表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神の財産とファミリア〜あなたの家族でよかった〜  作者: 飾神 魅影
第1章:ドール教団と人類
17/31

ファミリアカフェ

猫カフェいいぞ猫カフェ。

今までに登場したキャラのステータスを変更しました。

全てのステータスの桁が1つ増えているので、ご確認ください。

でないと、これから登場するキャラが「あれ?こいつ化け物すぎね? 」ってなりますので

ツバキたちが通う高校から徒歩で10分ほど。

街中にある猫カフェ。


そこではお客がお茶を飲みながら、のんびりと猫を愛で、一時の癒しを得ることができる。


そこにいる猫はみな、毛の手入れを丁寧にされているものばかりだ。

その中に1匹、一際目を引く猫がいた。

毛並みも美しく、容姿も淡麗。

猫の中では飛び抜けて美形と言えるだろう。


毛の色は黒で、目は黄金色。

首元には青い勾玉を下げている。


ツバキたちが通う上布森高校の制服を纏った女子生徒が2人、その黒猫の側へと近づく。

「かわいい〜。この子何て名前? 」


側にいた店員が答える。

「コウって言うんですよ」

「男の子ですか? 」

「はい、男の子です。すごく人懐っこくて大人しい子ですよ」


店員の話を聞きながら2人はコウを撫でていた。

「この前転校してきた真道くんと同じ名前だね」

「首に付けてる勾玉かわいいー」

「コウこっちおいでー」


その様子を同室の離れた場所でツバキとマリが眺めていた。

「その猫が本人だとも知らないで」


そしてコウが恨めしそうな目でツバキたちを見ていた。

(ツバキさん……助けてください)

「ニャー」


その様子を見たマリが

「あれ、助けを求めてない? 」

「気にしないでおきましょう」



その日の午前。


登校して、ホームルームが始まる前。

「コウ、お金に困ってるって言ってたわよね? 」

「はい、困ってます」

「いいアルバイトを見つけたの。知らない人にお尻を撫でられるのが大丈夫なら、コウにピッタリのアルバイトよ」


知らない人にお尻を撫でられるという部分が全く大丈夫ではない。

そしてコウには、なんのアルバイトなのか想像もできなかった。


「すみません、全く理解できません。知らない人にお尻を撫でられるバイトって何ですか。 如何わしい匂いしかしないんですけど」

「如何わしくわないから、とりあえずついてきて」


そして授業が全て終わった放課後。

ツバキはコウを連れ、面白そうという理由でマリもついてきていた。

「いい加減、何のバイトなのか教えてくださいよー」

「すぐにわかるから」


3人が軽く談笑しながら歩いていると、突然ツバキが立ち止まり、背後を振り向いた。

「ツバキちゃんどうかした? 」

「なんだか、誰かに見られていたような気がして……」

「そう? 」


マリとコウも背後を振り返り確認する。

「特に怪しそうな人は見当たりませんが」


ツバキが怪訝な顔をして「うーん」と唸った後

「気のせいかしら」

そう言ってまた歩き始めた。



学校から歩き始めて10分ほど。

ある商店街の小さなビルの前で立ち止まる。

「ここよ」


ツバキが指差すのはビルの二階の看板。

看板には『マジックキャットカフェ』と書かれている。

「名前の通り猫カフェよ」

「猫カフェのスタッフがお尻を触られるなんて聞いたことないですよ」


ツバキはクスクスと笑いながら答える。

「誰がスタッフとしてバイトすると言ったの? 」


スタッフではない。

その言葉を聞いた時、コウの脳裏に不穏な光景が過る。


「今この猫カフェは、人手は足りてるのだけど猫の数が少なくて、猫の手も借りたいというより猫の手を借りたいといった状況なのよ」

「僕が擬人化を解いて、猫の姿でお客さんをもてなすって事ですか? 知らない人にお尻を撫でられるっていうのはそういう事なんですね? 」

「そういう事よ」


それまで2人の会話を聞いていたマリが笑いを堪えきれなくなり

「コウくんにピッタリのバイトじゃん……プププ」

「全然ピッタリじゃないですよ、そもそも一般人に魔術の事を話すのは困ります」

「大丈夫だから、中に入りましょう」

そう言ってツバキはドアを開けた。


店に入ると、ドアに付けられたベルの音に気付いた店員が「いらっしゃいませ」と景気のいい声をかける。


女性の店員がツバキたちの人数を目視で数える。

「3名様ですか? 」

「いえ、店長を呼んで欲しいのですけど」

「少々お待ちください」


その店員はカウンターの奥へと入って行き、2分ほどすると戻ってきた。

先ほどの店員ともう1人女性が隣に立っていた。


見た目は30歳くらいだろうか。

店の制服である緑色のエプロンを付けており、ブラウンの髪を後ろで1つに結んでいる。

黒縁の眼鏡がよく似合う仕事のできそうな女性だ。

「あらー、ツバキちゃんいらっしゃい」

「こんにちは佐々木さん。この前言っていた猫を連れてきました」


(本当に猫って紹介したんですね)


すると、佐々木と呼ばれた女性はコウの方を向く。

「初めましてー。あなたがツバキちゃんの言っていた子ね? 」

そう言ってコウに握手を求める。


「初めまして。真道 功です」

コウの名前を聞いた途端、佐々木の目が見開かれる。

「まみち……マホさんのところの? 」


その名を聞いてコウは納得した。

猫としてバイトをするなんて、魔術に関する事を話さなければならない。

かと言って一般人が魔術を信じるとも限らない。

だが、魔術に関係のある人が経営する店なら話しは別だ。


「魔術関係の方だったのですね」

「えぇ、神の財布ガレットで仕事するのもありなんだけど、危険だからこっちでね」

「確かに、あっちはウィッチハンターもたくさんいますしね」


2人の話から聞きなれない言葉がいくつか出てきて、興味を持ったツバキが口を開く。

「ガレット? ウィッチハンター? 」

神の財布ガレットというのは、こことは違う次元に存在する異世界で、死後の魂が集められる、神々の生息地です。ウィッチハンターは名前の通り魔女狩りを生業としている人たちです」

「どうやったら、その世界に行くことができるの? 」


知的好奇心の強いツバキが、自分の知らない世界の事を聞き、目を輝かせる。

「僕は眠っている最中ならいつでも行くことができます。神の財布ガレットというのは、深層心理の更に奥深くの場所に存在します。魔術の基礎知識を持っている人なら、訓練すれば行くことができるようになります」

「今度詳しく教えて」

ツバキが更に一歩踏み出してコウに迫る。

(ツバキさん顔近い)


話の脱線を修復するために、佐々木がコホンと咳をし

「それで、アルバイトの件だけどー」

「コウがお金に困ってるみたいで、ここでコウを雇ってもらえるといいのだけど」

「うちも今は猫ちゃんの数が少なくて、今日からでも働いてくれると嬉しいわー」


そしてツバキはコウの方へと向き直り

「良かったわねコウ。すぐにでも働けるそうよ」

ツバキは、してやったりといった様子でクスクスと笑っている。


「僕抜きで話を進めないでくだs……」

「あ、そういえばうちの猫ちゃんはみんな去勢してるんだけど、真道くんは去勢してる? 」

「してませんけど、他の猫を襲ったりはしませんよ……ってそうじゃなくてですね」

「なら、ノミの駆除は? 」

「……定期的にノミ取りの薬をやってます」


ことごとくコウの反論をスルーされ、とうとうコウは何も言い返さなくなった。

そうして、あれよあれよと言ううちにコウはマジックキャットカフェで正式に採用され、月15回出勤が決まり、その日から働く事になる。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



コウは更衣室で擬人化を解き、猫の姿となった。

そうして今からお客さんと猫が触れ合うフロアに向かう。


初めてのアルバイトは誰でも緊張するものだろうが、コウの場合は特に強かった。

猫カフェの猫として働くなんて、前情報はないに等しい。

そんな異質な職を知ったその日から体験する事など、あまりないだろう。


「このお店には飲食を取るフロアと、猫ちゃんと触れ合うフロアの2つに分かれてるから、真道くんは猫ちゃんと触れ合うフロアでお客さんに媚び売っててね」

「ニャー(媚びを売るって言いかたはちょっと)」


しかし佐々木にはコウが何を言っているかは理解できなかった。


「基本時給は1050円で、お客さんが真道くんのためにおやつとかマタタビを買ったらその度にお給料に追加が出るから。あと、真道くんに触れ合う目的で時間を延長したり、飲み物を注文したら、その度にまた追加ね」

「ニャー(どこのキャバクラですかそれ)」

「真道くんはアルバイトと言っても、例の無いタイプだと思うから、ちょっとキャバクラみたいな制度になってると思うけど、がんばってね」

「ニャー(あ、キャバクラみたいってこと気づいてたんですね)」


一通り説明を終え、佐々木がコウのためにフロアへと通じるドアを開ける。

「それじゃ、他の猫ちゃんたちと仲良くねー」


フロアのドアがバタンと閉じられる。


そしてコウはフロアを見渡した。

お客さんは3人。

主婦っぽい人が1人と、女子高生が2人。


猫はコウ以外に4匹。

そのうちの1匹がコウの元へと歩み寄ってくる。


種類は茶トラで、茶色と白の明るい毛色がとても綺麗だ。

身体はコウより少し大きい。


「よう、お前が新人か? 」

そう言いながら(猫語で)コウの身体の匂いを嗅ぎまわす。

「あ、どうも、コウと言います。宜しくお願いします先輩」

「ああ、宜しく。俺の名前はラクだ。ここでの生き方を後輩のお前にレクチャーしてやる。あそこにいる人間を見てみろ」


一通り匂いを嗅ぎ、ラクは主婦っぽい女の人の方を向く。

「あれくらいの歳の人は結構気前よくおやつを買ってくれたり、延長とかしてくれる」


主婦っぽい女性は見たところ、30後半から40歳くらいに見える。

ちょうど旦那さんが出世して贅沢ができ始める年頃だ。

この時間に遊びに出かけることができるということは、子供もいないか、子供は一人暮らしなのだろう。


つまり、時間とお金に余裕がある分、長時間の滞在やある程度おやつを買うことができるということ。


「狙うのならああいう人が良いだろう」

そうしてラクは、その女性の元へと歩いて行った。


そして女性の膝の上に前脚を乗せ、お腹辺りに頭をスリスリと擦り付ける。

すると女性は、ラクの頭や身体を撫で始める。


ラクを撫でながら時々見せる笑顔は、どこか満足そうだ。

撫でられると、ラクも喉を鳴らして喜ぶ。


だが、さっきまで女性に甘えていたラクが、突然そっぽを向いた。

すると、女性は撫で方が気に入らなかったのかと思って、撫で方を変える。

それでも機嫌が直らず、また撫で方を変え、ラクが気にいる撫で方を探し始めた。


そしてある時、またラクは女性に対して喉を鳴らしながら甘え始める。

すると女性は喜んでラクを撫でた。


そしてラクがコウの方へ向いて

「ここに来る人間のほとんどはドMだ。焦らされたり、そっぽ向かれたりすると必死にご機嫌取りをしようとする。こんな風に、押したり引いたりを繰り返して人間を肉球の上で転がしてやれ」


(なるほど、確かにこれを繰り返されたら、お客さんは長く滞在しておやつを与えてくれるのだろう)


すると女性は手元に置いてあった猫じゃらしを手に取り、ラクの目の前で振り始める。


先ほどまで女性の膝の上で大人しくしていたラクは突然飛び起きて、猫じゃらしが右に振られると視線も右へと、完全に猫じゃらしへと意識が奪われていた。


そして猫じゃらしへと飛びつき、女性の振る猫じゃらしに右へ左へとじゃらされている。


(いくら人心掌握じんしんしょうあくが上手くても、やっぱり猫だな。本能には勝てなかったみたいだ)



ラクがじゃらされている様子を眺めていると、別の猫がコウへと話しかけてきた。

「あなた新人さん? 」

「はい、コウと言います」


話しかけてきた猫は三毛猫で、身体はコウと同じくらいの大きさだった。


「私はリンよ。ねぇ、人間の相手なんかしないで、私と遊ばない?……ヒック」


リンは艶かしく微笑み、コウとの距離を詰める。

「ちょっ、酔ってるんですか? お酒またたび臭いですよ」

「さっき人間にもらったまたたびがあるの、一緒にシていかない?……ヒック」

「いえ、遠慮しておきます。というより、なんで去勢してるのに盛ってるんですか」


コウが一歩下がると、リンはさらに二歩詰めてくる。


「去勢したら妊娠する心配もなしに好きなだけヤれるでしょ? 人間で言うゴムとかピルみたいな避妊と一緒よ。 それより、お姉さんといいことしましょ? 私、元は野良だったんだけど、その時に3回出産してるの」

「そ、そうなんですか」


さらに一歩引くが、今度は三歩詰めてきた。

とうとう壁際までコウは追い詰められる。


「しかも、産まれた子は3回とも違う男との間にできた子なのよ」


これで誘っているつもりなのかと思うかもしれないが、猫は人間と比べて出産への意識が高く、確実に子を成すことを優先する。

違うオスと交尾をして出産しているというのは、メス猫にとってアドバンテージなのだ。


そのため、出産経験のある猫がオスからの人気が高い。

清楚な処女よりも、ビッチな人妻の方がモテるのが猫である。



背後は壁、前方には発情した酔っ払い。

コウに逃げ場はなく、身動きが取れなくなってしまった。


「そこのバーミーズちゃんをいじめるのはそれくらいにしておいたら? リン」

声の主はリンの背後にいた。


見ると、美しいグレーの毛並みと、スリムな体躯をした、ロシアンブルーがそこにはいた。


「ミシェル! 」


ミシェルと呼ばれたロシアンブルーは、ゆっくりとコウたちの元へと歩み寄ってきた。

ただ歩くだけで品性を感じさせるその姿は、ツバキを彷彿とさせた。


「だって、こんなに可愛い子が来たんだよ? 逃しちゃうのもったいないじゃん」


ミシェルはコウとリンの前で立ち止まる。

「確かに、綺麗な毛並みと黄金色の目をしているけど、この子はお仕事でここに来ているのだから、邪魔をしてはいけないわ」


リンが不貞腐れるながら立ち去っていく。

「あとちょっとだったのに……ヒック」


リンが離れて行ったのを横目で確認をして

「ごめんなさいね、あの子はお酒またたびが入ると、いつもああなの」

「いえ、助けてくれてありがとうございます。僕はコウと言います」

今日だけで何回名を名乗ったのだろうか。


「私はミシェルよ。一応、このカフェで1番長くいるから、わからない事があったら、なんでも聞いてね」

「はい、ありがとうございます。お仕事頑張ります」


そうしてコウはミシェルにお辞儀をし、その場を離れた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



気づけば、女子高生2人に撫でられ、おやつを食べさせられ、写真を撮られ、好き放題されていた。


途中からツバキとマリも様子を見に入室してきた。

コウが助けを求めるが、ツバキとマリは助けるそぶりも見せない。

顔とかお腹だけでなく、本当にお尻まで撫でられるとは思っていなかった。


「ニャー(ツバキさん、助けてくださいよー)」

「ねぇ、ツバキちゃん。腕時計落としたみたいなんだけど、知らない? 」

「あ、そういえば教室に落としてたわよ」

そう言ってツバキはマリに腕時計を渡す。


「ニャー!(無視しないでくださいよー! )」






アルバイト初日は誰でも緊張しますよね。僕は初日ガッチガチでしたよ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ