「おcarさ~ん!」
「おcarさ~ん!」
ある朝、普段は私をママと呼んでいる翔兵に”おかあさん”と呼ばれました。明らかに”r”を意識した”おかあさん”という発音。顔を上げるとニタニタしているのか申し訳ないと思っているのかわからない笑みの翔兵と目が合いました。だいたい時計と翔兵の行動を見て、出動要請が来るだろうとは思っていましたが。このパターンは初めてで、思わずププっと噴き出してしまいました。
「何?」
あえて聞いてみました。
「おcarさん。carを出してください。」
新手の送ってくださいコールに笑いをかみ殺しながらバッグを手にする私。ここで押し問答をして時間をロスしたら、電車に間に合わなくなって学校まで送らされるハメに。それはイヤなので、素早く動きます。
もちろん璃子の視線は冷ややかです。
「お兄ちゃん、いい加減にしたら?」
「なんだよ。なんでお前に怒られるワケ?」
「私、玄関のカギを締めるの面倒なの!」
私がこうして出ていくと、この時間帯は璃子が玄関の施錠をすることになるのですが、施錠をしてからカギをリュックに入れるのが億劫なので、璃子としても迷惑なんだとか。
実のところ、私が朝、起こすことも時々あるんです。自立のためには、自分で起きるまで放置、が理想ですが、学校まで送るということはなるべく避けたい。場合によっては私がバイトに遅刻をしてしまうので。せめてもの思いで、駅まで自力で行けるかどうか、というギリギリのタイミングまで待ってから起こすことにしています。そして、「もう学校まで送っていけない日が大半だから」ということも伝えてあります。
そう。私はこのところバイトを始めました。経済的な理由もあるのですが、私がフォローできない状態を作りたかったということもあります。
受験勉強も頑張ってほしいのはもちろんですが、起きられるようにも頑張ってほしいものです。




