「心細いなあ。」
夏休みを目前に、子供たちの個人面談がありました。
二人とも特に問題なし。
そして翔兵のほうは、今回の面談で志望校をあらかた決めました。
本命は地元の国公立。しかし、東京の私立も受けてみたいと。私立で下宿ということは仕送りが大変なので、できれば避けてほしいと伝えてありますが、記念受験という形でも良いので受けてみたい大学がある、と本人が言い出し、担任教諭も賛成したので、受けることに決定しました。
しかし、しかしです。
「こういう時、親ってついてこないの?前日からホテルに泊まらないといけないなんて落ち着かないよ。それに心細いなあ。」
と。言い出しました。一人で東京に行くこと。満員電車で受験会場まで行くこと。都内の満員電車は地方に比べるとかなり強烈です。そして前日からホテルに泊まらないといけないこと。しかし、高三ともなれば、親が付き添わずに行く子はたくさんいます。夫が知ったらまた何か言うのは目に見えています。夫も東京へ一人で受験に行った身ですから。
「どうしても不安なら、ついていくから大丈夫だよ。」
「ホント?」
自他ともに認める方向音痴なだけに不安なのでしょう。この一言で翔兵はパアっと明るい顔をしました。
しかし、安心するなかれ。母も方向音痴なのを忘れるなかれ。




