〜い!おにぎりだぁ!♪具はにかなぁ……あ〜ん!ん〜タラコだぁ!美味しい〜♪」


「おにぎりを見ていると運動会を思い出します!お兄ちゃんの手作りおにぎり美味しかったです!」


「そうね、私もおにぎりと言ったら運動会のおにぎりを思い出すわ。リュウイチが早起きして作ってくれたのよね!」


そう言えばそんな事もあったな。

僕はそう思いながらユマリお手製のおにぎりを頬張る。もぐもぐ……中味は鮭か


「ユマリ、美味しいぞ」


「お粗末さま」


「ありがと、ユマりん!さすがだネ!」


サツキが両手におにぎりを持ちながらそう伝えたが、ユマリは気にせず自分の分を取り始めた。無視ってやつだな。


……それにしても昨日のアレは一体……


僕はそう思いながら自分の髪を少し触ってみた。これ以上抜ける事はないみたいだが、それはそれで大問題だ。勿論毛根がとか、そんな次元の話じゃない。


天地聖創


あの時はその能力が発動したみたいだった。他にも何か確たる証拠はないか?僕は少し思い返してみた。


「兄さん」


っ!


「なんだ?ユマリ」


「そんなに思い詰めないでね」


相変わらず鋭いやつだな、とりあえず本部に着いたら他のやつらに意思確認をしておくか。







ーー数十分後、リュウイチの執務室ーー




「おはようさん、隊長殿!って、へぇ髪切ったんだな。しかし女に囲まれて出勤とは、らしくなってきたな!」


黙れ爽やか野郎!お前もちゃっかりハクを連れて来てるじゃないか!僕の執務室がどんどんこいつらの憩いの場にされていく……


「おはようございます、リュウイチ様。やはり朝と言えばこうでなくてはいけませんね!」


もう一人いたよ、爽やか野郎が……


「レイっ」


「おや、つい本音を……失礼致しました」


本気で謝ってないな、こいつ。まあいい、こいつへのお仕置を考えるのも面白そうだが、それよりも大切な懸案事項があるからな。


昨日発動した……と、思われる能力。僕にそんな能力が使えるなんてありえない。あれはリュウガが受け継いだ筈だ。それなのに何故僕がそれに似た能力を発動できたんだ?


「どうした?リュウイチ、顔色が悪いぞ」


「朝からこの調子なのよ。いえ、正確には昨日の夕方からかしら」


「何かあったのか?髪切って失敗でもしたか?」


そんな些細な問題なら良かったんだけどな


「残念だが事はそんな単純じゃないんだ、実はなーー」


ーー……


ーー……


ーー……


僕は事のあらましをカイ達に説明した。

そして皆んなが僅かに驚き、口を噤んでいる。それはそうだ、僕でさえ考えが纏まらないんだからな。


「……仮に」


カイ?


「仮にお前にそんな能力があるとしても、俺たちはお前から離れることはないぜ。きっとみんなも俺と同じ気持ちのはずだ」


「うん、リュウイチ君が私たちを引き寄せてるとしてもそうじゃなくても、私の気持ちは私の気持ちだもん。他人に操られたりして積み重ねて来た絆じゃないと思う」


「僕もです。二千年前からその思いは変わっていません。そしてリュウイチ様の監視を続けるのも与えられたからではない、僕の意思ですから。もしもの時は全身全霊を賭してあなた様の盾とも剣にもなりましょう」


おいおい、それはキリザト家の一員として言って良い事か?ユマリといいレイといい、変わったやつらだよな……。


「ここにいる全員があなたを敵視する人はいないって事ね。リュウイチ、受け入れなさいそして、一人で抱え込まないでね」


これはナルミ家の問題……と言いたいが、既に世界規模の問題になりつつある事だし、情報公開もするんだ、こいつらにも関係あるか。


「そうそう、恋人であるみぃ姉に隠し事なんてしたらダメだよ♪」


「ちょ、ちょっと!人が真面目な事を言ってるのにちゃかさないでよ!恥ずかしいじゃない!」


「聞き捨てならないわね、兄さんの恋人は私よ。不愉快だわ」


……本当にこいつらに相談していいのか?こんな事でもめるやつらに、世界的問題を解決できるのかねぇ……ん?


"ウィーン"


「失礼します。お疲れ様です、リュウイチ隊長!それに皆さんも!」


「ふあー……ごきげんよう、眠気覚ましのコーヒーを頂けるかしら?」


そう言いながら入室してきたキラとミラー。と言うかミラーは僕の部屋をなんだと思ってるんだ?


「ここは喫茶店でも休憩所でもないぞ、ミラー」


「あら、違うの?まあそんな事はどうでも良いわ、コーヒー頂くわね」


どうでもいい事じゃないぞ、かなりな!


「なぁキラとミラー、リュウイチに天地聖創の能力があっても良いよな?」


「え?ええ、僕はリュウイチ隊長の人柄を尊敬しているので」


「私は便利だとは思うけれど、リュウイチにどんな能力があろうと別に特別視するつもりはないわよ」


軽っ!お前ら少しは悩めよ


「以前お話をお聞きしましたが、やっぱり負の感情はわきませんでした。僕たちはリュウイチ隊長について行きます!どこまでも!ねっ?ミラー!」


「だ、そうよ。リュウイチ隊長さん。ここまで来て今更除け者にするなんて許さなくってよ」


「と、言うわけだリュウイチ。俺達はお前についていく、そしてお前を守る。今度こそ必ずだ!みんなお前を捨てる気なんてサラサラないって事さ」


……フフ、逃げられそうにないな


「まったく、物好きなやつらだな。良いだろう、言ったからには覚悟しろよ、お前たち全員僕についてこい!」


「了解!」

「了解致しました」

「了解です!」

「了解したわ」

「了〜解♪」

「了解よ!」

「了解」


仲間か、君の言った通りだよヒメカ。まだ恐怖心はあるが、守りたいとも思うし安心できる。僕はこの温もりを何がなんでも大切にしよう……自分のために、な。


「うふふ、やっぱりリュウイチの執務室はこうじゃないとね!あ、そうだ、何時に公式発表するの?今日するってことは決めたみたいだけど」


「あぁ、この後マスターに一報した後すぐに全国に中継する予定だ。悪い方へ転ばなければ良いんだがな」


「そうね。でも大丈夫よ、何があっても兄さんは私が守るわ」


「おや、僕"たち"ではないのですか?」


「私"が"守るわ」


また始まった……

僕はキリザト兄妹の言い合いを放っておいてマスターにコールをした。


『おはよう、リュウイチ君。賢者になる決心ができたのかい?』


「おはようございます、マスター。賢者の件ならまだです。それではなく、私とリュウガの関係について全世界に公開する事に致しました。つきましてはその件であなたの許可を頂きたくご連絡致しました」


『ミナト君が承諾したのかい?だとしたら私に許可を得る必要はない、君が思う通りにしたまえ。私は全面的に君に協力をするつもりだからね、中継の準備はこちらでさせておく。頼むよ、リュウイチ君』


「感謝致します、では私はこれで」


『うむ、準備ができ次第また連絡するよ。それでは幸運を』


マスターがそう言うと通信が切れた。終始満面の笑みだったのが何か引っかかる。何か企んでるんだろうか?


「失礼致します。リュウイチ隊長、制服を持って参りました。中継の時にお召になって下さい」


アンナがそう言って入室してきた。しかし僕はと言うと


「あいにくだが断る、僕はこのままの服装で良い」


「マスターからのご命令です、ぜひお着替え下さいませ!」


……やられた。だからあんなに笑顔だったのか。


「……分かった、という訳だからお前ら少し外に出てろ、着替えなきゃいけなくなったからな」


「兄さんの制服姿……」


「はぁい!りゅうくん!あとでちゃ〜んと写真撮らせてね♪!」


「リュウイチの制服姿なんてかなりレアじゃないか?マスターも粋なことして下さるな」


「いいから早く出て行け!!」


ったく!どいつもこいつも、マスターも!いつか仕返しをしてやる!






ーー数十分後、ホーリーヘヴン第三ホール前ーー




マスターから中継の準備ができたとのご連絡があり、僕たちはホール前に到着した。

移動最中に多くの隊員達にこの姿を見られてしまった。絶対に仕返しをしてやる……!


「いやーすごい人気でしたね、リュウイチ様!中には写真撮影していた方もいらっしゃいましたよ!」


「私だけの制服兄さんなのに……不愉快だわ」


「私もさっき撮影させてもらったわ、珍獣発見ってね」


ミラーお前のSPDは後で処分する。


「カッコイイ……」


みぃ姉はさっきからずっと惚けてるし。しかしその手にはしっかりSPDを握りしめており、終始撮影しているようだ……面白くない!


「あはは、リュウイチ君すごい人気だね!」


バカにされてるような気もするんだが……たかが制服を着たくらいで、あんなに騒がなくても良いじゃないか。それともミラーみたいに珍獣として見られていたのか?だとしたらやっぱりバカにしてるって事だぞ!


「照れてるりゅうくんかっわいい♡ほらほら、中継始まっちゃうよぉ!」


チッ後で覚えてろよ!


"ガチャ……"


ホールに入ると何人かのスタッフらしき者がおり、いくつかの機器を調整しているようだった。僕達が入ってきた事に気づいたスタッフ達は一同敬礼をした(のち)、僕をカメラ前の席へと誘導した。


「それではご準備ができ次第カメラまわします!よろしければお声をおかけ下さい」


「準備ならできている、すぐに頼む」


「了解!では行きます!3・2・1……」


スタッフの合図と同時に僕はカメラに向かって口を動かし始めた。


「全世界の皆様、突然申し訳ございません。私はホーリーヘヴン所属特務執政官のナルミと申します、お見知り置きを……」


そう言ったのち、僕は一礼した


「今回このようなお時間を頂いたのは他でもない、今問題になっているイレギュラーの強化とレギュレーションについての御報告がございます。現在皆様を脅かしている強化イレギュラーの元凶である者の名前はリュウガ・ナルミ……私の実の兄です。また、レギュレーションをホーリーヘヴンから持ち出したのも兄リュウガの所業です」


「リュウイチ……」


「りゅうくん……」


同じくホールに入って来ていたみぃ姉達の表情が暗くなる。実際に目の当たりにしたら気持ちが不安定になったのだろう。


「そんな弟である私がこの様にお時間を頂いたのは、その事をお伝えする為だけではございません、今回のその2点の問題をどの様に対策をするかをお伝え致したいと思います。単刀直入に申し上げますと、この2点の問題は全て私が全精力を尽くして粛正に当たります」


「……ってことは、リュウイチ。まさか……」


カイ、その通りだ


「全ての責任をとるため、私自身がレギュレーション及びリュウガの始末を致します。現在レギュレーションを破壊するのはホーリーヘヴンで新たに賢者になる者が担当するという事になっております。誠に僭越ながら私は今回の賢者候補として立候補致します」


昨日まではあやふやだった気持ちに決意する事ができたのは、カイやみぃ姉、皆んなのお陰だ。


「主犯格であるリュウガの肉親がこのような事を申し上げるのは、大変おこがましい事だと存じ上げております。しかし、リュウガを粛正できるのも、リュウガを粛正しなくてはいけないのも、その責任は全て私にあるとそう考えております。皆様の不安なお気持ちは重々承知の上で、私は選挙にて立候補を致します。肉親であるリュウガをどうか私にお任せ下さい、そしてレギュレーションの破壊を私にさせて下さい。どうか……」


そして再び僕は一礼した。


「私からは以上です。ご視聴ありがとうございました。全ての責任は私が負います、信じてほしいとは申しません、必ず果たしてみせます……それでは、失礼致します」


「お疲れ様です!中継終了しました!」


はぁ……一気に脱力だ。


「リュウイチ君!さっきの話本当なの!?本当に立候補するの!?」


「ん?ああ、そのつもりだよ。突然の発表ですまないが、今僕にできることと言えばリュウガやレギュレーションの問題解決だ。それができるなら、賢者にでもなんでもなってみせるさ」


皆んなの顔を少し見渡すと揃って同じ顔をしている、そう驚きの顔だ。


「(でも、全員喜んでいるみたいよ。貴方が決意した事にみんな賛成しているみたいね)」


喜ぶところか?


「りゅうくん!」


「な、なんだ?」


顔近いぞ


「頑張ろうね!!みんなでさ!!」


……


「……ああ」


一人じゃない……か、でもこいつらにまで責任を負わせる訳にはいかない。この温もりを凍らせないように僕ができる事はなんでもしよう、全ては平穏な日々を過ごすために……自分のために……



そうだろ?



ヒメカ……




ミツキ

「一つの物語小話劇場、今日もよろしくね!ところでリュウイチ、あなた記憶が無くなってた頃のお正月はどう過ごしてたの?」


リュウイチ

「なんだ突然、まあいいか。紅のメンバーでお祭り騒ぎだったよ、神輿とか餅つきとか色々な」


ミツキ

「へぇー良いわね、正にお正月じゃない!私なんて仕事と近所の子ども達にお年玉のオンパレードだったわ……しかも誰かさんはいないし!」


リュウイチ

「なんだ、サツキはいなかったのか?」


ミツキ

「サツキじゃないわよ!あなたよ!あ・な・た!人が落ち込んでる時に楽しくお正月過ごすなんて良いご身分ね!どうせレッカとも楽しんでたんでしょう!?この浮気者!」


リュウイチ

「なるほど、そこが1番の恨みごとか……次回一つの物語〜選挙編4〜。女の恨みは恐いってよく言うよな」


ミツキ

「ふーんだ!!リュウイチなんてレッカと仲良くしてなさい!でも実際にそんな事してたら……あームカつく!!」


リュウイチ

「誰もレッカとなんて言ってないのに、想像だけで怒られてもな……女ってやつは……」



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