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とある異世界サバイバル  作者: 御厨みか
7/15

5

 次の日の朝。窓の外を見ると、日がかなり高く昇っていた。やばい。初日から寝過ごした。昨日はいろいろとあってつかれたからなー。しかしまさか藁で寝ることになるとは思わなかった。急いで居間に向かうと、ジェニーさんがそこで本を読んでいた。

「す、すみません……」

恐る恐る謝りつつも、起こしてくれてもよかったじゃないかーと思ったりもする。

「まったく初日から寝坊とはいい度胸をしてるね。まあいい。どうせまだ何もで出来んしの」

ジェニーさんはパンパンとてをたたくと、

「よし、まずはケールに魔法を覚えてもらおう。何をするにしても、魔法が使えんと話にならん。」

「へ?」

またまたこの婆さんは藪から棒に何を。でも魔法にはかなり興味がある。

「まずはこの本を読め。ほれ」

「……あの、私文字とか読めないんです……」

「なんじゃ、面倒だね。仕方がない。わしが直々に説明してやろう。魔法とはな、自分の魔力を使って様々な現象を起こすものだ」

「はい、それは知っています」

「うむ。そのためには自分の魔力を感じられるようにならなければならん。それは体の中を血のように巡っておる。なに、ケールの魔力は大きい。すぐわかるよ。やってみ。」

いや、やってみ、って。軽く言うけどどうやるの?思い返してみればこの人は毎度毎度唐突だよね。まだ会ってから一日しかたっていないけど。

「う~ん」

取り敢えず私は目を閉じて、意識を集中してみた。

「全然わかりません」

「あきらめるのが早い!」

そういわれてもなあ。まず、魔力ってどういうものなのよ。村では魔法を使える人なんていなかったし、母さんも私の前では魔法使わなかったし。

あっ、そういえば昨日はジェニーさんの転移魔法で一気にここまで来たんだった。あの時の感覚は今まで感じたことのないような独特のものだった。その時のことを思い出して……イメージ、イメージ。

お、分かったかも。これか。確かに体の中を何かが流れているのを感じた。

「すごい……」

あるべきものがおさまった、そんな感じだ。何でもできそうな気がして力がわいてくる。

「これこれ、力を自覚しただけで何を舞い上がっとる。次行くよ、次。」

せっかくの人の感動を軽く流された。というか私、そんなにわかりやすい顔をしてたのか。


 「次は、火と水の魔法を覚えてもらうよ。」

そういうと、ジェニーさんはかまどの前に立ち、

「ブレイズ」

ジェニーさんの身体から何かが流れ出て、発された言葉に従いその性質を変化させ……

見事にかまどに火がついた。

「アクア」

続いて唱えられた呪文で火が消される。

促されて、私も同じ様にする。


何も起きない。よく見ると、ちょっとだけ薪が焦げているようないないような……。

「何をやっとるんだい。ちゃんとイメージするんだよ。意思をしっかり込めるんだよ」

なるほどー。呪文を唱えるだけじゃダメなのか。


 それから十分後。

試行錯誤の末に、ようやく火と水の魔法を使えるようになった。精神的にかなり疲れた。今日一日の活力を全部使い切った気がする。

「ど、どうですか……」

「うむ。これが出来ればひとまずは十分だね」

ジェニーさんは満足げに頷いた。


「そろそろ昼時だね。材料はそこのマジックパッグに入っておるからそこから使って料理しといておくれ。わしはちょっと森に薬草を取りに行ってくる」

どうやって料理するんだ……?私はこの世界では料理の経験がない。

「その顔はどうしたらいいかわからないって顔だね。一から十まで説明しないとわからないのかい?さっき方法は教えただろう」

さっき?さっきまでは魔法の練習をしていたが。そこで私はハッとした。

「もしかして、魔法を教えてくれたのはこのためだったんですか」

「当たり前だろう。意味も考えずに練習してたのかい。まったく……ちょっとは自分でものを考えることだね」

よくよく考えてみたら、ここは私が暮らしていた村よりもずっと不便だ。それを全て魔法で補っているのだろうか。前世で読んだ小説や漫画を思い出す。魔法ってこんな使い方だったけ……。随分家庭的だ。

「ここってとっても不便ですよね。どうしてこんな辺鄙な所に住んでるんですか」

かなり疑問だったので聞いてみたのだが、

「色々事情があるんだよ」

それ以上は答えてくれず、そのまま怒ったように出て行ってしまった。

どうやらジェニーさんの地雷を踏んでしまったらしい。

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