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今となっては笑い話ですが。~家族旅行の思い出~

4年前、翔兵がまだ絶賛不登校だった夏に石垣島へ家族旅行へ行ったときのことです。

久しぶりの飛行機に乗り、現地ではレンタカーで移動する3泊4日の旅でした。

翔兵は睡眠障害でもあったので、翔兵がもし行けなかったら、実家の両親に様子を見てもらうことを覚悟してツアーに申し込みましたが、なんとか家族揃って行くことができました。


現地では翔兵はホテルで寝ている時間がほとんどで、食事もコンビニやどこかの料理屋さんのお持ち帰りのものを部屋で一人で食べるという場合が大半でした。この時期の彼の状況を思うと一緒に旅行に出てこられただけでも十分だと思いました。

唯一彼が張り切ったのは“マリンスポーツ遊び放題60分”というオプショナルツアーでした。最初は「仕方ないから行くけどさあ…」といわんばかりの様子でビーチに向かっていたのですが、いろいろな乗り物をマリンジェットに引っ張ってもらってキャーキャー言っているうちにだんだん気分が上がってきたようです。夫が最初に「もう疲れた。時間より早いけどホテルに戻ろうぜ」と言い出し、「あと一個乗ったら終わりにしてくれ」などと私たちに言い、一抜けたといった様子でビーチで待機。

しかし、私たち三人は「時間がもったいない!」と時間ギリギリまで乗り続けていました。次に疲れを見せたのが璃子。翔兵はといえば、このマリンジェットのスピードを加減してもらえるのですが、もっと飛ばしてくれと注文を出し、本当に時間ギリギリまで楽しんでいました。


レンタカーで自由に散策したり、オプショナルツアーの指定場所まで移動したり、その合間におみやげを買ったりと楽しく過ごしていました。しかしその間にも、石垣島ののんびりとした常夏の風景を見て、こんなステキな場所では不登校なんて関係ないんだろうな、などと勝手なことを考えながら助手席で景色を眺めていました。本当は、どこの土地でも不登校は起こりうるとわかりつつも。


そうこうしているうちに日程は過ぎ、無事に帰りのフライトで帰ってきました。

事件はここで起こりました。

飛行機を降りてからスーツケースをピックする場所まで移動する途中でトイレに寄ったときのこと。男女それぞれのトイレに入りました。私が個室から出てきて手を洗っていたら、なにやら大声が聞こえました。そのときは「ん?」くらいに思っていただけでしたが、通路に出てみると璃子がびっくりした様子でいいました。

「パパがお兄ちゃんを追いかけて走ってっちゃった…。」

「何?どういうこと?」

言っているうちに夫がゼエゼエと息を切らし、翔兵と一緒に戻ってきました。


翔兵がトイレから出てきたときに、私がいなかったことでパニックを起こしたんだとか。

「ママがいなーい!」

そう言って空港内の通路を爆走したそうです。

「おい!翔兵!待て!」

夫がそう叫んで追いかけていったようで、私が聞いた大きな声はこの夫の声だったように思います。


小柄とはいえ身長も160センチを越え、しかも当時は黒い服しか着なかったので、真夏なのに長袖の黒パーカーに黒のフルレングスのチノパンという全身ブラックな服装という翔兵の姿はそれだけでも目立っていただろうに、声変わりも済んだ声で「ママがいなーい!」などと大声で叫んで爆走した姿はさぞかし目立ったことでそう。

今となっては笑い話ですが、このときの夫は「俺と目が合ったはずなのに、お前がいないって言ってはしりだしてさあ。俺ってそんなに存在感薄いかなあ。」とひどく落ち込んでいました。


最近になって思い出しては笑えることになりましたが、当時はこの出来事を笑えませんでした。また一つ、笑い話になったことに感謝です。


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