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とある異世界サバイバル  作者: 御厨みか
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今私は馬を追っている。もちろんただの馬ではなく、8本の足を持つ魔物だ。最初の頃、一度この馬を捕まえようとしたのだが、中々足が速くて追いつけじまいだった。


目が覚めると、私は二尾に進化していることに気が付いた。そのため力試しもかねて、リベンジしているのだ。思いのほか精晶石の効果が大きかったようだ。


一回りほど大きく成長した体で、みるみる追い縋り飛びかかれる距離まで接近する。

えいや、っと背後から飛びかかり首に噛み付く。

するといきなり口の中に激痛が走った。

「キャウン!」

思わず情けない声を上げてしまった。その弾みで地面に転がり落ちる。

追いまわされてたまった鬱憤を晴らそうとするかのように、馬が足を振り上げ私を踏みつぶそうとしているのが目に入り、慌てて距離を取る。形勢不利を悟った私はほうほうの体で逃げ出した。


口の傷の痛みに悶えていると、

「あは、あはははは」

不意に上の方から耳障りな笑い声が聞こえてきた。声の主を探してみると、予想通りに、あの鳥が木の枝の上で笑い転げていた。

「あ、あれはないだろ。よりにもよってスレイプニードルの鬣に噛み付くなんて。しかも何さ、あの情けない声」

うう、まさか鬣があんなに針みたく鋭いなんて思わなかったんだ。

「黙れアホ鳥。笑うな」

きっと睨み付けるものの、相手が木の上では手の出しようがない。今度木登りの練習でもしようかな、などと真剣に考える。

「アホっていう方が馬鹿なんだよ~」

アホ鳥からなんともアホな返答が返ってきた。

「大体僕にはちゃんとした名前が……」

そこでアホ鳥は可愛らしく首を傾げた。喋らなければ目の保養にもなって美味しそうなただの鳥なのにな。


「そういえば自己紹介してなかったよね。じゃあ、改めまして。僕はユージーン・トンプソン。

これからよろしく」

ただの魔物なはずなのに、なんだかやけに人間臭く感じた。

ともかく、相手が名乗ったんだから私も答えておくか。

「私は……」

そこで言葉に詰まる。甘利美緒?それともケール?どちらも前世の名前だが、今の私は魔物。どちらも違う気がする。


「どうせ名前なんてないだろ。うーん、そうだなー。じゃあ、今から君の名前はキアラだ」

少し考える素振りを見せてから、ユージーンはそう言った。


「もう。勝手に名前つけないでよね。……まあ、名前がないのも不便だし別にいいけどさ」

答えながら私はこれからの行動に考えを巡らせた。口がこうも傷だらけでは、満足に狩りもできない。

けがの状態がよくなるまでは草でも食べて我慢するしかないのか、と考えて私はげんなりとした。


一人で考え込んでいると思考がどんどん悪い方向に行ってしまう。

気持ちを切り替えるために、ユージーンに話しかけてみることにした。

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