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一つの物語  作者: 世界の一つ
一つの物語〜奇跡編〜
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奇跡編5

「イブキ先生、どうでした!?」


「大丈夫よ、頭部に多少の傷があったけれど、治癒術を施しておきました。右腕は裂傷があったはずだけど、何故かその様子は見受けられませんでした。それ以外は健康そのものよ安心して良いでしょう」


「良かった!」と、イブキの話を聞いて皆んなは声を揃えた。僕も一安心だ、これで一つミナトに心配をかけずに済む……ん?


「これはリュウイチ様!よくぞご無事で、あなた様の御幸運ぶりには脱帽です」


声の主はレイだった、走って来たのか少し息が荒いみたいだ。こいつもなんだかんだ心配してくれているんだな、賢者共の言いなりだけじゃないって事か……ん?賢者?選挙?


「心配かけたな、それにしてもなんだか随分と大変な目にあっているみたいだな、レイ」


「おや、ご存知だったのですか?そうなんです、レギュレーションの件で賢者の品位が下り坂になってしまって現在賢者の新しい候補を探している段階まで来てしまっています。マスターからは賢者候補を推薦しろとご命令を受けており、賢者からは候補者を潰せとの通達が来ているんですよ」


「あの噂は本当だったのか!?俺達も公式では初耳だ……にしてもリュウイチ、お前はどうしてそれを?」


カイの疑問は最もだな、この記憶が流れてくる感覚はユリナ達と共鳴している時と同じ。その能力が今は勝手に発動している状態みたいだ。でも、みぃ姉たちならともかく、ここにはまだ結構な数の人がいる。下手に口に出しても逆に騒ぎになるかもしれない、だからここは……


「ユリナ達のお陰みたいだ」


と、それまでにしておこう。これなら事情を知ってるやつらは察してくれるだろう


「あぁ、なるほどね……それなら納得だわ」


「確か、キョウメイでしたよね、兄貴?」


「そうだ」とキドの質問に答えた。みぃ姉たちもちゃんと理解してくれたみたいだ、これで良い。

あと兄貴と呼ぶな!


「そういう訳で、今は何かと忙しくてここにいるのも時間の合間に来たものですから長居していられないんです。申し訳ありませんが僕はこれで失礼致します、またリュウイチ様にお会いできてとても嬉しかったです。ではまた」


そう言ってレイはそそくさと廊下の向こうへと消えて行った。あいつも大変だな、僕のガードとしての役割はもう終わってしまったから、今は賢者共にいい様に使われているんだろう。


「忙しないやつだな……さあ、選挙の事はこれぐらいにして、次はお前達が診察を受ける番だぞ。早く行ってこい」


「そうね、じゃあ次はミツキちゃんを診てあげるわ、早くしないとみんな帰れないわよ。さあいらっしゃい」


「あ、はい……リュウイチ、先に帰らないでよ」


「はいはい」


僕がそう返事をすると、みぃ姉は嬉しそうに笑って診察室へと入って行った。


「じゃあ、私も持ち場に戻ります。リュウイチ様、帰還おめでとうございます!失礼致します!」


そう言ってオトネは敬礼して何人かの隊員達と帰って行った、僕やイブキの指示を無視してまでここに居たかったんだな。喜ぶべきなのか叱るべきなのか……


ーー


ーー


ーー



ーー数時間後、ナルミ家前ーー



「って、なんでお前らまで家に来るんだよ?普通に帰れ普通に!」


「良いじゃない、何部屋か余ってるでしょ?私もサツキもしばらく居候させてもらうわ、その方が安心でしょう?」


どういう安心を求めてるんだお前らは


「お兄ちゃん……?」


と、不意に後ろから声が聞こえた。僕に気配を感じさせないとは


「相変わらずだな、ミナト」


「お兄ちゃん……お兄ちゃぁん!!」


「帰るのが遅くなってすまなかったな、もう兄さんはどこにも行かないぞ」


「はい!お兄ちゃん!お兄ちゃん!ミナトは……ミナトは……うわぁん!!」


ミナト……しばらく会わないうちに少し身長が伸びたな、それに少し痩せたか?お前とまたこうして触れ合えて僕は嬉しいよ。


「うぅっ……ひっく……おかえりなさい、お兄ちゃん!」


「ああ、ただいま」


「お兄ちゃん……ひっく……ミナトはお兄ちゃんとお話ししたい事が沢山あります」


「とことん付き合うぞ、ミナトの気が済むまでな」


「フフ!そんな事言ったら二人ともおじいさんとおばあさんになっちゃいますよ?」


それはさすがに困るな、でもそれくらい寂しい思いをさせてしまったという事か。僕はその罪の万分の一でも償ってやりたいと思う。


「さあ、寒いからとりあえず中に入ろう。そうだ、みぃ姉達もしばらくうちに泊まりたいと言ってるんだが大丈夫か?」


「はい!ミツキお姉さんたちの気持ち、ミナトにも分かりますから大丈夫です!みんなでお兄ちゃんの作ったお料理を食べたいです!」


「分かった、ありがとうミナト。と言う訳だ、お前たちも来ていいぞ」


僕はみぃ姉とサツキとユマリの三人にそう呼びかけ中へ入るように促した。みぃ姉は少しもらい泣きをしていた様子で瞳には涙を浮かべている。昔から涙脆いやつだな、みぃ姉は


「ええ、じゃあお邪魔させてもらうわね!支度してくるから中で待ってて!行きましょう、サツキ」


「わわっ!みぃ姉引っ張んないでよぉ!」


「私も着替えを持ってくるわ。また後でね、兄さん」


3人の反応を聞いて僕は頷き、ミナトと家の中へ入った。ふぅ、暖かいな……我が家って感じがする。


「じゃあ僕は夕飯を作るから、ミナトは先に風呂を洗っておいてくれ」


「了解です!……あの、お兄ちゃん、どこにも行かないですよね?後になってこれは夢でしたなんて事ないですよね?」


「大丈夫だよ、兄さんはここにいる。心配するな」


ミナトは僕の言葉を聞くと、満面の笑みを浮かべて洗面所へとパタパタと走って行った。かわいいやつだ、もうあいつの涙は嬉し泣き以外流させないようにしないとな。


「リュウ兄!リュウ兄!?」


相変わらず騒がしいやつだ


「ただいま、ユキタカ。あまり騒がしくすると近所迷惑だぞ」


「リュウ兄!あぁ本当にリュウ兄だ!!おかえりリュウ兄!ミナトー!リュウ兄だ、リュウ兄だぞ!うぉぉ!」


本当に騒がしいやつだな、兄として恥ずかしくなる……


「(本当に貴方の弟とは思えないくらい明るい人ね、賑やかな事この上ないわ)」


ユリナもそう思うか?まったく、誰に似たんだか


「リュウ兄、あのさ……俺、本当にごめん!なさいでした!」


……


「俺がバカだった、力さえあれば何でも守れると思ってた……でも力を振るえばいいって訳じゃなかったんだよな、リュウ兄、本当にごめんなさい!」


ユキタカも自分なりに答えを見つけられたみたいだな、あとはトモカちゃんとこいつの今後の事か……


「本当ならもっと痛い目に合わせる所だが、仕方ないから許してやる。それよりお前はこれからどうするつもりなんだ?ホーリーヘヴンに戻るのか?それとも……」


「あぁ、その事なんだけど、紅として活動していた俺をマスターは何故か許してくれたんだ。それだけじゃない、ホーリーヘヴンの隊員としてもう一度やり直す事を減給と休日出勤を引き換えに承諾して下さった。勿論それで許してもらおうとは思ってない、俺にできる事は何でもするつもりだよ」


おかしい、ユキタカも紅にいてこの対応なのに僕の時はなんのお咎めも無かった。それともこの後に何かあるのか?


「そうか、ホーリーヘヴンに戻れたんだな。良かったじゃないか、またトモカちゃんと過ごせるな」


「あ、ああ……でもトモカはまだ……」


「その事なら僕に任せろ、お前はトモカちゃんを信じて待ってれば良い」


「え?それってどういうーー」


ピンポーン


来たか。


「とりあえず客を出迎えたら手洗いうがいを済ませて席に着いてろ、今日は僕が夕飯の支度してやる」


「え……あ……ああ、分かったよリュウ兄」


ユキタカはそう返事をすると玄関へと向かって行き、そしてその後すぐ賑やかしい声と共に賑やかしいやつらがリビングへと入って来た。


「おじゃましま〜す♪ りゅうく〜んただいまぁ!」


「お前の家じゃない、近所迷惑だからあまり騒ぐなよ」


「は〜い!じゃあ静かに愛し合おう、ね?りゅうくん♡」


アホか


「不愉快だわ、サツキは黙って指をくわえて見てなさい、私と兄さんの愛し合う姿を」


やっぱりお前もか……ユマリさん……


「二人とも変な事言わないの!リュウイチ、私も何か手伝おうか?」


「いや、みぃ姉たちは席に座ってて良い。今日は僕がご馳走してやる」


ユリナ、ユリコちゃん、お前たちも参加してくれ。


僕はそう心の中で言ってユリナ達を実体化させた。


ポワ……


「もう……気にしなくてもいいのに……」


「そうはいかない、二人にも感謝してるんだ。お礼くらいさせてくれ、さあ座った座った!」


実体化したユリナたちに座るよう促すと、少し渋々ながら席に座ってくれた。そう言えばユリナたちとこうして食事をするのは初めてだな。ミナトたちは何度かあるみたいだが


「……ありがとう……」


どういたしまして、ユリコちゃんは素直だな。


「そう言えばリュウイチはSPD無くしたでしょ?今度一緒に買いに行きましょうよ!」


「それってデート!?りゅうくん、行くならあたしと行こう!ね?いいでしょ〜?」


「兄さんが行くなら私も行くわ、しばらく兄さんから離れたくないもの」


まだ行くとも何とも言ってないのによくここまで騒げるな、しかし白熱し過ぎると後々面倒そうだ


「SPDの新調にはみんなで行こう、それで良いだろう?これ以上このことで争うと言うなら連れて行かないし、また行った後で揉め事をしたら二度とお前達とは出掛けない、この条件が飲めないなら僕は一人で行く」


「うぅ……そう言われたら言う通りにするしかないじゃんか!分かったよぉ、独占したかったけど、みぃ姉達にもおすそ分けしてあげる!」


「リュウイチがそう言うなら無理にとは言わないわ……せっかく二人で行こうと思ってたのに……残念」


「了解、兄さんと一緒にいられるならそれでも良いわ」


ふぅ、どうやら綺麗に纏まったみたいだ。しばらくこいつらが暴走しないように適度に相手をしないと、また僕の身が危なくなりそうだな……


「人気者は辛いわね、リュウイチ」


やかましい


「抜け駆けはずるいです!お兄ちゃん、ミナトもまぜて下さい!」


「会話を聞いてたなら話が早い、ミナトも良い子にしてるならついて来ても良いぞ」


「はい!」と、元気よく返事をするミナト。ちゃんと理解してるのか少し怪しいところだが、我が妹を信じよう。

とりあえず明日はトモカちゃんの事を優先するか、こいつらとのお出掛けはそれからでいいだろう。


僕にしかできない事……僕にできる事……1年も経ってしまったが、きっとやれるはずだ。今の僕にならきっと……!


「ところで今日は誰がりゅうくんと一緒にお風呂入る?あたしからで良い♪?」


「ダメよサツキ、そんな事言ったら警戒しちゃうじゃない!やるなら内密にやらないとね」


「じゃあ今の内に兄さんには内緒で誰が先にお風呂に入るか決めましょう、勝負よ」


「あー!やるならミナトもやります!お兄ちゃんは誰にも渡しません!」


「それじゃあ私たちもまぜてもらおうかしら、せっかく実体化したんですもの、これくらいリュウイチも許してくれるでしょう。ね、ユリコ」


「……うん……」


「げ〜!ユリナちゃん達もぉ??」


「あら、いけないの?」


「だってユリナちゃんたちはあたしたちの心を読めるんでしょう??反則だよ!勝てるわけないじゃ〜ん!」


「ふふ、大丈夫よ力は使わないわ。それなら公平でしょう?」


「うーん、本当に使わないって確証が無いから迷いどころね」


「仮に使わないとしてもこの数だからかなりの大勝負になるわね、でも私は負けない。兄さんは私のものよ」


「ミナトのです!」


「いいえ、私よ!」


「あたしだって!」


「……」


「あら、ユリコも?これは大変な勝負ね」


お前らなぁ……!


「一人で入れ!!」






ユリナ

「一つの物語小話劇場、ユリナです」


リュウイチ

「お前もその名前で言うのか、マトモなのは僕だけなんだろうか……」


ユリナ

「あら、良いじゃない。みんなこの名前が気に入ってるんでしょう?ミツキも大した名付け親になれたわね」


リュウイチ

「黒華のお前がそう言うなら、皆んなその呼び方が気に入ってるんだろうな。はぁ……やっぱり僕だけか」


ユリナ

「ふふふ、仲間外れで可哀想なリュウイチ……受け入れちゃいなさいよ」


リュウイチ

「1人でも戦う!次回、一つの物語〜信頼編〜」


ユリナ

「そう言えばジャンケンで勝ったのだけど、一緒にお風呂入る?」


リュウイチ

「入るわけないだろうが!!」





次回掲載予定日4月28日

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