卒業式。
卒業式の当日の朝、いつもの登校時間に翔兵は家を出て行きました。
ああ、長かった。この高校に入学してからは元気に登校して、部活に補習に塾にと多忙に楽しそうにしている様子を見ていながらもずっと私は時限爆弾を抱えている気分でした。いつまた学校行かない、塾行かない、などと言い出すのではと毎日ヒヤヒヤしていたのです。
卒業式を無事に迎えられたことに感謝です。奇しくも今年はコロナウイルスの影響で在校生が出席しない、スケジュールも省略された簡素な式となりましたが。とにかく元気にこの日を迎えられたことに感謝です。
それまでの私はこういう行事のたびにハンカチを片手に出席していたのですが、今回は不思議と涙が出てしまうことがなく、自分でも拍子抜けしました。
この高校に合格した時には驚きと安堵で腰を抜かすわ涙が出てしまうわで翔兵にドン引きされたことがまだ数日前にも感じ、塾の送迎にドタバタしていた時間を長く感じ、という三年間でした。
そして気になるのが、昨日発表があったはずの、記念受験の結果。持ち前の方向音痴により、東京で珍道中をした、あの受験の結果です。何も言わずにいるので、ダメだったのでしょう。でも、もしかして「実は合格だった」と言うのでは?などと淡い期待の中、退場していく翔兵たち卒業生の背中を見送る私でした。




