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一つの物語  作者: 世界の一つ
一つの物語〜選挙編〜
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一つの物語〜選挙編〜

ーー数分後・執務室ーー




「いーい!?必ずりゅうくんを全力で守るように!みんな、分かった?!」


「分かった分かった!と言うか何回目だよ……戻って来たかと思ったら、急にこの調子だもんな。な?リュウイチ?」


なんだその助けてくれと言わんばかりの顔は。僕にふるな。

カイの悲痛な呼びけに僕はわざと無視をして顔を背ける。


「兄さん、焦らないでね。どんな決断をしても私は兄さんの選択に賛成だから」


「間違いは間違いだと言ってくれても良いんだぞ、ユマリ」


「兄さんの判断に間違いなんてないもの」


「そうですね、今まで僕たちを導いて頂いたリュウイチ様の判断に間違いなんてありませんよ!」


と、明るく笑顔で言い切るレイ。この兄妹はもやは盲信的だな、信頼してくれてるのはありがたいとは思うが……


「レイ、現賢者達の部下がなんでここにいるのよ、不愉快だわ」


「良いじゃないですか、本日付けでリュウイチ様のガードに任命されたんですから構わないでしょう?それに賢者達の部下なのは今に始まった事ではないではありませんか!」


レイの開き直った発言に「不愉快よ」と嫌悪感剥き出しで返答するユマリ、どうやらこいつがスパイ紛いな事をしていたのがよほど気に入らないらしい


「(あら、やっぱり気付いていたの?)」


(当然だろ、あいつはこのホーリーヘヴン設立時からずっと賢者達と繋がっていたんだから、大体の見当はついてたよ)


「リュウ兄が賢者か……リュウ兄!俺マジで応援するからさ、何かあればいつでも言ってくれよ!?なんでも手伝うぜ!」


キラキラした目でそう言うユキタカ、僕は少し引き気味に返事をする。


「まだ決まった訳じゃない、そんなウキウキした顔で見るな」


「あはは!はいはい!なあ、この事トモカにも言って良いかな?」


「今の話聞いてなかったのか?決まってもいない事を話て何になるんだ」


「だって、味方は多い方が良いだろ?大丈夫!トモカなら絶対に賛成するって!」


はぁ、ダメだこりゃ……

完全に僕が賢者になることを前提に話てやがる、期待で目が輝いてるしな。


ピー

『リュウイチ様、アカリさんがお見えになりました』


デスクのインターホンが鳴ると、アンナがそう伝えて来た。アカリちゃん?なんでここへ?

僕はとりあえず「通せ」と言って許可を出す。すると、アカリちゃんがおずおずと入室してきた。


「あの……お邪魔します……」


「あっ!アカリ、いらっしゃ〜い!さあ、座って座って♪」


おいおい、ここはお前の部屋か?

サツキのアホさ加減にツッコミを入れていると、アカリちゃんはチラッと僕の様子を伺って来たので、頷いてやった。


「兄貴、良いンスか?まだあいつと険悪な関係なんじゃ……」


「兄貴と呼ぶな……あの子が勇気を出して来たんだ、こっちもそれに応えてやらないとな」


キドがササッと近づいて来て耳打ちをしてきたが、僕はあえて声を抑えず、アカリちゃんに聞こえる様に返事をした。


その瞬間、場が凍りつく


「リュ、リュウイチ隊長もそう言ってる事だし、みんなで歓迎するよ!ね?ミラー」


「そ、そうね……ここはとっくに憩いの場になってるんだから、遠慮なんてする必要ないわよ!オーホッホッホ!」


ミラー、ちゃっかり許可してない事をさも当然の様に言うなっ!


「で?どうしてアカリちゃんを呼んだんだ?サツキ」


「ありゃ、もうバレちゃった?もぉ、りゅうくんったらカンが良すぎだぞぉ♪」


「良いから理由を言え、理由を」


「何を隠そう、りゅうくんが賢者になると決まったからには味方が多く必要でしょ?だから早速アカリやトモカちゃんに連絡しておいたのでぇす♪ ほめてほめてぇ!」


こいつもユキタカと同類だったか……さっきまで猛反対してたのが嘘みたいだ


「えっと、あの……あなたは本当に賢者になられるんですか?」


「まだ決めた訳じゃない、サツキのでまかせだよ。それに下手に賢者共を刺激すると僕だけじゃなくミナトにまで危害が及ぶかもしれないから、今のところはならないって方に気持ちが傾いてる。正直なところな」


「あ……」とアカリちゃんは何かを思い出したようだ、なんだ?誰かに何か言われたのだろうか?


「前にマスターからお聞きした事があります。事が切迫すれば、賢者達はあなたに全ての責任を負わせるだろうって……賢者に立候補したら、それこそやつらが黙ってないんじゃありませんか?」


マスターか……そんな事をアカリちゃんにお話ししていたのか


「それは多分大丈夫だと思いますよ、レギュレーションの事が公表されてからは自分たちの立場も危うくなっていますからね。今更どう叫ぼうが無視されるのが落ちです。ちなみに、レギュレーションの事をマスコミに流したのは僕なんです。だってフェアではないではありませんか、賢者達だけが主導権を握っているみたいで、僕はどうも腑に落ちません。ですから賢者達はレギュレーション、リュウイチ様はリュウガと御家族の間柄、これで初めて対等な立場となる。そう思いませんか?」


「ちょ、ちょっと待って!レイ、あなたリュウガとリュウイチの関係まで流したの!?」


「いえいえ、さすがにそこまでは……まだ死にたくありませんからね。しかし、リュウガについての情報が公開されるのは時間の問題でしょう。それを踏まえてどうするかは、リュウイチ様、あとはあなた様のご決断しだいです」


先手をとって公開するか、それとも向こうのタイミングで公開させられるか……いずれにしても、僕だけじゃなくミナトにも影響が及ぶかもしれない。それはできるだけさけたいとは思うが、そんな甘いことは言っていられないよな。


「ほとぼりが冷めるまでミナトちゃんをどこかへ避難させるか?国外ならフューム様たちが協力してくれるかもしれないぜ?」


「いや、国の問題ではなく世界レベルの問題だ、どこに行っても同じだろう。匿うなら僕の本家が一番安全かもしれない」


ナルミ家の本家なら外界との接触は最低限に絞られるからな。


「あぁ、カイ君たちで行ったっていう場所の事?それなら確かに安全かもね!その場所を知ってる人も少ないみたいだし」


僕の返答に賛同するハク。


だが、果たしてそれを実行するべきかという事だ。その行動が裏目に出る可能性も無くはない、下手をすれば大きなリスクになり得る。ミナト……


「大丈夫ッスよ兄貴!少なくてもえっと……1、2、3……ここにいる10人は兄貴がリュウガと繋がってる事を受け入れているですから、みんなもきっと分かってくれるはずッス!」


「そうね、リュウガについて知ってる者は他にも大勢が認知しているみたいだし、案外すんなり受け入れるかもしれないわ……最低でもホーリーヘヴンの皆は分かってくれてるんだもの、それも結構な数よ」


キドの発言にみぃ姉に続いて他のやつらも何人か頷いている……しかし不安の種が消えた訳では無い、なんせ世界は広いのだから


「あの……マスターにはそう言われましたが、もしあなたがそれでも賢者として立候補するなら……私もお手伝いします!いえ、させて下さい!」


アカリちゃん……


「罪滅ぼしのためじゃありません!ううん、それも少しはあるかもしれないけど、それだけじゃないんです。私はあなたを信頼しているし、あなたにしかできない事だと思うから、私はあなたを応援したいんです!きっとここにいるみなさんも同じ意見の筈です!」


「そうだね……あたしもさっきまでは怖さの方が上回ってたけど、今はりゅうくんへの信頼の方が勝ってる。アカリの言う通り、あたしたちが全力で応援するしお手伝いするよ!」


悪いな二人とも、どれだけお前たちに信用されていても、それはこの中だけの事だ。賢者になるには世界を動かすくらいのものじゃないと……そう言えば紅のやつらも僕をサポートするみたいな事言っていたな。でもそれでもまだ足りない、残念ながらな


ピーピー


ん?


デスクから呼出音がなったので、僕はそれを確認する。


フューム?


「こちらリュウイチ、どうしーー」

『リュウイチ!生きているならなぜ連絡をよこさん!!我にぶった斬られたいのか貴様は!!』


僕が最後まで言い終える前にフュームは怒鳴り声をあげた。モニターいっぱいにフュームの顔が所狭しと大暴れしている。直接会っていたら本当に斬りかかってきたかもしれないな


「す、すまなかった……とりあえず落ちつけフューム、お前の怒りたい気持ちは分からないでもない。それと今はちょっと込み入ってるんだ、話はまた今度にしないか?」


『アァ?!我を心配させておいて尚且つ我の話を無視するほど大事な要件だと言うのかそれは!?貴様本当に屠るぞ!!今度こそ死にたいのか!?』


火に油とはこの事か……やってしまったかな?


「これはこれはフューム様、お久しぶりでございます!実は今、リュウイチ様が賢者になるかならないかの瀬戸際でして、それについて皆と話し合っていたところなのです!フューム様、もしよろしければあなた様のお力もお借りできませんか?」


レイ、お前なんでそんな事を平然と言えるんだ?この状況をちゃんと理解しているのか??


『リュウイチが賢者だと!?貴様、帰って来て早々随分でかく出たではないか?果ては国王にでもなるつもりか?』


「まさか……僕はそんな柄じゃない、それに賢者になるなんて一言も言ってないぞ。こいつらが勝手にほざいてるだけだ」


『ほお、それはつまり我の婿になるのは嫌と言いたいのか?』


どんだけ飛躍してんだよ……でもここは無難に


「そうは言ってない、でも僕は誰かの婿だの何だのになるつもりはないと言っておく。今の所はな」


『フッ……そういう所も相変わらずか、仕方ない今は切迫しているようだから、今回は許してやらなくもない。その代わり今度我と一日付き合え。そうでもしない限り我はお前を許さん』


「むむっ!その方法があったか……チッ」


フュームの交換条件を聞き、サツキが舌打ちをしながらそう呟いた……何を言ってるんだお前らは


「デートの誘いなら断るが、仲間としての誘いなら考えておく」


『固い奴だな、とりあえずそれで良い。今度時間を作ってやるから素直に受け入れろ。それとお前が賢者になるという件だが、もし本当なら我国を代表して我が一票入れてやろう』


選択権というものが無いのかよ……やれやれ


「ありがとうございます、フューム様!あっ!じゃなくて、お初にお目にかかります。オレ……いや、私はユキタカ。兄のリュウイチがお世話になっております!」


『うむ、宜しくなユキタカ。リュウイチよ、我の一票はかなりデカいぞ。我が支持する者ならば数十万以上の国民がお前に投票するであろう。もしも本気で賢者になるというのなら、今度こそ一声かけろ。出し惜しみなく協力してやる』


約一つ分の国の投票とは……そんな簡単に決めて良いものなんだろうか?


「なるならないは置いておいて、一応礼は言っておく。だがまだ問題やらがあるから何とも言えないぞ?」


『構わん、お前が何を選ぼうが、我はお前に協力する。我が勝手に決めた事だから気にするな』


十分責任重大だけどな


「それじゃあまたーー」

『他の者はどうなんだ?リュウイチが賢者になるのは賛成なのか?』


話し続けるのかよ……今の普通に良い終わり方だっただろうに


「はい!ここにいる全員がリュウイチの賢者立候補には賛成ですし投票も勿論致します。ただ一つ問題がありまして……リュウイチとリュウガの関係を公表した場合、妹のミナトちゃんにも被害が及ぶかもしれないと懸念しているのです。それをどうするかと話していたところです」


『妹もいるのか……なるほど、確かにリュウガの関係がバレた場合非難の目が妹にも集まりそうだな。できれば何とかしてやりたいと我も思う。我国で匿う事もできるが……リュウイチ、どうする?』


みぃ姉の説明を聞いてフュームが僕に提案をしてくれた。だがお言葉に甘える訳にはいかない、ナルミ家の負債はナルミ家で何とかしなければ……


「せっかくのご好意だが今回はお断りしておく、他国にまで迷惑をかけたくないからな。すまない」


『そうか、ならば我はこれ以上何も言うまい。お前の判断に任せよう、もし我の力が必要になったときはいつでも言え』


助かる。それが僕の素直な気持ちだった。

今晩にでもミナトとお話しをした方が良いかもしれないな、その後どうするかを決めよう。


「リュウイチ、あんたが思ってる以上に私たちは協力的よ。だから前みたいに悲観的にならない事ね、少しは私たちを信じなさい」


ミラーにしては珍しいな、と思いつつ皆んなの表情を何となく伺うとあたたかい笑顔を僕に向けていた。


「……分かってる、こう見えて結構信頼してるんだぞ」


「いや〜ん♪りゅうくんに信頼されてるなんて幸せ〜!やっぱり結婚しちゃう?♪」


「それは無理ね、だって兄さんと結婚できるのは私だもの」


「いいえ!私よ!二人ともいい加減に理解しなさい!」


また始まった……ここは標的を変えるか


「何を言ってるんだ、結婚と言えばカイとハクだろ?お前たち、いつまでそんなモジモジしてるつもりだ?」


すまないな、カイそれにハクも


「なっ!?!?なにを言ってるんだリュウイチ!いいいい今はお前とミツキ達の話をしてたんだろ!?」



「そ、そうだよリュウイチ君!!わ、わわわ私達の事より君たちの事を……!」


『おい、ミツキ。それは我に対しての挑戦か?我をさしおいてリュウイチの事を奪うなど許さんぞ!』


クソ!ヤバイ、フュームまで乗ってきた!


「わ、私はそんな挑戦だなんて……でも、例えフューム様でもこの事は譲れません!」


白熱しちゃってるし


「そ、そう言えばリュウイチ!お前許嫁がいるんだろう!?その人との事はどうするつもりなんだよ!」


「い、許嫁!?あなたには許嫁さんもいるんですか??」


イイッ!またしてもヤバい空気になってしまった!


「あれはナルミ家が勝手に決めた事だ、僕個人の意思じゃない!大体、僕は昔からそういうのは考えてないって言ってるだろ!?」


「では、未来ではどなたとご結婚なさるんですか?」


レイ、貴様!


「私!」

「私よ」

「あたし!」

『我だ』


「やかましい!お前らこんな時までくだらない事で騒ぐな!」


「くだらない事ってなによ!私たちは真剣に考えているのよ!」


「そうだよ!りゅうくんの事を真剣に想ってるからこんな事になってるんだよ?!」


この姉妹は本当に状況が理解できてないのか?

はぁ……本当に信用していいんだかな……



リョウマ

「一つの物語小話劇場……だったな?よう、リョウマだ」


リュウイチ

「まさかお前まで来るとは思わなかった。いやもう誰が来てもおかしくはないか……」


リョウマ

「随分投げやりじゃねぇか、あの子たちの相手に疲弊でもしてるのか?」


リュウイチ

「なんでそんなピンポイントなんだ?まあそれもあるかもな……それにこのコーナーの名付け親もみぃ姉だし、関係無いとは言い切れないか」


リョウマ

「フッ……いかにリュウイチと言えど、あの子たちには勝てないって事か」


リュウイチ

「ある意味では僕より強力だよ……次回、一つの物語〜選挙編2〜……なあリョウマ、お前からもあいつらに注意をしてやってくれよ」


リョウマ

「それは無理だな、愛の力には勝てん」



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