4
「あー、そう言えば自己紹介がまだだったね。わしの名前はジェニー。魔導士じゃ。今はのんびり余生を送っている。わしのことはジェニーと呼んでくれて構わないよ。」
「わかりました。……ジェニーさん。」
さすがに呼び捨ては出来ない。にしてもざっくんばらんな人だな。
それからは特に会話もなく歩き続けた。この人はどこで暮らしているんだろう。近くには他に村なんてないはずだけど。
しばらくしてジェニーさんは、ここいらでいいかとつぶやいて立ち止まった。
「ほら、わしにつかまりな。早く」
いきなり何を言うのかと首を傾げつつもジェニーさんの手を握った。
次の瞬間、体が浮くような感覚がして、周りの景色が切り替わった。今までは平野にいたのにいつの間にか森の中にいる。そして、目の前には木造の古びた家があった。
「どこ?」
思わず声が漏れた。
「ケール、村の西に大きな森があることは知ってるかい?」
「ええ、一応」
「ここはその森の中だよ。転移魔法でここに跳んだんだ。こんなところに住んでるからね、移動はいつも転移魔法を使うんだよ」
「はー、なるほど」
板張りの床を踏みしめ、家の中に入る。
「これからはビシバシ働いてもらうからね、とりあえずどこに何があるか覚えてもらうよ。といっても大したものはないけどね」
確かに言われたとおりだった。この家には居間、寝室、その奥に物置部屋があるだけだった。
しかしまあ、ごちゃごちゃした家だなー。居間のテーブルには調味料、食器、加えて本などが置かれ、寝室のベッドには衣服がほったらかしてあった。
私はこれからのことを思ってひそかにため息をついた。
それからは目に付くところを片っ端から片づけていると、あっという間に時間が過ぎた。その間に夕食をジェニーさんが作ってくれていたようで、ありがたく頂いた。パンと何かの肉が入ったスープだった。
大雑把な味付けだったけど美味しかった。
ちなみに、この家にはベッドが一つしかないので私は藁のベッドで寝ることとなった。
うーん、私、村にいた頃より扱いひどくなってない?