謝罪でデート?!
「三友貿易商社」の高浜様に花束を無事届けた翌日の夜10時前……お店の終業時間真近になった。
ここ「Bouquetier」は、繁華街に近く、それらのお店で働いているお客様の需要に応じる為、お店を22時まで開けている。
「あのぅ」
お店のシャッターを下ろす寸前に、背後から声をかけられた。
「申し訳ございません。もう閉店で……て、あっ!」
私は、心臓が止まりそうな程、驚いた。
「あなた……」
それは、昨日私を不審者扱いしたあの男性だったのだ。
「昨日は済まなかった」
彼は深くお辞儀し、謝罪の言葉を口にした。
「いえ…、間違いは誰にでもあります」
「随分、乱暴なことを言ったと思う。お詫びに今から食事を御馳走させて下さい」
「え?!」
私は、もう昨日のことなど頭からすっかり抜けていたので、彼の誘いは唐突過ぎるものだった。
「で、でも……」
「俺の気が済まないんだ。どうか、一杯奢らせて欲しい」
彼は有無を言わせない雰囲気で、私に迫ってくる。
しかし、
「あのぅ……。せっかくですが私、体質的にアルコール受け付けないんです……」
それは、本当のことだった。
両親ともに下戸だからか、私はビール一杯も飲めない。
「ノンアルコールカクテルはどうかな? 飲みやすいし、酔っぱらうこともない」
「それなら……」
つい、私はそう答えてしまった。
「じゃあ、ここで待ってるから」
私は根負けし、溜息をつきながら店を閉じた。