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一つの物語  作者: 世界の一つ
一つの物語〜絆編〜
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一つの物語〜絆編4〜

「じゃあ、りゅういちお兄ちゃんは誰とも付き合ってないって事??」


「最初から何度もそう言ってるだろ、と言うかそのお兄ちゃんって言うのやめろ」


今日一日で何度似たようなやり取りをしただろう、僕はお前の兄になったつもりはない。ませたガキだな……


「えーじゃあ、りゅう兄の方がイイ?」


そういう意味じゃない……呼び方の問題じゃなく、実質的な意味で、まだ僕はお前のお兄さんになっていないと……"まだ"?いかん、毒されてきたか……


「ニシミヤ」


「はい?」

「なにぃ?」


……


「トモカ……ちゃん、妹が先走りしてこんな事言ってるが、良いのか?」


む、少し直接的過ぎたか


「え…!?あの……」


「リュウ兄!お、オレたちはまだそんな……」


二人揃って顔を赤くしている……しかし、その反応はどこか満更でもないような雰囲気をかもし出している……なんだ、もうそこまでイメージしてるのか、まあ良いだろう。


「そこまで考えてるなら、兄さんはとめはしない」


「じゃあやっぱり、りゅういちお兄ちゃんで良いんだよね!?♪」


……なんだろう、この子に言われると素直に頷きたくない、この子に同意したらサツキの言動を承認してしまうような……なんか重い選択をさせられるような気分だ


「……まだそこまで行ってないから承服しかねるな」


「え〜〜せっかくお兄ちゃんが二人もできたと思ったのにぃ!」


聞けば、ニシミヤ家に兄という存在がいなくて、アカリちゃんはその兄という存在に憧れていたようだ。

兄ならユキタカだけで良いだろう


「……ミナトのお兄ちゃんがミナトだけのお兄ちゃんじゃなくなってしまいました……」


僕の背後にいてくっついて離れないミナトがそう囁くように言った…ミナト、まだ決まった訳じゃないぞ。そんな悲しい顔をするな……なんでそんな悲しい顔してるんだ?


「あ、大丈夫ですよミナトお姉ちゃん!ミナトお姉ちゃんにとっては本当のお兄ちゃんで、私からしたら義理のお兄ちゃんですから!♪」


「はっ!!ミナトにとっては本当のお兄ちゃん!?なんか良い響きです……!」


ミナト?上手いこと言いくるめられてるぞ?満足するところじゃないぞ、もっとよく考えなさい


「アカリちゃんもミナトも、気が早いなぁ……はははは」


ユキタカは満更でもない様子だ、お前はまたそういう事を簡単に考えてないだろうな?


「ユキタカ、トモカちゃん、二人で同じ道を行くって事だぞ?しっかり覚悟してるんだろうな?」


「お、オレは……その……そこまで行けたら良いなぁとは思ってるけど……」


「わ、私は……その……同じ道を行きたい……です……」


ふむ、いざとなれば援護班がいるからいいか、僕がわざわざ出張る必要はないだろう。多分


「そうか、まあ結婚まで一直線という訳でもない、ゆっくり考えたり理解し合いながら進んでいけ」


「結婚!?」

「結婚!?」


……ん?今そういう話してただろ?二人揃ってなに驚いてるだ、お前らは……


「りゅういちお兄ちゃん、いい事言うねぇ!♪」


……それはどうも


「お兄ちゃん、ユキタカお兄さんは結婚するのですか?」


「視野に入れてはいるみたいだぞ」


「おお!素晴らしいです!あ、でもそしたらミナトがお姉さんになるって事ですか?」


さっきまでおどおどしていたのにすっかり目の輝きを取り戻している。まあ完全に心を開いた訳ではないようで、まだ僕の背中から離れていない。


「そうだな、そうなったらミナトに妹ができる事になる」


少々、やかましい妹になりそうだがな

そう思いながら僕はユキタカとトモカちゃんの方に目をやると顔を赤くしてお互いの顔をチラチラと見ている。

ふむ、なかなか微笑ましいな。


「リュウイチ、アカリちゃんに手を出したらダメよ」


僕の隣に座っていたみぃ姉が冷たい声を僕にかけてくる……やれやれ、今まで僕がそんな素振り見せた事あったか?


「出すわけないだろう、それよりアカリちゃんは隊員候補生という話だが、やはりサツキの部隊に入るつもりなのか?」


冷たい声には冷たい声でと言わんばかりの冷え切った返事を軽く返し、僕は目の前に座っていたアカリちゃんに目を向ける。


「はいっ!サツキ先輩と肩を並べて世界を守るのが夢です!♪」


世界を守るため、か


「アカリはサツキ隊長と同じで格闘技を得意としてるんです、パワーも候補生の中でも随一と言われてます」


アカリちゃんが元気に返事をすると、トモカちゃんが妹の実力を説明する。

ほう、あいつを目指すだけあって一応それなりの技術を持ち合わせているのか、サツキと同じで細身な外見とは裏腹の力を持っているって事か……二人揃ったら面倒な事になりそうだ


「なるほど、プチデビルとデビルガールの2匹がいると考えると、末恐ろしいな。まあ、せいぜい被害を拡大させないように頑張れよ」


「それ、応援してくれてるの?それともバカにしてる?」


僕の言葉にアカリちゃんの目が釣り上がる、この姉にしてこの妹なのにこうも違っているなんて、サツキの影響力は並じゃないって事か


「きっと、応援してくれてるんだよ……たぶん」


ユキタカが煮え切らないフォローをするが、アカリちゃんは尚も僕を見つめ続けている。

悪いなユキタカ、僕の答えはこうだ


「いや、悪いが応援したつもりはない。単純に被害を拡大させないように忠告してるんだ」


「サツキ先輩をバカにしてるって事ぉ!?」


バカにしてるというか、被害拡大させて僕にまで影響を及ぼさないか憂いてるだけだ。

アカリちゃんが身を乗り出して拳を握って見せる


「まあまあ、一応リュウイチも二人の実力を認めてるって事よ。リュウイチは不器用だから冷たい言葉に聞こえるだけ、二人の強さを理解してるから気をつけろよって言いたいのよ」


みぃ姉が仲介に入る……よくもまあ、そこまで褒め言葉に変換できるな。まあ確かに実力を認めていない訳じゃない……フン


「あ、そっかぁ……つまりりゅういちお兄ちゃんはサツキ先輩の言う通り、ツンデレって事かぁ!」


いつそんな事を言ってた?詳しく聞かせてもらおう、いつどんな状況でそんな事を言ってた?いつの事をそんな風に解釈してたんだ?んん??


「そ、そうそう!リュウ兄はいつも素直じゃないんだよ!オレとトモカの時だって、遠回しにオレたちを正し道に導いてくれたし!」


おい


「あ、私の時も真剣な目で話をしていました……!言葉とは裏腹に優しい暖かさを感じて、私もちゃんと言わなきゃって感じになれたんです」


おいっ


「み、ミナトにもいつも優しくしてくれます……!今日だって約束を守ってくれて美味しいクレープを作ってくれました!」


お、おい……


「そうよ!今日だって私は半ば無理矢理入ってきたのに、私の分のクレープを作ってくれた。あれって自分の分を私にくれたって事だし、口では色々言っても結局は私の分を作ってくれた、リュウイチはツンデレなだけなのよ!」


こ、このやろう……!


「うわぁーそれ優しいぃ!!サツキ先輩が言ってました、りゅうくんはただ冷たいだけじゃない、その冷たさの裏には必ず優しさが込められてるんだって!♪」


あのやろう……!


「その通りです!だからお兄ちゃんはミナトの自慢のお兄ちゃんなんです!」


こ、こいつ……


「い、いい加減にしろっ!!僕はサツキやアカリちゃんを良い意味で理解している訳じゃないし!クレープを作ってやったのも約束を破る男じゃないからだ!みぃ姉の分のクレープを作ってやったのも、腹が減ってなかっただけでただの気まぐれだ!ユキタカとトモカちゃんの件もこいつらが勝手に想像してるだけのただの妄言だっ!!」


はあ……はあ……!


「またまたぁ!♪」

「またまたぁ!」

「またまた!」

「またまたぁ……」

「またまたー!」


なんだその結束力は!なんだその統一力は!!


「やかましいっ!!そんな目で僕を見るなーー!!」









「じゃあ、お邪魔しました〜!♪」


「オレはトモカ達を途中まで送ってくるよ」


「それではまた、今日はありがとうございました」


「三人とも気をつけてね、じゃあ私もそろそろ家に帰るわ。またね!リュウイチ、ミナトちゃん」


「きょ、今日は少し強くなれた気がして良かったです!ね、お兄ちゃん!」


「……どいつもこいつも早く帰れ」


……ミナトはあれから僕の背後にい続けたが、その表情は少し明るかった。まだ少々時間がかかるかもしれないが、その内打ち解けていけそうだ……妙な結束力のせいでな


「あ、りゅういちお兄ちゃん!」


「あん?なんだ……?」


アカリちゃんが引き返して来て僕の方に小走りで近寄って来た……これ以上なにを言う気だ……なっ


「今日はありがとう!会えて嬉しかったよ!また会おうね!♪」


家に入りかけていた僕の腕を引っ張ってしがみついてきた。満面の笑みの顔を僕に近づけ、小声でそう囁いた。

みぃ姉が家に入ったのを確認していた辺りを見ると、あいつの嫉妬深さを考慮しての行動だろう……分かってるならわざわざ言ってくるな。


「……はいはい」


「えへへっ!じゃあ、またねぇ!!♪」


……ち、ミナトと似たような笑顔をしやがって、つい断れなかった。

僕は見えなくなるまでアカリちゃん達を見送って、家に入った。家の中は嵐が過ぎ去ったように静かだ、いつもと同じ空間のはずなのに、やかましい奴らが少し騒いだだけで、別空間のように思わせるほど静寂というものを感じさせる。


「お兄ちゃん、今日のお夕飯はなんですか?」


ミナトが笑顔で僕に問いかけてくる、その笑顔は心なしかいつもより明るさを感じる。周りが静かに見えるせいだろうか……


「……ああ、今日は温かいミネストローネにするか、ユキタカが帰って来る前に作ってやる」


「はい!それまでミナトは待ってます!」


やれやれ、盛大に騒いで行きやがって。次来る時は大騒ぎ禁止にしないといけないな。

小さめのため息をつき、僕は台所へ足を運ばせた。


ピピピ!ピピピ!


ん?誰だ?

僕は歩きながらSPDを取り出す……メッセージ?相手は……みぃ姉?


"今日はありがとう、からかったりしてごめんね!また明日起こしに行くけど、拗ねたりしないでいつもの寝起き顔を見せてね。クレープごちそうさま!おやすみ"


……ふん、謝るくらいなら最初からするな。


"反省してるならよし……また明日な"


僕は返信を送り、少々口元を緩ませる。

誰がツンデレだ、勘違い野郎どもめ。とりあえず、明日ヘヴンに行ったらサツキのやつを躾けないといけないな。今後似たようなプチデビルも増える事だし、早めに対処しておかないと落ち着いて過ごせやしない。


「お兄ちゃん、家族が増えて……まだ少し怖い気持ちもありますが、それより少しだけ嬉しい気持ちです!今よりもっと楽しくなりそうですね!」


「……そうだな、まだ増えると決まった訳じゃないが、今より良い日常を過ごせると良いな」


家族、か

まあ、せいぜい僕の手をわずらわせないでほしいものだ。

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