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一つの物語  作者: 世界の一つ
一つの物語〜選挙編〜
106/111

選挙編2





ーー数時間後、ナルミ家ーー




「お兄ちゃんが賢者になって、リュウガお兄さんの情報公開……なんだか大変なことになってきましたね」


「正確にはまだ賢者になるとは決めてない、色々と込み入ってるからな」


「でも、お兄ちゃんが賢者になったら間違いなくホーリーヘヴンは良い方向へ向かうと思いますよ!リュウガお兄さんの情報公開するのはちょっぴり怖いですけど、必要な事で避けられないと言うならミナトは頑張ります!」


そう言って意気込むミナト、色々辛いことだろうに、健気な妹だ。僕の説明を一気に聞いて頭が混乱しているだろうな、すまない。


「良いのか?下手をすればミナトまで何か言われたり罵倒されるかもしれないぞ?」


「それくらいでミナトはへこたれません!それにリュウガお兄さんはお兄ちゃんがなんとかしてくれるんですよね?なら、ミナトは怖がる事より応援する事を選びたいです!」


強いな……いや、正確には"強くなった"か、いつの間にこんなに成長したんだろうな。兄さんは嬉しいよ。


「私たちの杞憂だったみたいね、私たちが思ってたよりミナトちゃんは強いわ!偉いわね、ミナトちゃん」


「だね!もしかしたら泣いちゃうじゃないかって思ってたけど、全然そんな事なかったし!さっすがりゅうくんの妹ちゃんだね♪」


ミナトの頭を撫でながら、みぃ姉とサツキは一安心したようだった。まあ、杞憂で良かったのは確かだが、妙にすんなり納得しているのが少し気になる。


「ミナト、もしかして僕らが言う前に誰かからこの件について話をされたのか?」


「ん?いいえ、誰にも。お兄ちゃんにお話ししてもらったのが初めてですよ?」


ふむ、考えすぎだったか


「どうしたんですか?」


「いや、なんだかすんなり納得してくれたんで何かあるのかと思ってな」


「それほどミナトは強くなったという事ですね!お兄ちゃんの教育のたまものです!」


そう真っ直ぐに言われると少し照れるな……育て方が良かったという事か?それとも単純にミナトが素で良い子なのか、どっちかな?いや両方か。


「まあ、ミナトがそう言ってくれるんだから、僕も覚悟を決めないとな。早い方が良いだろうから明日正式にリュウガの情報を公開する。どれ程場が荒れるかは分からないが、現賢者たちに先を越されるよりは良いはずだ」


「そうね、兄さんが先手を取れば、あいつらにはもうなにも無いわ兄さん達を脅したりもできないはずよ」


「でも立候補はしないんでしょ?」


「ああ、ミナトのお許しが出たとは言えまだ気持ちの整理がつかない。それに僕が立候補しなくても他の人が賢者として相応しく花咲くかもしれないからな」


僕がそう答えるとみぃ姉は軽く首を傾げた。


「けど、選挙開始は明日からみたいだし早く決めないといけないんじゃない?焦らせたくないけど、早めの方が優位に立てないかしら?」


「そうだよ!りゅうくん以外の賢者なんてダンコハンターイ!」


二人ともそうは言うけど、賢者なんて大任は色々面倒なんだぞ?マスターは涼しい顔で難なくこなしてるが、世界規模の情報やら世界規模の交流やらをやらなきゃいけなくなるんだからな。


「もしお兄ちゃんが立候補しなくても、ミナトは気にしません。どんな事があってもミナトの自慢のお兄ちゃんですから!」


うんうん、ミナトは本当に良い子だな。


「私にとっても兄さんは自慢の恋人よ」


ユマリ、お前は本当にブレないな……恋人じゃないだろ!


「え〜りゅうくんはみぃ姉の恋人だと思ってたのにぃ♪」


「ちょ、ちょっとサツキ!真剣に話てるのに茶化さないでよ!」


そう言いながら満更でもない顔してるぞ、みぃ姉。


「真剣で明日と言えばトモカちゃんの退院も明日だよね、なんか忙しくなりそ〜」


「1年間眠ってたとは言え、精神世界ではずっとリュウガの相手をしてたんだ。きっと格段に強くなってるかもな、それこそユキタカよりも」


ガチャ!


「たっだいまー!」


噂をすればか


「おっ!いたいた!リュウ兄、ただいま!ミナトー良い子にしてたかー?」


「はい!お留守番とお家の警備はミナトの得意分野ですから!」


「おかえりユキタカ、今ちょうどお前の話を……」

「いやー!やっぱリュウ兄がいるとミナトが生き生きしてるなぁ!みぃ姉たちも元気そうな顔してるし、リュウ兄はミナトたちに必要不可欠な存在なんだな!アッハッハッハッハッ!」


やかましいやつだな……帰ってきて早々こんなハイテンションなやつだったかな?僕がいない間に変わったんじゃないか?


あっ


「……あぁ、トモカちゃんが目覚めたから元気なのか?」


「大正解だけど半分くらいだな!もう半分はリュウ兄が戻ってきてくれたからだよ!マジでありがとな!」


「ありがとうございます、だ」


「あ、ありがとうございます……!へへ!」


チッ……ニヤニヤしやがって、まあ今回は大目に見てやるかせっかくトモカちゃんが覚醒した記念日だしな。


「にしてもリュウ兄、その髪型だと女みたいだぜ?髪切った方が良いんじゃないか?選挙の事もあるし、バッサリ行った方が何かと便利じゃん?」


本当にうるさいやつだな!人が気にしてる事をズバズバ言いやがって、好きでこの髪型にしてるんじゃない!


バサ……バサ……


っ!?


「わわ!!なになに!?急にりゅうくんの髪の毛が……!」


そう思った途端、僕の髪の毛が抜け始めた……と言うよりこれは……


「わぁ!いつものお兄ちゃんの髪型になりました!ど、どういう事ですか?!」


ミナトが驚愕している、他のやつらも同じみたいだ。長かった髪の毛が1年前と同じ短い髪型になった。僕の足下には抜け落ちた髪の毛が散乱している……片付けるのが面倒だが仕方ない……


って言ってる場合か??


何だこの状況は!


「兄さん、もしかして天地聖創の能力じゃ……」


この僕にそんな事ができる訳がない!

できたとしてもどうして今になって……


「ま、まさか……オレが!?」


「あなたに言ってないわ」


「だよなぁ……良かった……オレじゃなくて」


ほっとした様な顔しやがって、こっちは分からない事だらけなのに。でも確かに長髪になった時も一日であれぐらい伸びたし、もしかするかもしれない。


「(でもリュウガの因子は感じられないわ、リュウイチ自身の能力という事になるけれど……)」


ユリナもそう思うのか、一体なぜこんな事が……


「……み、ミナトがホウキとチリトリを持って来ますね!」


「ああ、頼む」


僕の返事を聞いてパタパタと走り去るミナト、その後ろ姿を見えなくなるまで見ていると、みぃ姉が僕のそばに寄ってきた。


「リュウイチ、あなたに天地聖創の力があっても私たちはあなたから離れないからね」


「そうそう!あたしたちのハートはりゅうくんに釘付けだけど、それはあたしたちのイシでそうなったんだから!」


みぃ姉、サツキ、本当にそう言い切れるか?もしかしたらお前達の心まで僕の能力で……ん?


「ひゃあ!」


ミナト!!この気配は……ま、まさか……

僕は嫌な予感を感じながら玄関へ駆け出した。するとそこには……


「あら、ごめんなさい、えっとーミナトさんですよね? あら?あらまあ!リュウイチ様わざわざお迎えに来てくださったんですか?!(わたくし)感激ですわ!」


「な、なんでお前が我が家に入って来てるんだ、カオリ!」


鍵はしっかり掛けたはず、なんでこいつが入ってこれたんだ?!


「なんでって、合鍵でですわ。何かおかしいでしょうか?」


おかしいだろ!!合鍵なんて作った覚えがないし作らせた覚えもない!ちょっとしたホラーだぞ


「あのなぁ……ってまさか、それはおじい様の仕業か?」


「ここへ来る許可は頂きましたが、これは私の独断ですわ、だって未来の妻が合鍵のひとつも持ってないなんて異常事態だとは思いませんか?」


忘れてた、こいつに理屈や常識は通用しないって事を……


「お、お兄ちゃん……この方は一体ど、どちら様ですか??」


ミナトがささっと僕の背後に隠れた。怖がるのは当然だ、僕だって少し引いてるぐらいだからな。

サツキみたいに不法侵入してくるやつもいるが、合鍵を作ってさも当然の様に家宅侵入してくるなんてどう考えてもおかしい。


「こいつは……」


「はじめましてミナトさん、(わたくし)リュウイチ様の許嫁のカオリと申します!リュウイチ様、お久しゅうございます!」


「リュウイチどうしたの!?って、カオリさん!?」


僕達の会話を聞いて飛んできたみぃ姉達が、驚きの顔をしてカオリを見ている。まるで敵を見つけたときみたいな、そんな表情だ。


「こんばんは、ミツキさん、それに皆さん!今日からここでお世話になる事になりましたので宜しくお願い致しますわ!」


はぁ?!


「待て!僕はそんなの許した覚えはないぞ!」


「リュウイチ様がここにいると聞いて駆けつけたのですよ?そんなつれない事を仰らないで下さいまし。それに妻として夫のお世話をするのはごく当然の事ではありませんか?」


やばい、こいつがこんな事を言い出したら、みぃ姉達まで……


「兄さんの正妻の座は私よ、不愉快だわ」


「しかも不法侵入してるみたいだし!あたしも何となくハンターイ!!」


「リュウイチ、これはどういう事か説明してもらえるのよねぇ??」


うわ、こわ……とてもじゃないが振り向けない。とりあえずこの場は……!


「カオリ、合鍵を渡してとっとと本家へ帰れ。こっちは今立て込んでるんだ、とりあえずみぃ姉たちの家に泊まるなりして明日にでも帰れ」


「あら、髪を切ったのですねリュウイチ様!その髪型もお似合いですわ♡」


無視かよっ


「おい、カオリ」


「うふふ、ちゃんと聞いてますわ。なぜリュウイチ様のご自宅じゃいけないのですか?ミツキさん達はここでご宿泊してらっしゃるのでしょう?」


いや、だからこれ以上は……


「愛する御方がせっかくお元気になられたのに、なにもせずにいるなんてできませんわ!皆さんも同じお気持ちだからここへいらしてるのですわよね?」


「ま、まあそうなんだけど……う〜言い訳できないよぉ」


「で、でもねカオリさん、リュウイチも男性なんだからそんな簡単に住み込みを決めたら……」


「大丈夫ですわ、リュウイチ様にならこの身を様捧げる想いですから♡」


僕の気持ちはどうなるんだよ!


「とにかく!(わたくし)は今日からこちらでお世話になりますので、リュウイチ様、何卒宜しくお願い致しますわ♡」


「ちょ、ちょっとリュウイチ!何とか言いなさいよ……!」


こいつの事だここで追い出したとしても、家の前で野宿してでも離れようとしないだろう……一度決めたら最後まで何があっても貫くやつだからなぁ……こいつは。


「……はぁ……分かった部屋に案内する」


「り、リュウイチ!?」


「ただし!僕の部屋には無断で入るな!それとミナトの部屋にもだ、こいつは人見知りが激しいからな……という訳だミナト、カオリは一度言ったら聞かないやつなんだ。また無断侵入されたり家の前で張り込みされても困るから、しばらくの間ここで寝泊まりさせる。良いか?」


「お、お兄ちゃんを好きな気持ちはミナトにも分かります……それに、また不意を突かれたら怖いので、ミナトは我慢します!」


すまないな、ミナト。お前に怖い思いをさせたくないんだぞ、本当に……


「ま、マジかよリュウ兄……でもリュウ兄が決めたなら良いかな。よろしく、カオリさん!」


「まぁ!!なんて優しい御方なんでしょう!ますます愛が高鳴りますわぁ♡ あ、ユキタカさんでしたよね?宜しくお願い致しますわ」


やれやれ、また女が1人増えた……今はそれどころじゃないって言うのに。


……天地聖創


本当に僕にそんな力があるのか?確かにそれに似た事は起こったが、一体なぜ僕に……


僕はカオリの荷物を持ち、空き部屋へ案内をしながらそう考えていた。儀式はリュウガが受けたはず、ユリナ達の記憶が流れてきた時にそれも理解したが、僕まで能力が使えるはおかしい。


「リュウイチ様?」


「あぁ、なんだ?」


「なんだか晴れやかでは無いお顔をされていたのでどうしたのかと思いまして……何かあったのですか?」


僕の後ろについてきていたカオリが隣まで寄ってきた、僕の顔を覗き込むようにして確認すると、心配そうな表情を浮かべた。


……これも僕が望んだ事なのか?


「いや、なんでもない。部屋はここだ、落ち着いたら風呂にでも入れ」


「御一緒に♡」


「入らん!一人で入れ!」


ったく、こんな事僕は望んでなどいないぞ!



カオリ

「一つの物語小話劇場、初めまして、私カオリと申します。宜しくお願い致しますわ!」


リュウイチ

「さっそく来やがったか、抜け目ないな」


カオリ

「あら?何か不都合でもおありですの?私とリュウイチ様の仲ではありませんか、そんな邪険にしないで下さいまし」


リュウイチ

「まあ、大人しくするって言うのならそれ程警戒はしない、でも少しでもおかしな素振りを見せたら……」


カオリ

「次回、一つの物語〜選挙編3〜ですわ!リュウイチ様、さあ今宵は私と濃密な逢瀬を楽しもうではありませんか!♡」


リュウイチ

「とりあえずお前は人の話を聞いてからものを言え!」

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